食器を洗い終えて一息吐く。
「おい。アンタ」
「……オガタ、だっけ?」
「アンタはどうして此処にいる。金塊目当てか?」
「違う。私の目的は剣路と家族と一緒に東京に帰ることだよ。あとアシリパの父親を殺したのっぺらぼうを殴ること」
そう言ってエプロンの帯を解いて、壁の金具に引っ掛けるために背伸びした瞬間、頭の後ろに拳銃の銃口が突きつけられていた。
「本当の事を言えよ。どうせ、緋村も一緒でアイヌの金塊が欲しいだけだろう」
まるで、そう在れと言うような言葉に眉を潜めつつ、後ろに振り返ってオガタの事を見上げる。黒くて暗い真っ黒な何も映っていない瞳が私を見据えている。
「ウソは言っていない。私は緋村しとりだけど、相楽しとりでも糸色しとりでもあるから、たかが2万貫程度の金塊なんてこれっぽっちも欲しくない」
「ははぁ、出任せか?」
ゴリッと銃口がおでこに食い込んだ瞬間、水気を切っている途中だった包丁で拳銃を切り裂き、手首をねじって地面に押し倒す。
「ぐっ?!」
「オガタ、私は相楽と糸色だよ?」
「それがどうした!?」
「その服も銃も剣も私の家が関わっているし。本当に金塊なんて興味ないんだよ」
ゆっくりと手首の拘束を緩めて、オガタの手を握って、よしよしと頭を撫でてあげる。ずっと警戒心を出しているのは疲れるから、やめようね。
「ん、私のお姉さんだから許してあげるね」
「ハッ。俺は二十五だぞ?」
「ん、それなら私は二十八歳の三児の母親だよ」
そう言い、私は笑ってフンスと胸を張る。
スンと真顔になるオガタに「私はお姉さんだから、オガタが悪いことしたら叱ってあげる」と言い、居間のほうに集まっているみんなところに向かう途中、石ころ帽子を被った剣路に掴まる。
「しとり、気を付けろって言ったろ?」
「大丈夫だよ。刃物があれば負けない」
剣路の頭もよしよしと撫でてあげる。
ちょっとだけ不満そうにしているけど。父様も頭を撫でてあげると懐かしそうにするんだよ。
「しかし、この帽子を被ればマジで誰にも見えねえな。人皮とかこれで盗めたんじゃねえのか?」
「ん、無理だよ。第七師団の何人かは私の気配に気付いていた。多分、剣路が向かったら見付かる。剣路は、すごく殺気を出しやすいから」
気配も薄くてバレないなら由竹が適任なんだろうけど。絶対に不埒な目的に走るだろうし、そういうところは止めたいから貸せない。
「うおあっ!?どこから出てきた!」
「ん、杉元は良い反応するね」
「全く杉元は怖がりだなあ」