チン……コホン、牛山の講座も終わった後、アシリパを連れて銭湯(壁かけハウスの浴室)に向かい、軽くアシリパの身体からビールの酒気を抜いておく。
そうしないと大変だからね。
ホテルの廊下の椅子に座って待っていた杉元にアシリパを預け、私も剣路の待っている部屋に入り、ドアにつっかえ棒を仕掛ける。
「床は、あとで弁償しよう」
「しとり、どっちで寝る?」
浴衣に着替えている途中、そう言ってきた剣路の方を見る。剣路もお風呂に入ってきたのか。少し火照った身体で私の方に手を伸ばしている。
「ん、今日はそっちで寝る」
ギシリと弾むベッドに膝を乗せ、剣路の腕の中に収まるように身体を縮める。戦争に行く前よりもガッチリとした身体になった剣路の腕に少し戸惑う。
けど、これが今の剣路だ。
「甘くて柔らかい匂いだな…」
「そう?」
「そうなんだよ」
ぎゅうっと私の事を抱き締める剣路の身体は傾き、私は剣路の身体に覆い被さるような格好になりながら、彼の厚くなった胸板に顔を当てる。
母様は筋肉が好きだったけど。
ちょっと分かるかも知れない。
「んッ?!んっ…!」
身体を動かそうとするけど。
動かない。
違う。
剣路の力が強くて身体が上に上がらないんだと気付き、剣路を見る。罠に掛かった獲物を見るような目で、私の事を見つめている。
「な、オレの方が強いだろ?」
「……私の方が強いよ」
「でも、動けないんだろ?」
「ん゛ッ!!」
ベチベチと手だけで剣路の胸を叩きつつ、怒った顔をしても剣路は笑ったままで、全く反省していない。すごくムカつく顔をしている。
「弱いなあ、しとり」
「ッ、私の方が強い…!」
「抜け出せない時点で決まってる。……まあ、それよりも部屋に何か流れてきてるから息は止めとけ」
「…………」
その呟きに呼吸を止める。
床を踏み、歩く音。
私と剣路の隣の部屋。
アシリパと杉元の部屋に向かっている。
着物と袴に着替えて、革長靴を履く。
剣路も浴衣を脱いで着物と袴に着替えると革長靴を履き、つっかえ棒を外して廊下に出ると鼻血を流した女将が此方に注射器を投げてきた。
「ん、危ない」
「毒か?」
「麻酔だと思う」
そう言いながら部屋を出てきた杉元の怒った顔にビックリしながら走ってくるなり、アシリパを抱えてホテルを出るように言ってきた。
指示に従って、私達はホテルを出る。
剣路は向かおうとしていたけど。キロランケを追い越して逃げてきた由竹に嫌な予感を感じ、引き返して戻ってきてくれた。
ドゴオォォーーーーンッッッ!!!!!!
ん、すごい爆発だね。
「おっ、糸色製のダイナマイトだな」
「母様の爆薬だね」