銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!   作:Tkmraeua2341

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……ごめぇぇぇん!!
あと1話だけ更新します!!
でもすっごい短いよ!!
なぜって?間違えて消しちゃったからだよ!!



銀の雪はt…ぅぉデッッッ!!!!7

現在の時刻は23:55。

私と由加さん、二葉ちゃんは哀場兄のとこの南珍比良高校の生徒に攫われていた。

場所は私達が泊まっているホテルの屋上、ロープでグルグル巻にされつつはたし状を出された神崎さん達を待っていた。

 

「おい、お腹すいたぞー」

「てめーこらっ二葉様がすしを要求してるぞっ!!」

「凄いマイペースだな…あ、お茶ありがとうございます、ん…おいし」

 

…結構騒がしくしながら待っていた。

あれ、私達人質だったよね?

こんな態度とって大丈夫なのかって、最初は心配してたんだけど…。

 

「あぁ?さっきお菓子やっただろ、オレのポテチ」

「んなもん足りるか!!すしだすしっ!!大声出しちゃうぞ!」

「しょーがねぇ、そこのコンビニで買ってこい」

「いいんスか!?」

「早く来てくれ…」

 

ずっとこんなで何故か攫われたこっちが申し訳なくなってくるという変な事態に。

いや相手誘拐犯だぞ?でもこう…なんか妙に根はいい奴というか、話し合ってたら和解できるんじゃないかって思える奴らなんだよなぁ、誘拐犯だけど。

 

「あっ!見ろパー子!!」

「神崎先輩!!」

「東条さんもか…こりゃ早く終わるな」

 

「かかかっ!!指定通り二人だけで来たみてーだな!!」

 

うお、急に豹変するじゃん、そんなに恨み買ってたんですが神崎さん達。

 

「おせーぞはじめーっ!」

「パネェーッ」

「あ、そんな端まで行ったら危ない…て!」

 

豹変した生徒が二葉ちゃんを拘束した紐を持ったかと思うと地面へ向けてぶら下げやがった!

ここ何階だと思ってんだ!

 

「二葉っ!!」

「見てのとーり、少しでも抵抗したらちびっこを落とすぜ。わかったらそこでおとなしく、ボコられてくれや」

 

言い終わるや否や、神崎さんと東条さんは何十人もの生徒に、囲まれてしまった。

 

「二葉ちんっ!!てめーらこのっ…ひきょーっスよ!!」

「ヒキョー!?かかかっバーカ!いい言葉じゃねーか!!今度は誰も助けに来ねーぜぇぇっ!!」

「…ん?」

 

なんか後ろでボコスカ殴る音や人が倒れる音が…。

 

「なんせここはVIPしか入れねぇ最上階のスイート…」

 

気付けばそこには、スタンロッドとワイングラスを手にバスローブ姿の姫川さんが居た。

倒れ伏した不良も添えて。

 

「小虫が…人の部屋のテラスで騒いでんじゃねーよ」

 

この人、まさかVIPだけのスイートに…。

まぁ、この人ならVIPでもおかしくないか。

 

「あ、でも…ヒキョーっていい言葉だよねー」

 

 

 

 

「なっ…なんだお前は!?」

「あん?お前らに名乗る名前なんてねぇよ、姫川ですけど」

「名乗った!!」

 

名乗るんかい!

このピンチに来てくれてありがたいけど!

ボケるんかい!

 

「え…?」

「ちょっと待て…姫川…?」

「スーパーロングリーゼントに」

「VIPで色メガネって…まさか、まさかこいつ…!!」

 

「東邦神姫の!姫川竜也か!!」

 

姫川さんの持っていたスタンロッドの先端が外れたかと思うとそこからワイヤーが伸び、鞭のようにしならせ電撃を放った。

 

「よくわかってんじゃねーーーかっっ!!!」

 

「「「「ぎゃぁあぁああっ!!」」」」

 

姫川さんを囲んでいた不良達の断末魔が響き渡る。

 

 

「あぶねーっス!姫川先輩!!!」

「でも、助かりましたね」

「…まさか、本物…?」

 

「新必殺、広域スタンバトン…特注品だ」

 

「なっ…なんでお前が…いや…そんな事より動くんじゃねぇっっ!!ガキを落としちまうぞ!!!」

「は?別にどーでもいーんですけど」

「「はぁ!?」」

 

ついあの不良と同じように声を上げてしまった。

 

「おいおい正気かてめぇっ!!この高さから落ちたらマジで死んじまうぞ!!」

「そうですよ!!」

「ガタガタ言ってねーでさっさとやれよ」

「……っ!」

 

…そうか、これは心理戦!!

