料理酒、みりん、醤油、摩り卸したニンニク、水、砂糖を混ぜたタレにシャチの切り身をつけ、油で満たした鉄鍋を即席の三脚に吊るし、温める。
その間に片栗粉を用意し、十分にシャチの切り身にタレが染みたら片栗粉を纏わせ、油の中に入れる。ジュワジュワと鳴る油の音を聞きつつ、杉元達が食べる分を用意していく。
ヤライタンキ(アイヌの樹皮のお椀)に竜田揚げを乗せていき、しっかりと煮立つほど加熱し、雪の上に置いて冷ましていた醤油とニンニクのタレを掛け、差し出す。
「まだか、しとり?」
「ん、食べてていいよ」
「いや、私は待つぞ。白石も待て!」
「クゥーン」
「……フフ、急がないとだね」
片栗粉は水を加えて、溶かす。
浸けタレも混ざってるから上手く出来るのかは気になるけど。平鉄鍋で温めていると白く濁った片栗粉が透明になってくる。
それを素早く雪の上に置いていた水と海氷を削ったものの入った小ぶりの鍋に生地を入れ、一気に冷ましながら、一口大に千切っていく。
「ん、シャチの竜田揚げと片栗粉のお餅」
「「「いただきまぁす!」」」
「いただきます」
我先にとお箸を差し出す。
みんなと違って、片栗粉のお餅を食べる剣路は「うん。相変わらず美味いよ、しとり」と言ってくれる。私も石鹸で綺麗に手洗いして、食べ始める。
「ヒンナすぎるぅ!」
「確かにヒンナだぜっ」
「ん、由竹は今日はひとりで頑張ったからデザートに蜜柑をあげる」
「凍っててシャリシャリだけど、甘ぁい」
「寄越せ白石!」
「あふんっ」
すぱぁんっ!と、素早くビンタされた由竹はアシリパに蜜柑の果肉を一つ取られ、モグモグと食べる彼女に「んもおっ、アシリパちゃんったら食いしん坊なんだから!」と言われ、杉元も剣路も私も笑ってしまう。
「片栗粉のお餅もヒンナだぜ。つるんと喉に入ってきて、寒天にも似たような感じがする」
「ヒンナヒンナ」
「しとり、お前も食え!」
「ん、食べてるよ」
竜田揚げを冷ましながら食べる私に竜田揚げを差し出すアシリパの口許を拭いてあげ、杉元達にも水筒の水をお椀に入れ、渡していく。
本当は湯呑みがほしいんだけどね。
由竹の獲った子持ちの昆布もそろそろ揚げあがる頃だと思い、素早くヤライタンキに乗せてあげ、みんなは取り合わず、ひとつずつ取る。
「そういえば白石が昆布を獲るときに言っていたんだが、精子ってなんだ?」
突然の言葉に空気が凍った気がする。
「白石、お前…」
「やっぱり皮剥ぐか」
「キャハァーッ!!どうしよう!」
ちょっとうるさいと思う。
けど、アシリパの母様と父様は亡くなっているし、いつも猟に出ているから、そういう知識を知る機会は少なかったんだろう。
年上のマダムとして教えるべきこと!
「ん、あとで教えてあげる。今はお食べ」
「わかった!」
これもまた良い母様になる経験……!