銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!   作:Tkmraeua2341

1 / 8

あらすじに付けた注意点を読んだ上でここに来てくれた方…素敵だ…。
後書きにこれの元になったものを載せときますね、興味のある方は暇つぶしにでもどうぞ。


銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!

今となっては"転生"なんて当たり前なジャンルだ、物語の導入として散々使われて飽きている人もいるだろう。

では"憑依"はどうかと言えば、刺さる人には刺さる、ていう所だろうか。

元のキャラが嫌われ者だったのに対して憑依して善人になったり大人になったりするのだ、元からのギャップで面白いと思う人も居るはず。

…そして、TS。

今の時代だと配慮やらで扱い辛いだろうが日本人にとっては割と受け入れられていると思う、少数だろうけど。

見た目も性格もイケメンだった奴が美女になればイケメン美女となって素晴らしいと思うし、冴えないおっさんが美少女になって身も心も乙女になっていくのは何処か愛らしさと悍ましさで脳がキマるので楽しい。

嵌れば抜け出せない、つまり沼だな。

 

ここまで語ったのには理由がある。

 

皆様は『古市 貴之』というキャラを知っているだろうか。

そう、銀髪で女好きの彼だ。

ここまでの流れで何となく想像がついた方も居るだろうが、ここで自己紹介をさせてもらう。

 

私の名前は『古市 ユキ』現在高校1年の花のJK。

 

そして、今作の舞台となるべるぜバブの主人公、男鹿(おが) 辰巳(たつみ)の幼馴染だ。

 

ああ、聞いた話だが本来はあの意外と男なやる時はやる女好きのポジションに何故か私がいる。

私の前世は職務に誠実とは言いきれないいい加減な男だった。

友達がいない、という訳ではないが一人時間を大事にし過ぎてサブカルチャーこそが我が相棒という生活をしていた。

そんなオタクモドキのボッチ野郎が全ての文化に通じてる訳でも無く、べるぜバブを読んだのは学生の頃くらいだけだった。

そんな奴が主人公の相棒というかツッコミポジに居ていいんだろうか。

ふとした拍子にあのおっかない金髪美女に中身の残念さがバレて教育に悪いと細切れにされそうで怖い。

 

まあ今更、男鹿と離れる気はないんだが。

 

小学生の時から問題を起こす男鹿とその尻拭いというか巻き添えをくらう私という、いつの間にか不良と優等生の凸凹コンビみたいになっていた。

いや、女性特有のものとか転生特有のゴタゴタで私は優等生っていうより真面目系不思議ちゃんって感じだったが。

 

そうやってよく一緒にいたもんだから高校受験もなんも考えずに男鹿と一緒のとこに行くことにしたけど。

そんな関係が続く高校1年の五月すぎ、男鹿から急に相談に乗って欲しいと連絡があり部屋で待っていると男鹿がやって来た、私が買っておいたショートケーキ片手に。

 

 

 

 

─むかしむかし あるところに それはそれはハンサムで かっこよくて モテモテで みんなに尊敬されまくっている

 

「死ね…男鹿…」

 

メキメキメキ メキャ…

 

「○△‪✕‬□卍△!!」

 

─尊敬されまくっている 心優しい若者がおりました

 

「全員土下座」

 

 

 

 

「カット、まって、うん?」

 

「む?」

 

割とイケメンなのに眼力で台無しになっているこの幼馴染にツッコミ。

 

「む?じゃねーよ 誰が心優しくてモテモテだ、開口一番の時点で暴君じゃん!!」

「ばかめ」

 

ばかはお前だばか、フォークでこっちを指すなばか。

 

「いいか?よく考えてみろ、オレが理由もなく人を土下座させる様な男だと思うか?」

「うん?うーん…うん」

 

実際私と一緒に歩いてた時、すれ違う前の男性を何人か急に腹パンで土下座させてたし。

 

「そうかそうか続きを聞きたいか!!」

「いでででギブッギブーッ」

 

急に首を絞めるなフォーク咥えて暴れるな危ないなぁ!

 

 

 

 

─はなしはもどって

 

「いや本当さっきは調子こいてすみませんでした、石校の無敗伝説 男鹿くんがあまりにも無防備に寝てたんで…ついチャンスと思って…」

 

「チャンスじゃねーよお前あれオレじゃなかったら死んでっぞ」

 

「いやー本当にねぇ〜」

 

斜めに刺さった鉄骨と地面の間には男鹿が枕代わりにしていたカバンが貫かれていた。

それを見て男鹿を狙った不良が小さく

 

「死ねばよかったのに…」

 

と呟いた。

 

─心優しい若者は

 

「ちょ ゲボ ゴボッ ボッ ボーボボバッ! バフォッ! バッ!!」

 

「落ちるのかなーこの汚れ」

 

男鹿は不良の両足をつかみ逆さまにして不良の上半身を川に沈め始めた。

 

─川に洗濯に行きました

 

どう見ても拷問である。

 

─すると川上の方から大きな…

 

─大きなおっさんが

 

─どんぶらこっこ どんぶらこ

 

「はいカットーーーーッ!!」

 

 

 

 

咄嗟に叫んでしまった、だがこれはしょうがないだろ。

 

「えーと…何?この話どこへもっていきたいの?てか大きなおっさんて何?」

「流れてきたんだから仕方あるまい…」ズッ…

「流れてこねーよそんなもんっ!!!」

 

てか何飲んでんだ!いつ準備したその熱いお茶!持ってきてなかったよな!?

 

「いや確かにあれは…オレも超びびったよ、実際他の奴らは一目散に逃げてったからな」

「そりゃ逃げるだろ普通…てかマジなの?ついてかなきゃいけないのこの話に…」

 

もう既にゲンナリしてるんだが。

 

「おうしっかりついてこい、続きいくぞ」

「待って、ギリギリのリアリティーを模索するから」

 

おっさん、川原…ホームレス!橋の下に住んでたホームレスが何かの拍子に流された、これだ!というかなんだこれ!?べるぜバブって初っ端からこんな飛ばした内容だったか!?

 

「よし、ほんとはよくないけどよし!こい!」

「うむ…」

 

 

 

 

─心優しい若者はたった一人で大きなおっさんを引き上げた そして…

 

パカーッ

 

─二つに割ると中から元気な男の子が

 

「割るなーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

今一度、大きく息を吸い、ありったけの気持ちを込めて叫ぶ。

 

「割るなーーーーっ!!!」

 

「…若者はいいました「おおっ なんてかわいい 赤ん坊」」

「もういいよっ!無理だよ誰もついてこねーよそんな話!!」

 

読者舐めんなっ!!

 

「ったく、まじめに聞いて損した、お前が珍しく相談があるとか言うから…」

「いやいやまだ続きがあるんだって」

「続きぃ?」

 

皿やフォーク、あと飲み終えたらしいマグカップを回収していく。

そういえば部屋の掃除や枝毛の確認ばっかでなんも準備してやれなかったことに気付いた。

このままじゃ気持ち悪いし帰りになんか菓子持たせるか。

 

「そーそー、こっからが大事なんだから」

「ひとまずこの食器片付けさせて、ついでに飲み物取ってくるから」

「あ、おい!」

 

まだ麦茶あったよな、なんて考えながらドアを開けると

 

「アー」

 

足元に緑色の髪に黄色いおしゃぶりを咥えた、おそらく男鹿の上着だと思われる学生服を不格好に羽織った全裸の赤ん坊がいた。

 

 

 

…あ、表紙で見た事ある子だ!!

