飛び散る銃弾を着物を盾に受け止め、素早く杉元達とのっぺらぼうの部屋に戻り、体勢を立て直そうとしたとき、後ろを見ると杉元と由竹がいた。
「逃げてって言ったよね?」
「女の人を置いていけるか」
「俺は脱獄王だからな。着いてくぜ!」
そう言って笑う由竹に苦笑を浮かべつつ、杉元はのっぺらぼうを突き出して、金塊の事を叫んで攻撃を止めようとした。
───だけど。銃弾が戸を掠めた。
「浩平の足の仇だァァ!!」
そんな叫び声が聞こえてきた。
「足?」
「多分、土方だ」
「剥製所で襲われたときだ」
じゃあ、あの二階堂は怪我していないのかと納得し、騒がしくなる牢屋の外で戸を無理やり開ける音が聞こえ始める。
「なんだ?」
「…多分、門倉の仕業だよ。土方に内緒にしたまま、私達を囮に使って、第七師団の戦力を集めて、囚人も総動員して鶴見を殺そうとしている」
「あのタヌキ親父が」
「しとりちゃん、ノコギリあるか!?」
「ん、ある」
「杉元も手伝え!この床の下に通気口に繋がる穴がある!そこならしとりちゃんだけでも、通ることが出来る!」
通気口。
確かに、それなら通ることが出来るけど。
ネズミとか居そうでイヤだ。
騒がしさを増す外。
「二人とも時間を稼ぐから早くしてね?」
そう言いながら牢屋を出て、私は電光丸ではなく別の刀を抜くために指を唇に当てる。
「────
るおんっ、と刀が鳴く。
ボロボロに錆びた刀の放つ異質な気配に気圧され、囚人も第七師団も私に視線を向ける。
「鬼心仏刀にて御悔やみ申す」
合掌するように片手を胸の前に置き、相手との間合いを測りつつ、瞬時に銃弾を回避し、私に向かってきた人間の手足の腱を素早く斬り、動きを封じる。
ただし、直ぐに治る程度に斬るだけだ。
「着け剣よぉいー!侍狩りだァ!!」
そんな叫び声に微笑みを向ける。
「皆々様、御悔やみ申し上げます」
両手首、両足首、肘の内、膝の裏、正確に切り裂いて行動を封じる。けど、地面に倒れた分だけ、私の逃げ場は消えていき、飛び散る銃弾を羽織で束ね防ぐ。
「特殊繊維の羽織かね?鯉登少尉!!」
「ハッ!」
鯉登の登場に眉間に皺を寄せる。
親友の旦那を斬りたくない。
「キエエェエエエエッ!!!」
「んッ!!」
蜻蛉からの振り下ろし。
その太刀筋を受けず、往なし、顎を柄でカチ上げるも身長が足りなくて浅く、脳を軽く揺らすことしか出来ず、私は銃弾の雨を避け、通路の奥に向かう。
まだ、逃げ場はある。