「ウサギが獲れたぞ」
「ウサギ」
「イーッって鳴き声はコイツか」
由竹と笠原の言葉に私もそちらを向く。
「イセポは大きさの割りに食べることが少ない。だから纏めてチタタプにする」
「出た!チタタプ!」
杉元に付き添われて、お風呂に入りに行っている間にウサギを獲ってきたらしく、ウサギの毛皮を綺麗に剥ぐアシリパに感心しつつ、杉元達の事を」見る。
チタタプに嬉しそうにしている。
昨日はちょっと嫌がってたのに現金な奴らだと思いながら、目玉を差し出されて「イーッ!」と鳴く三人にクスクスと笑ってしまう。
「緋村、お前も食べていいぞ。脳みそだ」
「え?あ、え?」
ずいっ、ずずいっ、と杓文字が差し出される。
「…い、いただきます」
「うまいか?」
「ゔ、ゔんっ」
血生臭さと粘っこい舌触り、生の白子にも似ているけど。もっと野生的な味わいに口許を押さえながら、母様が気絶するのも分かると納得した。
これは、あんまり食べるのは無理だよ。
「杉元、まだ目玉あるぞ」
「イーッ!」
ゴクンと脳ミソを食べて、チタタプにされたウサギに昨日のコンクフードの余りを混ぜて、また味を深めつつ、キノコや木の実を加えて、臭みを消す。
「アシリパ、コタンにはいつ?」
「もう少し時間が掛かるから体力を付けて、山奥に進むためにいっぱい食え!笠原と白石もいっぱいイセポを食え!杉元も残さずに食べろよ!」
差し出されるウサギのつみれ汁のチタタプを食べながら、母様のやり残した事を無事に終わらせることが出来るのかと考える。
まあ、なんとかなるよね。
ひとえに預かって貰っている子供のところにも早く帰りたいし、剣路にも会いたいから早く第七師団の駐屯所にも行っておきたい。
「そういえば杉元が言ってたしとりちゃんの旦那、そんなに有名なのかい?」
「有名なんてもんじゃねえよ。緋村剣路、第七師団に所属する兵士で、使うのは刀だけ。豪雨みたいに降り注ぐ銃弾の中を駆け抜け、塹壕に隠れるロシア兵のところにも飛び込んで、斬り伏せてやがった」
「おっかねえな、おい」
……そっか、活人剣はもう捨てちゃったんだ。
杉元の言葉に悲しさを感じる。
けど、生きているなら問題ない。また、お義父様のように立ち直ることだって出来る。剣路を見捨てたりなんて絶対にしない。
「徴兵されなきゃ普通の道場師範だったらしいが、アイツのおかげで何人も助かっている。だから、ありがとう。緋村さん、あんたの旦那のおかげで俺達はこうして生きている」
「……ん、それなら安心した」
会えたらいっぱい褒めてあげよう。