私とアシリパが土方歳三と永倉新八の二人が貸して貰った番屋に来ていたらしい。ただ、剣路は由竹が嘘を吐いたことに首を傾げていた。
あと笠原は土方歳三の方にいるって聞いた。
「しとりさん、土方歳三って知ってる?」
「ん、知ってる。新撰組の親玉」
「それは近藤勇だな。第七師団にもオレは近藤勇の息子だって名乗るヤツはいたな。年齢が合わねえから誰も信じてなかったが」
「剣路のせいだろ。刀振り回しやがって」
杉元の言葉に剣路は「刀もヘタクソなのか」と返され、ムスッとしていた。そういう剣路は銃なんて使えないよね。一発も当たらないし。
まあ、そんなことは言わない。
「ん、誰かいる」
「ありゃ、イトウか?」
「よし、交渉して分けて貰おうぜ」
由竹の言葉に杉元と剣路は頷き、ずっと歩いていたからお腹が空いているんだろうと思い、鞄に仕舞っていた料理道具を取り出していると、川の橋に立つ男のなにかに気付き、アシリパが嬉しそうに笑った。
「キロランケニシパ!」
大きく手を振って名前を呼ぶアシリパに向こうも気付き、イトウを持って立ち上がった彼の体躯に私は、目を見開く。
父様より背が高い。
「アシリパか?」
大きい。
アイヌの服装越しでも分かる杉元や剣路並みに鍛え上げた筋肉密度の高さ。多分、アイツに力勝負に持ち込まれたら、私は押し負ける。
昔と違って、剣路にも力では負ける。けど、速さと剣の腕前は私の方が上だ。絶対にその二つは負けないと決めているから日々鍛練している。
「あ、落ちた」
「何やってんだ。あのバカ!」
「白石は本当に役立たずだなあ」
「ん、由竹。手を伸ばし…て…おっきい…」
「ウワアァーーーッ!!?白石が食われた!」
「イワンオンネチェプカムイだ!」
「白石ぃ!!!」
みんなして叫ぶ最中、川に飛び込む音が聴こえ、そっちに顔を向けるとキロランケと呼ばれた男が川に潜り、イトウの背中な張り付き、エラの間に短刀を差し込んでいるのが見えた。
ザバァ…!と飛沫を上げ、陸にイトウは上がる。
「人魚だ」
「アシリパ、焚き火を準備しよう」
「そうだな。しとり」
乾いた枝を集め、マッチを落とす。
濡れた服の代わりになるもの。
「……私の着替え、使う?」
「大きさが合わんな。アッチで魚を獲ってる俺の知り合いに頼もう。オーイ!クチャから俺の毛布を取ってきてくれ!」
そう叫ぶキロランケの言葉に答えるように緑色の何かは走り去っていった。
「キロランケニシパ、知り合いか?」
「ああ、十何年前からの知り合いだ。コタンの爺さん婆さんはミントゥチとか呼んでいるがな」
「ミントゥチ?」
思わず、その言葉に私と剣路は顔を見合わせる。
「「河童河太郎だ!!」」
私達の声に答えるように地鳴りが響いた。
────やっぱり、河太郎の四股踏みだ。