けどまだまだ続きますのじゃ
ポイントB。山中にて翼、マリアの助けに入った奏。この三人の相手はZ.E.U.S.が誇る随一の暗殺者 グラデアメイル カルヴェナンの魔剣の使い手 黒夜実愛亜。
マリアと愛亜。二人が同時に駆け出し、二振りの短剣がぶつかり合った。
「行くぞ翼。あたし達も……っ!」
奏が援護しようとした矢先、二人の目の前に立ちはだかる壁が姿を現した。
「アルカノイズ?!」
「気を付けて奏!それはノイズでも、アルカノイズでもない!」
「何だって?!」
新たな亜種 アイスノイズを翼は刀で両断しながら奏に忠告する。その知らせに驚愕するも、所詮はノイズ。倒し方はいつも通り。
響と同じガングニールでも、奏のガングニールにはアームドギアがある。槍の穂先の一閃でアイスノイズを三体同時に真っ二つにして氷に還す。
そして眼前に迫るアイスノイズが振り下ろした腕を避け、その胴体を穿つ。更に穂先が高速回転、発生した竜巻でその先にいるアイスノイズ諸共蹴散らす
【LAST∞METEOR】
「いくら新型だろうが、あたしがノイズ相手に恐れる事なんかない!」
勝気な姿勢で次々とアイスノイズを葬る奏。
対して翼は護衛対象であるはぐれ錬金術師に寄ってくるアイスノイズを迎え打つ。刀の一閃で次々とアイスノイズを両断していく。
その最中、マリアと愛亜の戦いは全くの互角の戦いを繰り広げていた。マリアに橙色の刃が眼前に迫っても、それをギリギリで防いで白銀の短剣を振り上げ、愛亜はそれを身体を逸らし回避。そして互いに回し蹴る。
今度はマリアが左手で殴りに掛かってもそれを愛亜は流して鳩尾に拳が入る。だがマリアは寸前で止め、そのまま腕を掴んで投げた。だが投げた先の大木の幹を上手く掴んで、その遠心力を利用した飛び蹴りを繰り出した。愛亜のまさかの反撃に両腕で受け止めた。
(強い……!分かっていたけど、流石F.I.S.トップに立ち続けただけの事はあるわ……!)
マリアは愛亜の事を知っている。それは幼き頃、F.I.S.の白い孤児院にいた時。当時、ソフィはレセプターチルドレンの中で他を寄せ付けぬ戦闘能力と抜群のセンスで成績トップに上り詰めた。
だが彼女には致命的な欠陥があった。それはいくらLiNKERを投与しても、低すぎる適合係数の改善が見られなかった。
いくら強かろうとも、その一点が改善されなければフィーネの器として成り立たない。やがて違う施設へと移る事になり、それからの行方は知れなかった。
それがまさかこんな所で敵として、それも最悪の脅威として目の前に現れてしまった。愛亜の短剣は重くのしかかり、押し通されないようにするのがやっとだ。
「ソフィ……!」
「口説いぞ……俺はもう……!」
そのまま押し退けられ、倒れたマリア。愛亜は短剣にエネルギーを集約。マリアに容赦なく投擲、迫る刃のエネルギーが周囲を巻き込んで爆ぜた。
【DEATH=EDGE】
「……っ?!」
だが手応えがない。その違和感は爆煙が晴れたと同時に答えが出た。
「盾……?」
「剣だ」
頭上より翼の声が聞こえる。見上げると盾と思われていたのは巨大化したアームドギア。その上に翼は堂々と立って見下ろしている。
「ナイス翼!」
「チッ……」
守りきった翼に奏がサムズアップする。対して愛亜はトドメの一撃を邪魔され、翼を睨む。
「変なノイズは全部倒した。観念しな!」
奏の方もアイスノイズを全て討伐した。三者に囲まれた愛亜だが、まだ戦う意思は残っている。
「こうなればまとめて葬ってやる……!」
愛亜が鎖に持ち替え、鞭のように短剣を軽く振り回す。今度こそ確実に仕留める為に。
〇〇
同じ頃、地下水道のポイントCでは調と切歌、二人の救援に駆けつけたセレナだったが、それでも萌芽と影風の方が上手だった。
影風が前で戦っている間に、萌芽が必殺の一撃を放つべく準備していた。そして炎が最大まで巨大化し、大剣が振り下ろされた。
床に溜まっていた水が蒸発し、炎の熱と衝撃が三人に迫る。だがその目前に達したが、届かなかった。
「え……?」
「炎が来ない……デスか?」
「違うよ切りちゃん……!炎が止まってる!」
なんと目の前に壁に阻まれたかのように炎が目前で止まった。
「何で……?」
「やはりここにもいたか……Z.E.U.S.!」
突然地下水道に響く、凛とした男性の声。セレナ達が後ろの方に振り返った。そこには黄金の錫杖を手にし、炎に向けて構えている。
「はああぁっ!」
杖をさらに前に突き出し、炎の斬撃をかき消した。この一帯を全て破壊しかねない威力を、正面から相殺した青年の力を目の当たりにした三人が唖然とする。
「す、凄い……」
