戦姫絶唱シンフォギア 七つのヒカリ   作:レーラ

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Z.E.U.S.という組織

 三つの戦場から装者達が帰還。救助対象である錬金術師は本部の牢屋に収監。結果は勝利、とは言えないものだった。

 

 氷室 結によって重傷を負った響はメディカルルームに搬送され、処置された。幸い命に別状は無かったが、まだ眠っている。

 

 それ以外もグラデアメイルの使い手達によって、大きなダメージを負わされている。任務は完遂したが、戦いは敗北同然の結果だった。

 

 だが収穫はあった。Z.E.U.S.という謎の組織、それに属するグラデアメイルというパワードスーツを用いる少女達。そして、それを知る青年アトラス。

 

 日を跨いで、朝日が登った頃には錬金術師への尋問を終え、その昼間に弦十郎とエルフナインが響を除いた装者全員をブリッジに集めた。

 

「先日、君達が救出した錬金術師の話によると、兵器の取引があったようだ」

「兵器の取引?」

 

 翼がオウム返しに尋ねると、モニターに包みの映像が表示される。中身は首飾りの形をしているが、それに見覚えのある奏が反応する。

 

「あれはブリーシンガメン?!」

「ブリーシンガメンって確か、奏が持っていた?!」

 

 奏の平行世界で事件解決の鍵となった完全聖遺物ブリーシンガメン。奏の持つガングニールと共に二つの聖遺物を運用する事で、従来のギアの性能を引き上げる決戦機能デュオレリックギアとして進化を果たしている。

 

 だがそれは奏のいる世界での話。この世界では裏取引の材料として用いられている事に皆が驚愕している。たった一つで国家の軍事バランスを崩壊しかねない代物が、こうも裏取引されているなど信じ難い事態なのだ。

 

「ですが、このブリーシンガメンには不可解な点があります」

 

 エルフナインが話を進め、モニターに腕輪から検出されたエネルギーを表したグラフを映す。

 

「かつて奏さんが用いた時に検出したエネルギーと比較すると、一部の波長に乱れが生じています。本来完全聖遺物から検知されるエネルギー量と質共に固有のパターンがあります。ですが、このブリーシンガメンから検知されたエネルギーは不安定な部分があり、固有パターンから逸脱しています」

「とどのつまりどういう事だ?」 

「見た目は完全聖遺物の形をしていますが、中身はそれには程遠い……偽物の可能性があります」

 

 まどろっこしい問答が苦手なクリスに、エルフナインは簡潔に答えた。

 

「今回は使用されずに押収出来たお陰で、被害は出なかった。だがこのようなものが野に放たれ、テロに使われでもすれば、被害がどこまで及ぶか検討もつかん」

 

 聖遺物はたった一つで軍事バランスの均衡を崩しかねない危険な代物。それが偽物とはいえ、そのようなものが野に放たれているという事態は、危険度としてかなり高いものである。

 

「だが既にその偽物の聖遺物による犯罪が起きてしまっている国もある。それについては、彼の方が詳しいだろう」

 

 弦十郎がそう言うと、ブリッジに一人の青年が入って来た。先日の戦いで切歌と調の危機を救った青年アトラスだ。

 

「改めて名乗ろう。僕はアトラス。かつては聖遺物の研究者をしていた。今はフリーで依頼屋みたいな活動をしている」

「君はこの聖遺物の偽物についてや、彼女達の事を知っているようだが、知っている事を話してくれないか?」

「分かった」

 

 弦十郎に質問され、アトラスは頷いた。

 

「事の発端は、最近各国で起きている複製聖遺物によるテロ事件……通称レプリカ事件だ」

「レプリカ事件?」

「この聖遺物は複製されている。僕達はこれを複製聖遺物(レプリカ)と称している。だからレプリカ事件だ」

 

 アトラスがそう言うと、その記事を纏めたノートを開いて見せる。

 

「この半年でロシア、アメリカ、中国といった大国を始め、今では世界各国で起きている聖遺物による事件、これらは複製聖遺物を使っている可能性が高い」

 

 アメリカのフロリダでは山火事、中国の湾岸部で起きた船の連続転覆、イタリアにて発生した連続爆破事件など、大陸を跨いで記事を貼り付けやメモ書きが記されている。

 

