戦姫絶唱シンフォギア 七つのヒカリ   作:レーラ

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お久しぶりです。レーラです。

突発的にまた描きたくなりました。

今回のシンフォギアは夜空に煌めく星とは繋がりのないものになります。

一応時系列としてはXVとXDのEND of編終了後辺りになります。

見切り発車でありますが、ご理解の上でよろしくお願いします。


新たな脅威

とある世界。歌によって世界が一つとなり、先史文明の巫女の野望を打ち砕き、万物を貪り食らう巨人を滅ぼした。

 

 やがて錬金術師の台頭により、その戦いは激化し、時には愛する者までもを巻き込んだ。

 

 その巨頭が斃れた後も、その残骸が暗躍。果てには神の再臨までもを招いてしまった。

 

 これ程までの不条理を前に、人々は打ち勝った。胸の歌を持って。

 

 神々が振りまきし呪詛を打ち払い、人類は歌で繋がった。

 

 そして、数多の平行世界を繋ぎ合わせたギャラルホルン。世界蛇と終焉の巫女との戦いを繰り広げ、やがて平行世界に繋がるゲートは閉じた。

 

 多くの呪縛から解き放たれた人類は、その足で新しい歴史を歩み出す。

 

 そこに潜む新たな魔の手が、脅威へと引きずり込もうとしているとは、未だ知らない。

 

 

〇〇

 

 

 何故こうなった?何故逃げなければならないのか。己にそう問いかけながら、ローブを被った男は月が浮かぶ夜の街を走る。

 

 既に息絶え絶えであり、男の目の瞳孔が小刻みに揺れ、恐怖の色に染まった白い顔は只事ではない。

 

 男が背後の方を振り返る。視界には漆黒のパワードスーツを身にまとい、胸にはオレンジ色の宝石がはめ込まれている。鎖で繋がれた二本の短剣を手にしながら歩いている。月光が反射したその切先には、より濃い液体が道路に滴る。

 

 男は逃げていた。それも一人だけではなく、仲間がいた。だがその仲間達は尽く、その刃の餌食となった。短剣に付着した血はその仲間のものだ。

 

 男に戦うという選択肢は無い。数で勝てなかったのなら、たった一人で正面からやり合った所で、自分も同じ末路を迎えるのは目に見えている。

 

 男は槍者を撒く為に建物の角を曲がり、路地裏に入る。さらに建物の裏口に入り、その奥の部屋に立てこもる。

 

(ここならば……ここならば……)

 

 どこまでも追いかけて来るなら、隠れてやり過ごすしかない。命からがら逃げ続け、酸素を欲する身体であるが、呼吸で辿られないよう身を屈め、息を殺す。

 

 やがて追跡者が扉を開けて入って来た。足音と鎖が鳴る音が部屋中に、潜んでいる奥の部屋まで聞こえる。音が男を精神的に追い詰めていく。

 

(来るな……来るな……!来るな来るな来るな来るな来るな来るな!!)

 

 恐怖で震える身体を押し殺し、息を潜めていないようにする。全ては生き残る為に。

 

 すると、部屋を巡回していた追跡者の足音が止んだ。追跡者が一息吐いて、鎖を床に突いた。やがて追跡者が鼻で笑い、歩き出した。

 

 隠れ潜む男は目を強く閉じ、死にたくないと懇願するように涙を流す。だが足音が近づくかと思われたが、その逆の事が起きた。

 

 足音と鎖の音が少しずつ遠ざかっていく。祈りが通じたのか分からないが、追跡者の足音は完全に聞こえなくなった。

 

 音を立てないよう、ゆっくり立ち上がって部屋の扉をゆっくり開けて覗き見る。部屋を見渡すと、姿はおろか影一つもない。

 

 助かった。そう確信した男は安堵してその場にへたりこみ、汗と涙を拭う。

 

(助かった……助かった……!生き残ったんだ俺は……生き残……)

 

 が、その撫で下ろした胸が鮮血と共に貫かれた。声にならない呻き声を挙げながら、その正体を目の当たりにする。

 

 だが男が理解する前にその身体から引き抜かれた。貫かれた身体に蓋していた刃が抜かれた事で、空いた穴から夥しい量の血が噴射。男は目を見開いたまま床に倒れ落ちて絶命した。

 

 男の死を確認した追跡者はそのまま裏口から出て、この場を後にした。

 

 

〇〇

 

 

 国連直轄の超常災害対策機動部タスクフォース『S.O.N.G.』の本部。そのブリッジにて、緊迫とした空気が流れている。

 

「アルカ・ノイズの反応を検知!」

「座標更新します!」

 

