あの後、鞄に押し込んでいた人達を引きずり出して、全員の心臓を殴って無理やり蘇生し、水分補給させて病院まで付き添った。
それから江渡貝剥製所の浴室を借り、身体の臭いと汚れを取っていく。髪の毛がゴワゴワするから母様の遺してくれた洗髪剤を使い、髪の艶が戻っていく。
ん、やっぱり母様はすごい。
浴衣に着替えて髪を結う。
リボンは鞄の中にいる機巧人形に預け、綺麗に洗濯して貰う。この鞄は母様の贈り物で、色々な部屋になっているし、着物の袖口にも繋がっている。
「ん、サッパリしてきた。ありがとう、家永」
「いえいえ、しとりさんの美しさを損なうなどあってはいけないことですから。あとで貴女のだし飲んでも良いですか?」
「だし?」
私のだしってなんだろう?と小首を傾げていると刀を抜いた剣路が此方に来ているのが見え、襟元を綺麗に直す。サラシを巻いていないから、ちょっと恥ずかしい。
「剣路、何もないよ。あと家永は普通に女の人だから殴ったりしちゃダメだからね」
「は?男だろ、そいつ」
「ん、北海道の性別を変える川だよ」
「……あれかよッ」
動物になるところもまだ残っているみたいだけど。そっちはもう危ないから埋められているらしい。ひとえから帰ってきた電報にも書いてあったし。
無事に三人目も産まれたって書いてあった。
「オイ。お前ら、飯にするぞ」
「家永が作ったの?」
「えぇ、なんこ鍋です」
「キロランケ、それ馬肉だから食べちゃダメだよ」
「ブフゥッ!?」
「あら、馬肉は嫌いでしたか?」
「むしろ馬好きなんだよ、そいつ」
剣路の言葉にみんなはキロランケを気遣い、咳き込みながら水を飲んだキロランケは「どこの馬だ。まさか庭にいたヤツじゃねえよな?」と、ブツブツと言い始めるキロランケを見据える。
「まだ熊肉余ってるし、お鍋作ってくるよ」
「あ、ああ、すまないな。シトゥリ」
「ん、しとりだよ」
そう言って台所に向かう。
剣路は先に食べている。
お鍋の中に昆布出汁、醤油、みりん、砂糖で味を整えた下地を作り、まな板の上で熊肉を薄く切り、ネギを切って、鍋に詰めていく。軽く豆腐の表面を焼いて、小松菜、白菜、エノキ、エゾマツタケを加え、野菜の甘さで熊肉の臭みを消しつつ、蓋を閉じて5分ほど待つ。
薄く切ったおかげで、すぐに熊肉に火は通る。
鍋持ちを両手に嵌めて居間に戻り、キロランケの目の前にお鍋を置いてお椀とお箸をさしだす。
「ありがとう。いただきます」
私の作ったお鍋を食べるキロランケにアシリパや由竹が群がり、横から熊肉を拐って食べていく姿に苦笑いしていたとき、ふとオガタの口許が汚れているのが見えた。
「ん、口許についてるよ」
手拭いで拭いてあげると、スンとなった。
? どうかしたのかな?