なら私がするべきなのは!!

 

「どーしたほら…ただのハッタリかよ」

そこまで言うと姫川さんはロッドで相手を拘束し、落ちそうだった二葉ちゃんは由加さんと一緒に紐を掴むことでなんとかなった。

 

「とっ二葉ちんっ!」

「二葉ちゃん!すぐ引き上げるから!」

「パー子!!ユキ!!」

 

由加さんと一緒に二葉ちゃんを引き上げていたら、縛られていた不良が姫川さんによって宙吊りにされていた。

 

「てめーっ!!放せーっ!!」

「神谷さんをどーするつもりだーっ!!」

「人質のつもりかこのヒキョー者っっ!!」

 

「あん?あー、えーとあれだ、お前ら抵抗すんなよ、さもねーとこいつを落とすぞって…

 

あ、落ちたわ」

 

「おあ"あ"あ"あ"あ"っっ」

「ちゅうちょなく落としやがったぁぁっ!!」

「神谷さぁぁんっっ!!」

 

ボズンン。

 

「神谷さんっ!!大丈夫っスか!!」

「あぁっ…よかったギャグっぽい!」

 

どうやら庭の植物がクッション代わりになってくれたようだ…。

そうだよ今更だけどここ漫画の世界だったわ…。

 

「おそろしいぜ…」

「だね…」

「まだまだいくよーほらお前らも見てねーで手伝え」

「うわぁ…」

「や…やめろぉぉぉーーっっ!!!」

「もう卑怯とか関係なく普通にヒドイっっ!!!!」

 

下からの絶叫が胸に痛い、いくら女子供を人質に取って大人数でリンチしようとしたとは…いえ…。

…なんか、底辺争いみたいでやだなこれ。

 

その後?地獄絵図ですが何か?

 

 

 

 

 

オレはその日、最悪と最高を同時に見た。

オレ自身は神谷さんや東山さんみたいなすげー人じゃねぇ、二つ名もねぇただのモブ野郎だ。

尊敬する番長、哀場さんと話す機会がないほどの木端だ。

だから、こういった抗争ではすぐにやられちまう。

その分、気絶から起きるのも周りより早かった。

 

今は、その弱さに感謝した。

 

「…こっちは…重症になり切らない程度で済んでる…はぁ、もうちょっと手加減して…いや無理か…下手したらこっちが危ないだろうし…何より二葉ちゃんの件は絶許…」

 

肩まである白い銀髪、簡単に折れそうな華奢な体、手にはそこらのコンビニで買ったのか消毒液とガーゼ、後何か入っているレジ袋を持っていた。

何よりも…その頭並に…下手したらそれ以上に大きい…大胸筋(おっぱ〇)

 

その人の顔がこっちに向いた。

 

整った顔立ち、銀の瞳、柔らかそうな唇、見てるだけで息が詰まりそうだった。

キレイとカワイイが同居した顔で、オレに話しかけてくれる。

 

 

「目が覚めたんだ、動ける?」

 

 

言葉がでない…顔が熱く、胸の鼓動が煩くて、でも心地よくて。

なんとか返事をしようとして、頭を縦に振ることしかできなくて。

 

「そっか、良かった…」

 

笑った顔が、すっげー、キレイだった。

 

「大丈夫そうならあっちに移動してくれる?あの駐車場の端っこなんだけど」

 

言われた場所まで行くと一緒に来てた仲間達が寝ていた。

それぞれが着ていた上着を枕にして、丁寧に手当されて寝かされていた。

 

「ん…しょっ…これで、最後!ふぅー」

 

呆然としてるうちにあの人が誰かを引きづりながらも運んで来た。

寝かされた誰かを見て驚く、神谷さんだった。

あの人はテキパキと処置をしていった。

今更気付いたがあの人は汗だくで、疲労困憊に見えた。

これだけの人数を一人で対処したからだろう。

その時オレは思ったんだ、この人は、天使なんだって。

 

「全員終わったし、私は帰るよ」

 

あの人、いや天使はそう言ってこの場を去ろうとした。

咄嗟に声が出た、名前を教えてほしいと。

 

「ん、名乗るほどの者ではないよ、ホントに。これもこっちがやり過ぎに見えたから、私の罪悪感を消すためにしただけだしね…あ、ちょうどいいから頼まれてくんない?」

 

何をと言おうとしたら、天使はレジ袋をオレに渡しながら言った。

 

「神谷…だっけ?その人にこれと伝言お願い。『ポテチありがとうございました』って」

 

中にはのり塩味のポテチと、ヨーグルッチが入っていた。

 

 

 

昨日…てか時間的にほぼ今日の深夜に重労働したせいかもう帰る時間となってしまった。

うん、まぁ…お土産は買ってあるからいいけどさ。

 

「これはこれは姐さんっ!!」ビッ

「おはようございますっ!!」ビッ!

