銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!   作:Tkmraeua2341

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前話にこれと合わせて7話構成だよ!
あとこれ以降は文字数が減るよ!
期待しないんでね!
あくまでも暇つぶし程度に思ってね!



銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!2

「は?何言ってんだ?オレお前とケンカする気ねーぞ?」

 

この場は解散となろうとした時、男鹿がそう言い放った。

 

「はぁ…あんたにはなくてもこっちにはあんのよ」

「あん?オレお前らになんかしたっけ?」

「校内破損39件、病院送り70名以上、私達が居ない間にあんたが出した被害数よ。このままでは石矢魔は壊滅するとまで言われている、そんな悪の限りを尽くすあんたに鉄槌を下しに来たのよ!!」

 

「はぇー」

「………」

 

温度差!わかっちゃいたけど温度差が!

男鹿にとっては良くあることなんだろうけど、今ここでその返事はただの挑発と一緒なんよ!

ほら邦枝さん眉がピクついてるし後ろで聞いてた大森さんとかすげー眉間にシワ寄せてるし!

 

さっきまでの緩い空気どこ行ったよ!

完全に開戦直後じゃん!

放課後でっていう話流れちゃってるよ!

 

「はっ!」

 

横に一閃、今までの空気を全て切り裂くように振られた木刀によって、窓ガラスが切られた。

木刀でガラスを、一太刀で二箇所を並行に切られた窓は、ゆっくりとズレて下に落ちていく。

…木でガラスを切るなよ漫画の住民か!?

いや漫画の住民だったわ!!クソわよ!!

「赤ん坊をおろしなさい、それじゃ本気で戦えないでしょ?」

「オーッ」

 

それを見たベル坊がはしゃいでいる。

ベル坊の態度から男鹿は何かを確かめるように笑いながら、

 

「いいぜ、来いよ。このまま相手してやる」

 

半身の姿勢で挑発した。

…どうやら初めから邦枝さんが親になれるか試そうとしていたのだろう、途中変なことになったがこうして軌道修正できて喜んでいるようだ。

 

「…やっぱりクズ野郎ね、赤ん坊を盾にする気?それとも」

 

邦枝さんが一息に男鹿に近づく。

 

「私の事、ナメてんのかしら」

 

見えなかった、邦枝さんが木刀を突き出すのも、それを男鹿が避けるのも。

 

「やるわね」

「でもここまでです」

「えぇ、でるわ」

 

大森さん達の会話から大技が出るらしい。

そして、邦枝さんが構えを取ったかと思えば、

 

 

心月流抜刀術弐式

 

 

【百華乱れ桜】

 

 

壁は無残な姿に成り果てていた。

窓はガラスがなくなり窓枠は千切れ、コンクリの壁は中から半端に鉄筋を見せる歪なオブジェとなっていた。

轟音が鳴り響いた後、聞こえるのは、

 

 

「こえーっヒルダかよ」

 

 

余裕そうな友人の声だった。

 

「アー」キラキラ

「お、気に入ったかベル坊。よーしよしよしやっぱ女がよかったんだなー」

 

そう呟きながら邦枝さんに近づく男鹿、邦枝さんもすぐに応戦しようとするが男鹿のほうが早く、両肩を掴まれてしまう。

邦枝さんが攻撃を受ける覚悟をし、大森さん達が焦る中、

 

 

「こいつの、母親になってください」

 

 

男鹿が、プロポーズした。

 

 

「は?///」

 

 

 

 

 

 

『─…沖で発生した台風13号は 依然 勢力を拡大したまま 今夜半には関東地方に上陸するようで…』

 

ラジオの放送を聞き流しながら、私達は一旦中庭に移動した。

 

「なあ男鹿、確かに私もどこか煽るような事をしたのかもしれない。でもさ、急に告白はどうかと思うの」

「そんなんじゃねーよ、見ただろ?あの邦枝って女のすさまじい強さ、ベル坊も珍しく喜んでやがった」

 

真剣な目でこっちを向く男鹿。

 

「あいつにならベル坊も絶対なつくぜ」

 

…っけ。

 

「…ところでもうベル坊のミルクの時間じゃないか?」

「あ」

「まったく、貴様はいつになったらミルクを忘れずに持っていくのだ」

 

ヒルダさんがミルクを持って私達の所に来てくれた。

どうしよ、男鹿の家に寄っていった方がいいかな、ちゃんと忘れ物ない?とか聞いて…さすがにウザイなこれ、やっぱやめとこ。

 

「─ほう、なるほど」

 

男鹿が邦枝さんの事を話すと、ヒルダさんも興味が湧いたようだ。

ベル坊はヒルダさんに抱っこされながらミルクを飲んでいる、こうして見るとほんと母子って感じだ。

…ヒルダさんは良くて邦枝さんは引っかかるのはなぜじゃ?

んー?

 

「確かに男だろーが女だろーが強ければ坊っちゃまは懐くだろうな」

「だよな、よしっ」

「ふむ、まだこの学校にそれほどの人間がいたのか…一度会っておきたいな」

 

…あ、そっか。

邦枝さんの事、ほとんど知らないからだ。

だからまるで「誰よその女!!」みたいなのが渦巻いてたのか…じゃあヒルダさんの時みたく、仲良くなればいっか。

…それが一番難しい奴じゃね?

