享年16年
入院中の女子高生が首を攣って死んだ
遺族の意向で晒された写真に写っていたのは、生きているうち、テレビでさえ見られるかも疑わしい、なんとも見目麗しい美少女であった。
内側へと緩やかにカーブする、艶々のロングの黒髪。
滑らかで陶器のように白い肌。
細長く柔らかそうな四肢に、汚れを知らない薄ピンクの爪。
控えめに膨らむピンクの唇と、完璧なカーブを描く小さな鼻。
まるーく大きな茶色の瞳は、まるでブラウンダイヤモンドだ。
ニュースはこの伝説の一枚とともに世界を駆け巡り、一人の少女に向けられるのにはあまりに多すぎる関心が寄せられた。
不躾無遠慮、品性のかけらもないコメントと、それらに付随する大量のハート。
ただ、悲しいことに、そうしたコメントを怒りとともに眺め続け、刺激のない単調な擁護コメントには何の興味も示せないのは、他の誰でもない、我々なのだ。
道徳心のかけらもない投稿のインプレッション数を増やすのは、
何の罪もない少女をなじるブラックジョークにニヤつくのは、
Youtubeの下世話な動画サムネに惹かれて再生をするのは、
他の誰でもない、我々なのだ。
通報ボタンを押すのに疲れた私は、パソコンをそっと閉じた。
到底、見ていられるものではなかった。
眉間に刻まれた深い皺を入念にほぐす。
通報ボタンは現実逃避の手段だ。
頭はすぐ、逃れようのない負のループに捕まった。
涙が溢れる。
ぼろぼろぼろぼろこぼれおちる。
嗚咽が漏れる。
静かな部屋に大きく響く、小さな嗚咽。
うー あー あー ああああああああああ
泣き声は後悔に塗れ、止まらない。
事件直後は、もっと酷かったのだ。
取り返しのつかない悲劇が、時によって解決するのは、何も時が心を癒すからというわけではない。
取り返しのつかないことを、本当に取り返しがつかないのだと認識するからだ。
3秒前に起こったことは、なんとなく、今からでもなかったことにできるような気になるのだ。
記憶が鮮明で、今起きているかのように想起される情景は、自身がタイムスリップでもしているかのような気持ちにさせる。
今、私は目の前に、死んだ彼女を見ている。
死ぬ直前のだ。
手を伸ばせば、引き戻せるのだ。
ただ、その手は彼女をすり抜けるのだ。
私は、彼女をよく知っている。
彼女と深い仲にあった。
彼女は文字通り、私の彼女だったのだ。
私の恋人だったのだ。
決して、死んでほしくなんかなかった。
美しく、優しい彼女を、ただただ一心に愛していた。
ともすると、愛しているどころではなかったのかもしれない。
彼女のためなら、本当になんでもできたから。
何にでもなれたから。
だから、だからこそ、許せないのだ。
私は、この事件の真相を知っている。
よく知っている。
到底許せないことだ。
彼女を害しただけではない。
彼女の全てを奪った。
彼女は
美しい彼女は
ひかり輝くブラウンダイヤモンドは
ぎしゃぐしゃに潰された。
顔面に硫酸をかけられたのだ。