「小癪なガキ共が……死ねぇッッ!!!!」
怒りに顔を歪めたウォルフラムが、奪い取った『個性増幅装置(レイズ・デバイス)』を右腕の装甲へ強引に叩き込む!
ギィィィンッ! ドクンッ、ドクンッ!!
装置が禍々しい赤紫色の光を放ち、彼の血管が太く浮き出た。増幅された個性『金属操作』の磁力が跳ね上がり、施設内の鉄骨、壁面パネル、壊れたドローンの残骸が怪獣の如く咆哮を上げて集束する。
それらは瞬く間に、ビル数階分にも及ぶ巨大な「鋼鉄の大剣」へと姿を変え、二人目掛けて振り下ろされた!
ドガァァァンッッ!!!!
壊滅的な衝撃が床を砕き割る。だが、その巨大すぎる威力の隙を、目に見えない影がすり抜ける。
「えいっ! やあっ!」
「なっ……!?何処から攻撃してやがる!?」
完璧な気配遮断から放たれる、透ちゃんの鋭い連続打ち! 顎、高圧タンクの継ぎ目、膝の裏――軍人との特訓で培った「視えないヒット&アウェイ」が、ウォルフラムの姿勢を的確に崩していく。
「鬱陶しいんだよ姿なき虫ケラがぁッ!」
「隙だらけだよ! 『ホワイトスマッシュ』!!」
ウォルフラムが広範囲へ金属片を散らそうとした瞬間、煙の中から跳弾するように飛び出した白煙くんが、圧縮した煙を両腕から爆発噴射! 凄まじい推進力を乗せた拳が、ウォルフラムの胸甲を真っ芯で撃ち抜いた!
ズドォォォンッ!!
「チィィィッッッ……!?」
増幅装置を付けた巨躯が数十メートルも吹き飛び、壁を打ち破って落石の中に埋もれる。
「やった……!?」
「油断しないで透ちゃん、奴の圧力は落ちてない!」
白煙くんが警戒を強めたその時、瓦礫が爆発的に吹き飛んだ。血煙を吐きながら立ち上がったウォルフラムの目が、真っ赤に血走っている。
「ガキ共が調子に乗るなよ……! 動け、セキュリティマシーン共ッッ!!」
ウォルフラムが右腕の増幅装置を強く握り締めると、波状の磁力波が島中に伝破した。極限まで拡張された操作領域が、下層エリアに待機していた数百台もの大型セキュリティマシーンを一斉に強制起動させる!
さらに、落ちていた重火器の残骸が磁力で解体・再構築され、マシーンたちの両腕へ次々と凶悪な「重マシンガン」として接合されていく!
「全機……掃射しろォォォッ!!」
バババババババババババババババッッ!!!!
弾雨。数十基の重機関銃が一斉に火を吹き、空気を切り裂く鉛の嵐が襲いかかる。
「『ホワイトシールド』!!」
白煙くんが素早く前に躍り出ると、両手から極限まで密度を高めた「白煙」を圧縮噴出! 目の前に巨大な肉厚の気体障壁を形成する!
ドババババババッ!!
「くっ……圧がすごい……っ!」
「エンちゃん!!」
高密度の煙に着弾した弾丸は、回転力を殺されて次々とその場に落とされるが、弾雨の衝撃波で白煙くんの足元がメリメリと削れていく。
「大丈夫だよ、透ちゃん……! この程度の弾幕、僕たちの絆を破る盾にはなり得ない!!」
白煙くんは歯を食いしばり、後ろでシールド親子を守る透ちゃんへと力強い視線を送る。アメリカの地で手に入れた「覚悟」と「進化」が、最悪の弾丸の嵐を前に熱く燃え上がっていた。
「使えねぇマシーンだな!!」
「(今だ……虎さん直伝――軟体パーンチ!!)」
弾雨を白煙くんが『ホワイトシールド』で防ぎ切った一瞬の隙。透ちゃんが気配を完璧に殺し、相手の死角である背後からしなやかな関節の可動域を活かした重い一撃をウォルフラムの首筋へ叩き込もうと跳躍した。
だが――。
ガシッ……!!
「そこか……透明人間ッ!」
『個性増幅装置』によって研ぎ澄まされたウォルフラムの磁力感覚が、空間の僅かな空気の揺らぎを察知していた。振り返りざま、装甲で覆われた彼の太い右腕が、目に見えない透ちゃんの首元を正確に掴み取る!
「なっ……!?」
「女のパンチなんざ……軽ィんだよッ!! ウラアアアアッッッ!!」
「きゃあーーーーーっ!!」
ウォルフラムはそのまま透ちゃんの身体を容赦なく打ち据え、地面へ激しく叩きつけた!
メキ……バキッ……!!
