ビリビリと空気の揺れる杉元の雄叫びにビックリしながら、チセの外を見ると逃げ惑うアイヌ……のふりをしていた樺戸囚人達の姿を見つめる。
「耳長お化けだ」
「杉元も気付いたんだよ。オガタに教えてたから伝えてくれたのかは謎だけど」
そう話しながら手斧を持って襲ってきた男の膝を蹴り砕き、がら空きになった顔面に向かって、アシりパの貸してくれたストゥ*1を見舞う。
悲鳴を上げる前に脳天に二度目の打撃を打ち込み、熊岸とアシリパの安全を確保しつつ、ダァン…れという銃声が聴こえてきた。
オガタと杉元の歩兵銃だろう。
「熊岸っ、ソイツらを逃がすつもりか!」
「ん、静かにして」
鉈を握る手をストゥで打ち、苦悶の表情を浮かべる男のうなじに身体を翻し、遠心力を加えた一撃を見舞う。飛天御剣流「龍巻閃」────。
お義父様の使っていたところを見て覚えた技だけど。剣路はあまりこの技を使わない。素早く斬ることに固執しているのもそのせいかも知れない。
「しとりさん、アシリパさんは!?」
「向こうのチセにいるよ。それより刀が抜けないからって鈍器みたいに使わないで、その鞘だけでも普通に5万するからね」
「ブフェアッ!?」
「冗談だよ(本当はもっと高いけど)」
そう言って杉元の投げ渡してきた電光丸の鞘に付いた血を振り払い、鯉口を切ると青白い電光を発し、金色の刀身が抜き放たれる。
「心月流抜刀術、壱式」
逃げ惑う樺戸囚人のうなじに電光丸を叩き込み、高圧電流を流し、鞘の打撃で完全に意識を刈り取っていき、地面を削るように踏み止まる。
「破岩菊一文字」
電光丸を鞘に納め、そう技の名前を呟く。
────すると、一斉に樺戸囚人は倒れ伏す。
「……殺したのかい?」
「ん、峰打ちだよ」
杉元の言葉に答えた瞬間、アイヌの女性達が気を失っている男達の頭や身体に料理器具や農具を振り下ろし、殺してしまった。
「……オガタ、何か言いたそうだね」
「いやあ、流石は剣路殿の奥方。人を斬らず、峰打ちに留めるとは高潔な御方ですなあ」
「尾形、テメェ…!」
「ん、私は大丈夫だから杉元は行って。アシリパも杉元を探しているから早く安心させてあげてほしい」
そう言って杉元を送り出して、私はオガタを見る。
「なんですかな?」
「中途半端に知った気になるのはダメだよ。緋村で相楽で糸色でもある私が、殺し合いで怯えると思うの?そんなのは子供の頃から見てきたよ」
それこそ赤ちゃんのときからね。