川に落ちた男の事は運に任せ、私は由竹と半裸だった男、スギモトと呼ばれた兵隊、アイヌの女の子の近くに戻りながら竹刀の竹を集める。
「クゥーン」
「なんで脱いでるの?」
「刺青を写すためだ」
鉛筆で書き写すアイヌの女の子の近くに置いていた私の鞄をスギモトに渡して貰う。さっきから、ずっと警戒しているのか、睨んでくる。
「アンタ、旦那が第七師団ならさっきのヤツとも知り合いなんじゃないのか」
「ん!浮気は悪い文明だからしない」
「いや、そうじゃねえよ」
折れた竹刀を捨てて、少し細身になった竹刀を刀袋に戻して由竹を見る。まだまだ時間が掛かりそうだと白い息を吐いて、倒木に座る……前に、ハンカチーフを敷いてお尻が濡れないようにする。
ん、やっぱり冷たい。
それにしても、やっぱり見覚えがある。
「……ススハムの子供?」
「私の叔母を知っているのか?」
「ん、母様の親友だよ」
アイヌの女の子が此方に振り返ると由竹が逃げようとするから竹刀で頭を叩くとたん瘤を作り、ようやく大人しくなってくれた。
「俺は何もしてねえ!」
そう言うなら許してあげよう。
「シサム、お前の名前を聞きたい。本当に叔母の知り合いなのか」
「緋村しとり。糸に非ず、木の寸と書いて緋村、しとりは空前絶後の
「緋村ケンジ、第七師団の剣鬼か!?」
「ん、剣路は鬼なんかじゃないよ。剣路は私よりずっと弱いし、すぐに不貞腐れるし、ちょっとだけ意地悪な旦那様だよ」
母様なら話題を簡単に繰り出せるのに、まだまだ母様のやり残した事には届いていない気がする。それに、スギモトと由竹以外に名前がわからない。
「スギモトはどう書くの?」
「木に三に、元の字で杉元、名前はイに左、一番の一で杉元佐一だ。で、あっちのアイヌの女の子がアシリパさん。それからひとつ言っておくが母親の話が嘘だったら殺す」
「そんなに殺すなんて杉元には絶対な無理だよ。私の事を目で追えてなかったし、私の竹刀を振る瞬間もなんでか私のお尻を見ていた」
「み、みみみ見てないですけどぉ!!」
「ん、見てた。助平男」
「やーい、助平男!」
「確かに肉付きは良いからな」
由竹達の言葉も加わり、杉元は必死だ。
「杉元は助平なのか?」
「アシリパさんまでぇ!?違うよ、確かにあんなに高く飛んだことにはビックリしたけどさ。疚しい気持ちなんて何もないぞ!」
必死に否定するところが怪しい。
わざと、そう付け加えると杉元を助平男だとみんなは判断し、しょんぼりとする彼に「警戒、解けた?」と聞けば目を見開き、溜め息を吐かれた。