「「「おぁざぃまぁぁあっす!!!」」」ビシィッ!!

 

南珍比良高校との(いさか)いは収束したが…。

「今日も美しいです姐さん!」

「輝いてますよ姐さん!!」

「姐さんっ!結婚を前提にお付き合いしてください!!」

「「「何抜け駆けしとんのじゃてめぇっ!!!」」」

 

なんか…ほかの人達よりもなんか熱量が凄い。

 

「あ、あの…」

「はいなんでしょう姐さん!」

「お茶ですか姐さん!」

「お土産ですか姐さん!」

「いや、その…それ、姐さんって何?」

 

せめて姐さんって付けられるの邦枝さんだと思うんだけど。

個人的にはあっちの窓辺で二人っきりの空気になってる邦枝さんと哀場兄の方がめっちゃ気になるんだけど…。

 

「だってオレらを助けてくれたじゃないですか!!」

「仲間の一人から貴女の事を聞いたんです!オレらの都合で攫ったのに、その相手が傷付いて居るなら迷わず治療してくれた天使だって!!」

「だから哀場さんには悪いっすけど、オレらの姐さんは貴女なんですっ!!!」

「えぇ…」

 

あれはただほっとけなかっただけなんだよなぁ、お茶貰っちゃったし。

あと二葉ちゃんの仕返しをするために最後まで残ってたんだけど、それをする前に体力尽きちゃったからなぁ。

 

あ、二葉ちゃんが誰か馬にしてる…あぁ…仕返しの件は…いいかな。

公共の場でお馬さんは…充分キツい。

 

「こちらオレらのアドレスです!」

「何かあれば、なんもなくても連絡ください!!」

「飛んでいきますので!!」

「お、おぅ…」

 

胃が…胃が…。

 

 

 

 

―空港の窓辺 邦枝と哀場

 

「…ありがとな、色々付き合ってくれて」

「…うん」

「ま、なんつーか…あれだ。勝負に負けたんだ…今回は約束通り潔く諦めるわ、悪かったな困らせて」

「そんな、私の方こそ…ごめんなさい。気持ちに応えられなくて」

 

「気にすんな、()()()だからな」

 

「え?」

「帰ったらまた、口説きにいくぜ…アイルビーバーック」

「…プッアハハハハハ!」

「いやいやマジでマジで」

 

 

「いいわ。でも私、好きな人いるから」

 

 

 

「…お前、なんか変わったか?」

「なっ…何よ。別に…あなたにつられただけよこれは…」

「そうか?…あ、言い忘れてたけど、うちのもんを手当してくれてサンキューな」

「え?」

「喜んでたぜあいつら、あんなに綺麗で可愛い、更にはデッカいねーちゃんに怪我を手当してもらえたって。オレはてっきりあいつら自身で手当したとばかり思っててよ」

「…古市の事かしら」

「古市?」

「ほら、あそこの…あんたんとこの子達に頭下げられてる銀髪の子」

「あ〜水族館で金髪の(ボインな)ねーちゃんと一緒に居た銀髪の(ボインな)ねーちゃんがそうなのか!!」

「……」

「待て待て冗談、いやあのスタイルはすげーけどオレは葵一筋だぜ?」

「…はぁ、調子いいんだから。まぁいいわ、古市には伝えとくから」

 

 

 

 

 

さて、集合写真も撮って飛行機の中で邦枝さんから哀場兄からの事を聞いたりして帰宅すると、家族にお土産を渡す。

ほのかには瓶に砂と小さいシーグラスの入ってる可愛い置物、両親には手のひらに乗るサイズのシーサー。

そしてみんなで食べれるちんすこう。

ただ、土産話は…うん。

最終的に舎弟っぽいのが出来たって辺りで頭を抱えられてしまった。

すまんて…。

 

後日、ラミアが来たのでほのかのとは色違いの物を渡した。

抱きつかれてしまった。

 

 

 

 

 

「ごはんくんのヒーローショー?」

「ニョッ」

 

下校時間、昇降口にて男鹿と邦枝さんが話してた。

 

「うん、今度の日曜にあるんだけど、光太(こうた)を連れていくんだけど、ベルちゃんも好きだったでしょ?だから一緒にどうかなって…」

「あー…その日は一日寝てすごす予定が「ナーーッ!!ダブーーーッ!!!」」

 

これは…そういうことでは?

