「ん、着替えた」
「似合ってるぞ」
「しとりちゃん、似合うぜ!」
そう言ってアイヌの衣装に着替えた私を褒めるアシリパと由竹にチョコをあげ、クチャ作りを手伝う合間に網走監獄の地形を把握する。
由竹の説明と手薄な場所を知りつつ、私は「石ころ帽子」を「増えるミラー」で増やし、全員分を用意して侵入するときに備える。
「見えなくなった!?」
「女湯覗き放題!?」
「ん、由竹は没収する」
「どういう原理なんだ?緋村一等卒」
「知らん。オレは科学に詳しいわけじゃないし、糸色家の婿入りしたわけじゃない」
「私も三つの苗字持ち」
フンスと胸を張って、アシリパの後頭部を受け止めてあげる。ただ、増えるミラーで増やした石ころ帽子でも「分かる人には分かる」。
野性の勘の鋭い人は特に、気付きやすい。
「野性の勘」
その言葉に、みんなの視線は杉元とオガタに向かう。確かに近距離と長距離で違うけど、二人とも並外れた感覚の持ち主なのは分かるね。
「オレは違うのか?」
「お前の勘は経験則だ。抜刀斎」
「……土方、オレは親父じゃねえよ」
不満げに剣路は呟く。
土方はみんなを誰かに重ねている。
「それに、壬生の牙は衰えていない」
新撰組の目付きが変わる。父様も仲良くしていた鷲塚はまだ合流していないけど。どこかに隠れて、機会を窺っているのだろうか?
「で、のっぺらぼうの居場所は分かってるのか」
「さあな。尾形の言うように居場所は不明だ。少なくとも我々が話している今夜も場所を変えているだろう。内部の情報を知ろうにも……いや、あるな」
「ん?」
新八は私の方を見てきた。
「ハッ、糸色の名前を使うわけか」
「私、囮?」
「糸色家は軍部の人間であれば最も確保しておきたい手札の一つだ。なにより、網走監獄にはのっぺらぼうの他にも『ヤツ』が収監されている」
やつ?と小首を傾げる。
「不破の大馬鹿だ」
ふわ、不破?
「不破信二も此処にいるの?」
「誰だいそれ?」
「四百年間、一度も負けたことのない人間。父様や土方歳三はとても詳しいよ」
「生憎、私が知っているのは陸奥出海だ。不破も此方についていれば、この様な事態に陥ることはなかった。が、アレは人の皮を被った修羅だ。人ではない」
「妖怪?」
「もっと悪いよ。神様を殺そうとしてる」
「神、ね」
ん、ひとえもひとえの子供もサンピタラカムイ様の加護を受けている。ひとえは私より弱いけど、ものすごく力持ちだから強い。
「どうやって接触する。しとりさんだけを送り出す訳にもいかないだろう」