 S.O.N.G.のオペレーター達がコンソールをタッチしながら、画面に地図を表示。アルカ・ノイズの反応を示す赤い光点が大量に表示される。

 

「やはり狙って来たか……!」

 

 S.O.N.G.の司令 風鳴弦十郎が腕を組んで静観している。まるで想定内と言わんばかりに。

 

 別のモニターでは、街の道路に魔法陣が続々と展開。そこからアルカ・ノイズの群れが姿を現す。

 

 アルカ・ノイズの行動目的はただ一つ。全てを分解する事。軍隊の如く、アルカ・ノイズは障害となる車両や木々を分解という名の破壊活動を行う。

 

 その群れに接近する車両が二台、縦列に走っている。その内の前方の車両の屋根が開いた。するとそこから三人、屋根から飛び立った。

 

「一番槍、行きます!」

 

 その内の一人、S.O.N.G.に所属するガングニール装者 立花響が首に掛けているペンダントを手に強く握りしめる。

 

 

 詠唱を唄った装者達が身に纏っていた衣服の代わりに、パワードスーツに変わる。先頭に立っていた響がアルカ・ノイズの群れに突貫。得意の徒手空拳を用いて殴り、蹴り、払って叩きつける。

 

 天羽々斬のギアを纏った翼も、響の背後に迫るアルカ・ノイズを刀で斬り捨てる。またさらに同時に襲いかかって来るアルカ・ノイズであるが、突如空から無数の光の剣が降り注いだ。

 

【千ノ落涙】

 

 翼に牙向いた個体は塵となって消滅した。だがアルカ・ノイズは地上だけではない。高く立っているビルを超えて空を飛んでいる巨大な戦艦型が三体。それらが卵を産み落とした。

 

 地上に落ち、卵が溶けると中から小型のアルカ・ノイズが姿を見せる。

 

「またアルカ・ノイズが!」

「残党と決して侮っていた訳ではないが、これ程の数を有するとは……!」

 

 空に漂う戦艦型を全て潰す事は出来る。だが響と翼のシンフォギアではいずれもそれを倒すのに時をかけてしまう。その間に地上の破壊行動を許してしまう。かといって、このままではジリ貧。

 

「だったらあたしに任せなぁ!」

 

 乱暴な口調が聞こえ、響と翼が上を向く。その真上にそびえ立つビルの屋上に、その声の主であるイチイバル装者 雪音クリスが腕を組んで、戦艦型を強く見据える。

 

 腰のアーマージャッキが展開されると、装填されている小型ミサイルの信管が剥き出しになる。さらにクリスの両手にはガトリング砲が二丁。

 

「大盤振る舞いだぁ!」

 

 ミサイルとガトリングの銃弾が一斉に火を噴いた。一発も余すことなく戦艦型に直撃、三体まとめて墜落するように赤い塵となって消える。

 

 これで新手の脅威は去った。後は地上の雑魚を片付けるのみ。

 

 翼の刀が振るわれる度に、アルカ・ノイズを一刀両断。さらに刀を巨大な刃に変えて、集まったエネルギーを一振りと共に放った。

 

【蒼ノ一閃】

 

 斬撃のエネルギー波の軌道にいたアルカ・ノイズはまとめて真っ二つとなって消えた。

 

 響の右腕のガントレットユニットを伸長、ギアが高速回転するとエネルギーが集約される。そして集まったエネルギーをそのまま拳に乗せて、一気に叩き込み、目の前のノイズの群れを纏めて吹き飛ばした。

 

 空にいる小型の飛行型アルカ・ノイズは、クリスの銃によって全て撃ち落とした。これくらい朝飯前だと、銃口に息をふきかけた。

 

「ここら辺は片付いたな」

「ああ。後は錬金術師を捕らえるのみ」

「私達も行こう!」

 

 翼とクリスが強く頷いた。裏手から錬金術師を逮捕するべく動いているマリア達の加勢に向かった。

 

 

〇〇

 

 

 時は少し前に遡る。

 

 国連直轄の超常災害対策機動部タスクフォース S.O.N.G.の本部。そのブリッジにて、所属するシンフォギア装者六名が全員集まっていた。装者達の前には司令である風鳴弦十郎と、その右腕的存在であるエージェントの緒川、技術スタッフのエルフナインがいる。

 

 全員揃った事を確認してブリーフィンを始める。

 

「各地で潜伏しているパヴァリア光明結社残党。その一部が、先日この東京で目撃された」

「結社の残党がまたしても?!」

 

 まさかと装者達が驚きの声を発し、中でも翼は鸚鵡返しに尋ねた。

 

