S.O.N.G.とZ.E.U.S.
二つの組織の装者と使い手達による戦いが激化している。
Z.E.U.S.の方は新たに紫宮舞華が参戦。翼を含む六人の装者達が舞華によって一方的に倒されている。唯一翼だけがアマルガムを使用して、相対している。
「貴様、それだけの技をもっていながら、何故無意味に命を奪う?!」
「無意味……ね。逆に聞くけど風鳴翼って、夢想家なの?」
「どういう意味だ?!」
問いかけたのが、逆に鼻で笑われる形で問い返されてその真意を問う翼。
「あなたの歌は確かに素晴らしかった。私も魅了されちゃってたもの。けどその後、悲劇が二度も繰り返された」
舞華の言う悲劇。それは奏を喪う事になったツヴァイウィングのライブ、もう一つはミラアルクが引き起こしたあの大虐殺を指している。それを指摘された翼の表情が一瞬揺れたのを、舞華は見逃さない。
「人類を守護する防人の剣……だったかしら?その割には、随分と軽い刃だわ」
「軽いだと……?私の剣を軽いと言うのか?!」
舞華の一言は翼にとって侮辱以外の何物でもない。憤怒を向けられる舞華であるが、気にする様子など見られない。
「あなたの歌の本質は剣。剣は所詮、人を殺す為の武器。それが人々を救うなんて……。フフフ……活人剣気取りかしら?」
「夢見すぎだよね」
萌芽が合いの手を入れると、影風が爆笑。それを調と切歌が不快感を露わにする。
「いい加減にして!人を馬鹿にして!」
「人を助ける剣が、弱いわけがないデス!」
翼を愚弄されて頭にきた調と切歌が舞華によって負わされた痛みを押し殺して萌芽と影風に向かって走り出した。
「馬鹿の一つ覚えみたいな突出……」
「ホント、無駄だって事が分からないみたいですねっ!」
激情に委ねた突貫を前に萌芽と影風が呆れるも、迎え撃つ。
唯一、戦いを静観している結に通信が入る。
「こちら結。星羅か……そのまま戦闘区域から離脱しろ」
そう告げて通信を切る。
「次の作戦に移る。ここは任せたぞ」
「了解」
舞華にこの場の指揮権を託して、ひとっ飛びで天井から脱した。
「待って!あぅっ……!」
結を追おうとした響だったが、突如膝をついた。突然の事で未来とクリスが駆け寄る。
「響?!」
「どうした……て、身体が冷たいじゃねえか!」
響の肩に触れたクリス。その体温は冷めていた。
「響ちゃんのガングニール、適合係数が低下しています!」
「まさかAnti_LiNKERか?!」
「いえ。そのようなものが散布された形跡はありません」
本部でも響の異変をモニタリングしていた。 友里と藤尭が原因を解明を急いでいるが、一番の原因と思われたAnti_LiNKERが散布された様子はない。
では一体何故?弦十郎も考えを巡らせる。その時、思い当たる事象に至る。
「まさかあの時の!」
唯一響だけが該当するもの。先の戦いで結の大技を受けていた事だ。
「既に楔を打ち込まれていたという事か!」
『おいダンナ!』
そこに外に蔓延るアイスノイズを全滅させた奏から通信が入った。
「どうした?!」
『妙な車両が走って行きやがった!』
「妙な車両だと?」
『ああ!こんな所にあんなのが走ってたんだ!けど、逃げられちまった』
悔しそうにする奏の報告を受け、オペレーター達が総力を挙げて解析する。モニターに黒いバンが映される。そしてその運転席に乗っている白髪の女性の顔も映った瞬間、サポート役のアトラスが席から急にたちあがった。
「十束星羅までもが……!」
「何?!ではまさか?!」
「彼女も七星魔剣の一人だ」
そんな人間がただ何の目的もなく黒いバンを走らせているとは考えにくい。だが追跡しようにも奏のギアでは追いつくのは不可能だ。
仮に弦十郎達が車両でそのバンを追跡しようにも、アイスノイズという存在のせいで無策に追うのは現実的ではない。
「司令殿。僕に追わせてくれ!僕なら、このケリュケイオンがある。複製聖遺物とはいえ、ノイズに対抗出来る」
「良いだろう。緒川はアトラス君と共に追跡!奏はそのまま、翼達の援護に行ってくれ!」
『分かった』
弦十郎の下した指令に従い、翼達の所へと走り出した。
〇〇
