最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

55 / 56
江渡貝剥製所の攻防 序

食器を洗い終えて一息吐く。

 

「おい。アンタ」

 

「……オガタ、だっけ?」

 

「アンタはどうして此処にいる。金塊目当てか?」

 

「違う。私の目的は剣路と家族と一緒に東京に帰ることだよ。あとアシパの父親を殺したのっぺらぼうを殴ること」

 

そう言ってエプロンの帯を解いて、壁の金具に引っ掛けるために背伸びした瞬間、頭の後ろに拳銃の銃口が突きつけられていた。

 

「本当の事を言えよ。どうせ、緋村も一緒でアイヌの金塊が欲しいだけだろう」

 

まるで、そう在れと言うような言葉に眉を潜めつつ、後ろに振り返ってオガタの事を見上げる。黒くて暗い真っ黒な何も映っていない瞳が私を見据えている。

 

「ウソは言っていない。私は緋村しとりだけど、相楽しとりでも糸色しとりでもあるから、たかが2万貫程度の金塊なんてこれっぽっちも欲しくない」

 

「ははぁ、出任せか?」

 

ゴリッと銃口がおでこに食い込んだ瞬間、水気を切っている途中だった包丁で拳銃を切り裂き、手首をねじって地面に押し倒す。

 

「ぐっ?!」

 

「オガタ、私は相楽と糸色だよ?」

 

「それがどうした!?」

 

「その服も銃も剣も私の家が関わっているし。本当に金塊なんて興味ないんだよ」

 

ゆっくりと手首の拘束を緩めて、オガタの手を握って、よしよしと頭を撫でてあげる。ずっと警戒心を出しているのは疲れるから、やめようね。

 

「ん、私のお姉さんだから許してあげるね」

 

「ハッ。俺は二十五だぞ?」

 

「ん、それなら私は二十八歳の三児の母親だよ」

 

そう言い、私は笑ってフンスと胸を張る。

 

スンと真顔になるオガタに「私はお姉さんだから、オガタが悪いことしたら叱ってあげる」と言い、居間のほうに集まっているみんなところに向かう途中、石ころ帽子を被った剣路に掴まる。

 

「しとり、気を付けろって言ったろ?」

 

「大丈夫だよ。刃物があれば負けない」

 

剣路の頭もよしよしと撫でてあげる。

 

ちょっとだけ不満そうにしているけど。父様も頭を撫でてあげると懐かしそうにするんだよ。

 

「しかし、この帽子を被ればマジで誰にも見えねえな。人皮とかこれで盗めたんじゃねえのか?」

 

「ん、無理だよ。第七師団の何人かは私の気配に気付いていた。多分、剣路が向かったら見付かる。剣路は、すごく殺気を出しやすいから」

 

気配も薄くてバレないなら由竹が適任なんだろうけど。絶対に不埒な目的に走るだろうし、そういうところは止めたいから貸せない。

 

「うおあっ!?どこから出てきた!」

 

「ん、杉元は良い反応するね」

 

「全く杉元は怖がりだなあ」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。