ほほぅ…?

 

「行ってきなよ男鹿、こういう機会は滅多にないんだから」

「えー?」

「邦枝さんにいつも世話になってんだからさ」

 

ねぇ?と邦枝さんに向けてウインクする。

それを見て元々赤かった頬を更に火照らせる邦枝さん、やっぱりデートじゃねぇか!!

ならば後は男鹿をその気にさせるためには…。

 

(男鹿、ベル坊の顔見てみ?)

(あ?顔?)

 

目で会話し、ベル坊のあまりにもキラキラしている顔を見せる。

勝ったな…!

 

「……はぁ…しょうがねぇな」

 

しゃぁ来たぁ!!

じゃあ私は静かに去りますわ。

 

「古市はクールに去るぜ…」

 

 

 

 

 

さて、男鹿達がヒーローショーへ行った結果、ハチャメチャになったらしい。

…ん?私は行ってないよ、人の恋路を出歯亀していいのはされてもいい人だけなのだ。

私はされる機会がないはずだからする気は無い。

実際私の恋愛対象ってどうなんだろうね?

男鹿へのものは吊り橋効果だろうし、ヒルダさんへのものは憧憬(しょうけい)だろう。

寧々さんやラミアへのものは親愛だろうし…。

んー、まぁ20代くらいになればもっとはっきりするかもね。

いいんだよそれくらいで、結局人生はあっという間でも長いんだから、まったりまったりいこうよ。

 

で、ヒーローショーから次の日、久しぶりに男鹿に絡む奴らと遭遇。

カツアゲの結果男鹿の所持金が52円である事が判明し、カツアゲ相手からも気の毒に思われてしまった。

まぁいつものごとく壁に沈めた後、ベル坊へ50円の有り難さを語る男鹿の頭へ空から宅急便が落ちてきた。

それで50円を排水溝へ落としてしまいショックを受けてしまう男鹿達の元へ悪魔急便と名乗る子がやってきた。

男鹿はその子を縛り上げながら届けられたものを持って帰る。

流れでついて行けば大魔王様からの、つまりベル坊のお父様からのビデオレターだったようだ。

 

見させてもらったが…うん、大魔王はパネェ悪魔だった。

要約すれば探し物の依頼だったのだが、場所が問題だった。

「私立サンマルクス修道学院…その卒業生の殆どが政界財界の要人となるという。敷地面積数千坪、山二つにまたがって広がる正真正銘の上流階級学校…まさしくこの国のトップだな」

「ビデオレターに写ってた股間だけの映像からのギャップが凄すぎるわ…」

「この学院のどこかに大魔王様の探し物があるらしいが…」

「たくっなんでオレらが大魔王のおつかいなんか…」

「ブツブツ言ってないで光栄に思いなさいよっ!見つけられたらご褒美までくれるって言ってるんだから」

「ご褒美ねぇ…」

 

それで早速在校生へ(ふん)し潜入となったんだが、制服と学生証を偽装するだけではダメだった。

さすが国のトップ、警備体制がガチ過ぎる。

 

 

と、言うわけで…。

 

「えー…今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

「姫川 竜也(たつや)

「ヒルデガルダと申します」

「ふっふ、古市…ユキっです!」

「男鹿っス」

 

夜露死苦(よろしく)

 

石矢魔で一番の財力を持つ男、姫川さんのお世話になりました。

 

初めは姫川さんも乗り気ではなかった。

だが、大魔王様の探し物をヒルダさんが見せたことによって空気が変わった。

おそらく、姫川さんにとっての譲れない何か、過去があるのだろう。

…誰だって喋れないことはあるんだから、それはいい。

お陰でこうして大魔王様の依頼をこなせるわけだし…。

 

ただ…。

 

 

ザワザワ

 

ザワザワ

 

 

高い天井、質のいい二人用机と椅子、美しい花瓶といけられた花。

そして、談笑する生徒達。

やばい、ここの人達怖い。

怖さのベクトルが違う。

石矢魔の怖さが目に見える暴力なら、ここの怖さは因習村のような目に見えにくい隔離。

海外のグロテスクホラーと日本のホラーみたいな違い。

 

ここから見る分には普通だ、普通なんだ。

でも、私達を認識してるようでしていない。

日本の嫌なところを豪華な素材で包み込んで、それでも覗いてしまう邪気のようなものを感じる。

やばい、語源化できない恐怖と嫌悪感が全然抜けない!

あれか!?前世から庶民だったせいで拒絶反応起こしてる!?