静まり返る空間に、響いてはならない砕ける不気味な音が重く響く。
「……ッ、が……ハッ……」
姿は見えずとも、地面に倒れ伏した透ちゃんの呼吸が激しく乱れ、そのままピクリとも動かなくなるのが痛烈に伝わってきた。
「透ちゃん……? 透ちゃん!! 答えてよ、透ちゃん!!」
白煙くんの瞳が大きく見開かれ、絶望と激痛で世界が真っ赤に染まった。大好きな彼女が目の前で折られて動かなくなった。胸の奥底で、何かがぶちりと弾けた。
「お前ーーーーーッッッ!!!!」
ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
白煙くんの心臓が、限界を超えた速度で激しく脈打ち始める。体内の血液が沸騰し、全身の細胞が暴走するような灼熱が駆け巡る。今まで彼を取り巻いていた純白の煙が、怒りと怨嗟を吸い上げてどす黒い赤へと変貌を遂げた!
「――『赤煙(セキエン)』ッッ!!!!」
ドドォォォォンッッ!!
爆発的な推進力で地表を砕き、白煙くんが超音速でウォルフラムの懐へ肉薄する!
「スマッシュ!! スマッシュ!! スマァァァシュッッ!!!!」
「ガハッ……!?」
『赤煙』によって跳ね上がった身体能力。白煙くんの怒りの連撃が、ウォルフラムの胸甲を次々と叩き割り、重厚な金属の装甲を粉砕していく!
「『スモーク・テンタコル』――ッッ!!」
障子くんの『複製腕』を模し、背後から高密度の赤煙で生やした6本の巨大な煙の腕が、猛ラッシュでウォルフラムを打ち据える! 衝撃波が室内を乱反射し、ヴィランの身体が宙に浮く。
「チッ!! 命を削る身体能力強化か……!! だがなッ!!」
ウォルフラムが血を吐きながらも、冷酷な眼光を失わずに右腕の増幅装置を握り締め直した。周囲の瓦礫が一瞬で巨大な鉄の槌へと凝縮される。
「――甘いんだよッ!!」
ドガァァァンッ!!
「ぐわっ……!?!?」
完璧なタイミングで振り下ろされた鉄槌が、白煙くんの側腹部を直撃。吹き飛ばされた白煙くんは壁を幾重にも突き破り、床に激しく叩きつけられた。
プシューーー……
「ハッ……ハッ……ガハッ……!」
白煙くんの身体から赤い煙が急速に失われ、元の白い煙すら出せなくなっていく。心臓への過剰な負荷。命を燃やす『赤煙』の限界時間は、わずか1分。エネルギーが切れ、激しい反動が彼の肉体を苛む。
「弱ェェッッッ!!」
ウォルフラムが瓦礫を踏みつけながら歩み寄り、冷たい嘲笑を浴びせる。
「テメェらレスキューヒーローは、人を殺すための戦闘ヒーローより劣るんだよ!! どんなに姿や形を変えようとも、命の奪い合いをしてこなかった甘ちゃんがオレに勝てるわけがねぇ!!」
ウォルフラムは増幅装置を誇示するように高く掲げた。
「テメェらが甘っちょろい救助ごっこをしている間に……オレは誰よりも戦い、誰よりも人を殺し、誰よりも強さを鍛え続けてきた!! そんな覚悟もねぇ突発的な時間制限ドーピングなんぞ、このオレには一切効かん!! ハッハッハッ!!!!」
最悪の絶望と圧倒的な暴力。動けない白煙くんと倒れた透ちゃんの前に、凶悪なヴィランの影が重く立ち塞がっていた。
「くっ……ッ……!」
冷たい床に顔を叩きつけられた白煙くんは、激痛と激しい呼吸困難の中で呻いた。
(強い……あまりにも強すぎる……。僕の『赤煙』が、手も足も出ずに打ち砕かれた……)
ウォルフラムの嘲笑が、刃となって心臓に刺さる。
所詮はレスキューヒーロー。人を救う訓練ばかりを重ねてきた自分たちが、命を奪い、誰よりも戦い慣れた殺戮のプロに勝てるわけがない。アメリカで必死に食らいついた特訓も、自分の限界を超えようとした決死の努力も、目の前の圧倒的な暴力の前には虚しく潰え去った。
(やっぱり……僕はまだ弱いんだ……。透ちゃん一人すら……守れない……)
絶望が全身を支配し、白煙くんの心が内側からメリメリと折れていく。視界が急速に暗転し、諦めの闇に呑まれかけた、その時――。
「――そんなこと、ないッ!!」
凛とした、しかし強い怒りを秘めた声が応接エリアに響き渡った。
「あぁん?」
ウォルフラムが怪訝そうに目を細める。
「エンちゃんはずっと……誰よりも優しく、誰よりも必死に、みんなを救ける努力をしてきたんだよ!!」
ふらつきながらも、ゆっくりと、しかし確実に立ち上がる影。
先ほど響いたあの不気味な破砕音――それは透ちゃんの骨が折れた音ではなく、軍人との特訓で装着していたアメリカ軍仕様の「高密度肉体保護グローブ」が、衝撃を逃がして砕け散った音だった。
「救けるための強さをバカにするな!! 壊すことしかできないお前なんか……エンちゃんの足元にも及ばない!! 全然怖くなんてない!!」
姿は見えない。けれど、そこに立つ彼女の全身から溢れ出る圧倒的な気迫と覚悟は、どんなヒーローよりも雄弁にその存在を主張していた。
「くたばり損ないのガキが……しゃしゃり出るなァッ!!」
ウォルフラムが激怒し、増幅された磁力で大量の鋼鉄の槍を生成。逃げ場のない弾雨となって透ちゃんへ一直線に突き刺さる!