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

幼稚園の頃の話だ。

 

当時の私は記憶を取り戻して間もなく、幼児のフリが上手くいかず、古市夫妻との距離を勝手に遠ざけていた。

自身の異物感に周りとのギャップ、年下の保護者という環境からストレスが積み重なってヤケになりかけていた。

 

午後の自由時間、日陰からアリの行列をボーッと眺めるという成人男性ではありえない姿を見せていた。

傍から見れば幼女がアリの行列を眺める微笑ましい光景だ、先生さんもちょくちょく確認するだけで他の子達の相手に集中出来ている。

 

今となっては黒歴史だが、中学生よろしく私は私自身のアイデンティティに頭を悩ませていた。

元々私は男だった。

だが今は女児用のスモックを着た幼女だ。

 

じゃあ今の私は?

 

―瞬間、脳裏に電流走る。

 

もし私の自認が男だと、生前と変わらないと思うなら…。

 

今の私は、幼児のスモックを着た変態では?

 

そう思った瞬間、脳裏に急遽浮かび上がる精密な想像(精神汚染)

 

すね毛や胸毛がボーボーで、無精ひげの目立つ冴えない顔立ちの、悪い意味で中肉中背なおっさんがスモックを着て座り込みアリの行列を眺めている光景。

 

「っおぅふ」

 

ほぼ(意識が)イキかけました。

私のハイライトが家出した瞬間である。

それからの私は何かするたびにそれをおっさ…生前の自身の姿で再現する想像がつきまとってしまった。

 

子供用食器で食事する(おっさん)

 

ピンクのリュックでお出かけする(おっさん)

幼児たちと追いかけっこする(おっさん)

 

一番キショかったのはトイレで小便をする(おっさん)だった。

 

おい誰にも需要なんてないだろこんなおっさんのふた○り放尿とか!!わざわざ()()()から出る所まで再現するなよバカがよぉ!!

 

結果一週間ほど寝込んだ。

両親には大変申し訳無いことをした。

なにせ両親揃って仕事を休んで看病をしてくれたのだ、人の温かさを改めて感じた一時だった。

だからか、病み上がりすぐに私は両親に、転生のことを一部話した。

 

…まぁ、寝込んでる間に見た悪夢だと勘違いされたが、心が軽くなったのは確かだった。

 

それからは(おっさん)は週に一回、月に一回、年に一回と減っていった。

小学生になる頃にはめっきり見なくなった。

…もう一度見ることになるとは思わなかったけど。

 

 

 

 

 

 

さて、男鹿が赤ん坊を連れて来た所だったか。

その後、赤ん坊がなついた経緯に呆れ、ヒルデガルダという金髪美女が窓から現れ侍女悪魔という自己紹介と共に赤ん坊が魔王であると説明された。

…原作ちょっと知ってるけど改めて凄い状況だな!育児経験のない男子高校生(それも不良)に魔王な赤ん坊預けて育てさせるとかヤバすぎるだろ!

 

それからは大魔王の適当過ぎる人類滅亡計画を聞かされ男鹿は魔王の親という立場を断った。

直後の「では、死んでください」というヒルデガルダさんの発言と共に抜刀!されて私の部屋は全壊、家は半壊というあまりにもあんまりな被害を被った、機体(実家)が、もたない…!

 

その後はでっかい悪魔みたいな鳥を男鹿が蹴飛ばし、赤ん坊、つまりベル坊がかんしゃくを起こしありえない放電をして男鹿にたしなめられた。

それから倒れかけた鉄塔からベル坊を庇い、魔力か何かは分からないが鉄塔を消し飛ばして男鹿は気絶した。

 

てかよく死ななかったな、流石男鹿。

と言うよりギャグ補正と主人公補正か。

そして今は男鹿の家までえっちらおっちら運んだ男鹿をベッドに寝かせて傷の手当が終わったとこ。

 

「おい」

 

男鹿の部屋の汚さに飽き飽きして掃除を始めた時、ヒルデガルダ…ヒルダさんから声をかけられた。

 

「お前は、この男の何だ」

 

ん?どういうこっちゃ…

 

「お前はこの男とずっと共に居るようだが、恋人というようなあの甘ったるい空気は感じなかった。しかし他人や知人にしては距離が近すぎる、容姿は似ていないが…あれの血縁者か?」

 

ん〜?なんかよくわからん事言ってるけど、

 

「私は男鹿…そいつの幼馴染で友達ですよ、それ以上でもそれ以下でもないです」

「そうか…」

 

ついでに気になってたことを聞いてみよう。

 

「所で、男鹿で確定なんでしょうか、魔王の親って」

「ああ」

 

そっかー、男鹿が親か…。

…あ、なんだろう、なんか急に老けた気分。

 

「いくらかんしゃくとしても、あれ程の力を引き出して見せたのだ。親としての資質は素晴らしいものだと判断した」

「そっすか…」

 

頑張れよ男鹿、私も他人事じゃなくなってるだろうし出来る範囲でサポートするぜ。

赤ん坊の世話とかしたことないけどな!

 

「なんか手伝える事でもあったら言ってください、ヒルデガルダさん」

「お前のような未熟者の手はいらん」

 

たはは、見抜かれてら。

 

「だが、坊っちゃまの安全のために必要な時があるやもしれん、その時は手を貸して貰うぞ」

「…はい、それじゃまた」

「ああ」

 

返事貰えるとは思わなかった。

…もしかして、ヒルデガルダさんデレたか!?

 

…流石にないか。

 

 

 

 

2日後。

 

─ここは県下最凶 ヤンキー率120%と呼ばれる不良校 石矢魔高校(いしやまこうこう)

 

そこに私と男鹿は通っている訳だが、今日の男鹿はいつもと違った。

 

「よっ」

 

気さくに、しかし頭の中で何か失礼なことを考えてそうな顔で男鹿が挨拶してきた。

てかほんとにベル坊連れ回してんだな、てかずっとしがみついてるのか凄いなベル坊、流石魔王。

 

「古市…聞いてくれ、オレんちはもうダメだ」

「ん?どうしたよ」

「悪魔に…のっとられた…」ゴゴゴ…

 

そう、でも私の家は半壊してるんだけど、部屋の私物全部おじゃんになったんだけど、おい聞けこら。

 

 

 

問答無用に回想入るんじゃねぇよ。

 

 

 

 

夕方、外も暗くなり家族が思い思いに過ごしていた時、

 

「今日からこの子共々お世話になります、ヒルデガルダと申します。ふつつか者ですがよろしくお願いいたします」

 

「アダ」

 

床に正座し三つ指をついて頭を下げる悪魔、そして時が止まったかのように動かなくなる家族。

 

「おい、なんだその誤解をまねく言い方は…」

「ん?何か問題でも?」

「大アリだ!見ろ、全員もれなく固まってんじゃねーか!!」

 

家族全員の目が点となり空いた口が塞がらなくなっている。

 

「しかし、この国ではこうするものだと…」

「誰情報だこらっ!!前提から間違ってんだよ!!」

 

両親はとうとう白目を向き始めた。

 

「だから言ってんだろ!オレは親だなんて認めてねーっつの!」

「何を今更、あんな事までしておいて…」

 

そこからは家族総出で荒れまくった。

切れる父、直ぐに受け入れる母と姉、ヒルダの愛称を家族に許す悪魔。

夜になったらオレの部屋で寛ぎ始め、オレと赤ん坊が15m以上離れて泣くとと即死レベルの放電になると説明を受けた。

てかなんで泣いたら放電すんだよ、離れたら離れただけ強くなんなよ!終いには死ぬ!?ふざけんな!

