夕張にやって来た。
郵便局にひとえ宛の手紙を渡し、子供の面倒をもう少しだけ見て貰えるように頼みつつ、魚を取っているであろう杉元達に何か買っていこうかと考える。
「ん、飴にしよう」
そう独り言を呟いていたとき、イヤな気配を感じて振り返ると剣路の警戒していたオガタが私の事を見つめているのが見えた。
ん、なんでいるんだろう?と小首を傾げながら飴を買わず、いそいそとエディーが話してくれた人の皮を使った剥製の出所を探す事は止める。
鶴見もいるだろうけど。
電光丸を抜くまで時間がいるし、ちょっと離れないといけないのに着いてきている。刺青人皮なんて私は持っていないのに、なんで追ってくる。
「(なぜ?)」
「しとり、もう用事は済んだのか?」
「ん、剣路もお風呂入れた?」
「ああ、一番風呂だった」
ホカホカと湯気の出る頭はまだ湿っている。タオルでワシャワシャと頭を拭いていると、小さな舌打ちが聴こえてきた。
結局、何がしたかったんだろう?
「尾形の野郎、しとりを狙ってたのか?あの感じだとまた鶴見に何か面倒くせえことを吹き込まれたか」
「何か言った?」
「いや、何でもねえよ。荷物持つぜ」
「ありがとう」
鞄を受け取ってくれた剣路に手を引かれ、歩いているとやっぱりまだ視線を感じる。そんなに見られても困るから止めてほしい。
「ねえ、剣路。オガタってどんな人なの?」
「……浮気か?」
「さっき見られたから気になっただけ。浮気なんてするわけない。浮気は悪い文明なんだから」
「……尾形は腕の良い狙撃手だ。少なくともアイツのおかげで高地で助かったヤツもいる。だが、アイツの腹の底は誰も知らん。山猫なんて影で呼ばれてるが、アイツが猫なんてあり得ねえよ」
ねこ?
「アイツは化け猫だ。気に入ったヤツに取り憑いて命を奪い取る。花沢さんは仲良くしようとしてたが、アイツは疎ましく思ってた」
「はなざわ?」
それは誰だろう?と思いながらも剣路の話を聞く。
剣路の言葉の節々に嫌悪感はある。まるで何かされていたようにも思えるけど、剣路がここまで人を嫌うなんて珍しいから気になってしまう。
「しとり、アイツは敵だ。優しさを見せるな?」
「ん、なんで頬っぺた触るの?」
むにゅむにゅっと顎下から手で挟むように頬っぺたを触られる事に戸惑いつつ、剣路の言うように警戒していた方がいたんだろうけど。
迷子の子供のようにも見えた。
「つまり、オガタは敵なんだね」
「そうだ。杉元もアイツが嫌いだ」
「そうなの?」
それは知らなかったかな。