銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!   作:Tkmraeua2341

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ストックがある……なんていい響きだ!
ひゃっはぁぁ我慢できねぇ!!
あるだけ出すぜ!!



銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!3

「いいか?勘違いするなよ、てめーもぶっ殺してやりたい所だが、今は東条が先だ」ドンッ

「―あぁ、あいつだけはさっさとやっちまわなけりゃならねぇ。ここは一時共同戦線といこうじゃねーか」ドドンッ

 

「―いや、別にいいです、一人でやるんで」

 

……。

あー…。

どうしよ、場の空気が凍っちゃったよ。

 

「いいか?勘違いするなよ、てめーもぶっ殺してやりたい所だが、今は東条が先だ」

「―あぁ、あいつだけはさっさとやっちまわなけりゃならねぇ。ここは一時共同戦線といこうじゃねーか」

 

(うおっ!!リピート!?)

(やべぇよ男鹿!これ「はい」を選ぶまでストーリー進まねぇ奴だ!!)

(ドラクエか!!)

 

久しぶりにテレパシーっぽいのしたぞ!

 

「すまん、本当はお前の力が借りたいんだ」

「あぁ!?なんだそりゃ、ボロボロのくせしやがって」

 

…まぁ紆余曲折あったが、

神崎 と 姫川 と 城山 が 仲間 に なった !!

 

 

 

 

 

東条さんは学校に居るらしい。

皆で向かってると庄次さん…神崎さん達に教えてもらったが苗字は相沢(あいざわ)さんらしい…兎も角相沢さんに話しかけられたり、石矢魔の不良達に囲まれたり、男鹿(とついでに神崎さんと城山さんに姫川…さん)が瞬殺したりしながら学校へ向かった。

私?クーラーボックス両手にしゃがんでたよ、荷物を持った荷物だったからね。

 

そしたら、石矢魔の男子生徒がほとんど来ていた。

そしたら戦争だなんだと大騒ぎ。

なんともまぁ。

 

「―まったく、笑わせるわね」

 

囲まれて襲われる瞬間、私達を守るように衝撃が走る。

 

 

「たった一人の一年生を目的にほとんどの生徒で囲んでおいて、誇りだの戦争だの…恥を知りなさい」

 

 

「「…れっ!烈怒帝瑠!!!」」

 

「…邦枝!!」

 

邦枝さん率いる烈怒帝瑠がこちらに駆けつけてくれた。

…待って烈怒帝瑠の皆さん皆綺麗!!

今じゃないって分かってるけどホント綺麗!!

え!?もしかして烈怒帝瑠ってレディース系のアイドルグループでした!?

 

「お前…なんで…」

 

ヒュッ…ピタッ

 

「いきなさい、ここは私が引きうける」

 

あ、好き。

凛々しい女子って…いいよね。

 

 

 

 

さて、寧々さんと千秋さんがそれぞれの得物(鎖と改造エアガン)で二年幹部とMK5を瞬殺したり、邦枝さんがリアル戦国無双したりして切り開いた道を男鹿と進む。

神崎さん達とは花火が打ち上がった辺りから別行動となった。

男鹿はタイマンしかしないだろうしいいんだけど…それよりなんで花火が?

 

まぁいいか、目の前には男鹿と東条さんがグラウンドで一騎打ちのように相対していた。

それを木陰用の木の下でクーラーボックスを椅子にして眺める。

そうそう、このクーラーボックスの中身は使い捨てのポリ袋で作った簡単氷嚢(アイスバッグ)が5個、水とお茶のペットボトルが6本、ソーダとコーラが4本、そして防水バッグに入れた包帯やガーゼ、消毒液や絆創膏なんかの応急品を入れている。

 

「早いな、古市」

「ヒルダさん!いつの間に!」

 

改めて中身を確認してたら、枝の上にヒルダさんが腰掛けていた。

絵になるなぁ…じゃなくて!

 

「今までどちらに?男鹿からは急に居なくなったって…」

「たわけ、医者を連れに魔界に帰っておっただけだ」

 

そのセリフと共に幹の向こうから女の子がヒョコっと出てきた。

ピンク髪で中学生くらいの可愛い女の子。

そして頭と足元に情報量が少ないスライムっぽい生き物が側に居た。

頭のちっちゃいのもだけど、それよりも大きくてシルクハットを被ってるのとか、ムー〇ン村から連れてきたんですかって感じがする。

これが医者か…魔界の医者ってもっとおどろおどろしい感じかと思った。

 

「フーン、あんたが人間界でのベルゼ様の家来?ちょっとは気が利くみたいだけど、調子に乗らないでよね」

 

と、トゲトゲしてる…やばい、そっち系のお姉様やおじ様が好きそう、その手のわからせ好きの人に大人気そう…。

 

「待てラミア、家来ではあるが、正確には侍女見習いだ」

 

まって私もうそれに固定なの?侍女見習いで固定されてんの!?