「これらの事件全部、複製聖遺物が齎したというのか?」

 

 翼の問いに、アトラスが頷いて答える。

 

「複製聖遺物の強さは本物に劣る。だがそれは、あくまでも本物と比べればだ。複製といえど聖遺物。それを前に通常兵器などただの玩具な事には変わりない。特異災害ノイズが相手では、銃火器など役に立たなかっただろう?それと同じだ」

 

 いくら本物より劣る複製でも、軍隊を壊滅させられる強さを持っている。

 

「だが、新聞や雑誌にはありふれた現象として片付けられている。やはり、真実が公表されればどうなるか……察しはつく」

「事態の悪化を防ぐ為でもあるのでしょうけど、いかにも政府がやりそうな事ね」

 

 アトラスから複製聖遺物事件の顛末と、表沙汰に出来ない理由を察した翼。隣で聞いていたマリアも、かつてアメリカ政府がやっていた汚いやり方を思い出し、悪態をつくような台詞を吐く。

 

「まあそんな僕も、複製聖遺物の調査を進めていく過程で、このケリュケイオンのレプリカを入手した」

 

 二匹の蛇が柄に巻きついている黄金の錫杖を見せてやる。装者達がケリュケイオンのレプリカを観察。特に調はじーっと凝視するように見ている。

 

「見た目は聖遺物そのもの……」

「あまり無闇に触れない方が良い。複製聖遺物は心が弱い人間を蝕んで、その人の内にある闇を増幅させて、破壊衝動のまま攻撃する。僕も初めはこの制御に苦戦した」

 

 シェム・ハとの戦いを経て、精神的に大きく成長した装者達に限って、そのような事にならないと思われるが、念には念を入れて忠告してくれる。

 

 特にこの中ではマリアを一番不安視している。

 

「だが制御すれば、本物には及ばずともその力を扱えるようになる。たとえ子供でも」

 

 同じように複製聖遺物の危険性を説く。それを聞かされた装者達の中には息を飲んでいる者もいる。

 

「それを各国の諜報機関が目をつけないわけがない。その一つが、ギリシャ政府の諜報機関の特殊部隊 Z.E.U.S.」

 

 ここでようやく、Z.E.U.S.の名を口にしたアトラス。

 

「Z.E.U.S. 確か、あの眼鏡の奴が言っていたな」

 

 クリスは結と直接戦った時に聞いており、他の装者達もその名をクリスに聞かされていた。

 

「Z.E.U.S.は主に聖遺物や異端技術にまつわる犯罪への対処を専門とする特殊部隊。最前線で戦う彼女達はまさに精鋭中の精鋭。そこは、君達S.O.N.G.と似た所があるな」

 

 集まったシンフォギアを順に見てそう言うアトラス。そのまま話を続ける。

 

「だが違う点を言うと、犯罪を未然に防ぐ為ならば如何なる手段を辞さない。暗殺、爆破、拷問、ハッキングも……一線を超える事なんて何とも思っていない」

「そんな非合法な手段、許されないはずだろう?そんな事をすれば、国際問題になりかねない」

「Z.E.U.S.は公に証拠を一切残さない。現に他の生き残りが次々と殺された事件も、立証出来るものがないだろう?」

 

 翼の指摘はもっともだ。政府直轄の組織がそんな事をすれば国際問題に発展する。だがアトラスの言う通り、あの事件にZ.E.U.S.に繋がる証拠は何一つ出てこなかった。現場の監視カメラにも一切映っておらず、物的証拠もないので追及のしようがない。

 

「彼女達はプロだ。当然戦闘にも長けている。その上、あのグラデアメイルも完成されてはかなり厄介な存在になる」

「すみません。そのグラデアメイルとは一体?」

 

 シンフォギアのメンテナンスを任されているエルフナインがグラデアメイルの事について尋ねる。

 

「グラデアメイルは、聖遺物や遺骸を、魔剣としてエネルギーを変換してそれを身に纏うパワードスーツ。君達で言うシンフォギア、パヴァリア光明結社ではファウストローブに該当する」

 

 分かりやすい例えに、装者達は頷いて反応する。

 

「そしてそれを持つ精鋭のエージェント達を、七星魔剣(セブンスソード)呼ばれている」

「七星魔剣……って事は、アイツらみたいなのが七人もいるってのか?!」

 

