前回のあらすじ、上鳴が人質になった。そういや、今日の晩御飯は何だろうなぁ。
ちょいちょいちょい!ブラウザバックしないでお願い!俺ちゃんの活躍を皆見たいでしょ?もう少し待ってくれたっていいじゃない。お願いお願い、300円上げるからー!
っと、茶番で誤魔化していたが、結構ピンチ。クラスメイトが人質に取られたんだ。心の中で騒がしくしないと、恐怖に押しつぶされそうになっちまう。
「手ぇ上げろ。個性は禁止だ。使えばこいつを殺す」
「上鳴さん!」
「やられた!完全に油断してた」
「ちきしょー。まさか、伏兵がいたとは」
上鳴が人質に取られたことで、素直に手を上げる俺達。右手に電気を帯電しながら、上鳴の顔に近付けている。
「同じ電気系個性としては、殺しはしたくないがしょうがないよなぁ」
「…上鳴もだけどさ、電気系って生まれながらの勝ち組じゃん?」
「耳郎さん、何を…」
あぁ、そういうことね。完全に理解したわ。俺ちゃんも耳郎ちゃんの言葉に乗っかりますか。
「確かに、電気系って電気工事や電気管理とかの資格系に有利そうだし、発電できるって今の時代、結構重宝されるよねぇ。俺ちゃんも電気系の個性に産まれたかったわ。あ、ちょっとスマホ充電させてくれない?充電残り少ないんだよね」
「そもそも、ヒーローでなくても色々な仕事あるし、引く手数多じゃん?いや、純粋な疑問ね?なんで敵なんかやってんのかなって」
耳郎ちゃんは、言葉で敵を足止めしながら、隠れてプラグに繋げようと行動している。
賢いな耳郎ちゃん。その手があったか。
「気付かれないとでも思ったか?子供の浅知恵など、馬鹿な大人にしか通用しない」
畜生、バレないと思っていたのに…敵の方が一枚上手だったか。見た目、チンピラっぽいのに。
「そっちに行く。決して動くなよ」
骸骨覆面の敵は、凄味を見せながら、脅迫を続ける。
「他人の命か、自分らの命か。もう一度言うぞ。動くなよ」
本気の脅迫に、俺達三人の顔が蒼褪め、全身の身の毛がよだつ。ハッタリではない。相手はガチの脅迫だ。落ち着け、おちつけ俺ちゃん。震える足を無理矢理動かせ、強張る筋肉を脱力させろ。オヤジギャグを披露すべきか、あの技を出すべきか、考えろ考えろ…思い出した。俺は、震える足を一歩前に出す。
「てめぇ、動くなと言ったのが分からねえのか?」
「まあ、待てよおっさん」
俺は、言葉で虚勢を張る。一か八かの大博打だ。
「今助けるぞ上鳴。どうやら、この武器を解放する時が来たようだ」
「笑井、何か策があるの?」
「あぁ、とっておきの、な」
『小道具部屋』と呼ぶ異空間から取り出した武器は、和紙で出来たハリセン。そう、漫才で定番のハリセンである。新聞紙やコピー用紙で作った事ある人いない?俺ちゃんは、作ったことあるぜい。武器を間近で見た耳郎ちゃんの目が点になる。
「コイツの名は、裂空扇。俺の七つ道具の中で、最恐の小道具だ」
空気が凍る。耳郎ちゃんと八百万さんが、私たちの期待を返せという目で見てくる。上鳴を人質に取っている骸骨マスク敵は、一瞬呆けるも、武器がハリセンということに腹を抱え出した。
「ぶあっははは!は、ハリセンだって!?こんな子供騙しでオレを倒そうなんざ、舐められたもんだなあ!」
しかぁし!これはただのハリセンではない。和紙とカーボン製素材を混ぜ合わせた特殊なハリセンだ。
「すぅぅ、布団が吹っ飛んだ!」
オヤジギャグを一発披露する。寒いギャグで、敵の下半身が凍り付く。よし、成功だ。
「お、俺の身体が凍ってやがる!?」
「そうか!オヤジギャグで冷気を出したんだ!」
「これで動けませんわ!」
技の効果を思い出した二人は、勝機が見えたことに喜びの声をあげる。
「耳郎ちゃん!攻撃よろ!」
「任せて!ハート8ビート!」
耳郎ちゃんは、耳たぶのイヤホンジャックを音響プラグに差し込む。スピーカーから音波が放出され、相手の鼓膜を攻撃する。脳内に音が響き始めたのか。敵の男は、耳を抑え始めた。
「ぐあああ!?耳が、耳がうるせえ!」
両手で耳を押さえた事で、上鳴が手元から離れる。うぇ~い状態の上鳴は、アホ面をかましながら、此方に合流してきた。次は、奴の動きを封じないとな。
「八百万さん!網でアイツを捕らえてくれ!」
「分かりましたわ!」
八百万さんが身体から創造した網が、敵を覆う。網の中に閉じ込められた骸骨覆面敵は、ジタバタと藻掻いている様子だ。
「妙技 影縫い」
笑井家に伝わる技術で地面を高速移動し、骸骨敵の近くまで入り込む。そして、右足を軸に立ち、左足を上げる。その構えは、野球のバットの構えだった。
「しまっ…!」
明日はホームランだ!この言葉を胸の中で叫び、腰と下半身を捻りながら、腕を大きく振りかぶる。
「バッターの満塁葬霧乱!」
「がぁああああ!?」
ハリセンで吹き飛ばされた男は、岩山にぶつかり、全身が岩肌に減り込む。
「やはり、暴力!暴力こそが、全てを解決する!」
「その台詞、ヒーローらしくないんだけど」
「同感ですわ」
「うぇ、うぇ~い」(た、助かった~)
俺達は、相澤先生を助ける為、噴水広場へと向かう。だが、恐怖と連戦で身体が動かないと悟った耳郎ちゃんと八百万さんは、上鳴と共に身を潜めるようだ。俺ちゃんは、一人で噴水広場へと向かった。
そう、個性で召喚したトラックに乗りながら。大丈夫だ。個性で召喚した乗り物は、無免許運転にはならない。
なぜなら、個性把握テストである人がスクーターに乗っていたからね。大丈夫さ、多分。
「うおおお!インド人を右に!」
勢いよくハンドルを回す。タイヤが土煙を上げながら、噴水広場に向かって爆走する。俺ちゃんの運転テクに酔いしれな!
