二瓶の遺髪を少しだけ貰い、縛って彼の家族のところに送って貰った。二瓶の身体は山の一部に成ることを望んだから、そのままにしてほしいと谷垣に言われ、お参りするだけで私は離れることにした。
アイヌの金塊。
刺青の囚人。
二瓶は母様のお友達だった。
そのお友達の身体の皮を剥いで地図にするなんていう悪略を断じて許すつもりはない。網走監獄に居るっていう「のっぺらぼう」をビンタする。
由竹も笠原も刺青囚人だって聞いて、二人の皮も剥がれるのかと考えるだけで悲しくなる。湯船を出て、身体の水気を拭き取って着物と袴に着替え、銭湯を出る。
「よう。また会ったな」
「…あの時の変態さん」
「フッ。どんな男も変態だ。今回はあの優男は一緒に居ないところを見るに別行動か?」
「ん、剣路は聞き込みしてるよ」
そう言って私は伸びてきた手を叩き、ウシヤマと呼ばれた彼の事を避けて歩き出す。が、なんでかウシヤマは私の後ろを着いてきている。
「この前、白石とも一緒に居たろう」
「……由竹の知り合い?」
じゃあ、ウシヤマも刺青の囚人なのかと見上げ、ゆっくりと刀袋の紐を解いて、刀の柄を取り出すと「勘違いするなよ。俺はお前さんに聞きたいことがあるだけだ」と言われ、何だか変な臭いのする紙を差し出された。
「この眼鏡の嬢ちゃんを知らねえか。何分、十何年前に出会ったきりなんだが、是非とももう一度だけ話し合っておきたい」
ウシヤマの差し出した紙には、少し雰囲気は違うけど。間違いなく母様が載っていた。これ、よく見たら瓦版の写真だと目を向ける。
そっか、ウシヤマも母様のお友達なんだね。*1
「この写真の人はもういないよ」
「なに?故郷に帰ったのか…」
「ううん、私の母様は十年前に亡くなっているからもう会えないんだよ。でも、ウシヤマみたいに覚えててくれるひとが、まだ居てくれたんだね……ありがとう」
「お前さん、あの嬢ちゃんの娘か…」
私の事を見下ろしながら、ウシヤマは呟く。
「しかし、そうか。あの嬢ちゃんはもういないのか。あんなに良い尻をした嬢ちゃんは中々居ないもんだから一度ぐらい褥を一緒にしたかった」
……コイツは何を言っているんだろう?
「ん、母様の侮辱は許さない」
「おいおい、侮辱なんてしてないぞ。俺はあの薄くて細い身体の中で唯一、肉厚的で柔らかそうな尻の事を褒めているだけだ」
「お墓参り、こないでほしい」
父様もコイツが来るのは、多分嫌がる。
そんなことを思いながら、私は逃げるように走り出そうとした瞬間、爆発が起こり、そっちに視線を向けてしまった。