パキッと枝を踏む音に身体を跳ね起こし、私のカバンに手を伸ばしている姉畑支遁を睨み付け、刀を抜き放つと同時に向こうも銃を発砲してきた。
当たる寸前に銃弾を切り裂く。
もう少しで私のカバンは持って逃げられるところだったと安堵しながら、銃声で起きた谷垣達も銃と弾薬が無くなっている事に気づき、姉畑支遁の名前を叫ぶ。
───だけど。声は帰って来なかった。
「二瓶の村田銃、取り返さないと」
「すまん。俺の落ち度だ」
「ん、大丈夫だけど。山の中で武器になるものが無いのは困る」
カバンを開けて、谷垣でも使える母様というよりドクトル・バタフライの作った「空気砲」*1と「空気銃」*2の二つを差し出す。
「玩具の類いか?」
「空気を圧縮して射出する道具だよ。『ドカン』って言えば出るけど、自分の一番強い気持ちを込めた言葉なら何でも出る」
「……勃起!!」
「なんでそれを選んだの?」
ドカン…!と凄まじい勢いで右腕に嵌めた空気砲から放たれた空気の砲弾は分厚い樹木の幹に円形状の窪みを作り、ミシミシと音を立てて木をへし折った。
「シトゥリカッケマッ!オレもほしい!」
「チカパシは子供……いや、姉畑が銃を持っている事を考えると必要か。谷垣、インカラマッとチカパシをちゃんと守ってあげてね?」
「ああ、任せろ」
グッと右腕を突き出して構える谷垣。
もしかして、気に入ったのかな?と小首を傾げながら、インカラマッにも怪我しないように、母様の作った「バリアーポイント」を渡しておく。
人の名前と持っている人の認識したもの以外は入る事の出来ない結界を造り出す発明品。私も母様が使っているのを何度か見たことがある。
「……鶴見中尉が欲しがるわけだ。見えない砲弾、破壊力は抑えているが、人に撃てば渾身の打撃に匹敵する威力。やはり糸色家は謎だ」
「ん、鶴見は嫌い」
「シトゥリさんも嫌いになる人がいるんですね」
「私、ウソが嫌いなんだよ。あんなにウソで塗り固めた臭い、近くにいるだけでも嫌になる」
「鶴見中尉が嘘を?」
「ん、私の鼻はそう言うのが分かるの。母様が亡くなった後から、ずっと父様に漬け込もうとする人を見てきたからそれで分かるようになった」
こんなの、自慢できることじゃないけど。
「オレのもボッキで撃てるの?」
「ああ、チカパシなら撃てるはずだ」
この二人はなんでその、ぼ……んんんっ、マダムになってもまだ口にするのは恥ずかしい。剣路にあったら、また話しておかないといけない。