「ん!相澤ティーチャーが脳味噌剝き出しの化物に襲われている!急げ、アクセル全開!フルスロットルだ!」
俺は、急いでアクセルペダルを強く踏み込む。タコメータが時速40kmを超える。
エンジン音とクラクションの音に反応した脳味噌剥き出し怪人が、奇声を上げながら、突進してきた。
アクセルペダルを踏み付けたまま、速度を落とさない。やがて、トラックと化物が衝突し、フロントガラスが罅割れる。キャブ前面がひしゃげ、トラックが無惨な姿に生まれ変わった。衝突の衝撃でハンドルも折れ曲がり、コントロールが徐々に失われる。脳味噌丸出しの怪人は、トラックと衝突した
「脳無!ぶへらぁ!?」
「し、死柄木弔ぁぁぁ!?」
手だらけの男がトラックに轢かれ、宙に舞う。黒い靄男君が、撥ねられた男の名を叫んでいる。
読者の諸君らは、こう思っただろう。米津何某のワンシーンみたいだと。
やっべぇ、敵とはいえ個性で召喚したトラックで撥ねちゃった。エアバッグで奇跡的に無傷だった俺ちゃんは、運転席から降りた。そして、手だらけ男と、ソイツを介抱している黒靄男に声を掛ける。良かった、個性の効果でミンチにはなっていないようだ。
「おい!しっかりしろ!一体、誰にやられたんだ!」
「お…お前」
手だらけ男は、震える手で俺ちゃんを指してきた。黒靄は、黄色い目で睨み付けてくる。でも、アンタ等、相澤先生や蛙吹ちゃんを殺そうとしていたでしょ。五分五分ってことで示談にしない?
「助かったけど、敵が可哀そうに見えるぜ」
「けれど、運良く助かったわ」
「笑井君気を付けて!アイツが相澤先生を!」
峰田がドン引きし、梅雨ちゃんがケロケロと鳴く。緑谷は、脳無について教えてくれた。こいつが、相澤先生の仇か。絶対に許さへん。
「ふ~む、悪魔合体失敗したような見た目だな。脳みそが丸見とか、趣味悪すぎない?」
「お喋りがウザい口を壊してやろうか?脳無、殺れ」
脳無と呼ばれた怪人が、俺に向かって剛腕を振りかぶってきた。目視で避け、蹴りを叩きこむが、筋肉が異常に硬くて、此方側の足が壊れそうになる。俺は、足をすぐに戻し、後方に回避行動を取った。その瞬間、俺がいた場所は、クレーターになっている。あと少し遅かったら、俺の身体はミンチ肉に成り果てていたみたいだ。
さて、次は俺ちゃんのターンだ。クソ敵共め!脳無の懐に入り込み、股間を蹴り上げる。
「必殺、寿限無炸裂拳!」
俺は、脳無の筋肉に一発目の拳をぶつけ、連続で打ち込んだ。
「寿限無、寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末・雲来末・風来末、食う寝るところに住むところ、
やぶらこうじのぶらこうじ、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ――」
古典落語の寿限無のリズムに合わせて、脳無に乱打を叩きこむ。
「――リンダイのポンポコピーのポンポコナの、長久命の長助えええ!」
「対オールマイト用に備えたショック吸収だ「喰らえ、めっちゃ強いパンチ!」…は?」
手だらけ男が説明している間に、もう一つの技を叩きこむ。え?説明はちゃんと聞けって?
いやいや、命のやり取りで悠長なことは言ってられないでしょ。打撃を受けた脳無は、腕を交差して防御するも、両腕の筋肉が一部崩壊している状態だ。
どう対応するか。そう考えていた矢先、入口の扉が轟音を立てて、吹き飛ぶ。
「もう大丈夫!何故かって?私が来たぁ!」
扉を壊して現れたのは、ネクタイを千切るように取り外し、手だらけ男、黒い靄男、脳無を睨むオールマイトであった。その目は、悪意に対してぶちギレる高潔な正義の怒りが込められている。
「良かった…緑谷っち、オレ少しお昼寝タイムにするわ」
脳無との戦いで疲労した俺は、小岩を背に座り込みながら、瞳を閉じた。
笑井一
好きな食べ物 チミチャンガ
好きな言葉 カワバンガ
ヒロインいる?
-
いる
-
いらない