アイスノイズの脅威から逃げ回るマフィアを殺して回っていた愛亜を止めるべく、マリアとセレナが交戦を始めていた。
だがかつてF.I.S.最強と謳われた愛亜が相手では二人がかりでも押し切るのは容易ではない。
「どうした?束になってもその程度か?」
愛亜はセレナにも容赦なく攻撃を仕掛ける。膂力で劣るセレナを狙い、か弱き刃を強引に押し崩す。倒れた所を狙うが、マリアがそれを許さない。
「セレナはやらせないわ!」
光と闇の刃が激しくぶつかり合い、互いに譲らない鍔迫り合いになる。
「足手まといを連れて死ぬつもりか?」
「セレナは決して足手まといなんかじゃない!」
鍔迫り合いを解いて左の拳で殴りかかった。腕で防ぐも後方へ大きく退く。
「今ここにいるセレナも、あの日私達を守る為に唄ったセレナも、強い意志と覚悟を持って立っている!舐めるな!!」
「マリア姉さん……!」
マリアの檄に応えるべく立ち上がったセレナ。住む世界は違くとも、二人の姉妹の絆は本物。愛亜にとっては、どうでもいいものだった。
「下らない……」
嫌悪の眼差しで吐き捨てる。
「互いに傷を舐め合う事しか出来ないお前達に、」
橙色に光る無数の短剣を頭上に出現させ、それを雨のように降り注ぐ。
【DREAD=RAIN】
マリアが短剣を展開し、逆三角形のバリアを展開。降り注ぐ短剣の雨を防いだ。
「ヴェイグさん!」
『ああ!存分に使え!』
セレナの要請を受けて、ヴェイグが力を貸す。セレナのギアが光に包まれた。すると、アガートラームのギアがヴェイグの持つグレイプニルの力を得た、デュオレリックギアとなった。
「グレイプニル……!」
セレナの決戦機能を目の当たりにし、短剣の柄を強く握り直す。
「やあぁっ!」
先に仕掛けたのはセレナ。長い鞭に変わった刃を振るう。変則的な軌道を描く鞭を避けるも、続けて繰り出されて回避。戦い方もギアの出力も劇的に上昇したセレナを相手に苦戦を強いられる。
舌打ちする愛亜に、マリアが追い打ちをかけるように短剣を納刀した左腕の篭手から白い光線を放つ。
【HORIZON†CANNON】
迫る光線に対し、愛亜は短剣に繋がれた鎖に持ち替えたそれを高速で振り回す。そこから発生したエネルギーが竜巻となって迎撃する。
【DELETE=WIND】
竜巻と衝突した光線が爆発。発生した爆煙が周囲に立ち込める。
「チッ……!この程度……なっ……?!」
爆煙が晴れた時、目を疑う光景が映った。戦場だった埠頭にいたはずが、いつの間にか青空と彼方まで広がる花畑に変わっている。
周囲を見渡してもあるのは自然豊かな花畑のみ。相対していたマリアとセレナもいない。
これがグレイプニルの力の一つ。愛亜は異空間に飛ばされていた。マリアの攻撃はその為の目眩しでしかなかった。
「小賢しい真似を……!これがグレイプニルの……」
突如足元が暗くなった。頭上を見上げた時、その光景を前に目を見開いた。
上空から無数の巨大な箱 ミレニアムパズルが降り注いだ。回避行動も迎撃も間に合わず、ただ落下するミレニアムパズルが迫る。
【DVERGR†DEARSPACE】
「しまっ……」
逃げ場の無い愛亜は、ただ無数のミレニアムパズルに押し潰されるしかなかった。
〇〇
一方、倉庫から脱した結は停めていたバイクを乗り、エンジンを掛ける。青い甲冑兜を模したヘッドギアから通信を入れる。
「こちら結。予定通り作戦はフェーズ2に入った。彩、クラウソラスのグラデアメイルを用いて対象を一人、狙撃。行動不能にしろ」
未だにS.O.N.G.の前に姿を現さない七星魔剣最後の一人にして事実上のリーダー、錬金術師掃討作戦において目障りな装者達を狙撃し、わざと逃がした一人に発信機を打ち込んだ凄腕の狙撃手、彩と呼ばれる者に指示を下す。彼女もまたグラデアメイルを用いている。
「心配するな。彼女は白だ。だがすぐ近くに余計な者が一人いる。それを先に仕留めろ。そうなれば、対象は戦いどころではなくなる」
バイクに隠した端末を起動。液晶画面をタップすると、少女の画像が映し出される。その少女は……
「では頼んだぞ。対象は……」
セレナ・カデンツァヴナ・イヴだ。
次回、セレナピンチ?!