アシリパ達の事を探す谷垣達と一緒に森の中を歩いていると、木に鉈を振りかぶって何かをしている男が見えた。
どこかで見た覚えがある気がする。
けど、思い出せない。
「ニシパ、何してるの?」
「ッ、あ、いや、違うんです。クマゲラが餌を取った穴を見ていたんですね。すっごい綺麗な楕円形の穴です、すっごい」
そう言って私達に鳥の突いて作ったであろう穴と、さっき彼が鉈を振って作っていた穴を見比べる。確かに、ここまで綺麗に穴を穿つのはすごい。
「チプタチカプだね」
ちぷ?とインカラマッを見ると「舟掘る鳥という意味で、熊啄木鳥という鳥の一種の事です」と教えてくれた。
クマゲラ。見たことのない。
「私、京都の農学で教師をしている姉畑支遁と言います。今は北海道の動植物の調査に来ていて、それからある人を探しているんです」
「ある人?家族か友人か?」
「いえ、私に生きる道を示してくれた女性です。彼女のおかげで私は真実を知ることが出来たんです。是非、もう一度だけお会いしたい…」
うっとりとする男。
あねはたしとん……姉畑支遁?と思わず、私は姉畑支遁の顔を二度見する。思い出した、ドンの事を襲おうとしていた変なおじさんだ。
でも、教師って名乗っているし。
ちゃんと反省して先生に復帰したのかな?
「はああ、早く会いたいですねえ」
─────その時、ぶるりと悪寒が走った。
「(母様の代わりに私かひとえを探しているなら、姉畑の狙いはあの動物に変身できるお菓子だ。カバンの中にしっかりと入っている)」
「その会いたい人って、どんな人なの?」
「うふふ、チカパシ君も気になりますか。彼女は小柄ながらも気品を持ち、少し外に跳ねた癖毛、なにより目を惹くのは青空のごとき青い瞳を持っていました。そう、例えば彼女のように」
「ん、人違い」
「えぇ、私の探している女性は貴女より年上の筈です。ですが、着物の襟首の辺りに『糸巻きの家紋』を持っているのを鮮明に覚えていますよ」
「糸巻き?それなら糸色家だろう、ならその女性の事はしとりに分かる筈だ」
「!?まさか、あなたがッ」
フンスーッ、フンスーッ、と姉畑支遁が興奮するので刀を抜こうかと悩みつつ、みんなで谷垣の後ろに移動し、すぐに冷静さを取り戻した姉畑支遁は「いや、失敬。少し興奮してしまいました」と謝ってくれた。
……まあ、謝ってくれるなら良いか。
「どういう男なんだ、しとり」
「子供の頃に裸で走ってるのを見ただけだから、あんまり思い出したくない……ん」
「そ、そうか、すまん」