アシリパの和名。のっぺらぼうの正体。網走監獄の出来事。いきなり色々な事をいっぺんに話され、こめかみを押さえてしまう。
でも、アシリパの父親は生きている。
「アシリパ、貴女の父様ということは分かったけど。母様の友達にしたことは許せないから、一回だけビンタさせてもらうね」
「分かった。私もアチャにビンタする!」
ウンウンと頷いていると、剣路達の何とも言えない表情を見ながら河太郎に荷物を持って貰い、キロランケの家族のいるコタンに向かうことになった。
けど、キロランケは嘘の臭いがする。
お婆様は「善し悪しは臭いで分かるのよ」と言っていたから、きっとキロランケはいい人で悪い人なんだろうと思う。アシリパも懐いているから、安全かは分からないけどね。
「ところで、刺青は持ってるのか?」
「「そのハゲが刺青囚人の一人だ」」
「こいつが?」
「でへぇえっ!?言っちゃうのそれ!?」
「ん、私も確認した」
私の言葉にキロランケは考える。
見ようと言い出さないのは、ちょっとだけ怪しく感じる。彼女の父親の友達なら、見たいと言い出すかと思ったんだけど。そう言うことはないのか。
もしくは、剣路と杉元の二人を警戒している。
「しとり、何か気になるのか?」
「お髭は良いと思う」
「ハッハッハッ。分かってるな、お嬢さん」
「ん、私は二十八だからマダムだよ」
「おっ、冗談も上手いな。精々十代後半か二十代そこらだろう?」
そう言って笑うキロランケだけど。
みんな、笑わずにいるから本当だと気付き、私と剣路の事をまじまじと見つめ、困惑しているのが直ぐに分かった。
確かに剣路も二十八だけど、若く見える。
「和人は若く見えるが、まさか子供と変わらないヤツもいるのか、こりゃあ驚いたぜ」
「しとりは若く見えるのは仕方ないが、オレは十分にオッサンだろう」
「それはない」
「なんでだよ」
「剣路は良い父親だからオッサンじゃない」
杉元は「まあ、確かに面倒見はよさそうだ」と同意してくれた。ん、あとで杉元にもお菓子をあげるから良い子にして待ってる。
「アシリパさん、あの河童どうする」
「ミントゥチカムイは食えるのか分からない」
「俺もやだぜ、尻子玉抜かれるなんざ」
由竹が河太郎を見ながらそう呟くと河太郎は指の骨を鳴らし、ビックリする由竹をみんなが笑う。ん、母様も怖がりだったからしかたないよ。
けど、あんまり妖怪を馬鹿にするのはダメ。
妖怪はいっぱいいるから見られているし、向こうも人を知ろうと頑張っているんだから。