 

 

 

 

「─というわけでな…今やこのありさまさ…」

「アー」

「マジか…」

 

絶句する、流石魔王、頼むから泣かないでおいてくれ。

そう思いベル坊を見るとさっそく男鹿からハイハイで離れて蝶々を追いかけていた。

 

普通に危ねぇ、抱えて戻ってくる。

 

「オー、アー?」

「おいオレの話聞けよ」

「聞いてたよ、だからこの子回収したんだし」

「あ?」

「離れて泣かれちゃヤバいんだろ、今さっき蝶々追いかけてってたぞ」

「あぶなっ!?」

 

「ア"ー!」

 

っと暴れるな暴れるな、えーと確か買ってすぐの金平糖が…あった。

ちょっと固い奴だから指で潰してっと…これもう砂糖粉じゃね?まぁいいか。

 

「ほーらベル坊、金平糖だぞー」

 

おしゃぶりを外して口の中に放り込むと、すぐさま大人しく口をモゴモゴさせていた。

 

「ベル坊?」

 

え、もしかして男鹿ってまだこの時にはその呼び方してなかったのか?

にわか過ぎてもはや跡形もない原作知識でギリギリ覚えてたからつい言っちまったんだが。

 

「…ほらこの子の名前、カイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世ってめっちゃ長いじゃん?だから語感が良さそうな呼び方としてベル坊」

「あーそういやそんな名前だったなこいつ」

 

っぶね、ヒルデガルダさんの圧が怖くて「これベル坊の名前間違えただけで首チョンパされるんじゃね?」と思って冷や汗かきながら覚えたからな。

それをこいつ…間違いない、あの顔は絶対覚えてなかった顔だ。

 

その後、ベル坊を男鹿の背中に返してあげた後、2年幹部が勢揃いで男鹿を襲いに来たが、いつものように一撃で倒していった。

唯一違う所と言えば、男鹿の背中にベル坊がいて、男鹿と一緒に電撃で倒したことだろう。

 

最恐親子、子連れ番長の爆誕って所か…。

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

小学六年生の頃。

とうとう、私にも女性の、月のものが来た。

朝、股間に違和感を感じトイレへ行くと、いつもとは違う所から出る感覚とともに急に下腹部にチェーンソーでも入れられたのかと思うような激痛が走った。

あまりの激痛に驚き股間を覗き込むと、便器が血濡れになっていた。

 

瞬間、脳裏に突如浮かび上がる精密な想像(精神汚染)

 

中性的な白と薄緑色の服を着て、股間から血を垂れ流し激痛に汗を流しながらも呆然とする(おっさん)

 

初めてのショックと久しぶりのショックによりダブルノックアウト、私は白目を向きながら気絶した。

 

その後、私を最初に見つけたのは妹のほのか。

出血と死んだように気絶してた事からパニックを起こしつつも母を呼び、何事かと慌てて駆けつけたらこの有様。

苦笑いしつつもほのかを窘め、私を叩き起し必要な処置、備品を解説されながら実践し登校させられた。

 

その日の晩は赤飯だった。

その日から体の…うん、一部が、膨らんできた。

今まで断崖絶壁だったのに、段々となだらかな丘ができ始めた。

ベッドに寝転がりながら胸を手で触れる。

 

そっか…私、もう男じゃないんだ…。

 

誰に言うでもなく、心の中でそう呟いた。

それからはずっと、(おっさん)は出てこなくなった。

 

もう二度と出てこないと…何となく、そんな確信があった。

 

 

 

 

 

 

「─一応聞いとくけど、大丈夫か?」

 

男鹿がベル坊を拾って1週間程、見た感じベル坊の方は元気そうで特になんとも無さそうだが、男鹿はそうでも無さそうだ。

先程も泣かれたのか身体中が焦げつき「しゅぅぅぅ」と煙が上がっている。

 

「大丈夫に見えるか?今日だけでもう6回だぞ」

「……ヨーグルッチ買ってあるけど、飲む?」

「飲む」

 

パックにストローをさして男鹿に差し出す。

持つ気力もなさそうなので口の方まで差し出すと弱々しく口を開いた。

こんなに弱ってるとは珍しい、小学生以来かもしれん。

男鹿がヨーグルッチを飲み終わると戦慄するように小さく震えながら話し出した。

 

「やべぇぞ古市、このままじゃまじであの夢の様になる…死ぬ、確実にオレ死ぬ…っなんとかしなければ!!」

「夢?」

「ああ、恐ろしい悪夢だ…」

 

そうして語られるのはふざけてるようで真剣な、まじで有り得る話だった。

中身がベル坊の家よりも大きい、黒いケダモノ。

なんともまぁ…

 

「何一つそーならないと断言出来ない所が恐ろしいな…それ私も死ぬな」

「だろ!オレもお前もバッチリ死ぬ」

 

冷や汗を流しつつベル坊を見る。

 

「ダ?」

 

パッと見ただの赤ん坊だけど…そーだよな、この子は人間を滅ぼしに来た魔王で、いつどこでどんな風に成長するか分からないんだもんな。

 

「ヒルデガルダさんはなんて?」

「正夢になるよう頑張れって」

「…つーか、改めて考えてみると、人類の未来ってお前の肩にかかってる?」

 

「「……」」

 

静寂、男鹿も私も黙り込む。

 

「…フ、なんてね」

「ハハ…」

「フフフフ」

「アハハハハ」

 

「「「あーっはっはっはっはっ!」」」

 

「「って誰だー!!!!」」

 

誰だこのおっさん!?

…いや待てよ、この並外れた体格、パーティーグッズみたいな面白い口ひげ、確かこのおっさん…

 

「そう、次元転送悪魔、アランドロンです」

「…まさかあの時、川で流れて来たおっさん!?」

 

確定だー!

アランドロン!?古市関係で妙に覚えてるあのアランドロン!?

え、アランドロン生で見るとこんなでかいの!?ヤバっ!!

 

そんで古市との薔薇っぽいのがあったの!?アランドロンが受けの方で!?

 

今の私だと絵面がパパ活でヤバいんだけど!? 

 

「フ…あなたの事が気になってね、少し様子を見に」

「次元転送だぁ?このやろう今頃のこのこと…タダじゃおかねぇ血祭りにあげてやる…」

 

まるでどっかの悪魔のように顔を歪めアランドロンの口元を掴む男鹿。

そりゃ赤ん坊押し付けられたり知らない美女が家に押しかけてきたり何回も放電されたりしてるからな、ある意味その元凶であるアランドロンが憎くて仕方ないのは分かるが、

 

「男鹿、ちょっと落ち着けよ。このおっさんがわざわざここに来たって事はなんか話す事があっての事じゃない?」

「おお、そこのお方、ありがとうございます」

 

そしてなぜこのおっさんがベル坊を男鹿に託したのかを聞いた。

まずベル坊がどんな奴にひかれるかを聞き、あの「全員土下座」のシーンでベル坊を託せる人だと確信したそうだ。

 

因みに、ベル坊がひかれる相手とは、

強くて凶悪で残忍で、傍若無人で人を人とも思わぬクソヤロー。

 

だそうだ、男鹿はなるべくしてなったんだなぁ。

しばらく頭を抱えていた男鹿だったが、つまりは自分より強くて凶悪なクソヤローにベル坊を押し付けようと考えたようだ。

しかし男鹿よ、お前以上に悪で屑なクソヤローは居るだろうけど、強いのは居ねぇと思うぞ?

