「そろそろ罠に掛かった筈だ。クチャでご飯にしよう。お前達も着いてこい」
「杉元、クチャって?」
「アシリパさん、クチャって何だい?」
「アイヌの仮小屋の事だ。猟に出るとき、そこで寝泊まりする。緋村と白石と笠原も罠に掛かった獲物を取るから手伝え」
有無を言わせぬ言葉に私は由竹と笠原を見つめて、すぐに竹刀を帯に佩いて、アシリパと杉元を追い掛けると由竹は追ってきた。
笠原は迷った末に着いてきた。
雪山で武器もご飯も無いのは危険だから当然だ。と、思いながら剣路に早く会いたいという気持ちを抱きつつ、アシリパの仕掛けた罠を見る。
「リスだな」
「リス?」
「……ドンに似てる」
「「「「(どん?)」」」」
「みんなで食べるには少ないな。杉元、ウサギを見つけたら獲ってきてほしい」
「ん、それなら食べ物あるよ?」
私達の事を警戒しながらもウサギを狩りに行こうとする杉元を呼び止め、私は鞄の留め金を外して、鞄の口を開けて母様とドクトルの作っていた缶詰の発明品「コンクフード」を取り出す。
「缶詰って、すごい高価なんじゃ」
「ん、みんなで食べれば同じ。問題ない」
半練り状の加工肉をアシリパに渡すと「これならチタタプにも使える。緋村は良いものを持っていたな」と言われ、フンスと胸を張って自慢げになる。
やっぱり、母様はすごい。
私とひとえのために沢山の宝物を残してくれた。父様も沢山の物をくれるし、私とひとえを大事にしてくれるけど。過保護すぎるのはダメだと思う。
「ねえねえ、お酒とはある?」
「あるけど。飲むの?」
「寒空の下だ。飲むしかねえだろ」
由竹と笠原の二人の言葉に渋々と剣路の好きな清酒を出した瞬間、私の鞄と一升瓶を見比べて、すごく困惑する三人を無視して、アシリパにお酒を手渡す。
「お前達も代われ。チタタプはアイヌ語で我々が刻むものと言う」
「杉元からやろ?」
「チタタプ、チタタ、プ、チタ、タプ」
杉元が刻んで、由竹に代わる。
「チタプ、チタタプ、チタタ」
由竹が刻んで、笠原に代わる。
「チタタプ、チタタ、プ、チタプタ」
笠原が刻んで、私に代わる。
「チタタプ、チタタプ、チタププ」
…………私は何をしているんだろう?と首を傾げながら皮を剥かれ、脳みその剥き出しになったリスに戸惑う。まさか、生で食べるの?
「杉元、脳みそ食べていいぞ」
「えっ!?」
「なんだ。私達の食べ方に文句があるのか?」
「あ、いや、そういうつもりじゃない。俺はそういうの食べなれてないから」
「じゃあ、脳みそ食べろ」
「ゥン……」
「うまいか?」
ねばっこい音が聞こえ、あと二匹のリスがいることに気付いた由竹と笠原はお互いを見合い、私はリスの身体を刻みながら静かにしている。
母様も食べたらしいけど、ダメだったそう。