ミクを拾ったら色んなVOCALOIDを揃えて活動する様になった件 作:八雲ネム
科学が発達し、ロボットとしてのアンドロイドが人間と大差ないレベルまで進化した近未来において、俺は社会の片隅でひっそりと暮らしていた。
表の顔は冴えないフリーターで通している為、安物のTシャツにズボンを着こなす一方で裏の顔は資産運用で一定の不労所得を得ながら、趣味兼暇つぶしで動画投稿サイトへ自作の曲やカバー曲を投稿している。
おかげで、ありがたい事に登録者数が数千人規模にまで増えたので一定の充実感を得ながら平凡で面白みのない生活を暮らしていたのだが雨の日のある日、地方都市にある一軒家を自宅にしている家の正門の脇に1体のアンドロイドが蹲る形で座っていた。
損傷が激しく、ぱっと見では誰かはわからないものの服装や髪の色から初音ミクだろう。
本来、初音ミクなどのVOCALOIDを含めたアンドロイドは物として扱われるので所有権の一環として、ロボット登録制度なる物が存在してユーザー側の権利と責任を一括で管理する管理局がある。
彼女の管理番号を管理局で照合すれば、所有者が分かるので買い物の後だった事も相まって後で管理局に通報しようと思いながら、正門を通ろうとした時に掠れた声が聞こえてきた。
「ます、たー………」
普通なら、拾っても色んな手続きがあって面倒な上に元の所有者が所有権を主張すれば抗う術がないし、科学者や研究者でもないので余計なリスクを避ける為にも無視して家に入るのだろう。
しかし、彼女の言葉を聞いた俺は無視できなかった。
何しろ、俺の体は線が細いと言っても過言ではなく、どんなに筋トレをしても男らしい筋肉が付かなかった上に低身長で女性的な顔立ちに声変わりしなかった声帯に加え、遺伝子のバグだろと言わんばかりに髪の色が青緑色だった為に学生時代はイジメとかで肩身の狭い思いをしたのだ。
幸い、通信制の学校に行けるだけの資産が親にはあったし、資産運用で生活できるだけのお金を生前贈与と形で渡してくれた為、独り立ちした後でも贅沢な生活を送らなければ生きていけるだけの貯蓄はできた。
その為、管理局に通報して廃棄寸前の初音ミクを回収してもらうのと同時に彼女の所有者等を可能な範囲で調べてもらうと案の定、かなりの資産家だった事が分かった。
人間であればネグレクト案件だったのだが生憎、VOCALOIDは物なので第三者が責任追及するのは難しく、所有権云々も札束の数は向こうの方が圧倒的に多いし、登録名義が向こうにある事から裁判等で争っても勝てる見込みがない。
法律の抜け穴としても彼女を救い出せる事が難しいし、仮に救い出せたとしても内部の回路にどれ程のダメージが入っているかが分からないのでそのまま、修理するよりも回路から抽出できる範囲のデータを抽出して新しい体に移した方が良い、と担当してくれた方が助言してくれた。
データ上、問題ない部分に限られるけど移した方が残った部分のデータが新しい回路の対応しているデータへ上書きされるだけらしいので、お金を払って問題ないデータのみを抽出してもらう事にした。
(後は市販されている正規の初音ミクを買うだけだな)
そんな事を考えながら、データの仕様書とデータが入ったUSBメモリを貰って帰宅した。