新月。
二週間が経過した。
侵入を開始する杉元達の後を追っていたとき、ランプを持った看守達に遭遇したものの、私の渡した「石ころ帽子」のおかげでバレることはなかった。
ただ、不穏な妖しさは残っている。
アシリパの射った矢に縄をくくりつけ、反対側に立っていた私達が引っ張り、今度は向こう側の人に引っ張ってもらい、屋根に登る。
「とーりぬけふーぷー」
テレレーと言葉を口ずさむ。
母様が「フフ、この道具を使っていた優しい優しい子守りのネコサンがそう言っていたんですよ」と言っていたから、たまにやるようにしている。
「通り抜けフープ」を天窓に貼り付けて、穴を開けると最初に私が降りて、ゆっくりと床に着地して、一人ずつ受け止めていく。
「しとり、ありがとう」
「ん、気にしなくていいよ。アシリパ」
門倉の話していたのっぺらぼうの牢屋に近づき、由竹が鍵穴を弄って、ゆっくりと牢屋の戸を開け、アシリパが石ころ帽子を脱いだその時だった。
「ああういああああああああああああああああああああいあああああだだっ!!!」
「ッ、違う。アチャじゃない!?」
「侵入者だ!!」
「門倉ッ、どういうつもりだ!?」
「やっぱり裏切ってたんだ!!」
杉元と由竹の叫びを無視し、アシリパの身体に巻いていた縄を引っ張り、天窓の近くに待機していたキロランケと剣路、刈羽君が彼女の事を引っ張り上げてくれる。
「クソ、あの野郎…!」
「杉元、私が出る」
「いや!?しとりさんは人斬れないでしょ!?」
「問題ない。秘策はある」
電光丸を抜き、ゆっくりと石ころ帽子を脱ぐ。
「女?」
「顔の無い、女だ!」
「服斬りッ!!!」
すり抜けると同時に銃や服を切り裂く。
「お?何かとおったか?」
────やっぱり、門倉は避けた。
私の太刀筋を読めるのは剣路や父様だけだったのに、こんな人もいるなんて想像もしなかった。これが、私の母様と同じく「黒幕」と呼ばれる男。
そう思っていた次の瞬間、轟音と爆音が聞こえ、武装した第七師団が一斉に攻めてくるのが見え、看守室の中にいたウサミの振るう金槌を鞘で受け流し、飛び退く。
き、気持ち悪かった。
なんか生臭いし、変な感じがした。
「顔は分からないけど、緋村の女ですよねぇ」
「ん、私は緋村なんて知らないよ。私より弱いけど、強くてカッコいいけど、馬鹿な緋村剣路なんて知らないよ、ほんとうだよ」
「小馬鹿にしてんのかテメェ!!」
「ん、してないよ。馬鹿だよね」
そう言いながら追いかけてきたウサミを躱し、出入り口に向かって駆け出すもドアを破壊し、第七師団が駆け抜けてくるのが見えた。
ん、逃げるのは大事。