 

 

 

 

 

「話は聞いたぜ、男鹿辰巳」

 

私の疑問はほっぽって話は進む。

東条さんが話してる内容は、ベル坊が男鹿の子だと聞いた事、川原で動揺してた理由、今すぐベル坊を返すか、それを取り返す方があがるかってこと。

相手の本気を引き出させたい東条さんらしい言葉だ。

それを男鹿は、

 

 

「どっちもごめんだね」

 

 

笑いながら一蹴りした。

 

 

「オレはオレの為に戦う」

 

喋りながら東条さんに近づく男鹿。

 

 

「第一そいつはオレのガキじゃねー、てめーと同じで拾ったから預かってた、それだけだ。オレの所に戻ってくるか、てめーにひっついてるか」

 

 

向かい合う二人、以前と違うのは、その間にベル坊がいること。

 

 

「それは─こいつ自身が決める事だ」

 

 

一瞬の間、そして、

 

 

 

 

「アー」

 

 

 

 

たった数日なのに、懐かしく感じるほど待望していたベル坊の声が聞こえ、

 

 

 

 

「アー」

 

 

 

男鹿の方に向かい、右足にひしっとしがみつき、男鹿を見上げた。

 

 

 

「ベルぼ…う!!」

 

 

 

そして、ありえない速さで男鹿の顔面まで登り、正面を向いて両手の握りこぶしを天に上げ、

 

 

 

 

「ダーーーーーーッ!!」

 

 

 

 

元気な雄叫びを空に響かせた。

 

 

「あはっ戻りましたね!」

「あぁ」

「どうやら正常に魔力が流れ出したようだな、これで一安心という所か…」

 

騒ぐ医者少女、相づちする医者スライム、そしてヒルダさん。

 

 

 

「うむ…」

 

 

 

ヒルダさんのその一言に、どれだけの思いが詰まっているのか、私には分かりきれないだろうけど、

 

「ほんと、良かった」

 

そう、思うんだ。

 

 

 

 

 

さて、感動の再会であったが、ここはギャグの世界でもある。

つまりいつまでもこんな感動的な空気は続かないのだ。

 

「アーアー」

 

ペチペチと男鹿のこめかみを叩くベル坊。

 

「ダーダー」

 

今度は右の目の横と左頬をグイグイ引っ張るベル坊。

久しぶりだからかテンションが高い。

 

「だぁーーうるせぇベル坊!!離れろてめぇぶち殺すぞ!!」

「オー」

 

余裕だ、男鹿が頭を振ってベル坊を振り払おうとしてもその両手をがっしり離さないベル坊、なんかあれすら楽しんでないか?

 

「よかったなこのやろう」

 

東条さんのその言葉で男鹿もベル坊も一旦落ち着く。

東条さんに注目した二人、すると急に木々で休んでたらしい鳥たちが飛び立った。

 

「─じゃあ、とっととケンカ、はじめようぜ」

 

今までの優しげな雰囲気が消え、表情や気配が猛獣のようになる東条さん。

ただの人間のはずなのに、オーラが立ち上っているようだった。

 

「またてめーと闘いたくてうずうずしてんだ、さっさとそいつを下ろせ男鹿」

「ああ」

 

男鹿がベル坊を端の方に下ろしに行く間、医者少女が花火の筒を見に行ってしまった。

やはり人間界のものが珍しいのだろうか、彼女は好奇心が強いらしい。

そうしてる間に男鹿はベル坊を下ろし、一対一だから誰も邪魔しちゃいけない、しっかり見ていろと言い聞かせていた。

つまり、男鹿はこの勝負で悪魔(ベル坊)の力を使わない、ベル坊なしでも東条さんに勝ってみせると言ってのけたのだ。

 

 

 

 

川原の時のように向き合う二人、お互いに駆け出し拳を握ったが、男鹿はストレートに殴るのではなく、裏拳を放った。

それに固まる東条さん、その間に腹に数発殴り込むと飛び蹴りを放つ男鹿。

東条さんはそれを額で受け止めた。

 

「まじかよ」

「いいなぁ、やっぱお前最高だわ」

 

東条さんの反撃、いや一方的な蹂躙が始まった。

殴るだけで吹き飛ばす、すぐに距離を詰めてのドロップキック、獰猛に笑いながら繰り出す両腕での連打に男鹿も追い詰められていく。

しかし隙を見て放った右腕で、東条さんにかつてない程のダメージを与えたようだった。

不思議に思って男鹿を見てみると、右手の甲にはかつてないほど大きく光るゼブルスペルがあった。

 

瞬間、医者少女が筒を倒し、花火が男鹿達の方へ発射された。

 

「男鹿ぁぁ!!」

 

反射的に叫ぶ。

火の玉と化したそれに右手をかざす男鹿、目を覆うほどの光の後、ドパァン!!と音が遅れて聞こえた。

瞑ってしまった瞳を開けてみれば、男鹿や東条さんに傷はなく、男鹿の後ろに炎が広がっていた。

 

それに驚くが、男鹿は右手を見た後、

 

「ベル坊っ!!」

 

「アウッ」

 

ビクッと震えるベル坊、それだけの怒気と迫力を男鹿が放ったからだ。

 

「…てめぇ、邪魔すんなっつってんだろ」

 

ベル坊に顔を向ける男鹿。

その表情は、かつて見ないほどに怒っていた。

 

「聞こえねーのか、とっととこいつをひっこめろっつってんだよ」

「……アウ…」

「てめぇふざけんなよ、オレが負けるとでも思ってんのか」

 

ベル坊の側まで向かう男鹿。

 

 

「負けねぇよ、絶対」

 

 

目を合わせ続ける二人、その二人…いや男鹿に切れる医者少女。

言ってることは事実なんだが、聞かないだろうな、あの状態の男鹿は。

 

 

 

「何度も言わせんなよベル坊。こいつはオレの戦いだ、てめぇが水さしていいもんじゃねぇ。それにな、

 

─こんなもんなくても、オレはどこにも行きゃあしねーよ」

 

 

