「こんの馬鹿野郎がぁ!!」
賽子の目は「半」を示した瞬間、ワカヤマの蹴りがナカザワの顔を蹴り飛ばし、慌てて剣路がナカザワの事を受け止め、極道の男を睨み付ける。
「イカサマしようとして失敗しやがったな!」
「いや、お前に限って失敗はありえねえ。おめえ、わざとやりやがったな」
その言葉に信頼の強さを感じる。
私もこれだけ剣路に信頼して貰えていると嬉しいなと思いながら剣路が私の傍に戻ってきて、二人の成り行きを見守ろうとしている。
「なんだって俺を困らせるようなことばかりしやがるんだ!偶然この家にコイツらが来ちまったから知らんぷりしてたのに、なんだって生首を並べやがった!」
「親分が浮気するからだ!」
みんなの視線がナカザワに向かう。
「アレは金で買った男だと言っただろう!まだ根に持ってやがるのかッ!!!」
今度はワカヤマにみんなの視線が向かう。
けど、ワカヤマの言葉にカチンと来た。こんなに貴方の事を大事に思っているのに、そんなことをするなんて最低な男だと思う。
「さっきだって親分は坊主頭のお尻を物欲しそうに見ていた癖に!!」
「見てない!」
「だいたいよぉ!男娼を買うのなんざ便所に行くようなもんじゃねえか!」
「不潔だ!親分は不潔だ!」
だんだんと言い争いが激しくなってきた二人に近づき、バチィン!と二人の頬っぺたにビンタを見舞い、唖然と私を見上げる二人を見つめる。
「ワカヤマ、浮気するのは悪いことだよ。本当にナカザワの事を愛しているなら、そんな言い訳を並べるんじゃなくて本当の気持ちを言ってあげよう?ナカザワも好きなら好きって伝える、恋する時は何時だって攻め時なんだから。ね?」
ぎゅっと二人の手を握り合わせ、そう伝えるとナカザワとワカヤマは静かに見つめ合い、強烈な抱擁を始めて、熱烈な接吻を繰り返す。
「愛してるぜ、姫ッ」
「私も大好きだよ、親分!」
ん、一件落着だね。
「いや、まだヒグマが残ってるだろ」
そう言えばそうだったと思い出し、私は窓の外を見ると三びきのヒグマがのそのそと農家の周りを歩き、入り口を求めて歩いているのが見えた。
「杉元、弾薬盒は?」
「彼処だ。ヒグマが木に投げて引っ掛かってる」
「ん、私の脚なら取りに行ける。アシリリパ、弓矢で援護……弓矢は?」
「白石に壊された」
「クゥーン」
おおよそ35メートルの距離だ。
走れば届く。
「しとり、オレが行くぞ」
「剣路は駄目だよ。私より背が高いから飛び込むときに引っ掛かる」
私の言葉に剣路は自分の身体と窓枠を見比べている間に外に飛び出し、弾薬盒とベルト、銃剣を杉元に投げ渡すと赤毛のヒグマが目の前にやって来た。
「ヴオォオッ!!!」
「ん、倒れて!」
横薙ぎの引っ掻き攻撃を退いて避け、二足歩行になったヒグマの後ろ足の膝を蹴り砕き、片足の自由を奪い、私は木の幹に刀を突き立て、その上に立つ。
さて、どうしよう。