「何デスか今のトンデモは?!」
「分かりません……けど、私達を守ってくれたって事は、敵ではないって事でしょうか?」
だがその負荷が大きすぎたのか、青年は膝をついた。彼を見た萌芽と影風の目は忌々しく映っている。
「あなたは……!」
「よくもまあ、何度も私達の前に現れますね!」
「お前達のやり方は過激すぎる。これ以上多くの血を流させない為にも、君達を倒さなければならないんだZ.E.U.S.!」
「あの人達の事を知っている……?けど、互いに敵視している?」
口ぶりからしてこの青年とZ.E.U.S.は敵対しているような雰囲気である事を口にした時、萌芽と影風に通信が入る。
『こちら結。全員、速やかに撤退だ』
そう告げられて、萌芽と影風は驚きで目を見開いていた。同様に山中のポイントBで戦っていた愛亜にも同じ内容の通信が繋げられていた。
「何だと……?」
『我々はS.O.N.G.の戦力を見誤っていた。このまま続けても益は望めない。対象は奴らにくれてやれ』
「え?良いんですか?!」
「結ちゃん。あいつが来た。もしここで手を組まれたら厄介な事になる。そうしたらあの事が……」
『奴か……構わん。その為に別の作戦を練ってある。』
その命令が告げられて通信が切れた。一方的な指令に始めは戸惑う萌芽と影風だったが、組織において司令塔の命令は絶対。萌芽は再び大剣に螺旋状の炎を纏わせた。
またあの大技を使うつもりかと装者三人が構える。
「あいつ、またやるつもりデスか?!」
「まあまあ、そんなに焦らなくても。この続きはまた今度やりましょう♪」
だがそれを影風が宥めながら、天井を見上げて自分の顎を撫でる。少しすると、右腕を天井に向けて上げて指した。
「ここにお願いしますね♪」
「分かった」
そこに移動した萌芽が、なんと天井に向けて螺旋状の炎を放った。すると、炎は天井に穴を空け、同様に上階、さらに上階の上階の天井を壊し、果てには四百メートルの高さである地上に風穴を開けてみせた。
「これで良し」
「ではシンフォギア装者の皆さん。次に戦場で会う事があったら、その時は殺してあげますね♪それじゃあさようなら〜♪」
そう言いながら影風は萌芽を担ぎ、地上に繋ぐ為に空けた穴に向かって高く飛んだ。
「まさか今のは、逃げる為の避難路?!」
「ここでトンズラデスか?!」
「待ってくれ!」
追おうとした調と切歌だが、青年が呼びかけて止まった。
「もう彼女達を追っても無駄だ。胡 影風の速さは異常だ」
「あの……先程からあの人達を知っているみたいでしたけど、あなたは?」
Z.E.U.S.のメンバーの名前も知っており、彼女達も彼の事を知っている。セレナに尋ねられた青年は、息を切らしながらも名乗った。
「僕はアトラス。Z.E.U.S.の動向を追ってここまで来たんだ」
〇〇
山中のポイントBで、結から撤退命令を受けた愛亜。翼、マリア、そして奏を相手に一歩も引かない戦いをたった一人で繰り広げていたが、抹殺対象であるはぐれ錬金術師は、完全に翼によって守られている。
ここで三人を始末する手も考えたが、恐らくタダでは済まないと感じていた。
不本意ではあるが、ここが引き際であると判断。舌打ちをしながらも愛亜は飛び去った。
「待ってソフィ!」
マリアはその後を追おうとしたが、翼に制止されて足を止めた。
「下手に追うのは得策ではない。一先ず、対象を本部まで護送しよう」
「そうね……」
変わり果てた旧友を優先したい気持ちを抑え、マリアは今成すべき事を思い直しつつ、助けに来た奏にお礼を言う。
「ありがとう奏。お陰で助かったわ」
「何、どうって事ないさ。あいつを取り逃しちまったのは悔やまれるな」
「それよりも奏。何でこの世界にいるの?ギャラルホルンのゲートはあれから閉じられたままだったはずじゃ……」
助けに来てくれた片翼との再会に喜ぶと同時に、奏に経緯を尋ねる。だが奏の態度はあまりハッキリしないものだった。
「それがさぁ。あたしにもよく分からなくてさ。ノイズを倒してたら、目の前にゲートが現れてさ。それでまさかと思って飛び込んでみたら、見知った世界に降りたんだ」
「突然現れたゲートを飛び込むって、無茶がすぎるわよ」
その思い切りの良さにはマリアも呆れる。だがそれで助かったのは事実。
だがギャラルホルンは元々謎が多い完全聖遺物。発見当初も既に起動していたという報告もあり、時には不測の事態を招いている。今更ながら何が起きても不思議ではない。
「一旦、本部へ戻るとしよう。他の様子も気になる」
「そうね」
翼の提案に、マリアと奏も同意。三人は錬金術師を連れて本部へと帰投した。
最後に登場した青年は一体?
次回へ続く