……なんで、みんな跳ねたんだろ?
不思議に思いながら私は由竹の話してくれた刺青の囚人の一人の
「アシリパ、どうする?」
「クジラ漁は船に乗って二日三日と続くから帰ってくるのを待つしかない。辺見和雄の顔を知っているのも白石だけだから困ったことになった」
「じゃあ、一緒にご飯食べようか」
「ああ、そうだな!」
グウウゥッ…と、アシリパのお腹が鳴る。
「けど、ここで取れるのはニシンばかりだぞ」
「ん、糸色流料理法を教えてあげる」
そう言って番屋の方に移動する途中、まだ生きているニシンを数匹ほど買い、少し形の不揃いな赤ナス(トマトの事)も買う。
赤ナスは凍っているけど、大丈夫だと思う。
番屋の囲炉裏を借りて、平鉄鍋に刻んだニンニクとオリーブ油を軽く炒め、香りが立ったら、塩を振りかけ、水気を切ったニシンの切り身にメリケン粉(薄力粉のこと)を軽く纏わせ、平鉄鍋に入れると、ジュウジュウという音が聴こえる。
「もう美味そうだぞ!」
「フフ、まだだよ。アシリパ」
赤ナスを刻み、白ワインヴィネガー、刻んだオリーブ豆、セリ、黒胡椒、塩を加え、ソース作りを終えると綺麗に焼けたニシンの切り身をお皿に盛り付け、赤ナスのソースを掛け、ちょっと固いパンを短刀で切り、お皿に添える。
「おお!なんて料理なんだ!」
「ニシンのソテー、であってるはず」
「そてー、ヒンナだ!」
赤ナスのソースとニシンのソテーをパンに乗せて食べる。ん、美味しいけど。まだまだ母様の作ってくれた料理のほうが美味しい。
「ヒンナヒンナ」
「あぁーっ!?アシリパさん、一人だけ美味しそうなの食べてる!!」
「杉元、これはニシンのソテーというんだ!ものすごくヒンナだ!食べてみろ!」
「ごえっ!?…………うわ、なにこれうまっ?!」
ワイワイと話し始める杉元とアシリパから視線を外し、番屋の二階に上がっていく男の事を視線で追いかける。
杉元のことだから海に落ちたところを助けたんだろうけど。アイツ、変な臭いがした。剣路や杉元、由竹とも違う、変わった臭いがしていた。
「しとりさん、俺も食べたぁい!」
「ん、買ったニシンは全部アシリパが食べたよ」
「アシリパさんが?」
「お前の分、すごくヒンナだったぞ」
そう言って彼女は笑顔を杉元に向けた。
あとで、あそこの風邪を引いているおじさんに薬を渡してあげたほうがいい。