 かつてノーブルレッドと呼ばれた結社の残党が暗躍し、シェム・ハという強大な存在をこの世に解き放ってしまい、世界は最悪の危機を迎える事になってしまった。

 

 そういった前例がある以上、装者だけでなくここにいるスタッフはただの残党と侮る事が出来ない相手だ。

 

「結社が瓦解しても尚、その残党の逃亡と潜伏活動は未だに続いている。中にはテロまでも企てているという話もある。疑わしきは罰す、とは言わないが実行されては手遅れになる」

 

 フロンティア事変にてF.I.S.に武装蜂起をけしかけ、魔法少女事変ではキャロルの支援もしていた。F.I.S.出身であるマリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読調、暁切歌の三人、並びにキャロルと深い関わりのあるエルフナインにとっては、特にその因縁は深い。

 

「今回その目撃情報をもとに調査した結果、様々なルートを駆使して物資を運搬していたようです。かなり巧みなルートで隠されていたので、見つけるのに時間がかかってしまいましたが……」

 

 緒川が解説していると、モニターにある映像が映し出された。一見すると、錬金術師が何か壺のようなものを持ち出しているが、中身までは画像が粗く、よく視認できない。

 

 だがそこを拡大し、より鮮明に映し出されたその中身が装者達の身体に衝撃を走らせる。

 

「あれはアルカ・ノイズの!」

 

 驚いた響がその正体を口にした。

 

 かつてキャロルが錬金術にて生み出された特異災害ノイズの亜種。キャロルが倒れた後もブラックマーケットを介して様々な国に流れ、中には軍事利用している国家すらもある。

 

 アルカ・ノイズはモデルとなったノイズの行動パターンに沿って、目の前の生物を殺すべく活動する。それが街に解き放たれでもすれば、何の抵抗手段も持たない住民達が犠牲になってしまう。

 

 その前に、残党による徒党を一気に叩き潰す必要がある。

 

「敵の潜伏先であるこの工業地帯に潜入。翼、響君、クリス君はアルカ・ノイズの撃破。マリア君、調君、切歌君は錬金術師達の確保だ。アルカ・ノイズを殲滅させた後、翼達にもマリア君達に合流し、錬金術師を確保してくれ」

「「「「「「了解(デス)!!」」」」」」

 

 そして現在、ギアを纏ったマリア達は裏手より回って工業地帯に入った。この一帯は海に面しており、漁業を営む者達によって発展していったのだが、老朽化により放棄されたという話がある。

 

 それ故にアジトとして最適だったのだろう。だがアルカ・ノイズを使い、混沌を齎すのであれば止めなければならない。

 

 だがこの一帯は広く、三人が同じ場所で行動しては時間がかかる。ここは三手に別れて錬金術師の対応に当たる。

 

 オペレーター達のナビで潜んでいると思われる工場に突入。扉を蹴破った先に、アルカ・ノイズが召喚される。

 

「ご丁寧に教えてくれるわね!」

 

 このアルカ・ノイズはただの足止め。もし進む先にいなければ、それを阻む意味がない。つまりアルカ・ノイズの出現が、錬金術師の居所が近くにあるという事を意味している。

 

 迫り来るアルカノイズの軍勢を相手に一歩も退かず、短剣を振るい、格闘術で消し飛ばしていく。

 

 遠距離型のアルカノイズが、白い玉を砲弾のように掃射。マリアの背中に迫るが振るった短剣の刃が分離、鞭のようにしなり、周囲のアルカノイズ共々、白い砲弾をを斬って散らす。

 

【EMPRESS†REBELLION】

 

 さらに無数の短剣を周囲に展開。それを遠距離型に向けて、一斉に放つ。今度はマリアが一斉掃射して、遠距離型アルカノイズを滅した。

 

【INFINITE‪†CRIME】

 

 アルカノイズを全て倒したその時、鉄パイプがぶつかる音が聞こえ振り返る。そこにはローブを身にまとった者が慌てて逃げおおせようとして、転んでしまっていた。

 

「もう逃げられないわよ!」

 

 逃げる錬金術師を捕らえるべくマリアが追いかける。最早戦う術はないが、それでも牢屋に入りたくない。そんな浅はかで切実な願いに縋るように立ち上がって逃げ出す。

 

「待ちなさい!」

 

 マリアが制止しようとするが錬金術師が止まるはずもなく、裏口の扉を開けた。だがその途端、後ろへ倒れてしまった。

 

 違和感を覚えたマリアが駆け寄った。その瞬間、マリアの小さな悲鳴が漏れ出た。倒れた錬金術師は目を見開いたまま息絶えていた。額にはナイフが刺さっている。

 