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

石矢魔高校への入学直後、男鹿はその腕っぷしから、私は容姿っていうか、身体つきのせいで早々に絡まれまくった。

男鹿の腕っぷしは言及する必要は無いだろう。

小学生の頃から中学生相手に殴り勝つ奴だ、噂にならない訳がない。

問題は…その…うん、あれだ…私のボディがね。

 

中学生の頃、()()()()()()()()が転校してから急に来たのだ。

何が来たって?…胸の成長期がだよ。

 

時々先の方が痒くなる時があったけど、日中ずっと痒い、てか痛い。

そんで痛いのが全体的に広がっていって、病気かなにかと恐ろしくなり母に泣きついた。

母は冷静に下着の生地かサイズが合わなくなったんだろうと私を服屋に連れて行った。

 

そして店員さんに測ってもらったら…でかくなってました。

 

それからはまるでイタチごっこで、一月経つ事に下着を新調、重なる出費に私は涙目で貯めてた小遣いとお年玉を母へ渡すも「これくらい心配しない!それよりも化粧を早く覚えなさい」と一喝され号泣、手伝ってた家事の量を増やすきっかけとなった。

 

そして高校へ入学する前にやっと落ち着いてきたが…。

なんというか、峰不〇子体型というか…。

川柳風に言うなら…

 

立てばNI〇KE 座ればブル〇カ デカチチの

揺れる姿は アズー〇レーン

 

セクシー古市ですまない…。

まぁあれだ、ジャンプに出していい体型と艶じゃないって事だ。

え、ToL〇VEる?

…ほなセーフか。

 

そんな訳で初見の同級生や先輩方からは出会い頭に「「デッッッ!!!!」」と驚かれ、二度目にはナンパ、セクハラの嵐だった。

お陰様で登校中は男鹿と一時も離れられなかったり烈怒帝瑠(レッドテイル)の方に声をかけてもらったりした。

まぁそれで男鹿に守られながら暴れてもらいつつ一月程、モブっぽい人達から視線はともかく話しかけられなくなり、お陰様で一人で自販機へ行っても絡まれなくなった。

それで自販機なのだが、ここ石矢魔高校の自販機は場所によって売られている内容が違ったりする。

一階の廊下は炭酸系が充実しており、二階廊下は色物系、三階のはコーヒーやお茶系。

そして私が用のある校庭近くのはミルクや乳酸菌系だ。

いやーまさか私の好きな特濃牛乳のパックが売られているとは思わなんだ。

あの濃い緑の奴、相方にカルシウムが多めになってる水色のがあるけど私はこっちの方が好きなのだ。

 

それで、そこに買いに行くとよく会う先輩が居る。

その先輩は、今まで見てきた大人達よりも体格が良く、風格もあった…あれで同学年は無理がある、絶対年上だ。

頬の傷と男鹿に負けず劣らずの鋭い眼光、それでいてぴょこんと飛び出た2本の三つ編みがチャーミングだ。

そして、私が必ず特濃牛乳を買うように先輩も必ずヨーグルッチを買うのだ。

だから私は勝手ながら心の中で彼のことを「ヨーグルッチ先輩」と呼んでいる。

 

ん、話しかけないのかって?

…さ、流石に会釈とか挨拶とかはしてるから。

日酔ってないよ?こう…あれだよ、まだそのときでは無いって奴。

もしくは…

 

ーその資格はない、おぉ、その資格はないー

 

 

 

 

「おい男鹿!急に神崎さんのとこ行くって何考えてんだ!うちのトップだぞ!いくらケンカしに行く訳じゃないからって」

「大丈夫だって心配すんな」

 

そりゃするよ、お前絶対なんも考えてないだろうし…

 

「神崎くんってのいるぅー?」ガラッ

 

向こうは完全に臨戦態勢なんだから。

今までトップ張ってた人の足元で活きがいいのが居たら周りも含めて「処す?処す?」って空気になるわ!

ほら見ろ全員もれなくピキってるよ、眉間にしわ寄せてこっち睨んでるよ怖いわ!

 

「神崎さんだ、1年坊」

 

教室だった部屋の奥に神崎は座ってた。

あれが神崎さん…いやこえーよ何あれ何あのピアスなんで唇と耳たぶチェーンで繋いでんの何なのここのオシャレ怖すぎんだけど!!

そんでそれ見た男鹿はホワァァとしない!理由は分かるけどリアクションおかしーよ!

 

…ってあれは!

 

「ヨーグルッチ先輩!!」

 

「「「…は?」」」

 

「…あぁ牛乳女子か!」

 

「「「は??」」」

 

つい指さして叫んでしまった、鼻を怪我してるみたいだけど間違いない。

そしたらあっちも似たり寄ったりな渾名着けてて笑った、そっくりかよ。

 

「…城山、あのデカ女と知り合いなのか」

「あ、いえ!神崎さんのヨーグルッチを買いに行くとだいたいこいつと会いまして、それでオレが買い終わったら毎回牛乳パックを買うもんですから…」

 

だから牛乳女子、と。

ちなみに私は男鹿より少し低い身長で176cm、女子にしては高い方だ。

 

「ちゃんと話すのは初めてですよね、古市です」

「城山だ、よろしくな古市」

「よろしくです、城山さん…ヨーグルッチ先輩の方がいいですか?」

「まぁ…たまにならいいぞ古市」

「えーそこは牛乳女子でしょ、真面目なんだなぁ城山さん」

「あまり揶揄うな…」

「あはは!」

 

「もういいか」

 

「「…あ」」

 

その後だが、微妙に切れてる神崎さんからの提案でやりにくそうな男鹿と城山さんが戦って瞬殺し、神崎さんが鬼畜ムーブをかましたせいで男鹿が切れ、神崎さんを殴り飛ばし、その勢いで窓から叩き落としてしまった。

救急車も呼ばれてるようだし、きっと大丈夫だよ。

…ん?怒ってないよ?

別に城山さんに窓から飛び下りろ発言にピキってないよ?

…ホントよ?

 

後日、急遽呼び出されたらベル坊のおしっこが止まらなくなるという珍事があった。

そうはならんやろ…。

なにかアイデアを…と熟考してた結果、水浸しになった男鹿の家の後始末を押し付けられてしまった。

後で必ず仕返しするからな男鹿!!

 

「…えーと…ユキちゃん?何があったの…?」

「あ!?いやこれはえーと…!?」

 

仕返しするからな男鹿ぁ!!!!

