姉畑支遁の逃走後、三日目。
アイヌの小熊の檻の中を快適にし過ぎたせいか。アイヌの子供達も一緒に入っていることが増えてしまい、子守り役になっちゃった。
子供は大好きだから問題ないけど。
「シトゥリカッケマッ!もっと教えて!」
「ん、私はしとりだよ」
しとりと言いにくいのか。
みんな、私の事をシトゥリと言うから凄く微妙な気持ちになっていると全身が濡れて、歩く度にベチャベチャと音の出る谷垣がやって来た。
「ん、谷垣。久しぶりだね」
「しとりッ、俺のせいでそんなところに押し込められてしまったのか。すまないッ!!」
「大丈夫だよ。出入りは自由だから」
そう話していると小熊の檻の格子に抑えるように谷垣の両腕は縛られ、私は谷垣の背中と後頭部を見ることになった。
背が高くなった気分になる。
「ははぁ、随分と良い様だな?」
「ん、オガタもいたの?」
「緋村はいないのか」
「小樽で鶴見と戦ったときにはぐれた」
「なんだ、緋村死んだのか」
そう言って剣路の事を揶揄し、私の事を挑発するオガタに呆れながら「剣路はオガタと違って強いから問題ないんだよ」と言ったら銃口を向けてきたから、無刀取りしておいた。
本気で撃つ気だったね。
私に誰かを重ねているようにも思えるけど。齟齬に苦しんでいるのか、私を代わりにしようとしているのかも良くわからない。
しかし、困った。
杉元達の話しに姉畑支遁が出てきた。おそらく狙いはヒグマなんだろうけど。姉畑支遁は人間だから、私の持っている動物になれるお菓子がほしい。
「シトゥリ、あんたはもう出ていいぞ」
「ん、ありがとう。キラウシ」
小熊の檻を出て、歩兵銃をオガタに投げ返すと「どうやって奪い取った?」と聞かれたから「無刀取り。聞いたことある?」と言えば、スンと真顔になった。
「しとり、何もされてないか?」
「ん、大丈夫だよ。アシリパ」
よしよしとアシリパの頭を優しく撫でてあげ、杉元達と一緒に姉畑支遁を探すことになった。親分はみんなの足元にすり寄って、私の影の中に飛び込み、消える。
ここまで連れてきてくれてありがとう。
あとでご飯を作るからね。
「しとりさん、姉畑支遁を見たんだよな。どんな感じだった?」
「眼鏡を掛けて、裸だったよ」
「変態じゃねえか!?」
「変態だよ」
あんなのを何度も見るのは絶対にイヤだと思いながらも杉元達と一緒にコタンを離れる。谷垣を助ける猶予は三日だけ。絶対に捕まえて怒る。
動物が大好きなら殺すのはおかしい。
思いっきり顔をビンタしてやる。