 クリスが驚きと共にアトラスに投げかけた。アトラスはそれに対して頷いている。

 

「今回姿を表した四人に加えて、あと三人。合計七人のグラデアメイルの使い手が存在する」

 

 映像に今回姿を現した七星魔剣のメンバー四人を映す。

 

「彼女はラハブという、氷水の魔剣の使い手、氷室(ひむろ) (ゆい)

「あのバカを苦しめている元凶だな……」

「彼女こそZ.E.U.S.の頭脳だ。作戦立案と陣形といった段取りは、彼女が仕切っている。同時に自分自身も前線に出て敵を蹴散らす技術も備えている。ただの参謀と侮ってはならない」

 

 頭脳派にしては剣の腕は確かだった。的確な剣裁きと先を見通しているような攻撃。戦ったクリスの握っている拳が強くなる。

 

「レヴァンティンの使い手 炎城(えんじょう) 萌芽(ほうか)と、承影の使い手 (ユー) 影風(インファン)。凄まじい破壊力と高い機動性の二人のコンビネーションは抜群だ」

「あの二人の連携は厄介なのデス」

「まるで関連性のない聖遺物でも、高い連携だった。ユニゾンさえ使えていれば……」

 

 シュルシャガナとイガリマ。この二つのギアによるユニゾンは、他の装者を上回るフォニックゲインと出力を増大させる。だがそれを対策するかのように、簡単に分断されてしまった。 

 

「そしてもう一人……」

黒夜実(くろやみ) 愛亜(めあ)……いいえ、彼女はソフィ・ファンタジアンツ・ナイト」

 

 アトラスが名前を言う前に、彼女をよく知るマリアが口にした。そして同じF.I.S.出身の調と切歌が唖然とする。

 

「え……?マリア……今、ソフィって言った?」

「ソフィって、あのソフィの事デスか?!」

 

 静かに頷いたマリアに、弦十郎が尋ねた。

 

「マリア君、知っているのか?」

「ええ。私達と同じレセプターチルドレン。かつてF.I.S.にいたわ」

 

 映像に愛亜の画像が映される。鋭い灰色の眼でマリアの命を狙っている姿という、かつて同じ釜の飯を食べた仲間達は到底信じられないものだった。

 

「本当だ……ソフィだ」

「デスが、何でアイツらの仲間なんかに?!ソフィはかっこいいヒーローのはずデス!」

 

 調と切歌も、今の愛亜からはソフィと呼ばれていた人物像とはあまりにもかけ離れていると感じている。

 

「彼女はカルヴェナンの使い手。暗殺や爆破、裏組織への潜入。非合法な手口の実行は、彼女が一番得意だ。古い知り合いかもしれないが……。言葉を選ばずに言えば、猟奇的な殺人鬼だ」

 

 身も蓋もない言い方をしたアトラスの胸ぐらを、マリアは憤怒の手で掴んだ。

 

「違う!!ソフィはそんな子じゃない!!」

 

 人目もはばからずに激情をぶち撒けたマリアに、アトラスを除いた全員が目を丸くする。翼がすぐにマリアの制止に入る。

 

「止せマリア。気持ちは分かるが、お前らしくないぞ」

 

 自分らしくない。そう指摘されてアトラスを掴んでいた手を離す。だがマリアがそこまで言うという事は、余程の事なのだろう。

 

 だがアトラスは構わず話を続ける。

 

「君達の関係はよく知らない。けれど、彼女はまた君を殺しに姿を現すだろう。だがその時は……」

「分かっているわ」

 

 もし会う事があれば、再び命のやり取りをする事になる。マリアも覚悟の上であるが、このままみすみす命を奪う事などしたくない。

 

「残りの三人、アゾット、村正、そしてクラウソラス。いずれも強力な魔剣だ」

「だが、Z.E.U.S.の目的は一体何なのだ?敵の狙いが複製聖遺物だとしても、国を渡ってまで行動を起こすものとは考えにくい」

 

 翼の指摘は尤もだ。複製聖遺物の対処を名目に結社の残党を狩る。だがここまでに周到な準備と労力、そしてグラデアメイルという強力な兵器を持ち出すとは考えにくい。

 