どうすっべ。

 

「っと、ベル坊、こぼれちゃってるよーほらハンカチあるから」

 

現実逃避がてらベル坊の世話をする。

綺麗にしようなーっと、声を出そうとして出せなかった。

ハンカチを持ってた手の甲になかなか感じたことの無い痛みが走り、ハンカチを持っていられず落としてしまう。

あまりの痛みに座り込み、原因はなんだと見てみれば足元に白いBB弾が落ちていた。

いやエアガンの威力じゃねーだろ、これ。

 

「キキッオガヨメ発見〜」

 

声のした方をなんとか見れば、ネクタイをしていることとズボン以外一切共通点を見つけられない5人組がいた。

 

「お…おい見ろ!!あれは!」

「エッ…MK5!!」

「奴ら停学がとけてやがったのか!」

「あまりの残虐さにこの石矢魔でさえ近づく者はいない」

「というか近づきたくない奴ら…」

「MK5!!M まじで・K 空気よめない・5人組!!!」

 

解説ありがとう校舎から眺めてる不良達。

…あ、ベル坊は大丈夫?ミルク瓶も無事?良かった…ん?ヒルダさんなんで私にベル坊をそっと渡すの?そんでなんでスっと消えれるの?てか横顔の表情が完全に感情の抜けたター〇ネーターなんて見たくなかったんだけど…移動する瞬間すら見えないとか人間やめて…そういやこの人悪魔だったわ。

 

「ヨメとガキの命がおしけりゃ」

「命を惜しむのは、貴様らの方だ」

 

ヒルダさんが敵のそばに現れたと思ったら次々と4人を倒していく。

 

「なっ…う、うそだろ!?」

 

それを見ていた喋ってた奴が後ずさりするも、その後ろにはもう男鹿が立っており、

 

「空気 よ め や」

 

瞬殺である。

ほんと、どんどん息があってくよねあんたら…。

 

 

 

 

 

「さて、古市の傷の手当も終わったようだし、その親候補というのを見に行くか」

「おう」

 

 

ペタッ ペタッ

 

 

「いやーすいません待たせてしまって」

「よい、偶然とはいえその身で坊っちゃまの盾となったのだ、誇るといい」

 

 

ペタッ ペタッ

 

 

「それより女王だ女王、今度こそ当たりだぜ」

「ほう」

 

 

スッ ペタッ ペタッ

 

一人の男が魔王達とすれ違う。

 

何かを感じとったのか、幼い魔王は男の後ろ姿を振り返った。

 

 

 

決戦はまだ。

 

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

 

「葵姐さん…」

「……な、何よ」

 

石矢魔高校二階の空き教室内で邦枝 葵、大森 寧々、谷村 千秋は昼食を取ろうとしていた。

そんな中、大森は立ち上がり、向かい側で弁当を広げている邦枝にじとっとした目線を向けていた。

 

「正ーーーー直に答えて下さい」

「…何なのよ」

 

大森は邦枝を問い詰めていた、その眼光は一切の虚偽を許さぬと訴えている。

 

「あの男鹿って奴の事、どう思ってます?」

「ど、どうって…べ…別にどーとも思ってないわよ」

「うそっスね」

 

邦枝は明らかに動揺していた、頬を赤らめ目線を顔ごと逸らしていた。

 

「あれからずっと心ここにあらずってカンジじゃないスか!知ってんスよ!まさか本気でホレたとか言うんじゃ…」

「ちょ、ちょっと待ってよ!!そんなワケないでしょ!?そりゃあまあ…確かにあんなこと言われてびっくりしたってゆーか、その、言うほど悪い奴には見えなかったってゆーか…あの赤ん坊もちょっとかわいいなーとか…思ったり」

 

墓穴である。

邦枝が指をもじもじさせながら喋る程に愕然としていく大森、それをサンドイッチを頬張りながらも真剣な目で見ている谷村。

 

「でっ…でもほら!!急に母親ってわけにはいかないじゃない!?ものには順序ってものが」

 

大森は思った、ダメだこれ…と。

「─姐さん、まさかうちらの掟忘れたわけじゃないっスよね…男 作るべからず!!先々代から受けつがれてきたレッドテイルの伝統!!男が出来る時はやめる時だけ!!それが今までチームの結束を固めてきた唯一無二の法律です!わかってんスか!?このままじゃ下の者に示しがつきませんよ!?それに男鹿には古市って一年が」

「寧々」

 

そこには、先程までの恋に振り回されている生娘の顔でなく、

 

「だから言ってるでしょ、それはないって」

 

組織の長としての顔があった。

 

「…信じていいんですね?」

「あたりまえでしょ?」

 

「おい見ろっ男鹿だ!!」

 

 

両者が真剣に見つめあう中、急に廊下が騒がしくなった。

そして男鹿の名を聞いた邦枝はピクンと一瞬で動揺し赤面していた。

幸か不幸か、廊下側を振り返っていた大森には見られていなかったが、谷村はしっかりと見ていた。

 

「騒がしいね…また男鹿?」

「しっ…仕方ないわね、見に行くわよっ」

「あっ姐さんっ!!」

 

すぐに走り出した邦枝に大森は慌て、谷村は(かわいい)と心の中で呟いた。

邦枝が廊下に出てケンカの現場を見に来た時には、全てが終わった後だった。

負けたのであろう5人の生徒の傍には男鹿と赤ん坊を抱えた古市…それともう1人、見慣れぬ女性が立っていた。

 

(えぇ!?ちょっと誰!?てゆーかなんであんなカンジで立ってんの!?あれじゃまるで、あ…相棒…?)

 

邦枝は混乱した。

 

「瞬殺だったなMK5」

「つーかこれやったのほとんど女の方だろ」

「ああ、まさに最凶夫婦だぜ」

 

(夫婦!!?)

 

邦枝は、さらに混乱した。

 

「ちょっと…夫婦って…どういう事…?」

「あ?知らねーのか?あのキンパツ姉ちゃんは男鹿の二人目のヨメだよ、いーよなーヨメが二人もいて」

「っておい!!」

「くっ邦枝ぁぁっっ!!?」

 

話しかけられた不良二人が振り返ると、そこには能面のように無表情でありながら全身から怒気を滾らせている邦枝がいた。

 

「へー…そーなんだー。一度ならず二度までも」

 

力任せに振られた木刀は荒々しく窓を削り、その殺意を示すようにズタズタになった。

邦枝は今、一つの事しか考えられなかった。

 

(オガ…コロス)

 

ここで、なぜヒルダの登場で邦枝がここまで怒り狂ってしまったのかを説明するならば、それは古市の存在の所為だろう。

言ってはなんだが古市もそこらの女には負けぬ程の美しさを持っていた。

スタイルに関しては出る作品を間違えている、ヨー〇ターへ行くべき。

そんな相手が気になった男の傍にいるのだ、気が気でなく烈怒帝瑠の部下にどういう存在か調べさせたのだ。

 

結果は、限りなくグレーに近い白。

 

部下の報告によると、

 

