「迷った」
剣路の事だから二人を安全な場所まで届けてくれている筈だと思いながら私の事を執着的に追いかけてきた第七師団の兵隊を避けるように山に入ったから、何処にいるのかも分からない。
「生駒、どこか分かる?」
「さあ、少なくとも小樽は出たわね」
ぬるりと影から出てきた生駒の言葉にウンウンと悩みつつ、木の上に登ってみると、なぜか裸の男が走っているのが見えた。
「「キッショ」」
あんなものには関わりたくない。
生駒も同じ気持ちだから、さっさと場所を移動するように走っているとアイヌの衣装を着た谷垣とインカラマッ、小さな男の子が一緒にいるのが見え、走るのを止める。
「あら、シトゥリさん?」
「ん、久しぶりだね。インカラマッ、谷垣も。……君とは初めましてかな、こんにちは。私は、緋村しとりだよ」
「こんにちは!オレはチカパシ!」
「チカパシ?」
「勃起するという意味だ」
「谷垣ニシパ、率直すぎますよ」
ん、流石にビックリする言葉だった。
二瓶の時もそうだったけど。谷垣は人に優しくされると自分を責めているように感じるから、もっと自分を大切にしたほうが良いと思う。
あと不埒な言葉はもっとダメ。
「シトゥリ、トカプないの?」
「とか?」
「おっぱいの事です」
「ああ、胸はサラシで抑えてるんだよ」
そう話していると「……うーふッ」と谷垣が申し訳なさそうに顔を逸らした。ん、女の人に優しく出来るのは良い男の証拠だって母様が言っていた。
それにしても、本当に大丈夫なのかな?と小首を傾げつつ、剣路達の事を思う。稲妻強盗の二人は逃げたか、ひとえが匿っていると思うんだけど。
「しとり、緋村一等卒はどうした」
「小樽で第七師団に追われたときにはぐれた。けど、直ぐにまた会えるよ」
私の剣路は弱いけど、強いから。
「そうか。なら、俺達と一緒にアシリパを探すのを手伝ってくれ。フチのことで伝えなければいけないことがある」
「フチの?」
「ああ、そうだ」
谷垣の言葉の真剣さに私も頷き、アシリパ達を探すために歩き出す。インカラマッから心配する視線を感じる。
「どうかしたの?」
「……この先、貴女は剣を振るえなくなるかも知れない事が起こるかも知れません…谷垣ニシパ達も貴女を捕えようとする策によって、危険に晒されてしまいます」
「ん、それなら真っ向から斬り伏せるよ。だって、私は糸色しとりだからね。絶対に後ろには下がらない、いつだって前を向いて歩いている」
人生を生きるのは苦難も幸せも一緒なんだよ。
「出過ぎた真似でしたね」
「ん、気にしないよ。友達だもん」
「っ! はい、お友達です」