戦姫絶唱シンフォギア 七つのヒカリ   作:レーラ

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前回書き忘れておりましたが、今作は不定期更新になります。


なので更新までかなり間が空く可能性があります。申し訳ありません。


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思惑と思惑

 パヴァリア光明結社残党捕縛作戦は、誰もが予想しなかった事態に陥っていた。確保するべく錬金術師が次々と何者かに殺害され、残るは響、翼、クリスの三人が取り押さえた最後の一人のみ。

 

 だがそれも狙撃手と迫り来る巨大な炎の壁によって追い込まれてしまい、まさに袋のネズミとなってしまっていた。

 

 翼が大剣を振り下ろし、斬撃のエネルギー波を放った。

 

【蒼ノ一閃】

 

 だが斬撃は炎を前に祓われて消えてしまった。驚いている間に響がアーマーバンカーを引き伸ばし、それを放った。だがそれも炎が揺れただけで消す事は出来ない。

 

 炎だけではない。再び狙撃の轟音。今度はクリスが咄嗟に銃撃で、狙撃の軌道を逸らした。建物の壁に弾丸の穴が空いた。

 

「おいやべえぞ!」

「出口は塞がれた上に、狙撃の的になっている……!このままでは……」

 

 このままでは錬金術師を死なせてしまうばかりか、全滅は必至。刻一刻と迫り来る大炎を前に、脂汗が翼の頬にゆっくり流れ、地面に落ちた。

 

 その時だった。白い砲撃が建物の屋上を破壊。その瓦礫が翼達の頭上に落ちてきた。だが直撃する事はなく、完全に崩落した。

 

「これは……」

 

 驚く間もなく、目の前に黒いワイヤーが三本、目の前の地面に打ち込まれる。

 

「これは……」

「こっちデス!」

「早く!」

 

 またしても頭上より、切歌と調の声。見上げると切歌が纏うイガリマの力で、肩のアーマーからワイヤーを打ち込んでいた。建物の中ならば紫炎は及ばない。

 

 翼達はワイヤーに掴まる。三人とも掴まったのを確認すると、打ち込まれたワイヤーが地面から離れ、急速に屋内まで引き上げられた。

 

「間一髪……!」

「まだよ!」

 

 炎があった場所より外にいたマリアだが、狙撃されている事に気が付き、短剣で弾き落とす。マリアの言う通り、本部に戻るまではまだ安心出来ない。

 

 再び轟音と共に放たれる凶弾。今度は錬金術師のローブに風穴が空いた。

 

「全員戦線離脱!」

 

 ここに留まる理由はない。翼が装者全員に指令を下す。それに従いこの場を後にする。

 

 路地裏から二キロも離れた建物の中から白銀のマスケット銃を構えて狙撃していた暗殺者。黒いローブを着ていてその正体は隠されているが、カーテンで屋内に入る日光を遮り、ほんの隙間からじっと構えて待って狙っていたのだ。

 

『追撃はしなくていい。逃げられたものは仕方ない。全員ここを離れてくれ』

 

 小さく頷いて、構えていたマスケット銃を降ろして立ち上がった。そして、黄色の光を帯びた暗殺者はローブのみを残してその姿を消した。

 

 

〇〇

 

 

 数日後のS.O.N.G.本部。そのブリッジにて、所属するシンフォギア装者六名が全員集まっていた。装者達の前には司令である風鳴弦十郎と、技術スタッフのエルフナインがいる。

 

「今回、君達に集まってもらったのはこれだ」 

 

 弦十郎が進行すると、巨大なモニターから映像が三つ映し出される。それはマリア、調、切歌が見た事があるものであると分かり、三人は驚きで目を見開いた。

 

「あの時の錬金術師達デス!」

「はい。先日、コンビナートに潜伏していた錬金術師達の遺体です。この錬金術師達は、何れも暗殺されたと思われます」

 

 ナイフで頭を穿たれた者、一撃で心臓を潰された者、そして紫炎が燃え盛る中で斬られた者。いずれもコンビナートに潜伏していた残党の一角のメンバーだった。

 

 辛うじてたった一人生き残った者がおり、それは昨日尋問が行われ、証言した。今回担当した緒川がそれについて説明する。

 

「あのコンビナート一帯に潜伏していたのは、テロを起こす為ではなく、どうやら彼らの命を狙う組織に対抗する為に戦力を集めていたようです。ですがその前に、その組織に勘付かれてしまったようです」

