最も手を伸ばすのは神威の花。   作:SUN'S

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薩摩隼人 序

アシパの操る馬の近くを走り、気球に乗って逃げようとする杉元達を追いかける。しかし、その中に剣路の姿は見えず、木の枝を蹴って、天辺の枝を踏みつけ、空に舞い上がる。

 

「(剣路、どこに?)」

 

キョロキョロと落ちる最中に見えたのは並み居る兵士を前に鞘に刀を抜き、銃弾や軍刀の入り乱れる混戦の中、たった一人で戦う剣路の姿だった。

 

「(なんで、剣路がそこにいるの?)」

 

その困惑を上回る怒りに任せて、左手に伸びそうになっていた手を止める。

 

生駒(いこま)、使うね」

 

「いつでも良いわよ、嬢ちゃん」

 

私の足元に影を伸ばし、足場になってくれた個魔の名前を呼び、腰の包具に納めていた撃盤と撃符を取り出し、素早く撃符を撃盤に翳し、妖怪の名前を叫ぶ。

 

「術符解放、うばりおん!さとり!」

 

「はぁあい」

 

「ワシを、呼んだなあ…」

 

「うばちゃん、剣路の周りにいる同じ服を着た人間達の動きを遅くして!さとりは私の頭の中をこの子達に伝えてくれる?」

 

そううばりおんにお願いすると彼女は笑顔を浮かべ、剣路以外の人間の頭を、ポン、ポン、ポン、ポン、と叩いていくと動きが鈍化し、遅くなる。

 

「撃符解放、泥小僧!」

 

泥団子のような見た目に、小さな手足の生え無数の妖怪が現れ、私は一人を肩に乗せ、さとりが頭の中に入っている設計図を直接泥小僧に伝える。

 

みんなが一斉に動きだし、自分の分身を作り出して、私の考えていた一度限りの泥の橋に剣路が乗り、それと同時に分身は普通の土に戻っていく。

 

「とっ、ほっ、よっ…!」

 

登ってきた剣路を受け止め、私は友達に「助けてくれて、ありがとう」と伝えて、色褪せた撃符と術符に戻ってしまった妖怪を抱き締める。

 

私の傍にいると残ってくれた大事な友達だ。

 

「しとり、助かった。ありがとう」

 

「男は重いから早く降りてくれ…」

 

「ん、生駒も頑張って」

 

「母者は優しかったのになあ」

 

ん、母様は誰にでも優しかった。

 

この青い目に誓える。空を見ることが出来るのは、いつだって母様のおかげだ。

 

「私が望みさえすれば、運命は絶えず私に味方する」

 

いつだって母様はそう言っていた。

 

諦めなければ運命だって私の助けをしてくれる。妖逆門の時だって、母様とみんなのおかげで華院に勝てた。けど、アイツはまだ諦めていない。

 

妖怪が居なくなったら自然は壊れるのに、花開院も妖怪を攻撃しすぎている。そういうのは、とてもよくないと思うからやめてほしい。

 

「で、どうするんだあれ?」

 

「1日経てば動けるよ」

 

ふよふよと動く生駒の黒衣に乗ったまま移動し、杉元達を追いかける。

 

 

 

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