貴方の事が好きすぎる鳴潮女子だなんてそんな。 作:究極最終さむらい(2歳)
彼女が欲しい。
最近貴方の思考を支配するのはその純粋な欲望だけであった。
友人から毎回の様に惚気話を聞かされ、それを聞き続けていたら自分も彼女とイチャイチャしてみたいなぁ、なんて考えたのが始まりである。
しかし、彼女が欲しいなどと思いつつも貴方は何も行動を起こさなかった。
仲の良い女子へ積極的にアタックを仕掛けたりなどもせず、可愛いなと思った子へ話しかけたりもしていない。
何なら、可愛い子に告白されないかなぁとだらけた事を考えていた。
そんな都合のいい展開などある訳がない。
頭ではその事を理解しているのだが、やはり可愛い彼女と一緒に青春を謳歌したいのである。
ならばやはり、こちらから積極的にアピールしなければならないと意気込むものの、今の貴方には行動を起こす勇気など持ち得ていなかった。
勇気の持てない貴方は結局また後で、明日になったらと思いその機会を永遠に探していた。
────自分の事が大好きな子がいれば良いのになぁ
そんな事を思っても、都合の良い展開は中々怒らないのである。
「さっきからぼーっとしてますけど、何考えてるんですかぁ?」
貴方の思考は侵入するように、疑問が含まれた声が聞こえてきた。
思わず少しビックリしてしまい、声の主へ目線を向ける。
貴方の隣で林檎を齧り可愛らしく首を傾げる少女の名は、"ダーニャ"
世界で一番可愛い、宇宙で一番キュートな女の子、全銀河に響き渡る素敵な少女と学園中から評されるほどの美少女だ。
自分の隣に座っている理由が全く分からない、と貴方も思うほど。
今彼女が林檎をもぐもぐと咀嚼している場面を写真に収めたら、数万を超える値段で取引されるであろう。
実際、数ヶ月前ダーニャにカメラ目線指ハートピースを撮らせてもらい、それを友人らに見せたらオークションが始まった程である。
ちなみに、その写真を売った事をダーニャへ伝えたら怒られた。
そんな大人気アイドルの様な彼女が貴方の隣でお昼ご飯を共にしている理由とは……
─────
(牛乳をちゅーちゅー飲んでる先輩……可愛い…♡)
ダーニャは貴方の事が好きなのである。
そう、貴方にとって最も都合の良い女が真隣に存在しているのだ。
金を要求されても許してしまうし、どんな身体的苦痛も彼女にとってはご褒美となる
貴方からの愛さえ貰えるのなら、どんな事だって許せてしまう。
誰かに言えば少し引かれてしまうぐらいの愛を、ダーニャは貴方へと向けていた。
何故こんなにも愛してしまったのか、ダーニャ本人にも完全に理解はできていない。
見つけた瞬間に恋をしてしまった、見た瞬間に魅力に取り憑かれてしまった。
自分の理想を詰め込んだような容姿をしており、初めて見た時から胸の高鳴りがおさまらない。
ただそれだけの理由であった。
何時しか目が離せなくなっており、毎日の様に貴方を目で追うようになってしまった。
ふとした瞬間に貴方の事を思い出しては、鼓動が速くなる。
彼の好みになりたい、彼に好かれたい
そんな事を思い、努力を重ね今や学園でダーニャを好きじゃない人物はいないと言えてしまう程に成長したのだ。
だからこそ、写真を求められた時は飛び跳ねる程嬉しかったし、ノリノリでポーズも取った。
だからこそ、その写真を友達に売ったと聞かされた時はいっぱい怒った。
その写真でナニをするのかと期待していたダーニャの期待は壊された。
そして、その瞬間に理解したのは──
『先輩って…………もしかして私の事好きじゃない………?…………え?』
という事であった。
そこからダーニャは、どうしたら先輩である貴方から好いてもらえるのかと考えるようになった。
最初は素っ気ない態度を取り距離を置いてみた。
見つめては目が合う前に視線をそらす。
いわゆる焦らしというやつを行ったりもした。
これで自分の事が好きなら先輩の方からアクションをかけてくれるだろう。
先輩からのアプローチが欲しかったダーニャは、少し期待しているのもあった。
が、特に反応は無かった。
だからと言って焦る必要はないと考えを改める。
まだ序章に過ぎないのだから。
次に行うのは、露骨にアプローチを掛ける事だった。
彼氏彼女の関係になった後の練習として、積極的に甘えたり腕を組んだり。
極め付けは一緒にデートもした。
全て順調に進み、あとは先輩のアクションを待つのみ。
果たして結果はどうだったのかと言えば──
特に反応は無かった。
『どうして!!」
全くもっていつも通りであり、頬を赤らめることなどもせずボケーっとしている。
あまりのクソボケ具合にダーニャは絶望もした。