「古市は男鹿と幼馴染で、今でもお互いの家に遊びに行くほどらしいです、小学校から今まで一緒の学校だとか」

「男鹿が中学で頭角を現した辺りから人質として狙われることが多く、それを計画、行動に移した者はもれなく男鹿にヤラれたそうです」

「なんでもあの姫川も古市を人質にして男鹿に病院送りにされたとか」

 

「校内ではよく男鹿と一緒に赤ん坊の世話をしてるらしいです」

「ミルクをあげる所や抱っこしてあやしてる姿がよく見られています」

「その姿からアバレオーガの嫁にして母…"鬼子母神"、またはあの豊か過ぎる体型から"大地の女神(ガイア)"なんて呼ばれたりもします」

「しかし、目や髪の色から母親では無いと思われるようです」

 

これらのような情報から、邦枝は古市に対して勘違いをした。

 

邦枝にとっての古市は、たとえ危険な目に遭っても好いた幼馴染を放って置けず、いつの間にかこさえた赤ん坊に対し、子に罪は無いと好いた相手と恋敵の子を愛情もって育てる健気で聖女のような娘だと、そう勘違いをしていた。

そう、だからこそ男鹿を許せなかった。

こんな良い子に好かれているのに、それに慄きつつも負けたくないと思った自身を、馬鹿にされたようだったのだ。

あの時の告白(※違います)はなんだったのか、本当に私を貶めるだけの罠だったのか、どうしようもない程の怒りが邦枝の中で湧き続けていた。

 

まぁ、全て勘違いなのだが、本人はまだ気付けないでいた。

 

…余談だが邦枝は最近、例えるならニセ〇イのような少女漫画を追いかけている真っ最中、古市への妙な神格化は、この少女漫画のヒロイン達から影響を受けた結果である。

邦枝 葵、花の女子高生…思い込みの強いお年頃。

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

男鹿と校舎内に帰る途中、予想はついているけど男鹿に聞いてみる。

 

「で、男鹿よ、邦枝さんに魔王をおしつけるって一体どうするつもりだよ?」

「あん?」

「いやだって、確かに邦枝さんは強かったけど全然悪くなかったじゃん。まさか勝手にベル坊がなつくとか思ってんの?」

「………古市。男は、気合いだぜ」

「うるせーよ、よーするにノープランなんだろーが」

 

ヒルダさんが邦枝さんを探しに行った後、どうやって邦枝さんに押し付ける気なのか聞いてみれば、案の定だった。

 

「バカ古市、女王だぞ女王!?王!!魔王がなつかねーわけねーって」

「それ単なる渾名だから」

 

「男鹿ちゃーん」

 

 

歩いてる最中、1階の窓ごしに男鹿を呼び止める声がした。

 

「邦枝とやり合ったんだって?なんだよ早ーよ見たかったのに」

 

センター分けのサラサラストレートヘアに胡散臭さが消えない笑顔を浮かべた男が窓に寄りかかっていた。

確か神崎さんの所に居たよな、この人。

てことは先輩か。

 

「ま、でも決着つかなかったんだろう?あいつ強ーもんなー」

「…誰だっけ?」

「ほら神崎さんと一緒にいた」

「あとは東条だよなー楽しみだなー、なんせ石矢魔最強だもんなー」

 

すっげぇニコニコやんけ。

 

「石矢魔最強?」

「ああ、知らねーか?連中勢力争いに興味ねーから知らねー奴も多いけど、最強は間違いなく、東条だよ」

 

ここまでずっとニコニコで話す先輩、どうしてこんなに楽しげなんだ?

いや、ホントにこの状況を楽しんでいる?

やべぇなこの先輩。

 

「男鹿辰巳…」

 

風の吹く中、大森さんと谷村さんが話しかけて来た。

そういやラジオで台風13号が来てるって言ってたっけ。

 

「…ちょいと、ツラかしてもらおーか」

「オォ」

 

はいそこのスマイルマン!ワクワクしない!

 

 

 

 

石矢魔高校、屋上にて。

 

「男鹿辰巳、あんたは許さない」

 

台風の影響か、今にも雨が降りそうな曇天の中、相対するのは男鹿と邦枝さん。

邦枝さんは少しボロボロだけどかつてないほど切れていた、そのせいか幽鬼のような恐ろしさを醸し出していた。

 

「はっ上等だ。わざわざそっちから来てくれるたぁ、気がきくじゃねーか」

 

対する男鹿はいつも通り、とても数時間前にベル坊の電撃をくらったようには見えない万全さを見せていた。

もはや男鹿にとって電撃は日常の1つとなったのか…あいつ人間やめてんな。

 

「で、何を許さねーって…?」

 

男鹿が言い切る前に邦枝さんが横薙ぎに男鹿の顔近くを攻撃する。

驚きながらも避ける男鹿に殺気さえ放ってると思える眼光で男鹿を見据える邦枝さん。

 

「あんたの狙いは私でしょ?だったら最初から私の所に来なさいよ」

「狙い?」

狙いって…なんの事だ?

てかとんでもなく切れてるわ邦枝さん、一体何があったんだ?

 

「二人に何をしたの?あんなにボロボロになるまで」

「……ああ!別に弱い奴に用は無ぇからな、サクッとぶっとばしただけだせ」

「外道がっ!!」

 

そして振り抜かれる木刀、避けない男鹿、それを混乱しながら影から見る私。

二人…男鹿が言ってたのは神崎と姫川の事だろう。

でも邦枝さんのあの反応…まるで身内を殺られたような殺気…これ、すれ違ってない?

どうしよう、これ私に止められないだろ、大森さんを探してくるか?

いやでも男鹿とベル坊が心配だし…。

どうすっかなこれ。

 

 

 

 

 

─数時間前。

 

私とついでに先輩が見守る中、睨み合い対する四人…と一匹。

大森さん、黒髪さん、男鹿、ベル坊…そして猫。

ん猫ちゃん!?