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

本日、男鹿がとうとう蠅王紋(ゼブルスペル)を発現させた…らしい。

男鹿の忘れ物を届けに来たヒルデガルダさんとアランドロンによって語られる説明を聞く限りはかなりレアなものらしい。

 

ゼブルスペルは王家の紋、過去数千年のうち数える程しかその紋を刻まれた人間は居ないそうだ。

 

「確かに初見じゃびっくりするけど、割とかっこいいし似合ってるぞ男鹿」

「わかっているな古市、坊っちゃまの侍女見習いとして自覚が出てきたか」

 

「…え?」

 

侍女見習い?ヒルデガルダさんの印象むっちゃ仕事人で認めた相手じゃないと侍女でも…いや侍女だからこそかなり厳しい目線を持ってると思ってたんだけど…何より正式に仕えることになってない人にはそんな事絶対言わない人だと思ってた。

 

「なんというか、意外です。ヒルデガルダさんがそう言ってくれるなんて」

「何がだ」

「私を侍女見習いって言う所。ほら、ヒルデガルダさんって大魔王やベル坊にすげー忠誠心あるから、私みたいな人間の小娘はどうでもいいか邪魔に思ってるのかと」

「…男鹿の家族もそうだが、お前も坊っちゃまを大切に思ってくれているだろう、坊っちゃまの人間界での好物を探したりそこのドブ男より坊っちゃまのお世話をしている、そのまま精進していけば侍女悪魔の補佐の末端にはなれるだろう…後、私の事はヒルダと呼べ」

 

まじか、割と高評価だったんだが…あれか?たまごボーロやソフトせんべいやら持ってきてベル坊が食べれるかヒルダさんに確認取ってたりしてたからなのか?

っとベル坊暴れるなよ〜やっとミルク人肌まで冷えたからな〜

 

「…あいつ、オレより親してね?」

「あぁ、本当はお前がするべき事だぞこのドブ男」

「あ"ぁ?」

「私の疑問はこれくらいにして…確か最初の頃に親の資質が、とか言ってましたよね。王家の紋が出たってことは、魔王の親は男鹿で確定ってことなんですか?」

「いや、これはあくまでも魔王の親を決める判断材料でしかない。この刻印はいわば触媒のパラメーターなのだ」

「えぇ、まだ幼すぎる坊っちゃまが人間界で魔力を発揮するには触媒となる人間の助けが必要です。どれ程、巨大な電力があってもそれを通す丈夫な電線がなければ意味がありません」

「そして伝導率が上がる程、坊っちゃまは巨大な力を引き出せる。男鹿、貴様の拳の刻印は坊っちゃまと同調すればする程、複雑に増えていく。つまり貴様が周りの人間をボロ雑巾の様に扱えば扱う程、坊っちゃまの力が引き出され、真の魔王に近づけるだろう」

 

 

 

 

「いやーさっきはビビったよ」

「なに?」

「男鹿のヨメだよヨメ!!」

「あのボインな鬼子母神?」

「そっちじゃねーよ!多分男鹿の連れてる赤ん坊を産んだ方、クソ美人、つか外国人」

「マジ?」

「マジマジ、目の色一緒だったし。しかも超凶暴、ありゃ完全に尻にしかれてるな」

「ハハッなっさけねぇ、アバレオーガも人の子ってわけだ」

「そーなると男鹿の奴、女二人も作ってたってわけだよな」

「そんなクズ野郎に負けたのか神崎、大した事なかったんだろーな」

「東邦神姫の中じゃ一番下だよなーヒャハハ」

 

 

 

「……」

 

 

昼飯を食べようとして聞こえてきた話に、つい手が止まった。

神崎さんが男鹿に敗れて数日、かつて勢力下だった者達は、すぐに離れていった。

神崎さんはあの後すぐに搬送されたが診察の結果、全治一ヶ月。

戻ってこられた時、神崎さんはこの伽藍堂になった勢力を見て何を思うのだろうか。

 

「東邦神姫か…そう呼ばれるのも終わりかもね」

 

もはや誰も近寄らなくなった俺に話しかけてきたのは、オレとも関わりの深かった2枚目のキザな奴。

 

「夏目」

「石矢魔の4大勢力、東条・邦枝・神崎・姫川、その頭文字を取って石矢魔 東邦神姫 なーんて呼ばれてたけど、神崎君やられちゃったしオレ達もどっかに付かないとやばいかもね」

「夏目、去りたければ去れ」

 

例え何があろうと、オレは神崎さんのそばに居る。

 

「オレは残る」

「…大丈夫だよ城ちゃん、オレも一緒さ」

 

 

 

 

 

「姫川さん、今日撮った写真です」

「あー?」

「男鹿のヨメらしーですよ」

「ふーん、いいね。いいけど…ヨメ他にいなかった?あのデカイの」

「古市のことっすか?少し調べてたんすが、古市…銀髪の方は男鹿の幼馴染で正確には男鹿とくっついてないらしいです」

「でも一緒にいると…へぇー…健気だねぇ」

 

「あーっ何見てんすか?やらしー」

「また新しい子?」

「ゴスロリだゴスロリ、姫川さんこーゆー趣味あったんだー。てゆーかおっぱいでかーっ」

「あはは牛かっての、何食ってんだ?」

「でも前見せてもらった子よりは小さーい」

「いやあれは誰と比べても小さくなるっしょ、あれはもうクソでかい力士だよ」

「アッハハハハ!クソでかい!力士!」

 

姫川の部下が全員下がり不良女子を二人侍らせ、特注のソファに腰を下ろしていた。

 

「あのねー君達、もう少し頭のいい会話してくんない?品のない女嫌いなんだよね、殺したくなる」

「えー」

「やだーこわーい、でもそこがしびれるー」

 

そんな姫川に近付く集団が1つ、全員がフードを被り何人かはバットや角材を持っていた。

彼らはチームカラスと名乗るチンピラだ、姫川が部下を下がらせ戦力が少数になった所に奇襲を仕掛ける瞬間だった。

 

しかしそれが成功すると思っていたのはその集団を率いていた男、アシッド鈴木のみだった。

チームカラスは全員、に買収されていたのだ。

 

「がはっ」

「わかったか?頭はこーやって使うんだ、策を弄するなら完璧に…だ」

 

姫川はリンチにした鈴木の頭を掴み、写真を見せる。

先程まで眺めていた…ヒルダの写真を。

 

「明日までにこの女を連れてこい、必要経費があるなら出してやる、てめーの最後のチャンスだと思え。いいか?金で動かねーもんなんてねーよ」

 

 

 

 

 

ヒルダさん達のゼブルスペル講習会の翌日、私達は近くの海の堤防に来ていた。

男鹿はベル坊と堤防の先で海を眺め、私は男鹿から少し離れた所で釣りをしていて、ヒルダさんとアランドロンは海の家でティータイムに勤しんでいた。

ってか全然釣れねぇ、今日はボウズかな。

 

というか男鹿なにやってんの?海を前に宣誓でもしてるの?

喧嘩もしない人も殴らない、それはいい人じゃなくて一般人って言うんだよ?

しかし今までの積み重ねというか、過去の因縁だろうか…何人かの不良が男鹿の所にやってきて絡まれてる。

喧嘩をしない発言をした男鹿は、喧嘩をしない為かベル坊と海に飛び込み泳いで逃げていった。

 

「わはははははっアホ共が!!ついてこれるもんならついてゴボゲバッ!」

 

ベル坊海水大丈夫かなぁ…。

男鹿は大丈夫だろうけど、ベル坊は裸だからなぁ、この時期に海はまだ冷たいだろうし目に海水入って泣いたりしてないかなぁ。

 

「あ、男鹿の連れの…ってデッッッ!!」

 

おろ、なんか急にこっちに来たな。

あーこれヤバいやつだわ、一応立っとこ。

えーと痴漢撃退用スプレーは…ポッケにない!?

やべぇどこだ!?