ベル坊は、ゼブルスペルを消した。

 

 

 

再開した男鹿と東条さんのケンカは、空が明るくなり始めても続いた。

二人の至る所が血だらけで、息は上がりっぱなしだった。

一歩踏み出すだけでふらつくが、また駆けていく二人。

 

「勝つのはオレだっ!!」

「おおおおっっ!!」

 

男鹿は右腕を振り上げていたが、東条さんは…飛び蹴り。

東条さんの右足が、男鹿のみぞおちに入った。

終わったと、思った。

が、蹴り終わり、体制を整えるために男鹿に背を向けた東条さんは男鹿が両腕を伸ばしているのに気付いていなかった。

 

「うぉおおおぉおっっっ!!!!」

 

東条さんを抱え背後にのけぞった男鹿は、東条さんの頭部を地面に叩きつけた。

倒れ込む二人、しかし、座りながらも。

 

男鹿は、身を起こした。

 

男鹿が、勝ったのだ。

 

「男鹿、おつかれ」

「古市、まぁ見ての通りだ、借りは返したぜ」

「ああ、見てたよ。さ、まずは傷の手当だな、氷嚢もジュースも買って来てるからな。ベル坊も久しぶり〜」

 

「おう」

「ダ」

 

男鹿がベル坊の所まで行って勝った宣言が済んだ後、私は男鹿の所まで行った。

 

 

 

 

「昔、憧れた男がいた」

 

帰ろうとする雰囲気を感じ取ったのか、独り言のように話す東条さん。

 

「こいつはそいつをマネて、そいつみたいになりたくて入れたイレズミだ」

 

「…」

 

話された内容は、男鹿以外にも契約者がいた事、この学校は男鹿のものになった事だった。

しかし、それをしっかり聞き続けることは出来なかった。

 

 

「さっきから腕がもげそーなんですけど」

 

 

男鹿の右腕が、ありえないほど肥大化していたからだ。

 

 

「ア"ーーーーッ!!!!」

 

「いかんっ!坊っちゃまが興奮しておられる!!今までたまりにたまった魔力が全てあの右腕に注ぎこまれているのだ!!」

 

 

慌てて駆け寄るヒルダさん達。

今も雄叫びをあげるベル坊。

あーもうめちゃくちゃだよ。

 

「おいっ早く発散させるんだ!!破裂するぞ!!」

「あぁ!?発散ったって」

「なんでもいいから殴るのよ!!」

 

「くっそぉおおおおっっ!!」

 

 

─数時間後、朝のニュースで瓦礫の山と化した石矢魔高校がテレビに移ることになった。

 

 

 

 

 

澄み渡る空、うるさいセミ、暑苦しい無風の夏の空気。

そんな中、私は男鹿にいつもの公園へと呼び出された。

呼ばれた内容はだいたい想像つくため、労りもふくめてコロッケと飲み物を買って行く。

 

木陰のあるベンチに男鹿はいた。

案の定うなだれている。

前にもあったな…なんて思いつつミルク中のベル坊の隣に座り、コロッケとジュースを男鹿に渡す。

 

虚空をさまようように伸ばされた手はコロッケを掴むと一直線に男鹿の口に向かった。

手のひらサイズのそれは、たった二口で男鹿の胃の中へ吸い込まれてしまった。

ジュースを飲んでる間にもう一個渡せば今度は3口で飲み込んでしまう男鹿。

ジュースを全て飲み干し、ゴミを全て回収する頃にはゲンドウポーズをとり深刻そうな顔をして座っていた。

 

「…また、やっちまったな…」

「…あぁ…」

「…まだ、夏休み中だぞ、私達…」

「……」

「…美咲さんに相談してみるか、学校のこと」

「…姉きに?」

「あの人なら学校なくなっても冷静そうじゃん」

「……」

「なんならそんな経験してそう」

「…あぁ」

「…………言うなよ?」

「……」

「ダ」

 

ということで男鹿の家まで相談しに行くと、学校側が対処してくれるだろう、夏休みが終わってからの話だと言われた。

てか魔界の医者にマッサージさせてる経緯を知りてぇよ美咲さん。

いくらマカオのペットでもそんなこと出来ねぇよ美咲さん。

 

「あとユキちん、後でオハナシしよっか」

「え"」

 

そんな話をしていると、ヒルダさんと医者少女…ラミアがキッチンから出てきた。

 

「うむ、帰ってきたか」

 

ヒルダさんの手には肉に野菜にとこれでもかと多くの食材が乗ったトレイがあった。

ラミアも同じように食材を持っており、どちらかと言えば野菜の比率が多そうだ。

よく見ればヒルダさんもラミアもエプロンをつけている、大変可愛いです。

 

「では始めようか、坊っちゃまの全快祝いだ」

 

庭では男鹿のお父さんがバーベキューの準備を終え、火を絶やさぬよう炭を追加している所だった。

男鹿のお母さんの誘いもあり、今晩は男鹿の家でご飯をご馳走になると両親に伝える。

…何故か返信で「ファイト!!」が返ってきた、なにこれ?

 

肉や野菜が焼けていく。

焼けすぎそうなのは皿に移して他の具材を追加する。

男鹿のお父さんと交代で食事をしながら焼き具合を調整していく。

それに夢中になり過ぎたのだろう、いつの間にかヒルダさんとラミアが浴衣に着替え、手持ち花火を楽しんでいた。

手持ちの小さく、しかし綺麗な花火を楽しむ浴衣の異国美女、男鹿のお父さんと二人して頷きあっていた。

なお、ヒルダさんと話していた男鹿が急に走り出し、電撃をくらうまでの距離が15mから8cm伸びたことが発覚して今日は終いとなった。

…逃げれたか?