 

「ん?」

 

男鹿の後ろではベル坊とトラ猫が威嚇し合っていた。

 

「ヴー」

「フー〜〜ッ」

 

一触即発、先に手を出したのは猫だった。

 

「シャーッッ!!!!」シュパパパパパ

 

鋭利な爪でパンチを幾つも繰り出す猫に対しベル坊が取ったのは、応戦。

 

「アダッ!!ダッ!アーダダダダダダダダ!オァダァッ!!」

 

北斗の星を背負いし世紀末救世主のような連打を見せベル坊は勝った、拳を猫に噛まれながら。

 

「……ヴゥ」

 

もはや泣く一歩手前である。

 

「ベル坊ーっ!!!!でぇい離れろこの性悪猫ちゃんがっ!!」

「ミ"ャァァ!!」

「いたっちょっいたたたたたっ!」

 

「「……」」

 

男鹿は結局自身の頭をかじられながらもベル坊から猫を剥がす事に成功した。

 

「ちょっと、勝負…」

「今それどころじゃねーよっ!!泣くなベル坊ーっ!!傷はあさいぞおぉっっ!」

「ヴーッ」

「あっこら!!待ちなさい!!」

「……」

 

置いてかれちゃったぜ。

 

「何だ、やんねーのか」

「…何なの、あいつ」

「ネコちゃん、かわいい」

 

ひとまずこの場は解散となった。

後あの黒髪の子とは話が合いそうだ、ん猫ちゃん!

 

 

 

「キキッつぶし合えつぶし合え、そーしててめーらが弱った所をオレ達がいただく、完璧な作戦だぜ。うまくいきましたね、美破さん」

「……」

 

やっべ上から今回の黒幕っぽい奴らの会話が聞こえるんだけど。

てかこれじゃあ大森さん呼びに行けないじゃん!

私の隠密力じゃあ絶対バレる!

ダンボールは、ダンボールはないのか!

 

「…何故?どうして攻撃してこないの!?」

 

おっと思考を現実に戻そう。

屋上の真ん中で相対する2人、男鹿はベル坊を片手で抱えつつもう片方の手でベル坊に血を見せないようにしていた。

そんな親のような行動を見た邦枝さんは一瞬止まるけど、すぐに切り替えたようだ。

 

「…っ何考えてるのか知らないけど…まだまだあの子達の痛みはこんなもんじゃないわよ」

 

心月流抜刀術壱式

 

【破岩菊一文字】

 

ドカァァンと派手な音を時間差で響かせる邦枝さんの技に、男鹿は倒れていた。

しかし、邦枝さんも消耗したのか息が上がり膝をついていた。

そんな時、屋上に男鹿に負けず劣らずのボロボロ具合な大森さんが上がってきた。

 

「姐さんっ!美破です!!美破の企みです!!」

「フフッ少し遅かったわね、チェックメイトよ」

「美破!!」

 

そうして流される今回の真相ってあいつら大森さん達に手を出したのか!?

おのれこの恨みはらさでおくべきか…あ、うん。

邦枝さん達の方は盛り上がってるみたいだけど、男鹿にトドメを刺そうとしてる男が男鹿によって殴り飛ばされて強制中断された。

「人がせっかくガマンしてんのに…邪魔すんじゃねーよ」

「なっ…あっ…」

「男鹿…っ」

 

ガコンッ!!!!

…もう何も言うまい。

 

 

 

 

さて、静かになるまで男鹿がめり込ませた後。

 

「ふー、やっと静かになったね」

「……」

 

今回の黒幕、美破は埋まっていた。

深く、まっすぐに、腰辺りまで。

下半身しか見えなくなった美破に、ベル坊は喜び男鹿は一息ついて邦枝さん達は絶句した。

ギャグ補正がなかったらヤバかったなこれ、脳裏にあのコックさんがよぎってくるけど…。

「ウィーーッ」

「おっベル坊も機嫌なおしたか、よしよしちょっと血ぃ流したくらいでもう泣くんじゃねーぞ?」

「ダ」

 

誰が見てもオーバーキルである、(°▽°)シンダンジャナイノ-?

 

「さて、と」

 

邦枝さんに向き直る男鹿、無駄に顔がいい。

 

「じゃ、続きをやろーか?」

 

「─…私の、負けよ」

 

「あん?」

 

「…いえ、そうじゃないわ。ごめんなさい、私…何て言ったらいいか…」

「そうか!!じゃあはい!!」

 

今までのやり取りはなんだったのか、当たり前のようにベル坊を差し出す男鹿。

 

「は…?はいって…?」

「あん?だってお前の攻撃に耐えきったらこいつの事もらってくれるんだろ?」

 

この言葉を聞いて困惑する邦枝さん、私もしてるわ…ホントいつの間にそんな話になったの?

いやはや、もうちょっとで普通に和解するって所で、こうだもんなぁ。

いつの間にそうなったって思うよなーわかるわー。

でも、

 

「もしうまくいっても、ヒルダさん絶対認めないよなぁ」

「わかってるではないか、古市」

「ヒルダさん!」

 

アイエエ!?ヒルダさん!?いつの間に!?

 

「まったく、あの男には失望した。残忍なだけがとりえだと思っておったのに女相手では手も上げんのか。まったくもって、クズめ」

「…あの、もしかしてずっと後ろにいたりしました?」

「うむ、貴様の「ベル坊泣かないかなぁ…泣いてない!成長!」とか「大丈夫、男鹿ならあれくらい大丈夫…」という呟き、しかと心に響いておったぞ」

「わぁああやめてぇっ!」

 

こうして、屋上での騒動は幕を閉じた。

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

「いつまで下らん話をしている」

ヒルダさんにからかわれている間に男鹿達の話し合いも済んだのだろう、そこを見計らってかどうかは分からないけどヒルダさんが話しかける。

 

「帰るぞ、その女は親にはなりえん」

「え?いやーでも…」

「さぁ坊っちゃま、参りましょう」

「アー」

流れるように男鹿からベル坊を抱き取りスタスタと歩き出すヒルダさん。

 

「帰ってお風呂に入りましょうねー」

「だっちょ…待てこら!」

 

男鹿にとっては他者にベル坊を押し付ける絶好の機会、諦めてなるものかと声を張るがヒルダさんは止まらない。

 

「待ちなさいっ!!」

 

が、邦枝さんの声には反応し振り返った。

 

「あなた、恥ずかしくないの?自分の子を人に押し付けたりして…」

「─フン、文句があるなら腕を磨いて出直してくるんだな」

 

もはや空は晴れたというのに、二人の間にはまだ雷がなっている。

間に挟まれる位置にいた男鹿は二人を見比べながら「?」を頭に浮かべ続けていた、一応お前も関係者だからな男鹿!