「その組織とは一体?」

「現時点では一切不明です。彼らも詳しい事までは知らないとしか」

 

 組織の実態が分からなければ、自分達に牙を剥く者はその暗殺組織と捉えられても仕方ない。現に粘り強く追跡した響達から必死になって逃げていた事についてもそういった背景があると分かれば得心がいくというものだ。

 

 そこにクリスが気になる事を尋ねる。

 

「けどよ、何でアイツらは自分達の命が狙われてるって分かってたんだ?迎え撃つ為にかなりの準備もしてたはずだ」

「それなんだがな」

 

 弦十郎が応答すると、後ろのモニターに世界地図が映し出され、アメリカ、中国、ロシア、ギリシャ、南米等、様々な国々に赤色の光点が表示される。

 

「ここ数ヶ月で、世界各地でも同様の事件が発生している。いずれも被害者は潜伏していた結社の残党達だ」

 

 先日起きた同様の事件が、世界各国でも起きていた事に装者達は全員驚きを隠せなかった。

 

「じゃあその暗殺者は、世界中に散った残党を殺して回ってるって事……?」

「だとしたらとんでもない奴らデス!」

 

 調と切歌が述べた事を弦十郎は否定せずに頷いた。

 

「けど、いくら悪い事をしたからって、何もここまでするなんて……」

「そうね。殺さずとも法で裁く事だって出来る。けどそうしなかった。今回の襲撃犯は、その強硬手段に出た事に必ず理由があるはずよ」

 

 装者の中でも特に響は敵であっても、相手の命を取る事を決して是としない。それが弱点でもあり、最大の強みでもある。

 

 かつて、その優しさに救われた一人であるマリアも気になる事を述べた。弦十郎もマリアと同じ事が気になっていた。

 

「その通りだ。奴らにも何か理由があるのだろう。ご丁寧に自分達の存在を完全に消している。辺り一帯の通信と映像を完全に妨害され、結局のところ敵の正体は分からなかった」

「これだけの事をやって退けるとなると、ただの非合法組織ではなく、相当に訓練されたプロの集まりであると思われます」

 

 現場検証を一通り行った緒川はそう見立てている。報告を受けている弦十郎も、得体の知れない謎の暗殺者達に対しては不気味さを感じている。

 

「司令。たとえ歴史の陰から長きにわたって暗躍した結社が相手とはいえ、国家がこのような超法規的措置が認められるものなのですか?」

 

 翼の疑問は尤もだ。テロを起こしたのであればまだしも、今回は未遂どころか起こす気すら無い相手だった。普通ならば逮捕、起訴して裁判に掛けるべき所をその一切を無視し、独断で相手を殺害するなどあってはならない行為だ。

 

 当然、弦十郎も同じ意見だ。如何に相手が謎の組織とはいえ、譲れぬものがある。

 

「無論だ。如何なる理由があるにせよ、非合法活動である事は明白。当然許されるものではない。これ以上の暴挙を阻止する為にも、何としてでも正体を暴き出す必要がある」

「けどどうすんだ?尻尾の一つも掴めてねえ相手をどう見つけるんだ?」

 

 クリスの言う通り、敵の正体が何一つ分かっていないのでは捕まえようがない。

 

 そこはエルフナインが説明する。

 

「暗殺者がいたと思われる地点に、謎のエネルギー反応の痕跡がありました。ですがほんの一瞬でしたので、それが何かまでは分かりません。ですがあの微量な反応パターンは、恐らく聖遺物由来ではないかと思われます」

「聖遺物が?!」

 

 響のみならず、装者の皆が声を出して驚いた。現状、シンフォギアは全部で六つ。開発者である櫻井了子が亡き今、新たにシンフォギアを作り出す事は不可能。

 

 残った可能性はファウストローブではあるが、エルフナインはこの反応の違和感が拭えず、ファウストローブだとは断定出来ずにいる。

  

「これについては、まだ不明な点が多すぎます。なので、詳細なデータを得る為にも、皆さんにはその暗殺者と出来るだけ長く戦っていただきたいのです」

「エルフナインの狙いは承知した。しかし、戦おうにも奴らが姿を見せなければ……」

「それならば心配ない。その為の作戦は立ててある」

 

 今度は弦十郎が腕を組んで説明する。

 

「今回潜伏していた錬金術師。大半は亡き者にされたが、今回逮捕した者の話によれば、まだ潜伏している残党がいる」

「まだいやがるのかよ?!」

 