もしヒルダさんが廊下へ連れ出してくれるのがもう少し遅かったら、男鹿の手を握らせて貰ってただろう。

 

…歩いてる最中もやばかった。

高すぎる天井、磨き抜かれた床、校舎の隅から隅まで豪華な素材と技術が使われてる。

さすが敷地に入るだけで数千万円、学生服や学生証が百万単位で売れるという噂がある学院だ。

やっぱり怖くなって男鹿の袖口近くをつまみながら男鹿の後ろを歩いていた。

 

が、

 

「ま、転校っつっても今のオレらは一時的な編入扱いだ、用が済んだらとっととズラかるぞ、オレもここは長居したくねぇ」

「見ろ古市この自販機キャビア売ってるぞキャビア!!」

「話を聞けこら」

「…すんません姫川さん」

 

こ、こんな環境でそのテンションは無理だ男鹿。

むり、ほんと無理、不安になってきちゃったので今度は姫川さんの袖口をつまむ。

気分はひっつき虫だ。

 

「何をしておる、さっさと大魔王様の探し物をみつけにいくぞ…む」

 

あ、ヒルダさん。

…なんかむっちゃ凝視してきたと思ったらシュッと手を取られ私の手をヒルダさんの袖口へ導かれた。

 

「せめて私にしておけ」

「あ、はい」

「……」

…そんなにだった?

あと姫川さんその微妙な表情なんですか!

お前もそっち側かよみたいな表情やめてくださいよ!!

 

「あれあれー姫川君?」

「そのリーゼント、やっぱり姫川君じゃん」

「うはっ本当だ姫川財閥!!なんでいんの?」

 

そうこうしてると姫川さんが三人組に話しかけられてた。

どうやら知り合いらしい…けど、嫌なタイプの絡み方してくる。

…ある程度済んだ後、私達は地下へ案内された。

久我山(くがやま)、という人が姫川さんに用があるらしい。

それで案内された先には。

 

 

「はん…ファイトクラブか…」

 

 

……金持ちって地下闘技場を娯楽にしてるイメージあるよね、私はそれが更に補強されたよ。

 

 

 

 

「久しぶりだな、姫川」

「久我山…」

「今さら何をしに来た?こんな学校には興味がないんじゃなかったのか?」

 

ボディガードの黒服を二人引き連れて現れたのは、セミロングの金髪をした中性的な、もっと言うなら()()()なイケメンだった。

 

「こんなクソ学校、今も興味ねーよ、ただ後輩に頼まれちまったもんでな。

 

『悪魔の肖像』を

 

とり返しに来た」

 

悪魔の肖像…ヒルダさんが話してくれなかったけど、それが大魔王様に頼まれた探し物だろう。

それからは久我山と姫川さんの因縁が垣間見えるやり取りがあったが、結局はいつものごとく、

 

「ここにはここの流儀がある。欲しい物があるのなら、闘って勝つ事だ」

 

ケンカなんだな。

 

 

 

 

少しトラブルがあったが久我山に悪魔の肖像がある所まで案内される。

まるで宇宙世紀に出てきそうな通路を通り抜けた先は、地下鉄だった。

 

「国会まで繋がっている有事の際の緊急通路だよ」

「けっまるで都市伝説だな」

 

…更にトラブルがあった(迷った総理との遭遇)がそれも抜けて突き当たり、SECTOR87という部屋の前に着いた。

そこにはガタイのいい黒服の男と学院の制服に革ジャンを羽織る女子(どちらも黒サングラスを掛けている)がおり、中に入れるのは1人だけだと説明された。

なんでも悪魔の肖像には仲間割れを誘う()()があるという。

 

姫川さんの目的は、そんな呪いがないことを証明するために、その絵を燃やすことだった。

 

なお、それが大魔王様の探し物なため回収するだけなのだが。

そんなわけで男鹿が取りに向かったのだが、部屋に入ったのは()鹿()()()()()

 

…これ、まずいかな?

 

 

 

 

男鹿が入って30分、久我山さんが言うには往復でも15分かからない広さらしい。

そこから話の流れでとんでもない事実がいくつも出てきた。

 

絵に悪魔がついてるなら、それは大魔王様の下僕だから男鹿達は大丈夫だろう事。

この学院は幼稚園からのエスカレーター式で、姫川さんも中等部まではここに通っていた事。

姫川さんは幼稚園どころかへその緒を切った瞬間からリーゼントだという事(!!??)。

当時15歳だった二人がオンラインゲーム廃人で、金品を賭けて戦う裏サイトで荒稼ぎしてた事。

()()()()()()という相手から悪魔の肖像を賭けて対戦した事。

難なく勝利した後、もう一度対戦したら二人以外の仲間と仲間割れが起きゲームが終わった事。

久我山さんはそれが悪魔の肖像によって起きたと感じ、姫川さんに見せないために騙し討ちでスタンガンで姫川さんを気絶させた事。

姫川さんが石矢魔を選んだ理由が「単にリーゼントが似合いそうだった」事。

 