 

「にがさないわよ、ユキちん」

「……へへ、うす」

 

 

 

 

 

─数日後、

 

「魔界に帰る?誰が?」

「医者だよ医者、いただろあの小っこいのとてきとーなやつ」

 

男鹿の部屋でゲームをしてると思い出したかのように男鹿は言った。

 

「ベル坊も回復してもうやる事もねーからな、そろそろ魔界に帰るんだとよ」

 

 

 

「ふーん、ほんまかい」

 

 

 

瞬間、世界は凍った。

男鹿だけでなくベル坊までもが、驚愕した表情でテレビ画面でなくこちらを見て固まっている。

 

「…さむっ」

 

ちょうど部屋に入ってきたラミアと魔界の医者にも聞かれた、くっ殺せ!!

 

「何、あんた今の…ジョーク?もう一回言ってみてよほれっあたし達魔界に帰るんだー」

「なんか急に義務感が……てか帰るってどうやって?アランドロンで?」

「うむ、だが肝心のアランドロンが捕まらんのだ。一緒に住んでいる君なら何か知ってると思ってな…」

「はぁ…確か今日はちょっと前に家事を終えた後はリビングで韓ドラ見てましたけど、家を出る前には消えてましたね」

 

「呼んでみればよいではないか」

 

「ヒルダさん!」

「ヒルダ姐さん!」

「アランドロンを呼び出すには私も通信機を使っておるのだが、さっきから通じん。しかし奴は次元転送悪魔、恐らく近しい者が呼べばとんでくると思うぞ古市」

 

ほぇー、そんなもんなのか。

 

「じゃあさっそく」

 

「あぁそれと、ほんまかいはないと思うぞ」

 

「「ブフ」」

 

いやぁドSゥゥ…!!

あと男鹿とラミア笑うなぁ!!

 

「早く呼べよ」

「おめーは黙ってな!!」

 

さっきまでジャマ…て顔してただろお前!!

片手で口元隠してても目でわかんだよこの野郎!!

てかベル坊も一緒のポーズで同じ顔すんなよ!親子か!!

…親子だったわ。

 

「えぇい、アランドローン!」

 

「お呼びですかな?」

 

「「ぎぁぁぁぁっっ」」

 

ニュッと当たり前のようにベッドの下から顔出すんじゃねぇよ!!

私がスカートだったら下着が見えちまってたじゃねぇか!!

 

 

 

 

そうして移動してきたのは、いつもの川原。

ヒルダさんによれば、魔界などの次元をまたぐ転送は水辺や山などの自然のエネルギーが必要で、二人同時に次元を越える転送が可能な悪魔はそうはいないらしい。

なんだかんだでアランドロンもヒルダさんに次ぐ有能だったのだ…。

 

ラミアのベル坊への絶対味方宣言にヒルダさんとの涙の別れを終え、とうとう時間となった。

 

「では…」パカーン

 

割れたアランドロンに入っていく二人。

帽子と手をあげる医者とラミア。

それに答えるヒルダさんと私。

腕を組み見送る男鹿。

 

……そしてラミアの片足をひしっと掴むベル坊。

 

 

………。

 

 

 

「なについて行こうとしてんだこらぁっ!!」

 

「男鹿!!手伝う!!」

 

ベル坊が魔界に行ってしまえばリンクを繋いでいる男鹿はタダでは済まない、最低でも死ぬ。

ラミアはもう転送が始まってる、一向に離さないベル坊、それを引っ張る男鹿と私、この日本一くだらないであろう綱引き(大きなカブ)は、すぐに終わった。

 

割れ目を閉じてフッと消えるアランドロン。

大変なことになったのではと心配するヒルダさん。

そして、尻もちをついてる、私こと古市。

 

………。

 

男鹿ぁぁぁあああ!?

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

その後の顛末を語るなら、男鹿とベル坊は魔界でも元気に暴れ回りラミアと通信機越しでのヒルダさんのサポートによって、無事帰ってくることができた。

…ひとまずは、ヒルダさんと共に男鹿とベル坊へ「お帰り」を言えた、それで良かったのだろう。

こうして私達の長い長い夏休みは終わったのだ。

新学期、私は新しい舞台となる『私立聖石矢魔学校』へ来ていた。

 

新しいクラスメイト、その面子は、代わり映えのしないものだった。

石矢魔の1年生から3年生まで、これまでの主要人が勢揃いだった。

東邦神姫はもちろん、そこの右腕や信頼のおける部下、その他にも見たことがある顔がチラホラしている。

現実逃避も兼ねて、私は男鹿との朝の会話を思い出していた。

 

 

 

 

─9月1日 AM 7:15

 

「転校?なんだそれ」

 

遅刻するかもと思い男鹿の家に寄れば、案の定男鹿はまだ寝ていた。

起こして朝の食事や準備を手伝い見慣れない道を一緒に歩く。

そして何故こんなに朝早くに起こしたのかを聞かれたため答えたらこれだ。

 

「やっぱ見てねぇか転校の案内、校舎が直るまで転校って形で間借りするんだ。いくつかの高校で生徒を分散させて受け入れるんだってさ」

「あー確かに、うちの生徒めちゃくちゃ多いもんな」

 

