「しとり!大丈夫なのか?!」
「ん、ヒグマは登って来てないよ!でも屋根に昇るヒグマがいるから、逃げるなら早くしたほうがいい。そのままだと家の中に入っちゃうよ」
私の言葉に慌てる由竹の声を聞きつつ、銃声が何度も聞こえてきた。杉元の歩兵銃の音だと直ぐに分かったけど、剣路の刀が見えるのに取れない。
そう思っている間に、農家に二階から入った1頭が杉元に倒された。
銃声に臆して残りのヒグマは農家から離れたけど、私の居座っている木の周りに留まっているのは事実だ。本当は、すごく困ることだけど。
「ドン、お願い出来る?」
そう影に話しかけるとモッサリと冬毛の生えた妖怪クズリのドンが飛び出し、木の真下に居座っているヒグマに向かって突撃し、そのうなじに噛みつく。
「ヴオォオッ?!!」
「ヴヴヴッ!!」
身体を捻って地面に着地し、総毛を逆立てて唸るドンの姿に頼もしさを感じながら、私も地面に着地し、刀を鞘に納めて剣路の刀を拾う。
「剣路!」
「助かる!」
刀を投げ渡してドンの側に移動する。
「ドン!滅・変異抜刀牙!」
私の言葉に更に低く唸ったドンは木々を蹴り、ヒグマの背後を取ると上下左右に口は開き、ヒグマの首を咬み千切って地面に着地する。
「うおおおおおおっ!!あの犬すげえ!?」
「違うぞ杉元!あれはメコ(アイヌ語の猫のこと)だ!メコがヒグマに勝ってるんだ!」
「いや、あの大きさはイタチじゃないか?」
ん、キロランケが正解している。
クズリはイタチ科最強最大の生き物だ。
そして、ドンは妖怪変化している!
「ヴオォオオォオッッ!!」
「ドン!絶・天狼抜刀牙!!」
そう技の名前を叫べばさっきと同じように木々を蹴り、身体は空に舞い上がり、ドンは身体をグルグルと高速回転させ、遠心力を加えた牙がヒグマの片腕を奪う。
激痛に雄叫びを上げるヒグマの近くに移動していた剣路の唐竹割りがヒグマの首を切り落とし、3頭のヒグマは動かなくなった。
人を襲う前に止められて良かった。
「しとり!なんだそのメコは!?」
「だから犬だってアシリパさん!」
「イタチだって言ってんだろう!?」
ぎゃーぎゃーと騒がしくなるみんなに苦笑いしながらもアシリパに「エディーのところで熊肉を食べようか」と話したら、ものすごいお腹の音が聞こえてきた。
「ん、ビックリした」
「それより熊肉だ!3頭もいるからいっぱい脳ミソ食わせてやるからな!」
ん、それは困る。
「しかし、どうやって運ぶ?」
「馬に引かせる荷車はどうだ?」
じゃあ、それで決まりかな。