絵に描かれてるのは、びっくりする程綺麗な、ただの女性だという事。

 

 

 

 

「お久しぶりでございます、アイリス様」

 

男鹿が部屋から戻ってきた。

中にいた悪魔は無力化したらしいので護衛の人達も含めた全員で部屋の中へ。

そして、ヒルダさんがラミアへ連絡した後に絵を見ながら言ったのが先程の言葉だ。

 

描かれているのは、センター分けのストレートセミロングの、綺麗で優しそうな女性。

椅子に座り本を抱えた女性に、ヒルダさんはアイリス様と声を掛けた。

誰かと聞けば…ベル坊のお母さんだと言われた。

 

「下らん気づかいはいらんぞ…アイリス様は私にとっても姉のような存在だ、こんな言い方も恐れ多いが、本当の家族のように接してくれたただ一人の女性(ひと)だ」

 

そう言いつつネックレスを触るヒルダさん、その横顔は複雑そうだ。

生みの親と、育ての親。

当事者にしか分からない事を分かったように言うことはできない、しちゃいけない。

 

けど、私は…ヒルダさんが屈託なく笑えるようになって欲しいよ。

 

 

 

 

さて、持って帰るために男鹿は少しだけスーパーミルクタイムになり地下から闘技場までを()()()()()

 

私達も落石に気を付けて闘技場まで戻り、絵を運ぶ男鹿と絵を守るヒルダさんを連れて搬入用エレベーターへ向かう。

 

地上へ登る最中の事は墓に入るまで秘密だ。

 

強いて言うなら…恋はいつでもハリケーン…かな。

 

 

 

 

 

後日、男鹿の家でゲームしてたらヒルダさんから大魔王様からの褒美を頂いた。

 

()()()()()だった。

 

 

 

 

 

〇〇〇〇

 

 

 

「ヒルダ姉様っ!!大変ですっ!!」

「どうしたラミア騒々しい」

「あらあら」

 

男鹿邸の庭で男鹿の母と洗濯物を干しているヒルダの元にラミアが駆けつけた。

 

「大魔王様から貰ったご褒美どうしましたっ!?」

「ご褒美?…あぁあの手持ちティッシュの事か、古市が何かと便利だからと持って帰ったが…」

 

「すぐにとり戻して下さいっ!!あれはただのティッシュじゃないんですっ!!さっきフォルカス先生から連絡があって…絶対に使うなって!!」

「?」

 

 

 

 

大魔王様のお使いから次の日、私は箱ティッシュを持参して登校していた。

 

「ハック!…ズピッ」

「何よユキ、風邪?」

「ですかねー、昨日の夕方辺りから鼻がとまんなくて…もう鼻真っ赤です」

「無理しないで保健室行ったら?ベルちゃんもいるんだから伝染(うつ)したら大変よ?」

「うー…そうですね、邦枝さんありがとうございます」ズピッ

「着いてこかユキちんー」

「いや、由加さん達にも伝染(うつ)したらなんで1人で行きますよ」

「そうか?お大事になー」

「あはは、行ってきまーす」

 

 

「古市ー」

 

鼻をかみながら廊下を歩いていると男鹿が走ってきた。

 

「男鹿?なんかあった?」

「保健室行くならついでにパン買ってこいよ」

「鬼かっ!」

 

全くもう…ただの風邪だろうけどさぁ…。

あ、箱ティッシュ使い切っちまった。

うわ…。

 

「メロンパンな」

「あーもうはいはい、教室に戻る時に買っとくからお前教室戻れ!」ズピッ

 

えーと他にティッシュなかったっけ…お。

 

「おぉ…ありがとう大魔王様、ジャストタイミングだ」

 

 

 

―男鹿邸

 

「こんな風にですね、巻いた包帯みたいにまるめて鼻の両穴に詰め込むととんでもない悪魔を呼び出す儀式になるらしいんですよ、女の子はちょっとできません」

「…ならば大丈夫だろう、古市は坊っちゃまの侍女見習いだ、それ相応の品位を持っている」

「…それもそうですね、古市だって女ですしね!」

 

 

 

 

―聖石矢魔高校

 

「あー、マスクを持っておいたのが唯一の救いだ」フガッ

「お前女としてそれどうなの?」

「け、お前の前なら気にしねーよ、マスクも大きめでフィットするタイプだから違和感ないだろうし…後でトイレ行って確認しとこ」

 

あーなんだろう、風邪ってこんなきつかったかな?