 

「なーお前いつも男鹿とつるんでるよな、あいつのヨメのケータイバンゴー知ってる?」

「……知らねーっス、つかケータイ持ってないと思うっス」

 

やべぇ何処だっけ!?…あ、クーラーボックスの脇にあるわ!

気付かれないようにそーっと…。

なんか、近ぇ。

え、いやほんと近ぇ、なんで肩組んでくんの?

 

「あの、離れてもらっていいすか?」

 

余計に近づいて来んじゃねぇよ指で私の胸撫でんじゃねぇよキメぇんだよ!!

 

「そんなつれねーこと言うなよ、あれだろ?お前オガヨメに男鹿取られちゃったんだろ?オガヨメの居場所教えてくれたらオレらが慰めてやっから教えてくんない?」

 

キモっ!キモイわ!なんでこんなのに絡まれなきゃいけないの!?つら!!

おい男鹿ー!!逃げるなー!!こっちピンチなんだよー!!おーい!!

 

「何をしている?男鹿と坊っちゃまはどーした?」

 

「ヒルダさ」

 

急に口元を布か何かで抑えられ、私は意識がなくなった。

 

誘拐だこれぇ!!

 

 

 

 

 

目が覚めると縛られて気を失ったヒルダさんがいた。

スカートや肩の方が不自然にめくれてたりはしてないのでひとまず安心。

続けて自身の確認もする…ヒルダさんと同じく足と手を縛られてる以外は、特に問題無さそう。

 

「目が覚めたか?」

 

声をかけられ後ろを見ると、フードを被った傷だらけの不良が銃を持って座っていた。

 

普通の銃ではなく、モデルガンの類似品だろうそれ、銃口から垂れている液体が一滴落ちる度にコンクリの床から嫌な音と煙が立っており、不自然に溶けた跡があった。

 

「金髪なら当分起きねーぜ」

「…おはようございます、私は古市って言います、名前を聞いてもいいですか?」

 

あ、あかん、緊張と人見知りが悪魔合体して変な返しになった、傍目から見たら呑気過ぎるだろ私。

 

「フ、肝が座ってんね君…なるほどこっちも上玉だ」

「姫川さん」

 

いつの間にかリーゼントに色眼鏡のアロハシャツさんが来てっておい何髪持ってヒルダさんの顔を確認してんだよさっさと離せクズ野郎。

いいか、人の頭って結構重いんだぞ!そして美女の髪は男のよりも価値が高いんだぞ!!

「で、こいつは?」

「あぁ、男鹿のツレっス、女と一緒にいたので連れて来ました」

「フーン」

 

クズ野郎がおもむろにフード男に近付くと壁際まで蹴飛ばした。

 

「オレの完璧な計画が狂ったらどーしてくれんだ?てめぇ責任とれんのかっ!?あ"ぁ!?」

「す…すみませ…ゲボッ」

「すみませんじゃねぇーんだよったく、使えねーなぁテメーは、何がアシッド鈴木だボケが」

「ひ、姫川さ、まっゴッ」

 

罵倒されながら踏まれ、蹴られるフード男。

バキ、メキャっと音を立て続ける光景に恐怖する。

やべぇ、このクズ野郎しっかりクズ野郎だわ、戸惑いがないわ。

 

「フン、なかなか見所のある奴ではないか」

「ヒルダさん!!怪我は?何かされましたか?」

「あぁ…何か強い薬をかがされたらしい、体の自由がきかん」

「……悪魔にも薬とか効くんすね」

「ものにもよるがな、相性が悪ければ死ぬ事も…」

 

ヒルダさんと話していたら向こうが静かになった、目線を向ければフード男はピクリとも動かなくなり、クズ野郎…姫川って呼ばれてたな、姫川がゆるい空気を纏いながら近付いてきた。

 

「さてと、男鹿くんを呼び出してーんだが…ケータイ、かしてもらおーか」

「ケータイ?何だそれは?そんな物持っておらんぞ」

「…そーかい」

 

そう言い終わると姫川がヒルダさんに銃口を向けた。

 

「ちょ、何する気ですか」

「サービスサービス」

 

「…!?」

 

銃は水鉄砲のように液体を飛ばし、ヒルダさんの服にかかった場所を溶かしていく。

 

「やめてください、やめて!ヒルダさん!!」

「だまってろ」

 

別の不良に後ろから抑えられる。

そうこうしている内に、ヒルダさんの太ももや右肩が露わにされていく。

 

「うーん困った…本当に持ってなさそーだ」

「下衆が…」

 

この野郎、

 

「やめろって、言ってんだろ!!」

 

火事場の馬鹿力だろうか、抑えられた男の手を振り解き姫川に突撃する。

腕が振れれば殴れる程の距離になってまた抑えられ、姫川から銃口を向けられる。

 

眉間に向けられたそれが、不思議と少しも恐くなかった。

 

「ケータイなら私が持ってる、私のを使えばいいだろ」

 

「…だよねー」

 

あぁ、こんなバカになるとは…男鹿を笑えねぇや。

私ってヒルダさんのこと、結構好きだったみたい。

 

 

 

 

 

「だからー、オレもうケンカしねーんだっつってんだろ、なんで次から次に…」

「ふざけんなよオガ、勝ち逃げするつもりか」

「オレ達がテメェにどれだけ…」

 

「あっちょっとまって」チャッチャラチャチャー

 

「「きけーっ!!」」

 

〈〈もしもーし 男鹿くん?〉〉

 

「誰だてめー?古市じゃねーな」

 

〈〈あー いーよいーよ そーゆーリアクションは 用件だけ言うからアホみたいに聞ーてろ 君のヨメ二人はあずかりました 返してほしけりゃ今からゆートコまで一人で来い〉〉

 

「………」

 

「お、おわった?」

 

 

 

 

 

夕方、カラスが鳴く声が聞こえた。

同じ姿勢で体が痛い、腕が痺れてる。

姫川も不良達も待ちくたびれているようで、電話してからの2、3時間は警戒している様子だったが、今はだらけきっている。

 

もうそろそろ姫川が何かしてくるんじゃないかと心配していたら、下の階が騒がしくなった。

 

「なんだこのオッサン」

「いよーに弱かったな」

 

ボコられ縛られ、こちらに運ばれたのはアランドロンだった。

なぜアランドロン…あれ?…ははーん。

これ勝ったわ。

 

「…ヒルダさん」

「なんだ」

「アランドロンって、次元転送悪魔なんですよね?」

「そうだが…あぁ、なるほど」

 

 

 

『ネタバレしてんじゃねーよ古市』

 

 

 

『ったくてめーら』

 

 

 

アランドロンが縦に割れていく。

 

 

 

「世話やかしてんじゃねーぞ」

 

 

 

中から我らの主人公様が、悪魔のように笑いながら出てきた。

出てきて一発、近くにいた不良を殴り飛ばした。

 

「ケンカ、しねーんじゃなかった?」

「ケンカじゃねーよ、今からすんのは」

 

 

 

「─王の処刑だ」

 

 

 

それからは男鹿の独壇場だった。

 

まず姫川の名前を知らなかったことに絡んできた男二人を天井にめり込ませ、姫川の仕掛けた何かがあったようだが、男鹿はそれすらねじ伏せて。

 

隠し玉だろうスタンロッドも男鹿には効かなかった。

 

ベル坊の夜泣きのほうが痛い、とか事情知らなかったらすげーお父さんなんだけどなぁ。

それにビビった姫川が人質として私達を使おうとして部下達に命令するが、

 

