モジュロ虎杖成り代わり、透き通る世界へ 作:もじゅろいたどり好き
変なところがあるかも
◆
目を覚ます。視界に広がった天井には見覚えがなく、ここが自分の家ではないことが分かった。
「う……ん…ここはどこだ?」
覚ましたばかりの目を擦りながら周囲を見回す。周りには自分の家の面影など欠片ものこっていない。
さらにコンクリートの上で寝ていたからか、体中が痛い。体を伸ばすと、ゴキゴキ、バキバキと体からなってはいけないような音が鳴る。
(んっ…と。骨の鳴り具合から考えるに、結構長い間寝ていたっぽいな。昨日は部屋のベッドで寝たはずなんだが…誘拐か?
いや、メリットがないだろう。恨まれるようなことをした覚えもない。)
今の状況を予測しながら、部屋の中を歩き回る。
(そもそも本当に誘拐か?拘束もされてないし、見張りもいない。監視カメラの類も見たところなさそうだ。とりあえず情報が欲しいな。)
部屋にあった窓から辺りを見渡すと、およそ現代の日本とは考えられない光景が広がっていた。
制服を着て、銃を持つ女子生徒。
空に浮かぶ奇妙な輪。
道を歩く動物屋ロボット。
ここまで分かれば、もはや言うまでもないだろう。いや、言うけどさ…
俺、ブルーアーカイブの世界に来ちゃった…
◆
さて、なぜこんなことに…なんて嘆きながら今持っている情報を整理しよう。
まず一つ、ここはキヴォトス。ブルーアーカイブをプレイしたことはないが、二次創作は読んでいたからな、コレくらいは分かる。銃を持った女子生徒と空に光る輪をみれば一目瞭然だろう。
二つ、俺はこの廃ビル?で目覚めたわけだから、生前読んでいた二次創作のようにおそらく戸籍はないし、入学する学校が決まっているわけでもない。さらに言うと、先生でもないのである。戸籍がないのはいろいろと面倒なため、早めにどうにかしたいところである。
三つ、俺は、俺ではない。詳しく言えば、以前の俺ではないというべきか。つまり、キヴォトスに来てから、俺の体が変わったということだ。誰に変わったかと言うと、モジュロ虎杖だ。窓ガラスの反射で自分の顔を見ると、イケメンである。モジュロだからか、落ち着きが感じられ、後ろに流した髪と相まってとてもイケメンである。嬉しい。
今持っている情報の整理はこれくらいにして、欲しい情報を確かめよう。
まずは場所。自分がどこにいるのか知りたい。
次に時系列。原作は開始しているのか、していないのか。しているのなら、ストーリーはどこまで進んでいるのか。していないのなら、先生が来る何年前か。などなど、俺の行動指針に大きく関わる。
そして、呪術!せっかくモジュロ虎杖になったんだから使いたい。御厨子に赤血操術に反転術式に結界術などなど。興味が尽きない。だがまぁ、お楽しみは後に取っておこう。
欲しい情報はスマホで調べよう…とポケットに手を突っ込み、探る。あ…スマホない…どうしよう。そうだ、聞き込みしよう。銃を持った人に話しかけるのは少し勇気がいるが、俺は廃ビルの階段を降り、通りに出る。そしてちょうど通りがかった一人の女子生徒に話しかけた。
「少しいいかな?」
「はい?」
話しかけた女子生徒は、俺の顔を見るなり目を見開き固まってしまう。
「お〜い…大丈夫か?」
「…………ハッ、だ、大丈夫です」
「本当に?俺の顔になんかついてる?」
「いえ!人間の男性が珍しくて…」
「あ〜なるほどな。そうか、確かに人間の男は珍しいな…」
「はい、私は初めて見ました!ところで、何か用があったんじゃないですか?」
初めてってことは、先生はまだ来ていない?いや、女性の先生ってこともあり得るのか。まだ分からんな。
「そうそう、聞きたいことがあって話しかけたんだよ。少しだけ時間もらってもいいかな?」
「はい、大丈夫ですよ!その聞きたいことというのは?」
「ここってどこ?」
「ここですか?ここは、ミレニアム自治区の端の方です。そんなことを聞いてくるなんて…もしかして迷子ですか?」
「まぁ、そんなところかな。ミレニアム自治区ね…ありがとう。ついでにもう一つ、連邦生徒会長って知ってる?」
「当たり前じゃないですか!連邦生徒会長はこのキヴォトスのトップですからね。知らない人のほうが珍しいんじゃないですか?さてはお兄さん、相当世間知らずですね?」
「まぁね、少しキヴォトスの常識に疎くてさ、いろいろと情報を集めている最中なんだ」
「へぇ〜、じゃあ私からお兄さんにアドバイスです!キヴォトスでは、銃を持つのが当たり前なんです。逆に言うと、銃を持ってないと舐められるってことです。撃てなくてもいいので何かしらの銃を持つことをおすすめしますよ!」
「うん、忠告ありがとう。気をつけるとするよ」
「はい、是非そうしてください。あの、近くの駅まで送って行きましょうか?」
「いや、そこまで世話になる訳にはいかないさ。聞きたいことも聞けたからね、ありがとう」
「お力になれたようでよかったです。じゃあ私はこれで、さようなら!」
「いろいろと教えてくれてありがとう。助かったよ」
振り向き、手を振ってくる彼女にこちらも手を振り返す。とりあえずもといた廃ビルに戻り、考えるとしよう。
さて、彼女との会話からわかったことは二つ。ここはミレニアム自治区ということと、まだ原作は開始していないということだ。彼女の口ぶりからするに、連邦生徒会長は失踪していないことが伺えた。
これからどうしよう。戸籍もない、お金もない、家もない、スマホもない。無い無い尽くしだ。まずは、自分の生活を安定させることを目標にしよう。
◆
目標が定まったのはいいんだが、そろそろ呪術というものに触れておきたい。まずは、呪力を感じるところからか。
(呪力とは、負の感情から生み出されるものだったよな…怒ればいいのか?う〜ん…よくわからんな。)
俺が呪力を感じようと自分の内に意識を向けること十分。へその下辺りにモヤモヤを感じた。
(これが呪力か!)