「そんで私達が行くのは、聖(セント)石矢魔学園、もしかしたら中学の頃の知り合いに会えるかもな」

「……興味ねぇ」

「そっか」

 

これが、登校中の会話だった。

そんで今、私が話しかけられているのは隣の席の…

 

「なんでテメーらまで同じクラスなんだよ、一年坊」

 

神崎さんや、そんな凄まなくてもええやないの…誰かタッケテ。

 

「……聖の学校側としては受け入れただけでも感謝しろとか、在校生に手を出されたらかなわないとか、あと単純に準備できたスペースがこの部屋しかなかった、という例が考えられます」

「あぁ!?こっち見て言えやコラっっ!!テメーの隣は役得だが何が悲しくててめーらと同じ教室にいなきゃならねーんだよ!!」

「それはこっちのセリフよ、なんでアンタらなんかと…」

「「あ"?」」

 

寧々さん助け舟ありがとうございます寧々さん、でも火種が、火種が増えちゃったよ寧々さん。

 

「いーじゃないの別に…オレは悪くないと思うぜこのこのクラス、特に席順がいい。ねぇ葵ちゃん」

「……べ、別にいいとか悪いとかじゃないし、先生が決めた事だから仕方ないじゃない」

 

会話に入りつつもガラケーを弄るのを辞めない姫川、男鹿の左隣の席で赤面している邦枝さん、チラチラと男鹿を見てるの隠せてませんよ。

その後、ダイジェストのように喋りだし紹介を受けていく下川、MK5、東条さん達。

カオスだと城山さんは呟き夏目さんは爆笑した。

 

そんな空気の中、この教室の担当になったであろう先生が入ってきた。

彼は黒板へ向かう前にふとこちらを見て、色眼鏡越しでも分かるほど目を見開いた。

うん、まぁ、うん。

実際ここへの登校中は男子も女子も、それこそ大人達すら私を見て固まっていた。

…お、再起動した。

チョークを持って黒板に向かう、書かれた名前は、佐渡原 巧。

こちらへ振り返り彼は自己紹介をした。

そうして始まったのは、佐渡原先生への格付けだった。

制服じゃないことへの注意で姫川に絡みに行けば、個人情報をすっぱ抜かれ、親睦を深めるためにと東条さんと腕ずもうをすれば、東条さんによって教卓を割られた。

最後はベル坊という赤子を連れてることで男鹿を無理やり立たせてしまい、寝るのを邪魔されたベル坊によって電撃を男鹿諸共受けてしまった。

佐渡原先生は入院した。

 

結局一日自習となった私達のクラスだが、当然勉強なんてする訳なく。

サボるのはともかく教室を出たり無断下校しようとする男子たちに、邦枝さんを筆頭にそれを止める女子たちという、まるで小学校低学年並の学級崩壊がうまれていた。

そんな環境じゃ勉強も進められず、予定されたページまで届かずに一日が終わってしまった。

 

下校時間となり、一学期とは違う帰路につくが、その場にはその場のナワバリという物があるもんで。

さっそく絡まれ路地裏まで行かされました。

相手は帝毛工業の不良生徒、着崩していたりイレズミなんかで個性は出ているが、皆共通して同じ制服で、スキンヘッドだった。

 

まぁ、男鹿にとってはいつもの事だ。

 

ゴシャ!!と振るわれる男鹿の蹴りによりさっきまで威嚇していた奴は壁に頭をめり込ませていた。

 

頭…。

 

「珍しいな、いつもなら腰までめり込むのに」

「あぁ、今日はダメだな、調子わりぃ」

 

その後、聖の子達が二人人質に取られたりもしたが、通りかかった邦枝さんによって救助され、男鹿と共闘し残党の殲滅へと変わった。

数分もかからずに殲滅完了、現場は地獄絵図になっていた。

邦枝さんにお礼を言いつつ男鹿を見る、やはり調子が悪いようで微妙な顔でこっちに歩いて来ていた。

私が男鹿にお疲れを言おうとして、止められた。

人質にあっていた男子の方が男鹿に走り寄り、土下座したからだ。

 

そして腹から出してそうな大きい声で叫んだ。

 

「男鹿さんっ!!どうかオレを舎弟にして下さいっ!!」

 

「は?」

 

 

 

 

 

次の日、男鹿を駅で待ってると男鹿の後ろに土下座してたあの男子がいた。

尊敬する人を前に興奮を抑えられてない男子と、それに顔面が緩みまくっている男鹿、滅多に見ない光景に一瞬面食らってしまっていた。

 

「男鹿、浮かれすぎだろ、バカみたいだぞ」

「ノン!!バカじゃない、アニキだ」

「バカアニキ」

「つなげるよくないっ!!」

 

会話だけで分かる機嫌の良さに呆れてくる、どんなよいしょされたんだお前?

むしろそんな持ち上げられる事なかったの?私結構男鹿の事褒めたりしなかった?

 

「あの、古市さんですよね!!」

「え…そーだけど」

 

話しかけて来た男子、金髪にピアスの彼は何故か男鹿だけでなくこちらにもキラキラとした目線を向けていた。

 

「すげぇ!!噂は本当だったんだ!!」

「ウワサぁ?」

「男鹿さんの相棒にして唯一つっこめる女、鬼子母神古市!美人でスタイル良くて頭もキレるとか超憧れるっス!!」

「わぁ…」

 

……。

なるほど、男鹿の周りには今までいなかったタイプだ。

こんな真っ直ぐに私を見て褒めるということは、同じかそれ以上で男鹿に接したのだろう。

むしろここまで近づいてるのに目線が胸に行ってない時点で高評価まである。

すごくいい子だとわかったが、ちょっとだけ訂正しておこう。

 

「私以外にもつっこめる人結構いるよ?それに私はそんな凄くないさ、たまたまこいつと幼馴染で、友達続けてるだけだよ」

 

ところで…。

男鹿の肩に手を置いて、

 

(いい奴じゃないか)

(だろ?)