「貴様の器は知れた、消えろ」

「かっけぇ」

 

ヒルダさんが部下全員を蹂躙しました、かっけぇ。

 

 

 

「ベル坊」

 

「ダ」

 

「男は、一度決めた事は貫き通さなきゃならねぇ、そう言ったよな」

 

「ダ」

 

 

 

「でもな、ダチがやられて黙ってるのは男ですらねぇ……分かるな?」

 

 

 

「ダ!!!!」

 

 

 

その日、晴れ渡る夕方の空に、雷が落ちた。

 

 

 

帰り道、一足先に帰ったヒルダさんとアランドロンとは別に、私は男鹿とベル坊と一緒に寄り道していた。

 

「はい男鹿」

「あ?何だそれ」

「商店街で売ってたコロッケ、お前とお前の家族、あとヒルダさんの分が入ってる」

 

小さい頃から男鹿が好きな、商店街のコロッケ。

 

「あーだからそんなデケェ袋だったのか」

「そ、…今日はありがとな」

「おー、感謝してたてまとれ」

「たてまつれ」

「まてまつれ!!」

「はいはい……フフ」

 

…絶対、吊り橋効果だよなぁ。

だってこんな事、規模は兎も角結構あったしな。

それに、絶対メインヒロインはヒルダさんだ、異論は認めるけど。

それでも、感謝は…な?

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

シャワシャワと虫や木の葉の自然な音が優しく流れるお昼過ぎ。

子供や親子連れの楽しそうな声の聞こえるよく晴れた公園のベンチで、私と男鹿はボーッとしていた。

ベル坊が私達に挟まれて座りミルクを飲んでいる中、男鹿が力無く呟いた。

 

「ケンカしねーとかさ、無理じゃね?」

「……案はある、お前の人生が超ハードモードになるだろうけど」

「もう既にハードモードなんだが?」

「外に出ない、ずっと家の中に引きこもる」

「……それはそれで無理じゃね?」

「うん、絶対ヒルダさんに引きずり出される」

「あー…てか今回は完全にあの女狐にしてやられた」

「あー…試すためとはいえ、よくやるよな…かっこよかったけど」

「結局、捕まったふりかよ…」

 

男鹿からしたらたまったもんじゃないかぁ。

 

「ったく、今思い出してもムカつくぜあの乳女。人がせっかく助けに来てやったのに礼の一つもなしかよ。古市はコロッケおごってくれたのに、なぁベル坊…ベル坊?」

 

話題を振られたベル坊はある一点を見つめていた。

ベル坊の目線の先には、高い高ーいをして遊んでいる親子の姿があった。

 

「ダ」

 

しっかり指を指して要求している……私に。

 

「え、私?男鹿じゃなくて?」

「ダ」

「じゃぁしつれいしてー…ほーら、たかいたかーい!」

「アー……フー」

 

すごいがっかりされた顔を向けられてしまった。

これ結構ショック受けるな、そんでそれ見てた男鹿はそんな顔すんな、笑うんじゃねぇ。

 

「じゃあ次は男鹿だな」

「ダ」

「あぁ?」

 

散々私を笑ったのだ、文句は言わせん。

 

「ほらほら、やりなよお父さーん」

「ダ!」

 

ベル坊の目が爛々と輝いている、相当期待しているようだ。

それを男鹿も感じ取ったのだろう、生半可なことはできないと冷や汗をかいている。

さてどんな風に笑ってやろう…か…。

 

「たかいたかーい!!」

「ヒョーッ」

 

その日、ベル坊は飛んだ、空を一直線に、ムササビのように、四肢をしっかり伸ばし、体全身で風を感じているようだった。

そう、男鹿はベル坊を砲丸投げのように空高く投げてしまったのだ。

 

 

「男鹿!全力ダーッシュ!!」

 

「まてこらぁあ!!」

 

 

…ひとまず男鹿なら大丈夫だろう。

 

こんな晴れた日に全力で走ることになるとは、自業自得とは言え、哀れだ。

 

「…二人の飲み物、準備しときますか」

 

 

 

 

 

休みが開けて登校中、私は聞いた噂を男鹿に話した。

 

「女王?」

「そうそう、ウチの女子全員連れて遠征に行ってて、それが終わったっぽいから帰ってくるんだって」

「フーン、女王ねぇ……そういやお前は?」

「え?」

「いやお前は遠征誘われなかったのか」

「誘われたよ?でも断った」

 

確か入学してすぐだったなー、高校生の中でもかなり大人びた色気を感じさせる人だった。

確か名前は大森さんだったか。

そんで烈怒帝瑠(レッドテイル)にも誘われたんだよなぁ、断ったけど。

いや私戦闘力5のゴミめ!状態だからね。

あんなレディース集団でやってけねぇっすわ。

 

「なんで行かなかったんだ?お前だって女子だろ」

 

お前なぁ、それ聞く?

 

「行ったら男鹿と遊べねーじゃん、だから断った」

「ほー」

 

 

 

 

校舎に女子のキャイキャイとした声が聞こえるようになってしばらく、一緒にジュース買いに来た男鹿にたずねてみる。

因みに今日はお茶の気分である、おーい!お茶。 

 

「なぁ男鹿、女王って見たことある?」

「は?ねぇけど、逆にお前ねえの?誘われたんだろ?」

「誘ってくれた人は女王じゃないみたいでさ、一人で来てくれたんだけど、その人去り際に「姐さんに連絡しなきゃ…」って言ってたから。だからその姐さんってのが女王なんだろうなぁって」

「あーね」

「ふと気になってさ、ヒルダさんとどっちが強いんだろうな」

「はぁ?そんな事気になってたのか?」

「まぁ…ヒルダさん並に強いならベル坊も気に入るのかなって」

 

なんか有りそうじゃん、メインヒロインの座を巡っての決闘みたいなの。

でもそれは女王がヒルダさん並に綺麗、もしくは可愛くないと起きないか…どうかな?

そう悩んでたら男鹿が急に手を掴んで走り出した。

 

「行くぞ古市」

「え、何処に」

「女王んとこ」

「はあ!?ちょ、まて、場所わかんの!?」

「勘で行く」

 

まじか…。

 

 

 

 

 

「男鹿辰巳、覚悟なさいっ!!アンタの悪行もここまでよ!!」

まじか…。

ホントにたどり着きやがった。

こいつ神崎の時も一発で場所当てたよな、こいつの勘やばくね?

 

「……あんたが男鹿辰巳?」

 

「……そうだけど?」

 

「………」

 

「?」

 

そんで…なんか女王さんめっちゃ困った顔してるんだけど。

てか奥の二人、黒髪の子はそんなに知らないけどもう片方の美人さんは大森さんじゃね?

 

「えっと、お久しぶりです、大森さん」

「ん?……ああ!あの遠征断った1年!」

「あの時はせっかくのお誘いを断ってしまい…」

「いやそれはいいんだけど…(相変わらずデカいわね)」ボソッ

 

やっぱ綺麗だなぁ大森さん、あのウェーブのある赤毛はすげー綺麗だし、特攻服やロングスカートでも隠せない程スタイルいいし。

隣の子も艶のあるストレートな黒髪に小柄な体躯が小動物感があってとっても可愛い、二人ともレベル高いな!

そんでその二人にも負けない美貌を持った大和撫子然とした女王さんよ…これホントにメインヒロイン争奪戦あるんじゃね?

