「亀って意外と柔らかいな」
「ん、美味しかった」
由竹の獲ってきたウミガメを食べ、のんびりと浜辺の流木に座って剣路と過ごしているとき、アイヌのお爺さんにお肉を貰った。
「なんて言ってたんだ?」
「ラッコのお肉だって」
「海獺?」
「ん」
スンスンと匂いを嗅いでも臭さも毒の香りもしない。どういうものなんだろうと考えていると、谷垣とインカラマッにもラッコのお肉を渡していたから、危険なものではないはず。
「食べるのか?」
「食べたいの?」
「しとりのご飯は美味しいからな」
「じゃあ、また番屋で作るね」
そう言って話していたとき、剣路の頭にバッタが乗ったかと思えばガジガジと剣路の髪の毛を食べようとする姿に、ゾワゾワとしたものを感じる。
「で、電光丸、結界!!」
私がそう言うと剣路と私を包むように電磁波が放たれ、私と剣路の周りを避けるように、バッタの群れが飛んでくるのが見えた。
「っ、杉元達のところに行くぞ!」
「んッ」
結界の維持に集中しながら、剣路に身体を抱えられて番屋の中に入り、バサバサとバッタが付いていないか。警戒しながら羽織を揺さぶり、確かめる。
「? オガタが倒れてる」
「なんでだ」
「虫が嫌いなんだね」
ん、私も虫は苦手だよ。
いそいそと囲炉裏を囲うみんなから離れ、部屋の隅に座り、刀を家の支柱に突き立て、簡易的な結界を作り出して家への侵入を拒む。
こうしておけば時間は稼げる。
グツグツと鍋の煮える音が響く。
ちょっとだけ身体が熱い?と小首を傾げていると、キロランケが入ってきた。ん、ちゃんと結界は動いているおかげだ。
けど、なんだか変な気持ちになる。
「……なんか熱いな」
「アッ、スゥーーッ、スゥーーッ!」
「どうした谷垣!?」
「苦しいのか!?」
「大丈夫かっ谷垣!?」
ぱっつんとボタンが弾ける谷垣に集まり、剣路もキロランケも杉元も由竹もみんな心配している。みんな、どうかしたのかな。
……ラッコのお肉のせい?
なんだか騒がしいみんなのことを眺めていると、お腹の辺りがちょっとずつ温かくなってきているような気がするけど。多分、気のせいだ。
「ッ、なんなんだ?」
「身体がおかしくなりそうだぜ」
「うーふッ…!」
みんな、すごく変になっている。
まともなのは私だけなの?と少し不安になりながら、ラッコ鍋を取り囲んでいる彼らの事を見ていると、だんだんと頭の中がおかしくなりそうだ。
ちょっとだけ、怖く感じる。
剣路も変になっちゃっているし。
いったい、どうしたらいいんだろう?