子供達と久し振りに会えた剣路は嬉しそうに笑い、名残惜しそうにするから「残る?」と聞くも「大丈夫。今は鶴見のやることを止めたい」と言われた。
やっぱり、剣路はあの鶴見っていう額当ての男を警戒しているし、嫌っている。私もウソまみれのアイツは嫌いだと思う。兵隊の服から着物と袴に着替えた、剣路は刀を二本とも佩いている。
「杉元達と合流するのか?」
「ん、先ずは杉元達と会う。もしも仲間になれなかったら土方歳三と永倉新八のところに行けばいい。剣路の苦手な斎藤おじ様も一緒にいるはず」
「うげっ、あの人も来てるのか」
嫌そうな顔をする剣路にクスクスと笑って歩いていると背広姿の男とすれ違った瞬間、肩を掴まれ、いきなりの事にビックリしすぎてビンタしちゃった。
「ほう。気の強い良い女だ」
「……離してくれる?」
「今夜、俺とどうだい?」
「ん、私は亭主一筋だから断る」
「そう言うわけだ。余所を当たれ」
剣路の握った刀の柄頭が男の手首を打ち、緩んだ隙に剣路の背中に回り込み、男を見上げる。和尚より筋肉が発達しているし、それにあの耳は柔道だね。
「坊主。中々の殺気だが、この牛山辰馬の身体を切り裂く自信はあるんだろうな」
「膾にしてやるよ、筋肉達磨」
往来の場所で刀を抜こうとする剣路と、組みの構えを取ろうとする「うしやまたつうま」の間に割り込み、さっさと離れることを優先する。
多分、あれは和尚みたいに強い。
「なんで逃げるんだ。斬れば良いだろ」
「あの筋肉は斬れない。剣路も私もまだ剣の道を極めることは出来ていないけど。あのウシヤマって人は柔道を極めている……父様やお義父様と同じ」
強さの極致に至っている。
「でも着いてきてるぞ?」
「ん!?」
「折角、会えたんだ。良いだろう!」
ゾワゾワするものを感じ、私は全速力で走り出す。ちょっとウシヤマの視線がお尻や胸に行っていたのが、すごく怖かった。
剣路は追い付けるけど。
ウシヤマは追い付けない。強い人は好きだけど、不埒な目と目的のある人は苦手、あと私は剣路の奥さんだからそういうのは良くないと思う。
母様も言っていた、浮気は悪い文明だって。
「止まれ。山に突っ込む気か?!」
「……剣ちゃん、私は剣ちゃん一筋」
「お、おう、いきなりだな」
私の言葉に戸惑う剣路の手を握って、雪山に登る。追っ手はまだいないから大丈夫だろうけど。杉元に会ったら、また怪しまれる。
すごく不満だけど、アレは仕方ない。
アシリパを大切に思っているから、あそごで警戒しているんだろう。