(で、鬼子母神ってなに?)

(しらね) 

 

なんてやり取りする。

テレパシーなんて使えないけど、お互いの表情で会話するなんてことは朝飯前なんだよなぁ。

でも傍から見たら変だったろうな、お互いに微笑みあったと思ったら急にスンッと無表情になったんだから。

なに、私の二つ名鬼子母神なの?

山姥でも子沢山でもないんだけど?

 

電車にゆられながらいい奴とわかった山村君と雑談する。

その中で話題となったのは聖石矢魔の強いやつ、六騎聖。

それを聞いてから男鹿の表情が悪役のような笑みを一瞬浮かべ、それを誤魔化そうとずっと笑顔になっていた。

お前の顔面邪悪過ぎる時あるよな、ギャグで済んでるけど。

それからまたベル坊を押し付ける気満々となった男鹿、今回は東条さんみたいなことは起きないといいけど…。

でも結局は誰にも懐かないと思うぞ男鹿。

ベル坊の好みって多分、竹を割ったような荒くれ者タイプだろうし。

聖の人達にはいないタイプじゃない?あそこ良くも悪くもねっとりしてる人多そうだし。

何よりもとっくに一番を見つけてる訳だし。

 

 

 

 

教室に入り1限目が始まるが、うちのクラスに大人しくしてる奴はあんまりおらず、各々が思い思いに寛いでいた。

異常に気付いたのは4限目、次が昼休みになる時間。

 

「人数、減ってる」

「あん?そうか?」

「そうだよ、最初はサボりだと思ったけど後で先生に聞いたら出席扱いだった。でも東条さんや前列のMK5が丸々いない」

「バイトの虫だからなーあの人」

 

東条さんと仲がいい相沢さんが答えてくれた。

 

「MK5は知らねーけど、妙な噂が流れてる。お前らも気をつけな」

「…うす、ありがとうございます」

 

手をヒラヒラさせながら自分の席へ歩く相沢さん。

妙な噂…絶対六騎聖じゃん。

絶対朝話した六騎聖じゃん。

 

「六騎聖…あたしも聞いたよ、ウチら石矢魔を追い出そうとしてる奴らがいるってさ」

「寧々さん」

 

寧々さんと話していくうちに、席が隣だから一緒に話を聞いてた神崎さんが会話に加わり、売り言葉に買い言葉でまたケンカが起きそうになっている。

止めようにも私じゃ止められないし、周囲は囃し立ててばかり、最初に話してたのは私だが、それがこんな事態になるなんて誰が分かる?

 

そんな喧騒を止めたのは、休み時間中に呼び出されていた邦枝さん。

教室に入るなり場を収めてしまったが、今度は邦枝さんによって爆弾を投下されてしまう。

男 鹿の前まで進んだ邦枝さんは自分の席に着くことなく、少し顔を赤くさせながら「ちょ…ちょ、ちょ…」と何かを言い淀む。

やっと出てきた言葉は、

 

「ちょ、ちょっとつき合いなさいよ」

 

教室に爆音をうむきっかけとなったのだった。

 

 

 

 

 

あれから完全に収拾がつかない状態となって、やっとの思いで訪れた昼休み。

私は自分の分と、恐らく疲れてるであろう邦枝さんの分、あと「オレには?」とかいうだろう男鹿のために自販機の前まで来ていた。

私は牛乳、邦枝さんには…抹茶オレかな?なんか和風なの好きそうだし、男鹿も牛乳でいいか。

ってかここ特濃牛乳ないじゃん、今度からはコンビニで探すかなぁ。

いやこのタイプも嫌いじゃないんだけどさ…。 

 

「古市さん?」

 

パックを取り出し、あらかじめ持ってきていた袋に入れていると懐かしい少年声が私を呼んだ。

 

「…久しぶり、てゆーかオレの事憶えてる?よく君達に泣かされたんだけどさ」

「…三木君か?」

「一人かい?男鹿も一緒だと思ったのに、残念…」

「…久しぶり、雰囲気、変わったな」

 

ショートの黒髪に両方ある涙黒子、純朴そうな童顔はそのままだが、自信か何かだろうか、キリッとした男前に感じた。

まぁ、一瞬ギョッとしてたのは見逃してやろう、君と会えなくなってからデカくなったからな。

 

「3つも買うなんてどうしたの?パシリ?」

「いや自主的。男鹿と、苦労してる邦枝さんって先輩に」

「変わってないね古市さんは、先輩さんの分はわかったけど、男鹿にはなんで?」

「あいつ理不尽の権化じゃん、買ってこなかったら私のを飲みかけでも奪うからな」

「…君達の方は相変わらずのようだね、どこに行っても噂が絶えない。校舎を壊したんだって?」

「いや、私は壊してない」

「それもそっか、か弱い女の子だもんね、古市さん」

「それ面と向かって言う奴お前が初めてだ。ま、そんな女の子でもあいつと一緒にいればA級戦犯扱いか。そのおかげっていうのもあれだが、三木君に会えたから悪かぁないかね」

