「……山の中に行ったのか?」
「ん、生駒。追える?」
「無理だね。気球を乗り捨ててる」
追い付けないってことになる。
「此処からなら小樽が近い。一旦帰るぞ」
「ん」
剣路の言葉に頷きながら剣路の頬を見る。
やっぱり、まだ銃剣の傷が塞がっていない。二階堂の怨嗟が籠った攻撃だったから、呪詛が入っているのかと少しだけ心配になる。
「月形からなら小樽に来るはずだ。土方達も凡その場所は目測で測っていたから、小樽近辺に来ていることを考えておこうぜ」
「剣路、子供たちに会ったら抱っこしてね?」
「分かってるよ。けど、その前に身体を洗っとかねえとひとえに怒られるな。おばさんに似て綺麗好きだから仕方ねえんだろうけど」
「ん、ひーちゃんだから安心できる」
そう言いながら人目を避け、町に降りて糸色家に向かう前に銭湯を探していると見たことない銃を構えた男を見かけ、小首を傾げてしまう。
どこかで見たことがある。
新聞だったっけ?と考えながら、剣路に手を引かれて定食屋に入るとニシンそばを注文し始め、戸惑い、剣路のほうを見ると不機嫌になっていた。
「どうしたの?」
「アイツら、稲妻強盗だ」
その名前にピンと来た。
新聞に乗っていた賭場を狙う強盗だ。だけど、あの二人の近くから赤ちゃんの気配がしていた。夫婦なら、子供がいるのかな?
「しとりが構わないならアイツらを捕まえるぞ。このまま小樽にアイツらがいるんじゃ、ひとえも子供達も安心して過ごせねえ」
「でも、赤ちゃんいるよ?」
「いるな。ひとえのところに行かれたら不味い」
「そうじゃなくて稲妻強盗達にだよ」
「?」
困惑する剣路に、女の方の背負う背嚢の中に赤ちゃんの気配と匂いがすることを伝えたら、目を見開き、眉間に皺を寄せて悩み始めてしまった。
ニシンそばを食べつつ、剣路の事を見遣る。
「……助けるぞ。稲妻強盗は刺青囚人だ。鶴見に何度か網走監獄の名簿を見せられたから覚えてるし、子供は親と一緒に居るのが幸せだ」
「ん、それなら私も手助けするね」
あとで杉元達のところに「どこでもドア」で会いに行けば大丈夫だろうし。それに、ひとえも子供が産まれたばかりだから結界が弱まっている。
私も手助けしてあげないとだ。
「ところで、なんでオレのそばに生姜を入れるんだ」
「ん、臭み消し」
そう言いながら私も生姜を入れ、ツルツルと蕎麦を啜っていると紺色の服が見えた。もう、ここにも第七師団がやって来たのかと溜め息を吐く。
「今の、おばさんみたいだった」
「ん、そっくりだからね」