 予想外の事態に動揺したマリアだが、すぐに冷静に切り替え、やるべき事をやる。まずは司令部に通信をかける。

 

「司令!錬金術師を発見。ですが……何者かに殺害されました」

『何だと?!』

 

 本部にいる者達もモニター越しに把握していたが、動揺を隠せない者もいる。

 

「脳天を突き刺されて即死。相当の手練ね。まだそう遠くには行っていないはず。追跡を……」

『マリア大変!』

『こっちも大変なのデス!』

 

 そこに調と切歌がただならぬ物言いで通信に割って入って来た。

 

「調!どうしたの?」

『錬金術師が……』

『みんな殺されていたデス!』

「なっ?!」 

 

 マリアは驚愕した。まさか自分以外の所でも同じ報告が上がるとは思わなかった。にわかには信じ難い報告ではあるが、本部のモニターにはそれが偽りでない事を示していた。

 

 切歌が向かった団地の部屋の中では別の錬金術師が心臓を潰されて死んでいた。調が行った倉庫は突然紅蓮の炎が燃え盛った。当然救助を試みたが、中にいた数名の錬金術師は一人残らず刺殺された後だった。

 

「司令!アルカノイズとは別に、高エネルギー反応を検知!」

「同時に四つ!その内の二つが間もなく消失!」

「なっ?!」

 

 オペレーターの藤尭、友里に弦十郎が面をくらった。

 

 錬金術師の暗殺。突如現れ、消失した高エネルギー反応。立て続けに起こる異常事態に弦十郎の表情が歪む。

 

 だが確かなのは暗殺者がどこかにいる。それも殺害場所が離れている事から複数による犯行であると推測される。早急に指令を下す。

 

『マリア君、調君、切歌君は急ぎ、暗殺者の行方を探せ!翼!響君!クリス君!』

「ああ!今追ってる所だ!」

 

 路地裏を走っているクリスが乱暴な口調で返事をした。マリア達の所へ向かおうとした時、逃げようとした所を鉢合わせ、確保するべく追跡している。

 

『そいつが最後の一人だ!何としてでも確保するんだ!』

 

 今逃げている錬金術師が今回テロを企てようとしていた一味の最後の一人となってしまった。もし殺されれば唯一の情報源を失う事になる。

 

 だが錬金術師は自分の命が狙われていると知ったのか、それとも翼とクリスが暗殺者と誤認しているのか必死の形相て路地裏の中を逃げている。

 

「クッソ!猫みたいに逃げやがって!」

「そっちに行ったぞ立花!」

 

 翼とクリスに向かって腐臭のするゴミ箱や固い空瓶などを放り投げて、二人を怯ませようとする。それを避けながら追跡を続けるが、いい加減な悪足掻きにうんざりする。

 

 だがこの逃走劇を終わらせるべく、翼が響に指示する。すると、錬金術師が逃げようとした先に響が降り立つ。

 

「退けえぇ!」

「退けと言われても退けません!」

 

 最後の悪足掻きも響の前では無意味であり、あっさりと投げられ組み伏せられた。その直後に翼が追いつくが、クリスはあまり長い距離を走るのが得意ではなく、着いた時には随分と息を切らしていた。

 

「でかしたぞ立花!」

「ったく……随分と逃げ回りやがって」

「司令、錬金術師を確保しました。これより本部へ護送します」

『よくやった。だがまだ暗殺者の行方が分からない。既……マリ…………わ』

「司令?司令?!」

 

 本部より弦十郎の通信が途絶えた。さらに悪い事が立て続けに起こった。出口が巨大な火柱が噴出し、塞がれてしまった。

 

「何がどうなってやがんだ?!」

「ダメ!通信が繋がらない!」

 

 異様な事態にクリスと響が戸惑うばかり。だが燃え盛る業火は徐々に響達に迫り来る。

 

「どうすんだ先輩?!このままじゃあたし達も丸焦げだぞ!」

「落ち着け!まずは炎より……」

 

 クリス達に指示しようとした時、響の額に反射光が差し込んだ。それに気が付いた翼が響を背に立った。その刹那、バァン!と弾ける轟音が鳴り響いた。

 

「翼さん!」

「大事ない……!」

 

 響は無事である。翼も、刀で弾き落としている。翼の予感通り、狙撃手がいる。明らかに響を狙っていた。だが対象者だった響に勘付かせないように的確に額だけを狙った。

 

 それだけの腕を持つ狙撃手を相手に、いくらクリスでも高さというアドバンテージを取られては分が悪い。

 

 周囲は炎によって阻まれ、何処からともなく弾丸に狙われる。まさに絶体絶命の窮地に、響、翼、クリスは追い込まれてしまった。

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