「ハァッ!」
「んッ…!」
ひとえの屋敷の庭先。
私は左手に氷魔閻を身に付け、剣路と斬り合う。
ただ、やっぱり左手だから剣を振るうのは遅れ、剣路に競り負け、地面に倒れそうになる。その度に、剣路の顔付きは怖くなっていく。
───興奮した臭いがする。
「けんちゃんのエッチ」
「なんも考えてねえよ!?」
「ウソつき。私の胸元や袴のギリギリを斬ってた」
「にいさま、ハレンチ」
そんなことを話しながら氷魔閻の意識を聞き、技の出し方を理解していくけど。私のモヂカラの性質と合っていないから、威力は落ちる。
「氷紋剣、水成る蛇…!」
「水の蛇か!?」
強烈な水流の蛇は空を這い、剣路の身体に直撃するけど。痛みを与える事は無く、少しだけ肌に傷を作る程度の破壊力しかなかった。
「……弱いな、しとり」
「むぅーっ!」
左手に構えた左手に意識を向ける。
ううん、それよりもいい人がいた。
右手を切っ先に添えて、腰を落とす。
「……左片手の突きか」
「牙突!」
タンと地を蹴ると同時に突き上げる牙突を繰り出し、剣路の脇腹と肩口に四連続の突きを放つ。ん、突き技に限定して戦えば問題ない。
「くっ!?間合いが違うな」
「……でも、戦いにくい」
氷魔閻を地面に突き立てて、ひとえの横に置いていた電光丸を左手で持ち上げ、そのまま左腰に佩いて、ゆっくりと逆手で引き抜き、順手に直す。
元々電光丸は小太刀に類する妖刀だ。私の背丈と合わせると、噛み合う刀身の長さになる。
「片手剣術、試してみるね」
「おう」
身体の間合い、足先の運び、脱力、構えの調整、ゆっくりと頭の中に入っている自分自身に身体を重ねていく。想像して、創造しろ。
私は、強い!
「ん、嵌まった」
地を跳ね、前へと飛ぶ。
「突きかよ!?」
「違うよ、逆風!」
手首を返して電光丸を切り上げ、身を退いてのけ反り避ける剣路の身体を狙い、袈裟斬りを放つと刀で受けられ、咄嗟に右腕を電光丸の峰に押し付ける。
「雷撃は使わねえのかぁ?」
「使わない。今は、準備するときだからね」
そう言いながら構えを変える。
正眼から晴眼に構える。
「こい」
「ん」
荒々しさを捨て、速さを突き詰める。
斬ったそばから斬っていけ。
駆け抜けるのは一閃のみ。
「一瞬の内に九撃、九頭龍閃かよ」
「ん、使うと便利だけど。斬れない」
元々電光丸は斬れない刀だけど。
こういう使い方なら問題なく使える。あとは左手になれておけばいい。私は、ひとえみたいに両利きじゃないからこういうことは苦手だ。
けど、私はまだまだ強くなれる。