「チンポ先生…」
「ハンペン、捨てよう?」
シワシワのシナシナになったハンペンをまだ持っているアシリパにそう言いながら、私達は苫小牧の牧場に来ている。由竹のせいで逃げた馬の代わりを探すため、それから由竹の聞いてきた囚人を見つけるためだけど。
あからさまに情報入手が早すぎる。
「インカラマッはどう思う?」
「占いましょうか、シトゥリさん」
「ん、大丈夫だよ。占いは自分でする」
「うふふ、流石はシサムの霊能大家の方ですね。古きを忘れず、新しきを取り込み、時代を見据える貴女は本当に素晴らしい」
「……照れるから褒めないで」
コロコロと笑うインカラマッを少し見上げ、にっこりと微笑みを向けてきた彼女に私も笑顔を返し、一緒に競馬場を眺める。
由竹はバカだから、多分、素寒貧になった。
「しかし、貴女のはイナンクル(アイヌ語の幸あれ。総じて、運命のこと)は本当に不思議です。まるで巨木の枝葉のように貴女を中心に分かれ、数多のカムイが貴女に寄り添っている」
「ん、私は空前絶後だからね」
「くうぜん?」
「過去にも例がなく、将来も起こりえないような、非常に珍しく特別ってことだよ。誰も私の事を止めることは出来ない」
「大胆な発言。おもしろいです!」
インカラマッとの話を終えて、競馬場の券を買い漁る剣路と由竹を見つけ、思わず、私は自分のこめかみを押さえ、小さく呆れる。
父様もお義父様も博打は好きだったから悪いとは言わないし、仕方ないことなんだろうけど、そういうのは止めなさい。
「買ったの?」
「負けた」
「買った!」
……どっち?
剣路はしょんぼりとする隣で、インカラマッに駆け寄る由竹の足に縄を巻き付け、すっ転ばせる。アシリパの財布からお金抜いたよね。
さっさと返しなさい。
「しとりちゃんもお金欲しいだろ!?」
「私の財布には一万円あるからいい」
その言葉に視線が集まるけど。剣路が刀の鯉口を斬った瞬間、視線は消えた。けど、不自然な視線を受け、そっちを見ると太った男が此方を見ていた。
いや、見ているのは剣路のことだ。
「ん、じっとりしてるね」
すっと剣路の首に手を回し、見えるようにキスをすると物凄い殺気を受けるけど。妖怪の殺気に比べたら怖くも何ともない。
けど、剣路をエッチな目で見るのはダメだと思う。
確かに剣路はカッコいいけど。
「(剣路は私のだからダメだよ)」
そう見せつける。
「やけに積極的じゃないか」
「ん、白也と同じ感じがした」
「……マジか。気を付けよう」
ん、気を付けてほしい。