戦姫絶唱シンフォギア 七つのヒカリ   作:レーラ

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いよいよ謎の組織の一片が明らかになります。

今回その一人のイメージ図を挿絵として掲載します。

AIイラストなので苦手な方は閲覧注意です。


乾坤の暗部組織

 ブリーフィングを終えた装者達は、逃げ延びているはぐれ錬金術師を救助するべく、三手に分かれてそれぞれのポイントに向かう。

 

 響とクリスがポイントAである建設中のまま放置された工事現場、翼とマリアは山奥にある廃墟の集まりであるポイントB、調と切歌が広大な下水道であるポイントCそれぞれのポイントに向かう事になった。

 

 既に日は没しているが、次の明け方を待っていてはその間に救助対象が暗殺の手に掛かってしまう。そして、残党を狩る暗殺者の正体を突き止める為にも迅速に任務を果たさなければならない。

 

『良いか。暗殺者の好きにさせてはならない。何としてでも阻止するんだ!』

「了解!行くよクリスちゃん!」

「おう!」 

 

 無人の鉄骨剥き出しの工場へと向かう。進入禁止と表記されているが、今は緊急事態。仮設ゲートを開けて現場に侵入した。その時だった。

 

 ピンが抜かれたような音と共に、養生壁の裏側の仕掛けが作動。大砲のように射出されたアルカノイズの召喚石が地面に落ちて割れた。

 

「随分と荒っぽい歓迎だな!」

 

 召喚されたアルカノイズを前に、クリスは余裕の態度を崩さず、ギアのペンダントを握りしめた。

 

 

 詠唱を唄い、イチイバルのギアを纏ったクリスが二丁のリボルバー拳銃で仕掛ける。前に走りながらという不安定な体勢であっても、一発たりとも漏らす事なく撃ち抜き、弾倉が空になっても素早くリロード。再び引き金を引く。

 

 クリスの背後に寄り付こうとするアルカノイズは響が殴って消し飛ばす。

 

 その様子はモニタリングしている本部も把握している。だがそれはポイントAのみならず、BとCも同様の状況だった。

 

 ポイントBでは参道を翼が操るバイクで向かっている途中で、落石の如くアルカノイズの召喚石が降り注いだ所を交戦。

 

 ポイントCは地下道に繋がるエントランスから降りた直後にアルカノイズと遭遇した。

 

「まるでこちらが来るのを待っていたかのようだな」

「ええ。ですが三箇所同時となると、予め仕掛けを施していたと考えるのが妥当かと」

 

 いずれのポイントで起きた状況を冷静に分析する弦十郎。隣で戦いを見守っている緒川も同じ推測を立てている。

 

「ポイントA、ポイントCのアルカノイズが次々と増大!」

 

 藤尭から報告を受けた弦十郎がポイントA、Cの映像を見るとアルカノイズの反応である赤い光点が装者達の前次々と現れる。

 

「何で一度にこんなに沢山?!」

「どっから沸いて出て来んだぁ?!」

 

 ポイントAで戦っていた響とクリスの周囲を囲うようにアルカノイズが集まっている。アルカノイズを倒したと思いきや、音もなく背後に何体もあらわれていた。気が付けば取り囲まれていたという事だ。

 

「おりゃああぁ!」

 

 襲い掛かる一体のアルカノイズをぶん殴った。だがその体をぶち抜いた時、手応えの無さを感じ取った。

 

「おいちょっと待て!こいつただのアルカノイズじゃねえぞ!」

 

 クリスも近寄るアルカノイズを撃ち抜いた時、消滅する際に赤い霧を撒き散らさない。それどころか空いた風穴をそのままにして反撃に出る。

 

 白い部位である解剖器官を振り下ろされる前に、すかさず前腕のアーマーをクロスボウに可変させて、赤いエネルギーの矢を乱射。その矢はアルカノイズの体に全て直撃する。

 

 集中砲火をくらった為か、肉体を維持しきれずに崩落。その時、氷が砕けたかのように消えた。

 

「何なんだよこりゃぁ……?!」

 

 普通のアルカノイズでは考えられない現象が目の前で次々と起こり、狼狽えながらもこの窮地から切り抜ける為に引き金を引き続ける。

 

