手慣れた動きでヒグマの解体を進める二瓶の事を眺めていると、剣路と
鶴見の不審な動きやアイヌの金塊の話だ。
「今夜はヒグマの二瓶ご飯だ!」
「ん、二瓶は今日も元気だね」
「ぬはははっ。男とは昂りが高まればこんなものだ。さっきも話したが、あの白い狼と対峙すると考えただけで猟師の魂が勃起する!」
私のそばに寄ってきたワンちゃんの頭を優しく撫でて上げながら、杉元達はもう帰ってきたかと考えていたとき、遠吠えが聴こえる。
白い狼の遠吠え。
二瓶と谷垣は、あの狼を狙っている。
「小娘、小腹を空かせた小熊と子犬な餌やりだ」
「?」
小熊と子犬?と小首を傾げながら、襷を使って袖を縛って袖が汚れないように固定し、山刀を借りて、平鉄鍋を使って料理を始める。
熊肉は臭みが強いから、鞄の中に仕舞っていた赤の葡萄酒とバターと刻んだニンニクと玉ねぎ、エゾマツタケなど調味料を加えていく。
このまま分厚く切ることでステーキになると母様が教えてくれたけど。ステーキって、どこの国の料理なんだろう?と未だに思う。
「ん、味見して」
「……ぬはははっ!!洋酒は好まんが、臭み消しに使うには持って来いのようだな!!」
胡椒と塩で味を整え、肉汁と葡萄酒の絡み合った玉ねぎを分厚く切った熊肉に乗せる。お米がほしいけど、仕方ないからひとえに貰ったパンを添える。
「二人ともお昼ご飯、食べよう?」
「わかった。谷垣も食え」
「あ、ああ、しかし、なんだこの料理は?」
「知らん」
「ぬはははっ。洋食なんぞそんなもんだ」
「熊肉のワイン煮込みだよ」
ふれんち、だったかな?と母様の教えてくれた料理の名前を思い出しながら柔らかくなった熊肉をお箸で切り、一口ずつ食べる。
美味しいけど、母様のはこの味じゃないか。
「ん、うるさい」
パンを千切ってワインのソースに絡めて、熊肉と玉ねぎ、ニンニク、エゾマツタケを乗せて頬張る。谷垣も剣路も私の真似をしている。
「洋食は帝国ホテルで聞いただけだったが、こんなにも美味いものなのか」
「美味い。流石は、しとりだな」
「ぬははははっ!!洋酒も美味い!勃起ッ!!」
……さっきから、不埒な言葉が多いと思う。
剣路は気にしてないけど、私はすごく戸惑う。そう言えば昔に母様も二瓶に何かを言っていた気がするけど。もしかして、これだったのか?
まあ、今はそっとしておこう。
「(聞き流せる、私も立派なマダムの仲間入り…!)」
フンスと自信を持つ。