「……ハハッ、二人はいつもつるんでたもんね。古市さんの成績ならウチの高校でも上位狙えただろうに」

「勉強は習慣にしねーと辛いから、自然とな……ほんと、変わったな三木君」

「そう?」

「昔はもっと控えめだったろ?それがこんな男前になって…モテるだろ?」

「全然」

「いーやモテるね」

「……君の妙な恋バナ好きは誰に影響されたんだろうね」

 

懐かしい、これにオドオドした雰囲気と男鹿を入れれば中学の頃の再現だな。

後それは影響されたんじゃない、ついさっきの事で少女漫画脳になってるだけだ。

 

「…忠告するよ、六騎聖に会ったら、絶対に戦っちゃいけない」

突如、雰囲気が張り詰める。

三木君は笑みを残しつつも、少し眼力を強めている。

 

「この学校の秩序を任されてる連中だ、彼らのターゲットは今、完全に君達になっている。どっちが強いとかそういう事じゃないんだ、戦った時点で君達の負け、それを教えておきたくてね」

 

三木君はそこまで言うとこちらに背を向けた。

 

「男鹿にも伝えといてくれ」

「…待った、せめて特徴とか教えてくれ、それくらいいいだろ?」

「…紋章(エンブレム)

「エンブレム?」

「彼らは皆、襟(えり)の裏に十字を背負った獅子の形の紋章をつけている」

 

三木君は振り返り、襟をめくって見せた。

 

「こんな風にね」

 

三木君は六騎聖だった。

つまり…敵側。

 

「もっとも、表はそれぞれ好きなピンをしているからわからないだろうけど、忠告はしたよ」

 

そっか…。

じゃあ(しばら)くは、下手するとずっと、一緒に遊べなくなるのか。

 

「ああそれと」

「…ん?」

 

「古市さんは校内で一人で歩かないようにね、さっき言ってた先輩でも同級生でもいいから女子複数人で行動して。後男子グループには無闇矢鱈と接近接触しないように、特に男子と二人っきりになるのは避けて、もしそうなっても相手は男鹿やオレだけにして。さっきも言ったけど古市さんは男子と距離が近いから誤解が生まれやすいんだ、硬中の頃もそれでよく告白されてたし、そうでなくても古市さんの事を噂する男は多かったんだから」

 

なんか急に捲し立てて来るんだけど。

さっきまで背中見せてたのにわざわざ振り向いて、途中からは両手で肩を抑えられながら言われてるんだけど。

あれ!?さっきまでシリアスじゃなかった!?

 

「いい?これからは団体行動を心がけてね、今日みたいなのはこれっきりにして」

「へ、へい」

 

今度こそ三木君は去っていった…何だったんだ。

 

 

 

 

教室に戻る途中、気分転換も兼ねて外に出る。

あの豹変はなんだったんだろう…。

ってか、早速言われたこと破っちまった、どうすっかなぁ。

校庭近くを歩いていると、体育倉庫だろうか、そこからゴッと鈍く、しかし確かに音がした。

嫌な予感がして近付けば、段々と聞こえてくる不快な声。

 

 

 

「………いっちゃおうかな?」

「おぉっ!!それいっちゃう!?男だなおいっ!!」

「いやいやいや、さすがにそれは死んじゃうでしょー…っておぉおいっ!!!」

 

 

声を聞いた瞬間に走り出していたが、鮮明に見えるようになってさらに足を急がせた。

頭から血を流す城山さん、止めようとするも驚愕して動けない男子、そして、上の階から重りの付けたバーベルを落とそうとする、クズが二つ。

 

 

 

「城山さんっ!!」

 

 

 

叫びながらも、両手でその巨体を押しのける。

呆気にとられつつも、こちらに手を伸ばしている城山さんと、目が合った気がした。

 

 

 

「「「古市っ!!!!」」」

 

 

 

城山さんに、レッドテイルの人達が、私を呼んだ気がする。

けど、確かめることなく、私の意識は暗転した。

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

 

「姐さん…男鹿…」

 

古市が三木と再会したように、男鹿と邦枝も六騎聖の二人と軽く衝突していた。

そして、二人が教室に戻ると、今までにない影が室内を満たしていた。

 

「スイマセン…私ら救急車を呼ぶことしかできなくて」

「止めようとしたけど、結局止めれなくて…」

「何?どうしたの?」

 

「城山と古市がやられた」

 

瞬間、男鹿が動きを止めた。

 

「意外にも神崎の野郎がブチ切れて出てったよ。勝手な野郎だぜ全く、てめーが一番ボロカスに扱ってたくせに…古市が城山を庇って一緒に病院送りって所でボカン、さ」

 

邦枝と男鹿はそれを静かに聞いていた。

 

「ま、でも…あいつのあんな表情(カオ)は初めて見たな、止まらねーよもう…戦争だとさ」

 

 

 

 

 

「どーもー、ウチの組の者が世話になったみたいで…全員、ぶっ殺しに来ました」

 

 

 

 

 

「神崎っ!!待ちなさいっ!!」

 

神崎を止めに追いかけていた大森達が駆けつけた頃には、教室は既に滅茶苦茶だった。

窓ガラスは粉砕され、金属バットが黒板に突き刺さっていた。

そして神崎は、下手人と思われる男子生徒の胸ぐらを掴みあげていた。

 

「神崎さん!!」

「てめーら邪魔すんな!!城山達の分はきっちり返させて貰わねーと気が済まねぇ!!」

「……まずいですね、先輩…」

「あ?」

 

