「じゃあ、帰りは気を付けてねー!」
ブンブンと手を振る紗那。
剣路は辟易して、私を抱えている。滑ると危ないからって言っていたけど、寒いから抱き締めているようにも思える。
「待ってなさいよ、音之進様!」
「ん、けんちゃん。もう大丈夫だよ?」
「いや、まだだ」
私の事を抱き上げたまま歩き出す剣路に小首を傾げつつ、歩いているとリュウに似た犬を見つけ、キョロキョロと周囲を見渡す。
そう簡単には見つからないかと納得しつつ、フレップ本舗という看板を見つける。フレップ、確かコケモモを潰して作るワインだったはずだけど。
「ワインはあまり好きじゃないぞ」
「ん、酸味のあるワインも美味しいよ」
ワイン。
父様やお祖父様に贈れば喜ぶかな?と考えながら、ガラス張りの戸を開けた瞬間、私は褐色に焼けた肌の青年と目が合う。
「貴様、ひむ「音之進様あぁーーーっ!!!やっと会えました!離しませんよもうっ!」キエェエエッ!!?一体、ないごて、こん様な場所に紗那さんがいるのじゃんそか!?いかなこて、そっちに居る
私と剣路の脇を抜け、弾丸めいた突進で鯉登に飛び付いた紗那は頬っぺたにチューを繰り返し、猿叫する鯉登も直ぐに意識を取り戻したけれど。
早口で何も分からなかった。
そんなことを考えていると、鶴見と一緒にいた月島、それから杉元、谷垣の四人がやって来た。ん、すごくビックリしている。
「しとりさん、右手は!?」
「ん、傷は塞がったよ」
ヒラヒラと右手を揺らすと、安堵したように溜め息を吐く杉元に剣路は舌打ちをした。そういうことをしちゃダメだって教えているのにね。
「緋村一等卒、そちらの女性は?」
「鯉登少尉の妻だ。しとりの茶飲み友達でもあるんだが、樺太行きの船を用意して待っててくれた」
剣路がそう言うと月島の目が暗くなった。
「月島、チョコ食べる?」
「要りません」
「ん、ストレスを感じたときは糖分を取っておけば安定するよ。杉元も谷垣も食べて」
いそいそとカバンを開けて、みんなに渡していく。とりあえず、杉元達に合流出来たのは良かった。けど、由竹とキロランケがいない。
あの二人がいないのは不思議だ。
「ヒンナだぜ、チョコレート」
「早くアシリパを見つけて、いっぱいお菓子を食べさせてあげたい。きっと、満足にお風呂にも入ることが出来ていないはず」
おのれ、オガタ。
アシリパにひどいことしていたら、電光丸で頭を叩いて、みんなにしっかりと謝らせてやるからな。覚悟しておくように。