 

─で、次の日。

 

今日は大雨、男鹿と二人傘をさして登校する。

 

「結局、今回もダメだったな…」

「だが心配すんな古市、オレはあきらめん、次の目星もついてるしな!!」

「別に心配はしてねーけど…次ってーと、石矢魔最強…東条か?」

「おうよ!!」

 

「ちょっ待ってくださいよ!姐さん!!何やってんすか!!」

 

 

ふと後ろから、ここ数日は聞き続けている慌てた声が聞こえた。

 

「これくらい当然よ、私が浮ついたせいで皆に迷惑をかけたんだもの」

「だからって何もやめなくても…千秋!!あんたも何か言いなさいよ」

「……似合います」

「千秋!!?」

 

声からしてあのレッドテイルの三人。

 

「それに、前々から考えてた事なのよ、そろそろレッドテイルを寧々に任せてもいいんじゃないかって…」

「…姐さん」

「だから、カン違いしないでよね」

 

邦枝さんが止まってた私達の横を通り過ぎる瞬間、男鹿を見て、

 

「ケジメよ」

 

そう言いながら歩いていく特攻服ではない"普通の制服姿"の邦枝さん。

 

そして数歩進んだ辺りで立ち止まり、

 

「古市……あんたにも、負けないから」

 

そう言うと今度こそ歩き出した。

その後を慌てて追いかける大森さん達を後目に、私は男鹿の顔を見た。

何処までも困惑仕切った顔がそこにあり、男鹿の瞳に写った私も似たような顔をしていた。

 

男鹿はともかく、私はホントになんでだ!!?

 

 

 

夏休み、学生にとってワクワクしない事は出来ない三文字であり、社会人にとっては縁のない三文字だ。

そう、とうとう石矢魔高校にも夏休みが来たのだ。

我が古市家はそれを活用すべく家族で南の島へバカンスに行っていた。

もちろん私もリゾート地のプールサイドで優雅な読書を…していない。

 

はい、私こと古市ユキ、家族のバカンスについて行ってません。

 

まあなんだ、男鹿がベル坊を連れて来た日、私の部屋が爆散した訳で、その修理費を出した上で旅行代まで両親に出してもらうのは…こう、気が引けたのだ。

なお電気代や水道代は数日間ということ、健康に気をつけつつも節水節電を心がける事を約束した。

早めのうちにその事を話し、卒業後にするだろう一人暮らしをお先に体験する事になった。

もちろん両親も妹も心配してくれたが普段から家事を手伝っていた事も幸いして許可は出た。

なお、心配された一番の理由で男鹿との関係を言及されたりもしたが余談である。

ほのか、そんなに顔が真っ赤になるならそんなこと言わないの。

母はこの際押し倒しなさいとか言わないで、うちの思春期がカオマッカオになってるでしょ。

そんで父は一応とか言いながらゴム渡すの止めて、流石に引くわよ。

いや備えが大事なのは分かるけど…はぁ。

 

まあそんなこんなで始まった一人暮らし体験版だが、結構大変だ。

掃除はともかく洗濯では色移りなんかに気を使い、食事の内容に頭を捻り、電気代を気にしてエアコン温度を下げすぎないようにしてた。

中々に暑い日々が続くが我慢である。

そんなある意味充実している生活の二日目、男鹿が遊びに来た。

 

「古市!!市民プール行こうぜ!!」

 

 

 

 

 

「学生2枚」

「はい」

「まだかーあちーよ」

 

お天道様が真上よりちょい手前くらいの時間、セミ達の大合唱を背に男鹿と来た市民プール。

こういう施設での支払いは大体…ほとんど…てか全部私が出してる、男鹿の将来が少し心配だ。

むしろ私の将来の方が心配か?社会人になったらそのうちヒモ男でも拾っちまうのか?

…まさかな、中に入り更衣室で別れ早速着替える。

 

今日の水着は若草色のビキニに大きめの胸ポッケがある白Tシャツを着るスタイル、こうするとなんかビキニでも羞恥心が少なくなるのだ。

財布や家の鍵を胸ポケットの中に入れ外に出る。

私を迎えたのは楽しそうな声と外以上の熱気だった。

…涼む目的が果たせそうになかったが、楽しむのが目的ならちょうどいいだろう。

そう眺めていると先に出てたらしい男鹿がこっちに来た。

 

細マッチョに淡いオレンジ色の海パン姿な男鹿、そんで捕まる服がないはずなのにどうやってかぶら下がってる裸のベル坊。

 

「おー古市、待ってたぜ」

 

手を振りながら近づく男鹿…こうして見たら、子連れの夫婦のように見えてしまうのだろうか。

いや、流石にないだろう、てかベル坊なんか持ってる?おもちゃか?

 

「ひとまず日陰入る?」

「そーだな…こっちか」

 

人が多すぎてプールに入る気がなくなった私は男鹿を誘って端に移動する。

目的の場所に着いてすぐ、男鹿はベル坊を下ろして仰向けに寝そべった。

ベル坊はその横で持ってた物、サングラスを器用に掛けて寝そべっている。

日陰の場所だしそんなに心配は要らないだろうけど、太陽の下には出ないように見張っとこう。

両手を枕にし足を組んでリラックスしている姿は、まさに"満喫中"な姿だった。

 

「…男鹿」

「なんだー古市」

「もうちょいで昼飯だけど、ここで食べるの?」

「おー」

「…ベル坊のご飯は大丈夫か?」

「…やっべ」

「ありゃー…しばらくしたらすぐ帰るか?」

「そーだなー…もったいねぇが、ここで泣かれてもやべぇしなー」

「だなー…水買ってくっけど男鹿はなんか飲む?」

「んー…ラムネ!」

「はいよ、多分瓶のはないから缶ジュースのやつな」

「おう、それでたのむわ」

 