「それは僕にも分からない。だが分かっている事は、このまま彼女達を野放しにすれば、複製聖遺物を巡って彼女達はまた人を殺す。それを繰り返させない為に、僕は彼女達を止められる力が必要と考えたんだ。だが今回の戦いでハッキリした。グラデアメイルの力は想像以上だ。その性能はシンフォギアと互角以上と言っていい」

「だったらアマルガムでぶちのめせばいい!」

「いや、そのアマルガムに頼るのは危険だ。氷室結がそれを把握して対策を講じている可能性がある」

 

 アトラスにそう指摘されたクリスは言い返す事が出来なかった。結の演算処理能力の高さは、刃を交えたクリスがよく思い知らされている。

 

 その結がシンフォギアの決戦機能を計算に入れないはずがない。アマルガムも性能だけで言えば七星魔剣に対抗出来るが、恐らく七人全員にその対策が施される事は明白だ。

 

「だから、切り札をもう一つ用意する」

 

 懐から出した包みを広げる。中身は文字が刻まれた箱だ。その蓋を指でなぞると文字が光を発した。

 

「こ、これは……ルーン文字……?!」

「そうだ。現代ではもう廃れているが、今でも暗号とかで役に立つ」

 

 エルフナインの答えにアトラスがお墨付きを与えた。光が消えると同時に箱の蓋が二つに割れて開いた。

 

「これが、グラデアメイルに対抗する決戦機能を付与する。黒剣の腕輪だ」

 

 箱の中に入っていた七つの黒い腕輪。その一つを取り出して見せた。

 

 

〇〇

 

 

 Z.E.U.S.が拠点としているフィーネの館。そこでは先日の三つの戦場に参戦した四人と、留守を預かっていた紫髪の女性 紫宮(しのみや) 舞華(まいか)を加えた五人が広間に集まっている。

 

 だが昨日と比べると、空気が幾ばくかピリピリしている。特に萌芽と向かい合っている席に座っている愛亜の態度が明らかに不機嫌である。

 

 だが結はそんな愛亜に構わず話を始める。

 

「いるはずのないシンフォギア装者の参戦と、あの男の介入……事態は複雑に絡み合う事になった」

「これは流石に想定外だったかしら?」

「想定内だ。出来れば訪れてほしくはなかったがな」

 

 表情一つ変えずに淡々と述べる結だが、微笑む舞華には僅かに隠している悔しさを見抜かれている。

 

「けど、これでS.O.N.G.の戦力は侮れなくなったわけね」

「けど、どうして急に撤退したんですか?」

 

 先日の任務で不可解な撤退命令を下した結に、影風が気になって尋ねる。

 

「私の判断ではない。司令だ」

「司令が?!」

 

 結ではなく、Z.E.U.S.を統べる司令と呼ばれる存在によるものだと知って、萌芽が驚く。

 

「解析班によれば二日後の夜、また日本で複製聖遺物の取引が行われる。そこを叩く。今回は舞華にも行ってもらう」

「え?私が行って良いの?」

「S.O.N.G.の連中も動くはずだ。萌芽と影風の二人でもやれるだろうが、念には念を……」

 

 結が話している途中で、遮るように愛亜が急に立ち上がった。だが愛亜は何も告げずに広間から出て行った。

 

「あらあら、昨日の事が余程悔しかったのかしら?」

「仕方あるまい。ある程度溜飲が下がるようお膳立てはしておく。舞華、万が一の時は君が」

「分かったわ」

「では皆、今度こそ……」

 

 ブリーフィングが終わりを迎えようとした時、広間の扉が勢い良く開かれた。

 

「やっほー!お待たせー!」

 

 そこに長い白髪が特徴的なサングラスを掛けた女性がハイテンションで入って来た。

 

「やっと来たか。アゾットの使い手 十束(とつか) 星羅(せいら)

「ハーイ♪」

 

 グラサンを外すとオレンジ色の瞳を覗かせる。

 

「はいコレ。調査報告書」

 

 結に束ねた資料を手渡しする。それを受け取った結は資料を捲って確認する。

 

「そうか……ご苦労だった。そのまま君も今回の任務に参加してもらう」

「オッケー!治療なら任せて!」

 

 得意げにピースサイン。これで七星魔剣が六人。あとの一人であるリーダーは未だ姿を見せない。一体何処で何をしているのか。結は呆れてその席を見ている。

 