 ポイントCでも同じ個体のアルカノイズが現れていた。調のシュルシャガナと切歌のイガリマならば一断で仕留める事が出来るが、閉所という事もあって、動作を制限されて苦戦を強いられている。

 

 さらに明かりは僅かな外灯のみという暗所で、いつアルカノイズに襲われるか分からない緊迫とした状況に追い込まれている。

 

「こいつら、本当にアルカノイズなんデスか?!」

「分からない!」

 

 調に問答しても、その答えを持ち合わせているわけもなく、目の前に迫る謎のアルカノイズを切り伏せていく。

 

 本部でも謎のアルカノイズについて、オリジナルのアルカノイズを作ったキャロル・マールス・ディーンハイムと深い関わりを持つエルフナインが解析しているが、何処か焦っているようにも見える。

 

「違う……あんなアルカノイズ、キャロルが作ったものじゃない……!」 

 

 何とか解析を終えたエルフナイン。モニターには反応パターンを比較しているグラフが表示されている。これまでのアルカノイズと比較すると、グラフに差異が見られた。

 

「出ました!反応一致率10%です!」

「10%?!」

「それじゃあ、あのアルカノイズは?!」

「姿形は一致していますが、本質は全くの別物です!」

「アルカノイズじゃない……だと?!」

 

 エルフナインの衝撃的な報告に、藤尭と友里はもちろん、弦十郎も驚きを隠せない。

 

「お前達!そいつはアルカノイズではない!姿形をした別物だ!」

 

 弦十郎からつさ通信越しで告げられた報せ。だが唯一、その個体と遭遇していないポイントBにいる翼とマリアが一際驚きを露わにする。

 

『翼とマリア君も用心しろ!あのアル……は…………』

「司令?!聞こえますか?!応答を!」

 

 不意に本部からの通信が途絶えた。先日と同じ状況を経験している翼だが、まだアルカノイズが残っている。

 

「気をつけろマリア!例の暗殺者が近いぞ!」

「けど、あれは通してくれそうになさそうね」

 

 本物のアルカノイズは翼とマリアを逃がすつもりはない。だがアルカノイズを一体でも討ち漏らせば、一般住民にもその被害が及びかねない。

 

 だがこのまま手間取っていれば暗殺者に先を越され、逸れ錬金術師を殺されてしまう。

 

「私がこの壁を崩す!」

 

 脚部のユニットから射出された両刃の剣を両手に取って連結。脚部のバーニアを噴射させて、アルカノイズの壁に突撃しながら双剣を高速回転。刀身に紅蓮の炎を纏いながらアルカノイズの壁を斬る。その軌道が隙間となってマリアが駆け抜け、そのまま先へと走った。

 

「頼んだぞ!」

 

「ここは私に任せて!」

 

 マリアが左腕の篭手に短剣を収納。アーマーが砲身に可変させると、その砲門から白い波動の砲撃が発射された。

 

【HORIZON†CANNON】

 

 波動に飲み込まれたアルカノイズは塵すら残らず消え失せた。そこに僅かな風穴が生まれた。

 

「今よ翼!」

「ああ!ここは任せたぞ!」

 

 機動力のあるバイクに跨った翼が瞬く間に駆け抜けた。残ったアルカノイズがその後を追おうとするが、その前にマリアが立ちはだかる。

 

「ここから先は通さないわ!」

 

 

〇〇

 

 

ポイントAにて謎のアルカノイズと交戦している響とクリス。並の攻撃ではそのまま活動を継続し、たとて完全に葬ったとしても赤い塵とならず、氷のように崩れ落ちる得体の知れない個体。

 

 ようやくそれらを全て倒す事が出来たが、ここまで体力を消耗している。だが殺されるかもしれない命がある限り、立ち止まるわけにはいかない。

 

「大丈夫クリスちゃん?!」

「これくらい、何ともねえ。それよりも早く行くぞ」

 

 建物の中へと進もうとした時、本部から通信が入る。

 

『響君、クリス君!ポイントBで通信の妨害を受けている!』

「それ、本当かよ?!」

『通信の回復まで時間が掛かるが、真っ先に通信が途切れたという事は、救助対象がいる可能性が高い!急ぎポイントBに向かえ!』

「了解!クリスちゃん、急いで翼さん達の所へ……」

 