そうして自販機の前まで来たのだが、あるのはソーダの缶ばかり。

男鹿の事だからソーダと書かれているとちょいとガッカリしそうでもっと探す。

適当にペットボトルの水を買いつつ、やっとラムネのラベルを見つけた、財布を取り出しすぐに購入する。

ガコンッと缶が落ちる音が…二重に聞こえた、どうやらお隣の自販機で買った人とタイミングが重なったらしい。

ふと横を見れば、そこに居たのはワンピース水着の黒髪さん。

大森さんと一緒に居た子だ。

その子は私の胸元を凝視した後、自身の胸元を抑えながら「凶器」と言われてしまった。

いや、うん…なんかごめん。

 

「千秋ー!!そっちの席座ってるわよ…ん?」

 

そして、両手に焼きそばを持ったビキニの大森さんがやってきた。

 

「あんた…」

 

ひとまずここは穏便に、と思い会釈して去ろうとすれば呼び止められ、一緒のテーブル席についていた。

 

「えっと…ご用件は?」

「なに、ただあんたとお話しようってだけよ。だからそんな身構えなくていいわ、古市」

「はぁ…」

「そういえばあんた、千秋と知り合いだっけ?」

「いえ、中々機会がなくて話せなかったですね…初めまして、1年の古市 ユキです。同学年?」

「ん…谷村 千秋、1年…千秋でいいよ」

「なら私もユキで」

 

「私も寧々でいいわよ、ユキ」

「あら、ありがとうございます寧々さん」

 

そっか千秋さんに寧々さんか…聞いた事あるかもしれない。

そりゃそうか、烈怒帝瑠(レッドテイル)のトップなんだしどっかの噂を聞いたんだろうな。

 

「よう古市じゃねーか、久しぶりだ…うわデッッッ!!」

 

声のした方を振り返ると、ガラの悪い四人組がいた。

 

「…でっかくなったなぁおい、お連れさんもキレーだなー、オレらに紹介しろよ」

 

話しかけてくるのは高島という私と男鹿が通っていた中学の先輩で、今は西高の頭をしているんだったか。

 

「知り合い?」

「中学の頃にお世話になった先輩で確か今は西高で頭はってるとか」

「そうそう、かなり世話してやったよなぁ」

 

少しおだてるように言うとすんなりと乗ってくれた、上手いこと穏便に…そう思ってたら取り巻きの二人が寧々さん達の背後に回ってた、頼むからなんもすんなよ…。

そう念を送ってたがどうやら届かなかったらしい、取り巻きと高島が楽しそうに話す。

 

「ひひっ気をつけた方がいいよー、こいつ根っからのたらしだから(うわデッッッ!!)」

「そーそー、男も女もいける両刀よー?ビッチも真っ青なヘンタイさ(デッッッ!!)」

「まあでも安心しな、こいつ、オレ達には頭あがんねーから(たった一年でこれかよ…逸材じゃねぇか!)」

 

バシャ。

 

高島が言い終わったあたり、そう、その汚い手を寧々さんの肩に乗せた時、私は高島の顔に水をかけてやった。

私の飲みかけ、こんな間接キスは嫌だろう。

前髪を手で上げて垂れる水をぬぐいながらこちらを見る目は、完全にキレていた。

 

「…てめぇ、何のつもりだ?」

 

「いやーアツイッすねー先パイ、

 

─頭冷えました?」

 

一瞬の沈黙、最初に声を上げたのは取り巻きだった。

 

「てめぇこら古市!!」

「ナメんなよウシチチ女!!」

「何だそりゃ!?ぶっ殺されてーのか!?あ"ぁ!!」

 

「…待てよ」

 

それを止めたのは表情を取り繕い笑顔を作る高島。

 

「高島さん…」

 

「変わってねーなあ古市、弱い奴の前ですぐかっこつけるそのクセ」

 

言いながらこちらに近づく高島、手の届く範囲までこっちに来たら腕を伸ばし胸倉を掴んできた。

おいやめろよTシャツ伸びちまうだろ。 

 

「てめぇ、それで痛い目にあった事、まさか忘れたわけじゃねーだろーな?ククッ、ケッサクだったよなーあん時のお前…」

 

「ちょっとあんたいい加減に…」

 

一触即発、寧々さんも千秋さんもすぐに動けるように体制を整えたその時、

 

 

 

「おい古市、ラムネ買うのにいつまでかかってんだ」

 

 

 

「な、男鹿!!?」

「男鹿だと…クソ、おいひくぞ」

「高島さん!?いくらあいつがアバレオーガとはいえ四対一なら…」

「馬鹿野郎!!あいつは正真正銘のバケモンだ…たとえこっちが20人いようがやられちまう!!」

「な、ならせめて古市だけでも…!!」

「おさえろ…今は…古市、おぼえとけよ…!!」

 

そう言って高島達は帰って行った。

なんというか、こう…

 

「小物ね」

「…はい」

 

言われちゃった、でもこういう所が高島が西高で頭をやれてる所じゃないだろうか。

危機察知の高島か…フフ。

あ、そうそう。

 

「ナイス男鹿、これラムネね。追加でハンバーガー奢る」

「お、サンキュー…古市これちょいぬるいぞ」

「文句言うなよ、バーガーにコーラ付けるから」

「やりぃー」

「ダー」

「おっとそうだなベル坊ー、ベル坊のためにも早く帰らないとな、サッと買ってサッと帰るか」

「ウィー」

「あーあ、もったいねーなー」

「昼飯の後に来れば良かったなー」

「だなー」

「あ、寧々さん、千秋さん、私達はこれで失礼します」

 

「ええ、それじゃあね」

「…バイバイ」

 

持つべきものは、悪魔のように強い親友だなー、なんてね。

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

─古市家にて、

 

「ただいまー」

「はー疲れた、やっぱこっちは蒸し暑いわねー」

「ユキー、ユキー!!いるんだろう!?返事しなさい」

 

古市一家が旅行から帰ってきた時、それは起きた。

 

「何だいるんじゃない、電気もつけないで」

「確かに節電は大事だと言ったがそこまで辛抱しなくても良かったんだぞ?」

「お姉ちゃんただいまー!お姉ちゃんの好きなドライフルーツ買ってきた!」

 

古市の家族たちは愛娘を、敬愛する姉を見ようとしたが、目に映ったのは彼女(ユキ)だけでなく、

 

「…お…」

 

「お帰りなさいませ」

 

筋骨隆々でダンディな口ひげをした、異国風の男性もだった。

 

 

(((誰!?)))