貴方に触れられる度、ダーニャの脳に電流が走り、思わず変な声が出そうになってしまうというのに。
毎回耐え続けているのとは裏腹に、こちらからボディタッチを仕掛けても大した反応は得れない。
何度も枕を濡らしたのかは、両手で数えることなど不可能な域に達していた。
しかし、必ず最後に愛は勝つと信じているダーニャはめげなかった、悄気なかった。
今までは我慢をしてきた
───この日までは
─────
"彼女欲しいなぁって"
「は?」
貴方から発せられた一言に、ダーニャは思わず声を漏らす。
変な事を言ってしまったか、と貴方は一瞬戸惑うが別に男子高校生なら至って普通の欲望だろうと思い直した。
困惑というか、怒りの形相というか。
今の今まで一度たりとも見た事ない表情を浮かべている。
貴方は表情を変えないダーニャへ恐る恐る声を掛けようとするが──
「は?????????」
ダーニャは怒った。
目の前にいるクソボケを処刑しなければならないと誓った。
しかし思い直す。
これは遠回しに自分へのアプローチなのではないのかと。
先程の一言からは全てを察することは不可能だが、言葉の意味からしても自分の事を意識している事は確実であろうと。
ダーニャは落ち着いた。
「そ、そうですか………彼女が欲しいんですねぇ?それならここに適任の女の子がいますよぉ」
あくまでクールに、いつもの態度を装いクソボケに自覚させる。
彼女なら自分が適任だぞと、私以外に貴方の彼女に適してる女の子は存在しないぞと。
早く俺の女になれよと声高々に言え、と無言の圧力を発した。
"ダーニャは自分には勿体無いよ"
「は???????????????」
「は???????????????」
「は????????????」
ダーニャは再び怒った。
何を言ってるんだこのボケナスは。
こんなにもアプローチをしてきたんだぞ。
と言うか告白紛いの事をしたんやぞ。
そう思わずにはいられなかった、と言うか思わせているはずだ。
でなければ、考えられない。
ひょっとすると、自分の事が嫌いなのではとダーニャは最悪の事態を思考に入れてしまう。
万が一それが事実だとしたら、きっとショックで死んでしまうだろうと確信がついた。
しかし、可能性は一つ一つ潰していかなければならない。
(大丈夫大丈夫先輩にとっても私は特別な女の子なはず大丈夫大丈夫大丈夫だいじょうぶだいじょうぶ)
意を決して禁断の質問をしてしまうのだった。
─────
「先輩、私の事彼女にしたいですか……したくないですか?……私と、付き合いたいですか……?」
「私は……貴方と付き合いたい……です」
ダーニャから投げかけられた質問に、貴方は非常に驚愕した。
うるうると目尻に涙を浮かべながら、もはや告白と言える発言をしてきたのだ。
あのダーニャが。
貴方にとってダーニャとは、からかい気質の少し生意気な可愛げのある後輩であり、お互いに恋愛感情など無いと思っていた。
普段から揶揄うような態度が多い為、先程の発言も全て嘘だと確信していたと言うのに。
この様子を見るに、どうやら揶揄いの類ではなさそうだ。
ならばどうする、自分がダーニャに恋愛感情を抱いているのか、それは定かではない。
特別仲はいいと思っていたが、自身がダーニャへ抱いているのは恐らく愛とはちがう感情である筈。
そんな状態で彼女の告白を承諾しても、それはお情けであり失礼に当たるのではないか。
何がダーニャにとって良い選択肢なのかは分らない。
しかし、これ以上彼女の涙を見たくないと思ったのは、事実だった。
"僕も、ダーニャと付き合いたい"
曇りの無い眼で、はっきりと告げる。
結局、自分から飛び出た言葉が真実かそれ以外かなどは分かるはずも無かった。
「………!……嬉しいです……先輩…!」
確かにそれは幸せそのものなのに、何処か寂しそうな笑顔を浮かべるダーニャ。
ダーニャは貴方へとゆっくり近づいて、胸に飛び込んだ。
「ふふ、今日から恋人になりましたが……あなたの事をもっと夢中にしちゃいますから、覚悟してくださいねぇ♡」
甘い声色の裏には、強い覚悟が秘められていた。
ダーニャは賢いから感が良いため、この返事が情けの気持ちなのだろうと分かっていると、少し心配していたが。
しかし、どうやらそれは杞憂に終わりそうだ。
きっと、自分はこの子の事をいつか好きになるのだろうと、貴方はそう確信していたから
「私の全部を、大好きにさせてあげますからね♡」
これで良かったんですか?
僕には分かりませぬ
ギャグテイストに仕上げようと思っていたら途中からしっとりしてまった。
ダーニャらしく書けなかった気がする。
次回はエイメスかリンネー、もしくはカルテジア
ネタは無い