最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

44 / 51
競馬、親分 破

「エディー・ダン?」

 

「ああ、アシパさんのお婆ちゃんの兄弟のアザラシの服を買ったそうだ。しとりさん、アザラシの服の相場って分かる?」

 

「物にもよるけど。安くて二百円、高くて三千円かな。アザラシの服は個体毎に身体の模様も違うし、何よりアイヌの婚礼の道具だから物凄く価値はあるよ」

 

杉元の質問に答えると由竹と杉元はゴクリと唾液を飲み、キラキラとした目を向けるけど。私達の蔑んだ視線に気付き、杉元は慌てて元の顔に戻った。

 

「しかし、そうなると買い戻すのは難しいぞ」

 

「ん、もしものときは私が買う」

 

「ダメだ。しとりは優しいから白石が漬け込む。そうなったら白石は剣路に殺されるから、話し合いで返して貰うつもりだ」

 

その言葉に思わず、小首を傾げ、納得する。

 

親族の大切な物を勝手に買い取って取り返したというのは確かに違う。しかし、杉元とキロランケ、剣路がいるのにまともに会話できるのだろうか?

 

「とりあえず、向かおうぜ。しとりもダメそうなら出してやってくれ。アシパの祖母の兄弟ならウイルクの母親の兄弟でもある」

 

「元々そのつもりだよ」

 

キロランケのそう答えて、由竹と先に向かった剣路は馬と戯れていた。剣路もキロランケも動物が大好きなのは分かったから落ち着いてほしい。

 

「エディー・ダン、どんなひとだろう」

 

「さてな。少なくとも人の大切な物を買うようなヤツだ。ろくでもないヤツか、ただのバカだ」

 

「杉元、殴っちゃダメだぞ」

 

「んもおぉ~~~!俺がいつも真っ先に殴ってるみたいに言わないでよ、アシパさん!」

 

「ん、よく叩いてるのは本当だね」

 

アシパの言葉に私も同意すると杉元は「俺ってそんなに喧嘩っ早い?」と、自分からキロランケに聞いている。

 

「あ、白石が見えたぞ。あの牧場だ!」

 

「アシパ、まだ泥濘があるから走るときは気を付けなよ」

 

「大丈夫だ。私は白石とは違う!」

 

「だってさ。行こうぜ、しとりさん、キロランケ」

 

「ん、そうだね」

 

「ああ、日が暮れる前に話は済ませたい」

 

キロランケも走り出し、みんなが走っていく後ろを私は歩いて向かう。ここはちょっと動物の幽霊が沢山いるから、あまり長く居たくない。

 

───森の奥に誰かいた?

 

どこか血の臭いが濃くなる気がした。

 

「しとり、どうかしたのか?」

 

「何でもないよ。個魔、それよりも此処はすごく変な気配がする」

 

「おそらく動物霊の集合体がいるんだろう。他のヤツには見えていない、総大将のしとりが呼べばあの程度の集合霊なら簡単に蹴散らせる」

 

……それは、しないよ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。