 

 

「─改めまして、今日からこちらでお世話になります、バティム・ド・エムナ・アランドロンと申します。不束者ですがよろしくお願いいたします」

 

まずは自己紹介を、と言ったアランドロンが流れるように座っていた椅子から離れ、家族に正座し両手をついて頭を垂れつつこう言った。

 

「いや、まてまて、まてまてまてまてまてまてまてまてまて」

 

「この国ではこうするものだと聞きました」

「まって!!色々間違ってるし私は最初から反対だから!!」

「それは困りましたなぁ、相談に乗るとおっしゃってくださったのに…」

「言ってない!今はどこで寝泊まりしてるんだ?っとしか言ってない!!」

 

あかん、プールの後、ふとアランドロン何処に宿泊してるんだろうと気になって見かけた時に話しかけたのが仇になった、くっそやろうが!

 

「いえね、我々がこちらに来てはや数ヶ月、私もそろそろどこかに腰をおちつけねば…と。しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い、かと言ってこの国には我々のつてなどありはしない。そう思い悩んでいた矢先…あなたに声をかけられたのです。主君やその親候補の男鹿殿への献身さも鑑みて、ああ、この方にならこの身を預けてもいいのでは…と」

 

「なんでそこでそうなるんだてめー!!」

 

それからは交渉を両親とバトンタッチしたのだが、ホームステイのような形でうちで預かる事になった。

…どんな話術を使ったんだよこの次元転送悪魔ァ!!

 

それから数日後、アランドロンは結構うちに馴染んでいる。

家事の手伝いを積極的に手伝い、買い出しの荷物持ちもよくかって出てくれる。

家事が終わり暇になったらリビングで韓ドラを見るようになってて、こいつうちに…日本の家庭に馴染みすぎるだろと思った。

しかもリビングで見るせいで家族にも韓ドラブームが起こってしまった。

今は「馬医」で次は「トンイ」らしい、うん何が?

 

 

 

 

そんなこんなでアランドロンがかなり日常になってきた頃、男鹿から連絡が来た。

 

「いなくなった?ヒルダさんとベル坊がか?」

「おう、朝起きたらきれいさっぱりよ」

「さっぱりって…」

 

男鹿の家に着いて部屋にあがると、ヒルダさんとベル坊が消えた件について話された。

まじか…長期休暇中だし里帰りとか?

 

「てかベル坊とそんなに離れて大丈夫なのか?泣かれて1発アウトだったり…」

「たつみーっ!!」

 

そう喋ってたら男鹿のお姉さん、美咲さんが男鹿に飛び蹴りでダイナミックエントリーしてきた。

椅子から落ちた男鹿を掴みあげさらにしばいていく美咲さん、この人も大概やべー人だ。

 

「あんな出来たヨメさんどこ探したっていないわよっ!!」

「姉き」

 

ゴキ

 

「わかってんの!?」

「ちがっ」

 

バコ

 

「どーせつまんない事して愛想つかされちゃったんでしょ!!」

「ちょ」

 

ドゴ

 

「こんなざまでユキちん巻き込んで!!一緒になるなんて許さないわ!!」

「は」

 

ゴシャ

 

「あやまってきなさい!!」

 

そしてペイっと家から投げ出される男鹿と私…なぜ私も?

 

「いいっ!?ちゃんと捜して連れてくるまで家には入れないからね!!」

「あいかわらずおっかねーお姉さんだ」

「まったく、せっかく手に入れた自由だぜ、誰がわざわざ捜すかってんだ」

 

そう言いつつ歩く男鹿と私、あの後しばらくして美咲さんからメールで、

 

『さっきは相手できなくてごめん たつみの見張り兼手伝いよろしく』

 

と送られ、元々そのつもりだったが男鹿と同行している。

セミの声が響く、朝というには遅く、昼というには早い時間帯。

 

「で、どっか心当たりとかねーの?」

「知らん!…だーっ、あっちーな、川原にでも行くか」

 

…素直じゃねーな、川原っつったら、

 

「おーい早くこいよ」

 

ベル坊と初めて会った所だろ?

 

 

 

 

「よ…うわデッッッ」

 

「お前…」

「あー…いいもん見た。東条さーん、来ましたよー東条さーん!!」

 

「おーいまいく」

 

気の抜けた声で返事をしながら、奥の茂みから男…東条さんが出てきた。

…石矢魔に入学してしょっちゅう思うことなんだけど、在校生のうち何割かはもう成人してたりしない?

目の前の丸サングラスの東条さんのご友人らしい人とか、まじでどこの組の方ってなる。

「ほーう、なるほど。お前が男鹿か…」

 

東条さんは、男鹿よりも大柄だった。

引き締まった無駄のない体格、しかし全身を覆う筋肉は鎧のように隆起しており、髪色も相まって野生の虎のようだった。

けれど、男鹿と私がもっとも注目したのは、

 

 

「ケンカ、しようぜ」

 

 

東条さんの背にいる、ベル坊だった。

 

 

 

 

 

「……」

 

男鹿…むかついてるのか…?

目元の凄みが増してるし、拳を握りしめてるのか震えている。

大丈夫かな…。

 

「……ら…ラッキー」

 

大丈夫じゃなかったわ。

いや、これかなり混乱してないか?

今までの、ベル坊を人に押し付けようとしてきた時のクズさ全開の笑顔を浮かべられてない。

頬は引き攣り、冷や汗を流しまくり、何処か瞳が揺れているようだった。

結構付き合い長いが、ここまで慌てた所見るの初めてじゃないか?

 

「うへへへ見たまえ古市君、なんか知らんがあのクソガキ東条にひっついているのですぞ、バカだバカ」

 

ですぞってお前…。

 

「押しつける手間が省けたってもんだ、帰るぞっ!!」

「お、おいっどこ帰んだよ!」

 

男鹿のやつ、川の方に入って行きやがった!