なんも頭が回らねー、ぼーっとする。

ん?

 

「んー?おかしいな、ティッシュで鼻を塞いだ上にマスクまでしてんのにニオイがする…」

「ニオイ?何言ってんだ、ニオイなんて別にしねーぞ」

「ほんとに?花の甘ーいニオイなんだけど、じゃあこのティッシュのニオイかな…魔界のティッシュってこんなタイプなのかなー、それとも大魔王様からだからかー?」

 

だとしたらこれ相当強いニオイなんだな、まるでそこらじゅうから漂ってるみたいだ。

 

「あれ、虫だ…なんの虫だろう、ハエ…じゃないな…でもフラフラしてるし…」

「…(やべぇ、どこにも虫なんて飛んでねぇのに…そんな重症なのか)」

 

お、止まった。

 

「男鹿、虫がお前の顔に止まった…」

「はぁ?」

「追い払うからじっとして…おりゃ」

 

ゴスッ

 

…。

 

「……え?」

「……」

 

な、殴った?

 

私が?

 

男鹿を?

 

「……えーと…」

「古市、てめぇいつの間にそんな強くなった?」

「…え?」

「いくらグーでもお前のへにゃちょこパンチならこんな音は出ねぇ、精々ペチッだろ」

「た、たしかに」

 

なんでだ?

今までケンカって言ったって見てるだけの方が多かったのに。

…体調不良が火事場の馬鹿力を発揮した?

…虫を追い払うのに?

 

「なんでだろう…って男鹿それむず痒くないのか?虫がお前の額をチョロチョロしてんだけど」

「……これ一回気絶させた方がいいか?」

「え?」

 

男鹿が真剣な顔をしたと思ったら殴りかかってきた…へぁ!?

 

「いやいやいや!私病人!痛いの禁止!」

 

ちょ、ちょ、わざわざそんな振り被らなくても!?

 

『何故避けない?』

 

「え…?」

 

男鹿が拳を三回繰り出した。

それを私は、

 

一発目と二発目を最低限の動きで避け、三発目を左手でいなした。

は?

 

「あぁっ!?」

 

それに男鹿とお互い驚いていると、身体が勝手に動き、神崎さんのような踵落(かかとお)としをし。

 

ゴキンッ!!

 

男鹿の頭を床へめり込ませた。

 

…。

やばい、男鹿の事、足蹴にしちゃった…。

ベル坊が驚いてる、でも、私の方がもっと驚いてると思う。

身体が反射的に動いた、傷付ける気なんてないのに、()()()()()()なんて一番嫌いなはずなのに…。

は!?ベル坊!?

もしかしてベル坊に対しても殴ったり蹴ったりしちゃうんじゃ!?

 

「ご、ごめん男鹿、ベル坊、一旦離れる!!」

 

なに、なんなの?私の身体どうしたんだ!?

 

 

 

ガバッ

 

「…いねぇ。ベル坊!古市どこ行ったか分かるか?」

「アー」(汗

 

 

 

 

「……何これ…?」

 

咄嗟にその場を離れようとしたらいつもの何十倍も早く走り、あっという間に屋上に着いた。

それも、息が全く上がらないまま。

 

…なんで??

 

屋上から降りながら自分に言い聞かせる。

…大丈夫、大丈夫だから。

大丈夫だから、落ち着け。

…きっと、大丈夫。

 

ふぅ…必要なのは、私が誰かに暴力を振るわないようにする事。

そのためには、誰とも会わないようにする事。

 

……無断欠席!?

いや、寧々さん達に保健室へ行くことを言ってるから、携帯で早退すると伝えれば済む…かな!?

おお、いける、いける気がする!

これで…ん?

 

……えぇ。

学院の時にも思ったけど、聖石矢魔(ここ)にもいたんだな不良って。

石矢魔(うち)よりは落ち着いてるけど派手な髪型に、着崩した制服…うちに触発されたかな?

……えぇ。

空手部で…部長が三木君…カツアゲの指示を出したのは…男鹿…か。

 

あー…役満…。

()()()()()

 

「あのー…男鹿に用があるんですか?」

「あ?ってデッッッ!」

「うわっ!まるでデデンッてSEと字幕が見えそうなデカさっ!」

「こんな激レアうちにいたか!?」

「流石に失礼すぎないかなぁっ!?」

「…いや、こいつ…石矢魔だ…」

 

はぁ、そりゃ私は男鹿や邦枝さん達に比べたら影は薄いですよ。

何がデデンッだ、何が激レアだ、バレーボール出とっただろうが!