 

 

 

「そうはさせない」

 

 

 

 建物の中から声が反響して伝わった。上階の方を見ると、ミリタリージャケットを身に纏った眼鏡の女性が青色の髪を靡かせながら鉄骨の上に立って響達を見下ろしていた。

 

「何もんだお前?!」

 

 クリスが銃口を向け、響は拳を構える。青色の女性が先の暗殺者の一人であるとすぐに察した。対照的に金色と紫色、二色の眼を持つ青髪の女性が二人を捉える。

 

「君達にはここで消えてもらう」

「どうして?!何であんな酷い事を?!」

「何故?ふっ……良かろう。教えてやる」

 

 そう言うと鉄骨から飛び降り、着地する。

 

「我らはギリシャ政府所属の特務機関 Z.E.U.S.の一人」

「Z.E.U.S.?!」

 

 ギリシャ神話の最高神に位置する神の名を冠した組織。だがそんな組織は装者はもちろん、モニターで聞いていた本部ですらも知る者がいない。

 

「私は 氷室(ひむろ)(ゆい)。国防の為、最善の道を探る者」

「最善だぁ?建前並べんな!お前らのやってる事は、ただの人殺しじゃねえか!」

「こんな事をしなくても、罪を償うチャンスがあってもいいはずだよ!」

 

 無益な殺生を繰り返すZ.E.U.S.に訴えかけるが、結の二色の眼は一切揺れずに二人を見る。

 

「償う?その人間が国の……いや、世界が滅びに向かわせた罪があるとしてもか?」

 

 世界が滅びに向かう。その聞き捨てならない発言に、二人が言葉を詰まらせる。

 

「何も知らない君達が、我々の使命を妨害したとしてもそれは仕方がない事だ。だが奴らは組織再興を図る為に力を欲し、その為に罪無き者達を虐げ、簒奪する。これら全て、パヴァリア光明結社が滅びる数千年も前より繰り返してきた事だ」

「でもその結社はもう無いんだよ?!なのに結社にいたからって、命を奪うなんて」

「その残党達が何をしたのか、忘れたわけではあるまい?」

 

 結が突きつけた結社残党が引き起こした最悪の事象。

 

 統制局長アダム・ヴァイスハウプト、並びに幹部であるサンジェルマン、カリオストロ、プレラーティという大きな柱による統制を失った残党は散り散りになり、暴走の危険が孕むようになった。中でも、かつてノーブルレッドと呼ばれたヴァネッサ、ミラアルク、エルザの暗躍により、響の親友 小日向未来を依代にアヌンナキであるシェム・ハを蘇らせてしまった。

 

 その戦いの果てに、多くの人名の命が失われ、その中には翼の父親である八紘もいた。

 

 どれだけ戦っても、結社の残党は目的の為ならばテロ紛いの事を躊躇いなく手を染める。それは紛れもない事実だ。

 

「それでも君達は、奴らを許すチャンスを与えろというのか?それで何度取り返しのつかない事態を引き起こさせるつもりか?!」

 

 結の問いに、響とクリスは言い返す事が出来なかった。結の理屈は間違っていない、まさに正論だ。

 

 だが、それでも響達には譲れないものがある。

 

「だとしても!あの人達を殺させない!生きていれば、人はやり直せる!やり直す機会を奪う権利は誰にもない!あなたにだって、そんな資格はない!」

「そうだ!アイツらは、ただ自分達の居所が欲しかっただけだ!何度も理不尽に晒されて、何度も孤独に苛まれても足掻き続けたんだ!やり方は褒められたものじゃねえけど、人間に戻る為に、必死に生きようとしたアイツらの尊厳を否定させねえ!」

 

 例え正論を突きつけられたとしても、自分達の信念を曲げる事は出来ない。もし助けを求める人がいるならば、何度でも手を差し伸べる。決して諦めない。それが立花響という人間だ。

 

 クリスもその優しさに救われて、今ここにいる。戦争孤児となり、利用され続けて荒んでいた自分も変わる事が出来た。故にクリスも救済を望む。

 

 二人の返答に、結は……

 

 

「愚かな……」

 

 

 冷たく、ただそう告げた。

 

「立花響、雪音クリス。やはり君達は、我々の任務の障壁になる」

「どうして私達の名前を?!」

 