 

「あ?バカ帰るっつったら家に決まってんだろ」

「そっちは川だ!」

「ばかやろうっ!川だって家だ!!!」

「なわけあるか!!」

 

 

 

「ハハッおもしれー野郎だな、なあ庄次、ありゃあ大物だぜ」

「……どーすかね、別に止めやしませんがね。オレには…東条さんが相手する程の奴には見えませんでしたがね」

「…フッ、そいつはやってみてのお楽しみだ」

 

 

 

 

「落ち着けって男鹿」

「オレは落ち着いてるよ!!」

「いいから、まずは確認が先だ。ベル坊は本当に東条さんの下に行ったのか…いや、そもそもあれは本当にベル坊なのか。あせるのはそれを確かめてからでも遅くないだろ」

「…だから、別にあせってなんか…」

 

ええいまどろっこしい!

 

「東条さん!!一つ聞いていいっすか!?背中の子って東条さんの子っすか!?」

「あん?」

「最近拾ったとかくっついて離れないとか!そーいうわけじゃないですか!?」

「あぁ…こいつか?……そうだな、オレに勝ったら教えてやるよ」

 

あーもう、このバトルジャンキー!

こんな奴らばっかかよー!!

 

「だからほら、さっさとやろーぜ」

 

 

 

「…ふざけんなよてめー、赤ん坊背負ったままケンカする気か!?」

 

 

 

「ん?あぁ…」

「……」

 

お前…いつもしてんじゃん。

 

「庄次ちょっと頼むわ」

「うす」

 

あ、あの丸サングラスさんは庄次さんって言うのか…。

いやだからなんだって話だけど。

 

東条さんと男鹿が向かい合う。

東条さんがかなりバトルジャンキーな事を言ってるけど、最後の「…いくぜ」で両者は動く。

多分、二人とも右ストレート。

ガキンッ!という音と共に吹き飛んだのは、男鹿。

川まで飛ばされたが、男鹿は終わってない。

すぐに起き上がりスタスタと歩いていく男鹿、立ち止まったのはさっきと同じ場所。

まったく、負けず嫌いだなぁ。

 

 

 

「…らぁっっ!!」

 

 

 

二回目の衝突、吹き飛ばされたのは、東条さん。

こちらもすぐに起き上がったが、かなり笑顔で見てるこっちが怖くなる。

また先程のように向き合う両者、始まったのは、ケンカというより力比べ。

お互いまた右で殴り合い、飛ばされぬように踏ん張り合い、次の拳を抑え合い、同じタイミングで頭突きし合う。

まるで鏡合わせのように動く二人、お互いに頭から血を流しながら、威嚇する男鹿と、心底楽しそうに獰猛に笑う東条さん。

 

ここまで来て一旦離れた両者、一息つくように話される東条さんとベル坊の関係。

 

ただ拾っただけ、との事。

 

だが男鹿はそんなこと聞いてねぇと叫び東条さんへ仕掛ける。

何発も殴り込み偶然か必然か、東条さんの裾を破りとる。

男鹿は動きを止めてしまった、東条さんの右肩に、ぜブルスペルがあったから。

 

だからだろうか、次に放った東条さんの拳を、男鹿はまともに受けてしまった。

男鹿は、天高く打ち上げられ、対岸側の川に落ちていった。

 

「…ふむ、こんなもんか」

「男鹿!!」

 

走る、走って、走って、飛び込む。

水しぶきのあった場所まで、泳ぎ続ける。

 

初めて見たから。

 

男鹿が吹っ飛ぶところ、前世でも見た事がない、人が何百メートルも吹っ飛ばされる所。

だから、冷静になれなかった。

必死に、全身を濡らし、泳いで行って、

 

「……くそっ!!」

 

悪態ついて、座ってる男鹿を見て、止まれた。

…はぁー、心配させやがって。

 

「男鹿、ひとまずうち来い、シャワー浴びよう」

「……おう」

「男鹿…」

「……なんだよ」

 

「男鹿はまだ、負けてねぇから」

 

「……」

 

 

 

 

 

あの後、男鹿を連れて家に帰った。

男鹿のシャワーの間に男鹿と私の分の着替えを用意して、お昼の残りの味噌汁を温めておく。

男鹿が上がると今度は私が入り、手早く済ませる。

ソファでくつろいでる男鹿の前に味噌汁と白米、ついでにすぐ作れるツナマヨを出した。

無言で食べる男鹿。

向いに座って私も食べる。

大丈夫、大丈夫。

 

男鹿が飯を食い終わり、男鹿の家に帰るのを見送る。

これから男鹿は、絶対に東条さんと一騎打ちをする。

ならそれに合わせて、私は出来る事をしよう。

 

男鹿を見送った後、部屋の隅に置かれたクーラーボックスを引っ張り出す。

あの姫川に攫われる前、結局魚を入れることなくお役御免となったこれ。

これを外側をある程度、中をしっかり洗ってタオルで拭く。

乾かしてる間に動きやすい格好に着替えて財布とクーラーボックスを手に家を出る。

 

夜中の2時、買い物の後、向かったのは男鹿の家。

男鹿は今日、絶対動く。

あの負けず嫌いが、やられっぱなしで大人しくしてるはずがない。

 

って、おろ?

 

「男鹿と…城山さん?」

「お前は、古市か」

「どうしたんですか城山さん、男鹿と歩いてるなんて」

「…とにかく着いてこい、今話しても二度手間になる」

「はぁ…男鹿はなんか聞いてんの?」

「いや、東条がらみで話があるらしくてよ、それからはついてこいの一点張りなんだよ」

 

そうしてたどり着いたのは夜の石矢魔公園の水辺広場。

そこにいたのが、

 

「―と、言うわけでだ」

「しょーがねーからてめーも仲間にしてやるよ」

「東条をぶっ倒しにいくぞ」

 

「…は?」

 

ボロボロになってる神崎さんと姫川だった。

え、何があった?

 

「は?じゃねーよ、わかってんだろ?」

「オレ達が力貸してやるっつってんだ、いくぞ」

 

何この最終決戦みたいなセリフ、いつ共闘フラグ立ったの?

 

 





拙い文ばかりでごめんね!
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