「んッ…!」
ギィンと刀の軋む音を聞き、戦骨の笑みにムカつく。こんなのが母様のご先祖様だなんて全く思えないし、喧嘩のやり方もものすごく野蛮だ。
いや、喧嘩は野蛮なんだろうけど。
「どうしたァ?もうへばったかチビ」
チラリと私は斎藤と舞治に視線を向ける。会話らしい会話を挟まず、殺し合う四人に溜め込んでいた呼気を吐き出して、ゆっくりと刀を鞘に納める。
こんなのと戦っていたら刀が持たない。
「なんだ。もうお仕舞いか?」
「違う。────此方も切り札を使う」
淡く桜色に光る刀身、私の右手に巻き付き、血を吸い、力を与えて力を奪う妖刀・紅桜を抜刀し、戦骨の事を見据えると目付きが変わった。
「要は人喰らいの魔刀だな。しかし、俺の持ってた刀によく似てるな」
「私の刀だよ!」
右手で振るえる紅桜は、さっきまで左手で振るっていた電光丸や無限刃よりも軽く素早く振り抜き、切り裂き、間合いを刻める。
「強いヤツは嫌いじゃないぜ。それに、お前は對に似た雰囲気だ。面白くて楽しめる!」
そう言い切って飛び出してきた戦骨の拳打を紅桜で切り返しているのに、拳を斬ることも割ることも出来ず、剣戟と拳戟は激しく応酬を繰り返していく。
もっと、強く!
もっと、鋭く!
もっと、疾く!
「掃魔刀ォ!!!」
私の身体は光よりも音よりも疾くなる。
九頭龍閃!
九頭龍閃!!
九頭龍閃!!!
九頭龍閃!!!!
九頭龍閃!!!!!
四十五の頭を持つ龍の閃きは戦骨の身体を切り刻み、粉微塵に切り裂いた筈なのに、私の右腕に巻き付いていた紅桜の刀身は粉々に砕け、もはや原型と呼べるものは残っていなかった。
「クカカカカッ!!刹那の瞬きに四十五の剣戟を見舞うなんざ常人の思い付くことじゃねえな。だが、悪くない一撃だったぞ、チビ」
「ん、還る分の余裕は残した。バイバイ」
「あ?あー、そういうことか」
砂みたいに身体を削りながら消える戦骨を見送り、土方歳三と変なおじさんも消えた事を確認し、私は鳳凰天舞を引き抜いて、空に放り投げる。
ずっと、考えていた。
二度と地獄門を開かないようにするには、地獄門を上回る強烈な閂が必要になる。鳳凰天舞は史上最強の聖剣だから、地獄門を封じ込める楔になる。
「さようなら、鳳凰天舞」
そう告げて、私は目を閉じる。
聖剣戦争は永久に決着はつかなくなったけど。
最強の聖剣は地獄の門を閉じる鍵になってくれた。そのおかげで、ようやく私の北海道での頼まれ事は終わりを迎えたことになる。
ちょっとだけ安心しているよ。