確かに女子は聖石矢魔の制服に変えてるとはいえ気付けよすぐ!

 

「あ、こいつ古市か!」

「古市…あぁバレーの時バルンバルンだった!?」

「それもだけど!マスクしてて気付きにくかったけど!」

「あれだよ、男鹿ハーレムの銀髪と巨乳担当」

「石矢魔のお色気担当だろ」

「歩く18禁」

「体臭が石鹸なのにエロい女」

「Ms.エロゲの雪女」

 

誰が広めた…。

ほとんどぇ、ェィチな感想じゃねぇか!

まぁ、いい。

 

()()()()()()()()()()()

 

「空手部名物、5人組手だ」

 

そういいながら周りをしっかり囲んでリンチにしてこようとするクソ野郎共。

それを私は…、

 

ギュアッゴガガンッ!!

 

攻撃を全て避け、正面側の二人を男鹿の時のように蹴り倒し、顔を地面に埋める。

 

「次は…誰?」

 

「……古市さん」

 

……もしかして見られた?

 

「あ…」

「三木さん…っ」

 

こんな、()()()()()()()()()()?

 

「…やっ違うよこれは決してそういうやつじゃなくて…」

「何があったかは大体見当がつく、そいつらは問題ばかり起こす幽霊部員達だ」

 

あ、そうなの?

ならうちに触発されたりとかじゃないんだ。

 

「…そんな事より。君、なんで一人でいるんだ?」

 

「…え?」

 

「転校してすぐに言ったと思うけど一人だけで行動するのは控えてって言ったよね?女子と何人かで固まって動いてって言ったよね?多人数の男子に近づくなって、二人っきりになることは控えてって、そんな相手はオレや男鹿だけにしてって、言ったよね?」

 

「……」

 

あ、あぁあの帰ると思ったら振り返ってまで言ってきた奴。

…あ。

私も役満じゃん。

 

「道場まで、着いてきてくれるかい?」

「…はい」

 

…空手部が使っている道場に着くと朝礼まで説教された。

なお、マスクの理由を聞かれたから風邪気味な事を言えば早く言えとさらに怒られ保健室まで付き添われた。

風邪を感染(うつ)したくないと言っても、朝礼に遅れると言っても私から離れなかった。

私は、いつ私の身体が暴走するか、誤って三木君にもそれをふるってしまうのではと心配しながら保健室まで向かった。

 

保健室の先生に事情を話そうとすれば三木君が代わりに言って、ものすごく微笑ましく見られながらベッドを貸してくれた。

「じゃあ古市さん、お大事に」

「んー、ありがとー」

 

カーテンを閉めてもらい、ガッツリ寝る体勢に入る。

はぁ…ほんとに今日は何があったんだ?

唐突にパワーアップイベントでもあった?

でも蜘蛛に噛まれたりとか、超人血清打たれたりとかもしてないし…。

てかここMAR〇ELじゃなくて悪魔の世界だし…。

 

じゃああれか…

 

「私も男鹿みたいに、悪魔に取り憑かれたかな…なんて」

 

『なんだ、やっと気付いたのか』

 

「…ゑ?」

 

目を開けると、少し透けてる男が立っていた。

黒いボサボサな長髪にエラのような耳、顔の左側に十字状の刺青?のある…ベヘモット…さんじゅぅ…あー…。

 

『ベヘモット34柱師団の事か?』

 

そうそれ!それの一番最初に戦ってた人だ!

…あれ?

 

「考えてることが、分かるの?」

『ああ、それらも含めて説明する、いいか?』

「わかり…あ、私は古市 ユキって言います」

『……ヘカドスだ、小娘』

 

それからヘカドスさんに今の状況を説明された。

なんでも今私が鼻に詰めているティッシュが全ての元凶だったようだ。

それによりヘカドスさんの思念だけが呼び出され、ティッシュの使用者にかなり有利な簡易契約をさせられてるらしい。

 

大魔王様のティッシュ…マジでやべぇじゃん。

 

「つまり…今までの私の強力な力は、ヘカドスさんが力を貸してくれていた?」

『そうだ、なかなか飲み込みが早いな。男鹿に一撃入れた時は正直胸が晴れたぞ』

「…まぁ、結構ありましたもんね、焔王様と私達」

『…焔王様と言えば、確かお前…焔王様に求婚されたとは本当か?』

「……」

 

あぁ…そんな事もあったわぁ…。

 





今回はなんもないよ。
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