 

「古市、知り合いか?」

「ほら朝話した遠征に誘ってくれた人」

「ああなるほど」

 

「…えっと、古市だっけ」

「あ、はい」

 

大森さんから話しかけられた、なんかあったかな。

 

「あんたがウチに着いてくの断った理由って、男鹿?」

「?はい、確かその時も言いませんでしたっけ」

「だってその時、世話しなきゃ生きていけない幼馴染がいるって…」

「はい、それが男鹿でででで頬引っ張るんじゃねー!」

「だーれが世話されなきゃ生きていけねーだぁ?」

「じっさいそーだろーが!わたひがどんだけ尻ぬぐひしたと思っへんだこら!」

「ぬがっりょうほうひっはるんじゃねぇ!!」

 

おのれ男鹿ぁ!!事実を言って何が悪い!!

お前のレジャー系だいたい私が払ってるだろーが!!

危うく無銭飲食するところを助けたの私なんだぞー!!

おらくらえダブル頬プレッシャー!!

 

「…あんたら、付き合ってんの?」

 

「「いや?」」

 

「………」

 

「…姐さん」

 

いや、何この状況、完全にケンカする流れじゃなくなっちまった。

さっきまで漏れてた女王さん…邦枝さんがビビったなんて飛ばしてた野次が、ただひたすらに男鹿を呪う呪詛ばかり聞こえる。

それでいて私の事凝視してるんだけど、ホント何?

えぇ、もしかしてこれ、私がなんかやっちゃったパターンですか?

 

「…一旦仕切り直しましょう、放課後、屋上で待ってるわ。逃げずに来なさいよね」

 

結局、邦枝さんにそう言われてこの場は解散となった。

 

…そんなことある?

 




※前書きでいってたやつです、本編とは何も関係がありません、いや元になったのだから関係はあるか…まあ次話には関係ありません。


○○○○


二度目の高校生活、葉桜も終わった心地よい日和。
友人と共に下校中、彼の誘いに乗り川辺のよく乾いた芝生で昼寝をしていた。

「……」
「…!」

今思えば、こんなにも穏やかな日は久しぶりではないだろうか。
喧嘩好きで悪名高い彼も、有名になる前はここでする昼寝が好きだった。

「…ぐぺっ!」
「…ぉら!!」

…何か騒がしい、商店街のおじさん達だろうか。
あの人達は今でもザリガニを釣りに川辺に行くのだ、心はいつでも少年だとよく笑いながら言っていた。

「ほげぇっ!!」
「おばっ!!」
「この鬼!!悪魔!!アバレオーっぽはっ!!」

…まぁ、そんなことはなかったのだけど。
彼は今日も絶好調らしい。

「全員土下座」

……酷いセリフだなぁ。



私の名前は石矢魔 緑里(いしやま みどり)、年齢15歳。
自宅は石矢魔の住宅街にあり、彼氏はいない。
『石矢魔高校』の1年生で、お泊り会以外では遅くても夜7時には帰宅する。
タバコは吸わないし、お酒も飲まない。
夜10時までには布団の中に入り必ず7時間は睡眠を取るようにしている。
夜8時から段々と部屋の中を暗くしていき、10時頃には間接照明だけになるように調整すれば簡単に眠れるようになる。
健康的にも美容的にも、睡眠程効果的なものはない。
キラーなクイーンを連れた殺人鬼のような言い方で、意識高い系女子のような内容を出してしまったが、割といい自己紹介ではないだろうか。

改めて、私の名前は石矢魔 緑里、石矢魔生まれの女子高生…となった転生者だ。

ある程度ダイジェスト気味に私のことを教えよう。
死ぬ前の私は…参てったよ、ほんと。
仕事が辛くても俺より辛い人は居るからって自分の疲労を無視しまくって、クラッと来たらもう終わりだった。
視界が真っ暗になったと思ったら体中が何かに押されるように、下手したら潰されると感じるほどに圧を加えられて、一気に解放されたと思えば響き渡る赤子の声。

あーはいはい、おけ、把握。

そっから私の赤ちゃん劇場よ。
あれだね、人ってこんなにも絶望しながらも生きていけるんだね。
あー…母乳ってこんな味だったんだぁ、知りたくなかったよ。
って頼む今世の父よ高い高いは勘弁してくれ洒落にならないほど怖い!
えぇいハイハイ出来るようになったからと飛び跳ねるでない父よ!笑って写真を撮るな母よ!
これが初の歩行でもお出かけでも起こる、成長して言葉を喋れるようになってすらこれだ、今世の両親は賑やかすぎる。

幼稚園に通えるようになった頃、海外で働いて暮らしているらしい祖父母と会った。
両親の艶のある黒髪とは違う私の綺麗で淡い()()()()()()は祖母譲りだったらしい。
祖父は喫茶店でマスターしてそうだなって思ったらほんとにそうだったようだ。
祖母はその手伝いをしているとか。
ただ店の場所は祖母の出身地である()()()にあるとかで、パスポートを作らないと行けないようだ。
マカオってどこだよって思ってたら顔に出てたのだろう、日本に近いけど海外だってすぐ教えてもらった。
おおぅ、海外…英語の勉強頑張るか。

地味に自分がクォーターだと判明したが日常には何も影響せず、平和な日々を過ごしていた。
だが問題が起こったのは私が幼稚園に通い慣れてきた頃。
柵の外へと続くアリの行列をなんとなく眺めていた時、なんとなくだが自分の状態を考えてしまったのだ。

元々私は男だった。
だが今は女児用のスモックを着た幼女だ。
もし私の自認が男だと、生前と変わらないと思うなら…。
今の私は、幼児のスモックを着た変態では?

そう思った瞬間、脳裏に急遽浮かび上がる精密な想像。
すね毛や胸毛がボーボーで、無精ひげの目立つ冴えない顔立ちの、悪い意味で中肉中背なおっさんがスモックを着て座り込みアリの行列を眺めている光景。

「っおぅふ」

一瞬吐きかけた。
そして私のハイライトが恒久的に家出した。

それからの私は何かするたびにそれをおっさ…生前の自身の姿で再現する想像がつきまとってしまった。
子供用食器で食事する(おっさん)
ピンクのリュックでお出かけする(おっさん)
幼児たちと追いかけっこする(おっさん)

一番キショかったのはトイレで小便をする(おっさん)だった。
おい誰にも需要なんてないだろこんなおっさんのふた○り放尿とか!!わざわざ()()()から出る所まで再現するなよバカがよぉ!!

そんな事もあって両親と幼稚園の先生にはかなり心配をかけてしまった。
そりゃ怖いよな、楽しそうに笑ってた子供の顔が急にスン…と無表情になるの。
すまねぇ、ほんとすまねぇ。
この想像を打ち切るために私は、今の自分は女の子なんだと常に自分へ言い聞かせた。
過去は過去、今は今。
どう足掻こうとも俺は私だ、女なんだって。
そのおかげで幼稚園を卒業する頃には、私の中に(おっさん)が現れることはなくなった。
…出てるなよぉ本当に。


○○○○


こんなんをやってたら他の方々はどうやってんのかな?ってネットの海に潜ると巨乳ネタで面白いのが多い事多い事!!
技術もない私がどうやっても10歩後ろを競歩もできんわ!!と絶望したのでさっさと形にして出したろってなったのがこの作品の誕生理由です。
暇つぶしにしてね!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。