 まだ名乗っていないのに、二人のフルネームを言い当てて見せた。まるで初めから知っているかのように。

 

「特に……」

 

 結は特にクリスを見ている。眉間に皺を寄せている辺り、嫌悪が混じっているのは見て分かる。

 

「御託なんざ最初から受け付けてねーよ。やる気ならさっさと掛かって来やがれ!」

「その余裕がどこまで続くか……。見せてもらうとしよう!」

 

 ジャケットの第一ボタンを外した。すると、首に掛けてある青色の結晶を象ったペンダントが露わになる。すぐさま結は左手を前に出した。

 

「グラディエルフォーゼ!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 高らかに叫んだと同時にペンダントから青色色の閃光が強く輝く。その光を前に響とクリスは直視出来なかった。

 

「な、何だこの光は?!」

「まるでシンフォギア……いや、ファウストローブ?!」

 

 まるでシンフォギアを起動する際に唄われる詠唱。眩い光が消えた時、その予感は当たっていたと知る。

 

 本部でも通信が妨害されている中、映像が復旧したと同時に愛亜が詠唱を唱えていた。同時にモニターに新たな反応パターンを検知した。

 

「これは?!」

「司令!アウフヴァッヘン波形と類似した反応パターンを検知!」

「やはり聖遺物の反応か?!」

 

 藤尭と友里がすぐにその反応パターンを解析。コンソールをタッチする指がいつにも増して速い。その結果、解析が出た。

 

「解析結果出ました!」

 

 友里がコンソールを強く押した。そしてモニターに大きく表示される。

 

《RAHAB》

 

「ラハブだとぉ?!」

 

 弦十郎が驚きながらも口にした聖遺物の名。旧約聖書に記された海の怪物の名を冠した聖遺物。それを用いているのは、シンフォギアでもなければファウストローブでもない、第三の戦闘装束。

 

 閃光が消え、姿を現した時には既に身に纏っていたミリタリージャケット姿ではない。

 

 

「これはシンフォギアでも無ければ、ファウストローブでもない。世界各地の伝承に記された神器、聖遺物、妖魔の遺骸、それらの力を抽出、器へと転換し、魔剣と装束として生み出される。言うなれば、グラデアメイルだ」

 

青色の鎧を身に纏い、肩と腰に黒いマントを靡かせる。胸には菱形の青色の宝石がはめ込まれ、その手に氷を思わせる細く長いレイピア。言うなれば、水魔ラハブの魔剣。

 

 それが今、結が纏う戦闘装束。その鎧と剣から感知されるエネルギー反応は、シンフォギアのフォニックゲインに相当すると考えられる。

 

「さあ……始めようか!」

 

 眼前にレイピアを立てて構える結。未知なるパワードスーツを身に纏う結を警戒する二人は臨戦態勢に入った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 




用語解説

【Z.E.U.S.】

正式名称 Zone Expand Unfold Soldiers(全領域機動展開兵士)

ギリシャ政府直轄の特務諜報機関。

聖遺物研究とそれにまつわる事件捜査や諜報活動を行っている。その範囲はギリシャのみならず、世界各国にまで及んでおり、円滑に行う為に偽装された身分証なども所持している。

活動内容はS.O.N.G.と類似している点が幾つもあるが、大まかな違いの一つとして必要とあれば対象者の殺害や破壊活動などの非合法活動を許可されている。

所属エージェントの数は不明。


【グラデアメイル】
神器、聖遺物、妖魔の遺骸などから抽出されたエネルギーを魔剣として転換し、それをプロテクター状に身に纏う戦闘装束。
詠唱は必要とせず、身に纏うだけで身体機能の向上や異能の力を得るなど、戦闘において多大な恩恵を受けられるが、纏うにはその魔剣に選ばれる必要があり、選ばれるのはそれぞれ一人ずつだけ。


【氷室 結】

身長:167cm
誕生日:5月17日
BWH:B89 W61 H92

ギリシャ政府管轄特務諜報機関「Z.E.U.S.」の一員。

冷静沈着、頭脳明晰。感情を表に出さず、常に先を見通す反面、情よりも理を優先するあまり、反感を買われやすい性格だが、一切気にしないドライな一面もある。
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