そんな中、神崎に話しかける男子が一人。

 

「これじゃあいくらなんでも、僕が止めなきゃいけない…」

 

―ッパァンッ

 

 

 

 

男鹿達が駆けつける頃には、神崎は倒れていた。

「姐さん!!」

「神崎は?」

「それが、あの男…六騎聖にやられたんです」

 

神崎の側に立つのは、三木。

 

「六騎聖?……ふぅん…ベル坊、どうだあいつは?六騎聖だってよ」

 

「ダヴ」

 

今までに聞いたことがないくらい拒絶感溢れた声が出た。

 

「…お前だけはないってさ…」

 

 

 

 

「久しぶりだね男鹿、驚いたよ。まさかこんな形でまた君に会えるなんて思わなかったからね…」

 

三木の語りに男鹿は一切反応を返さなかった。

 

「あれ?もしかして忘れてる?非道いな、中学の頃あんなに「マ"ーーーッ!!マ"マ"マ"ーマ"マ"ーーーッ!!!」……中学の頃、あんなにかわいがってくれ「マ”ーーッ!!!」………」

 

話が進まないと感じ取ったのか、三木はベル坊を引き合いに出して男鹿を挑発する…が、男鹿は乗ってこない。

それを見てか教室内、廊下から覗き込んでいた聖石矢魔生を焚き付け、石矢魔生全体へ挑発先を広げた。

 

「これでもこの人達は本気なんだ、かわいそうじゃないか」

「もとはといえばあんたんトコのバカ共が…!!」

 

とうとう抑えが効かなくなった大森。

しかし、手を出すことはなかった。

「ここで買ったら、負けだぜ?」

 

止めたのだ、男鹿が。

これには三木もこの場での戦闘を諦めた。

諦めた、が…

「石矢魔のみなさん。放課後は是非、旧校舎の屋上へ…我々部長連がお待ちしておりますよ」

 

 

 

 

目が覚めると病院だった。

カーテンによって柔らかくなった陽射しが心地いい…あ、これあれができるよな?

 

「知らない天井だ…」

 

ノルマ達成、フフ。

…気を取り直し、痛みをこらえつつ上体を起こして周りを見る。

四人部屋の病室のようだ、向かいの二つのベッドは空いており、隣はカーテンで仕切られていたが、テレビの音だろうか、どこか気の抜けるBGMと共に料理の紹介をしている声が聞こえる。

壁にかかっている時計を見れば、短い針は10を指しており、少なくとも一日は入院したのだとわかった。

机の上には花…ガーベラだっけ?赤や黄色、ピンク色の綺麗なものがあった。

それ以外にもミントガム、んまい棒の花束、簡単料理本なんかが置かれており、自然と笑みがこぼれた。

 

落ち着いてきたからだろうか、頭が働き出す。

迫るバーベル、動かない城山さん、レッドテイルの人達の声。

痛みを感じる間もなく気絶できたのは不幸中の幸いだろう。

もしくは、胸がいい感じにクッションになったか、いやそれはないか。

そういえば、城山さんは頭から血を流していた。

私が駆け付ける前にやられたのだろうか。

でもどうして?

城山さんはあんなガリガリに負けるような人じゃないのに。

でも頭の傷痛そうだったな。 

 

「大丈夫だったかな、城山さん…」

 

「他人より自分の心配をしろ」

 

独り言に思わぬ返事が返ってきた。

声のした隣を見れば、ベッドに座り、カーテンを開けてこちらを見る城山さんがいた。

 

「…おはようございます?」

「あぁ、今回は世話になったな」

 

頭に包帯を巻いて座る城山さん、その姿に私は何故か言いようもない何かを感じた。

…なんだろ、わかんない。

じゃあ、いいのか?

 

「城山さん、あれから、どうなりました?」

「…お前が庇ってくれたおかげでオレは頭のケガだけで済んだ。入院してるのは脳への異常がないかのチェックと安静のためだ。お前は…頭と背中、そして重り部分で左腕をやってな、幸い打撲と骨折程度で済んだが、運が悪ければ下半身不随、もしくは死んでいたらしい。運の良さは日頃の行いだろうな」

 

想像以上にやばかった件。

まじか、私相当やばかったんじゃん。

 

「てかそれを受けるつもりだったんすか城山さん」

「この程度で音を上げるようでは神崎さんに着いていけないからな。それからはレッドテイルの奴らが救急車を呼んで、付き添いのつもりがオレも一緒に入院させられた」

 

頭から血を流しておいて付き添いは無理がある。

 

「それで今日は入院三日目だ、明後日にはオレは退院する」

「教えてくれて、ありがとうございます」

「礼を言うのはオレの方だ。それとすまなかった、もし傷跡が残るようなら言ってくれ、責任をとる」

 

「んー…」

 

覚悟の決め方が古いー。

 

「じゃあもし、もし男鹿や私がヤバくなったら助けてください。もしくは神崎さんに頼ることがあったら口添えをお願いします」

「わかった、その時がくれば全身全霊で応えよう」

「はい、よろしくです」

 

その後は他愛無い話をして、爽やか笑顔の人、夏目さんからのメールで学園祭のことを知った。

六騎聖とはスポーツで方をつけること、種目はバレーボールに決まったらしい。

……。

バレーボールの言葉に、城山さんと一緒に宇宙を背景に背負った気がした。





あ、次話以降の後書きは大体怪文書だから無視していいですよー。
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