 クリスが驚きのあまり、目を見開いて声を荒らげた。先日殺された錬金術師の一派を含めれば少なくとも六人はいた。それでいてまだ潜伏している錬金術師がいるとは驚くのも無理はない。

 

「本来ならばあの日に合流するはずだったそうだ。大方、お前達が来たのを見て逃げたのかもしれん。それが生き延びる幸運となったようだ」

「彼らは万が一があった時に備えて、別の潜伏場所を確保していたようです」

 

 緒川が説明しながらそのポイントをモニターに表示する。だがその数は三箇所に及ぶ。いずれもコンビナートから離れており、それぞれのポイント間の距離も徒歩では半日以上掛かってしまう程に長い。

 

 それを含めて察したマリアがなるほどと頷く。

 

「この三つの内、どこか一つに潜んでいるってわけね」

「ああ。今回は三手に分かれ、逃げ仰せている錬金術師を確保してもらう。敵の目的、正体は一切不明のままだ。だが如何なる理由があるにせよ、これ以上の無益な殺生をさせてはならない!必ず止めるぞ!」

 

「「「「「「了解(デス)!」」」」」」

 

 装者達の意気のある返事が重なる。

 

 

〇〇

 

 

 傾きつつある夕日が街外れの洋館に差し込む。手入れがあまりされていないのか所々外壁に苔が生えつつある。

 

 その広間の中央に大きく置いてあるテーブルを囲うように置いてある七つの椅子。その内五人の女性が座っている。

 

 その内の三人が真剣な空気でいるが、背もたれよりも背が低い赤毛ツインテールの幼子は不安げな表情を浮かべている。

 

 そして緑色の所々癖っ毛が目立つ女性は明るくニコニコと笑顔を崩さない。

 

「S.O.N.G.に逃げた錬金術師が口を割った。この日本に潜んでいるもう一人が、今回の真のターゲットだ」

 

 サラサラとした青髪に四角いレンズの眼鏡をかけた女性が冷たい声を発して話を切り出した。軍服を思わせる青いジャケットと金色の右目と紫色の左目は、荘厳さと威圧を与えている。まさにまとめ役に適任だろう。

 

「あら?じゃあ今回は捕らえるの?」

 

 毛先が茶色に染まっている紫色の短髪女性が確認を取る。その柔和な物腰、組んでいる腕に乗っている豊満な二つの果実を持つ身体は艶かしさを醸し出している。

 

「ああ。前回は放逐してやったが、今回は確実に捕らえる。お前達は先に行け。例の手掛かり、誰にも悟らせてはならない。例え、S.O.N.G.であろうとな」

「うん……!」

「分かりましたー!」

 

 青色の女性が、三人に指令を下した。

 

 一人は赤毛ツインテールの少女。皆が大人びた成人の中、たった一人だけ成長途中の可愛らしい幼子がいるのは場違いに思われそうだが、ここにいる者達はそんな事を気にする素振りはない。

 

 ただ緊張なのか、それとも自信が無いのか返事に覇気がない。

 

 対照的に癖っ毛緑髪女性。五人の中では特に身長が高いのだが、風貌に幼さが残っている。あどけない笑顔から繰り出される返事から、精神も幼く思えてしまう。

 

 そしてもう一人。唯一返事をせず、腕を組んで沈黙を貫いている、中性的な出で立ちが特徴の女性。ジャケット、シャツ、ズボンに靴、何もかもが黒で統一されている。

 

 ただ一つだけ、首にかけてあるペンダント。菱形の結晶がオレンジ色に輝く琥珀となっている。

 

 愛亜は何も告げず席から立ち上がり、洋館から出て行った。曲がりなりにも組織という立場でありながら、足並みも揃えずに動いている。

 

 だがそれを誰一人として咎める様子はない。

 

「じゃあ私達も行きますか♪」

「うん……!」

 

 対して二人は一緒に洋館から飛び出すように出て行った。

 

 三人の出撃を見届けて、洋館に残った二人はバルコニーに移動し、遠くの景色を眺めていた。

 

「ねえ、(あや)はまだ来てないの?」

 

 紫髪の女性が思い出すように青髪の女性に尋ねた。

 

「さあな。また何処かでも寄り道しているんだろう」

 

 紫髪の女性を見ずに答えると、バイクに跨ってエンジンを起動。ヘルメットも被らずにそのまま走って行った。

 

 この二人と出撃した三人が利用していたこの洋館。かつてはフィーネと呼ばれた先史文明の巫女が数多の実験場として使っていたアジトだった。

 

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