「ん……ん゛ッ?!」
寝苦しさに目を覚ました瞬間、手と足が縛られていることに気づいた。剣路は?と目を動かすと私の刀と鞄は放置され、剣路も谷垣も二瓶も居なくなっていた。
後ろ手に縛られた両手をお尻の下、爪先へと通し、前の方に移動させ、左手の人差し指に唇を当てて、身体の中に封じ込めている妖刀を呼び出す。
「────
私の寝ていた小屋を吹き飛ばし、風を巻き起こして縄を斬ってくれた妖刀の柄を掴み、鞘に納めて走り出す。足跡は見える。
私の走りなら追い付ける。
雪を踏み締め、足跡を追い、駆けていく。
待って、まだ、してないよっ!
まだ母様のお墓参りしてないよ、二瓶っ!!!
ああ、間に合わなかった……、
「…………うそつき」
「ぬははっ、泣くな泣くな」
杉元もアシリパも由竹も笠原も谷垣も剣路もいる。二人の狙っていた白い狼の横には茶色い体毛の狼が寄り添い、子供の鳴き声も聴こえる。
「……まったく、大人になって泣き虫になったか。バカみたいに笑え笑え、小娘に涙は似合わん」
左腕は指が斬られ、噛み砕かれている。
首にも噛みつかれ、血を流す二瓶の目の前に座り、ゆっくりと彼の傷口に手を添える。ひとえや母様のように私にも傷を癒やす神通力が有れば良かったのに、そう悔やみながらも二瓶の目を見つめる。
「満足したの?」
「嗚呼、魂が勃起する良い喧嘩だった」
ゆっくりと血の付いた手が私の頬を撫でて、どこか遠いところを見つめるように二瓶も私を見つめる。
「軍帽の男、俺の刺青はくれてやる。だが、小娘には手出しするな、大事な友達の子供だ」
「ああ、約束する。元々二人とは対立も何もしてないから殺し合うつもりもない」
「そうか。小娘、俺の人生は満足だ」
そう言って二瓶は息を吐いて、目を閉じた。
苦しかったのに、私と話すために頑張ってくれた。
「コレヨリノチノヨニウマレテヨイオトキケ」
谷垣の言葉を聞き、私は剣路の傍に寄る。
「なんで縛ったの」
「アレは男の喧嘩だった。しとり、お前が止めてたら二瓶に恨まれてたんだ」
恨まれてもいいよ、二瓶は母様の大事な友達だもん。私が、恨まれていれば二瓶はずっと私を探すために生きててくれたかも知れないんだよ……!
「ふぶっ、、ぐっ、うぅ……ッ」
「……ごめんな」
「うるさぃぃ、ばかぁ…!」
私に狩りを見せてくれたり、優しくしてくれた三人目のお爺さまみたいな人だったんだ。生きてほしかったんだよ、母様のお墓参りしてほしかったんだよ…!