「まさか本当に倒してくるとは…」
「ほとんどしとりさんだけどな」
感嘆するエディーに杉元がそう伝えるとエディーは私の方をまじまじと見てきた。ヒグマを解体しているときに見られるのはすごくイヤだ。
そう思いながら熊肉を細かく刻み、微塵切りに刻んだ玉葱と合わせるように捏ねて、形を形成したら薄力粉、溶き卵に潜らせ、パン粉をまとわせ、油で上げる。
焚き火より火加減を調節できる、やっぱり料理するときは台所が一番だと思う。
「ん、熊肉のメンチカツ。溶き卵は熊肉の出汁と合わせてお吸い物にしてみた」
「うーん、ザクザクとした衣の中からジュワァっと熊肉の油が溢れてくる。ほんのり香る野生の臭みもまた良い味わいを引き立ててる。ヒンナだぜ」
「杉元、脳ミソ食え」
「あーん」
「ヒンナか?杉元」
「ヒンナヒンナ」
みんなで赤毛のヒグマを食べる最中、仲沢と若山の二人にお礼を言って貰えた。ん、極道だからって見捨てるつもりはなかったよ。
それに杉元とアシリパの目的は、あくまで網走監獄の囚人の刺青だ。二人の身体に彫った刺青とは、まったく違う見た目だ。
「由竹、なんか臭い」
「仕方ねえだろぉ…あん中でおっぱじべえ!?」
「人の妻に変な事を言うんじゃねえ」
「アシリパさんに何聞かせる気だ」
二人の反応でなんとなく察したけど。
男の人同士で子供を作るのは無理なんじゃなかったかな?と小首を傾げつつ、熊肉のステーキ、熊肉の野菜巻き、色々と料理を作っていく。
「ふむ、ヒグマ料理か…」
「ん、臭み消しは重要だね。お店を構えるなら、飼育することも視野に居れて、鉄格子の檻か囲いを森に立てるしか無いんじゃない?」
「動物園のような仕組みかね」
「ん」
頑張ってくれたドンに熊肉をあげると食べ始める。母様みたいに美味しく出来ているのかは分からないけど、いっぱい食べるといい。
「そういやソイツは何なんだ、シトゥリ」
「クズリだよ。イタチ科最強最大の生き物、ライオンにも虎にも熊にも狼にも怯えない。毛皮も厚いから銃弾も効かない、すごく強い私の家族だよ」
「他にもいるのかい?しとりさん」
「スネコスリの親分とムジナのボスっていうのもいるよ。どっちも強くてカッコいい」
「へえ、見てみたいな」
杉元は自分から逃げない動物に嬉しそうに笑いながらドンの頭を撫でたり、背中を撫でてうっとりとした表情を浮かべている。
「しかし、白石の言ってた刺青囚人は居なかったな。また情報を集めにゃならん」
「刺青囚人?てめえら、俺の事を探してたのか」
その言葉に私達は若山の方を見てしまった。