 

〇〇

 

 

 S.O.N.G.のメディカルルームに運ばれた響が目を覚ました。その一報を聞いた仲間達がすぐに駆けつけた。特に心配してきた未来は真っ先に響の手を握った。

 

「響!大丈夫?!どこか痛むところはある?!」

「大丈夫だよ未来。へいきへっちゃら!」

 

 父親から貰った勇気の言葉を口にするも、それで度々無茶をする姿を見てきた未来の不安は拭いきれるものではない。

 

 だがその心配とは裏腹に、その後の検査は特に異常は見られなかった。学生寮に帰るとご飯を何杯もおかわりしており、今は二人で公園を散歩、もといデートしている。

 

「ねえ、本当に大丈夫なの?」

「本当に平気だって〜!それよりベッドの上で寝ている方が身体に悪いよ〜」

 

 病院では自由に身体を動かせないという制約が、響にとっては苦痛に感じる所がある。とはいえもう少し安静にしても良いのではと未来を始めS.O.N.G.の面々からは心配されているが。

 

「助けてくれてありがとう未来」

「えっ?」

 

 響に突然お礼を言われて驚く未来。

 

「クリスちゃんから聞いたよ。未来が私の為に戦ってくれたって。未来が来なかったら、今も眠ったままだったかもしれない。また私が困っている時に、未来が助けてくれたんだよ」

「響……!」

 

 かつてガングニールの破片と響の肉体が融合し、死に近づいていた時、未来が救ってくれた。響が迷い、戦う事に躊躇していた時も、未来が背中を押してくれた。いつだって響を助けてくれるのは、優しい陽だまりなのだ。

 

 そんな響の笑顔を見ると、未来も嬉しくなってくる。

 

「危ない!」

「っ!未来!」

 

 だがその空気を邪魔するかのようにサッカーボールが回転しながら飛んで来た。声に反応した響が未来を守ろうとその背に立ってボールを取ろうとする。

 

 だがそのボールは響に直撃する事はなかった。響の前に誰か入った。金色の長い髪を靡かせながら軽やかに跳躍したまま、飛んで来たボールを脚で止めた。

 

「ったく。気をつけろよー!」

 

 着地してボールを蹴り返した。ボールの持ち主が謝って行ったのを見届けると、女性は響と未来の方に向き直る。

 

「怪我は無いか?」

「あっ……ありがとうございます」

「凄かったです今の!サッカーやってるんですか?!」

「まあな。趣味みたいなもんだ」

 

 金髪女性の華麗な動きに感動した響に詰め寄られるように尋ねられても、女性は笑顔で答えた。

 

「じゃあな。彼女さんとデート楽しみなー!」

「か、かのっ?!」

 

 彼女さんと言われて未来が顔を赤らめた。

 

「そうだ!すみませーん!名前を……って行っちゃった」

 

 名前を聞いていない事に気が付き、尋ねようとしたが、女性はそのまま走って去って行った。

 

「足速いねあの人ー。また会えるかな未来?……未来?」

 

 未来に尋ねようとした時、顔を真っ赤にしている未来が口をパクパクしていた。

 

「か、かの……かの……じょ……」

「未来?顔赤いよ?大丈夫?」

「へっ?だ、大丈夫だよ!何でもないよ!」

 

 響の声で我に返るも顔が赤いままで、どこかカタコト口調にも聞こえる。

 

(彼女……彼女……。彼女かぁ……えへへ……)

 

 だが内心では満更でもないのか、デートが終わっても時々ニヤけが止められなくなっていたとか。

 




【アトラス】

Z.E.U.S.と敵対する民間人の青年。かつては諜報機関に所属していた過去があるが、現在はフリーの研究者で、依頼屋のような仕事もしている。
信念を貫く強い精神力の持ち主であり、実直で曲がった事を嫌う。

ケリュケイオンの複製聖遺物を所有している。

【複製聖遺物-レプリカ-】
文字通り複製された聖遺物。
本物と比べると出力は低く、引き出せる力も限定的という使い勝手の悪さだが、それでも兵器としては十分に運用出来る。
常に起動している状態で発見されている為、たまたま拾った民間人であっても扱えてしまう。
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