「やああああああああっっ!!!!」
透ちゃんは退かない! 砕けたグローブを投げ捨て、剥き出しの拳を構えると、軍人から叩き込まれた最高峰のヒット&アウェイで鋭く踏み込む! 襲い来る鋼鉄の槍の僅かな隙間を紙一重で見切り、光を屈折させてウォルフラムの視界を瞬時に奪う!
「ぐああッ!? 目が……!」
「エンちゃんが諦めてないのに……私が折れてたまるかぁぁぁッ!!」
勇猛にヴィランへ挑み続ける透ちゃんの姿。
「透、ちゃん……」
床に伏したまま、白煙くんは血を吐きながらその光景を目に焼き付けていた。
彼女は傷つきながらも、自分を信じて戦っている。自分を庇って、命を懸けて前へ進んでいる。
(なんで……なんで、僕は動けないんだ……!!)
己の不甲斐なさに、悔し涙が溢れ出す。
(なんで……! 僕は彼女の隣に立つって誓ったのに……! なんで僕は、ただ見ていることしかできないんだ……ッ!?)
折れかけた心と、沸き立つような自己嫌悪。葛藤の渦中で、白煙くんの体内の煙が、静かに消えかけていた。
「ハクエンくん、これを使って!!」
絶望に押し潰されそうになっていた白煙くんの前に、メリッサさんが膝をつき、抱えていたスタイリッシュなケースを勢いよく開いた。中に収められていたのは、白煙くんのヒーローコスチュームの胸部と背中を覆う、重厚な最新型のチェストアーマーだった。
「メリッサさん……!? 危ないよ!! それにこれ、一体……」
「さっき展示エリアで話していた、きみの悩みを元に突貫で調整したサポートアイテムよ! 展示されていた高密度の『ネオ石炭』を、私の権限で極少カートリッジとして内部に組み込んだの!」
「こ、この短時間に!? 施設がこんなパニックになっている中で……!?」
白煙くんが目を見開く。メリッサさんは熱い眼差しで白煙くんを見つめ返し、言葉を続けた。
「ネオ石炭は一度点火すれば、超高熱を保ったまま半永久的に燃え続ける特異な新素材。本来なら巨大な発電炉で使うようなエネルギー源だけれど、これを過熱と排熱を制御する『小型蒸気機関(マイクロ・エンジン)』として組み替えたわ!」
「小型の……蒸気機関……! 外部の熱源から、高圧の排煙を生み出し続ける……!?」
「そう! きみの心臓や血管に過剰な負荷をかけて細胞を燃やす必要はもうない! このエンジンが『外部の心臓』として熱を生み出し、高密度の蒸気煙を排出し続けてくれるわ!」
「つまり……僕の身体そのものが、止まらない小型蒸気機関車になるってことか……!!」
「正解よ!! さあ立って、ハクエンくん! ヒーローはここで終わらないでしょう!?」
メリッサさんの叫びが、折れかけていた白煙くんの心に強烈な導火線となって火をつけた。
(……そうだ。僕は一人で戦ってるんじゃない。透ちゃんが身体を張って時間を稼いでくれた。メリッサさんが僕の未来を信じて、この短時間で命のエンジンを創ってくれたんだ……!!)
「……ありがとう、メリッサさん!!」
「頑張ってヒーロー!!」
白煙くんは瞬時に新しいチェストアーマーを装着した。カチリとロックが合致した瞬間、胸のカートリッジが真っ赤に発光する。
ヴヴヴヴヴ……ドクンッ! ドクンッ!
命を削る心臓の狂打ではない。技術の結晶であるエンジンが、正確で圧倒的な鼓動を刻み始める。
(熱を……体内の『煙』へ取り込む……!)
胸元で発生した凄まじい熱量と高圧蒸気を、白煙くんは逃すことなく己の呼吸と個性で吸い上げ、体内で限界まで「貯める」。
(逃がさない……高密度のエネルギーのまま、気管へ、全身の細胞へ「圧縮」する……!)
シュウゥゥゥゥッ……ッッ!!
全身の血液が熱気と呼応し、気化するような感覚。だが、先ほどのような肉体を苛む激痛はどこにもない。あるのは、溢れんばかりの純粋な爆発力だけだ。
「――**『赤煙・改(セキエン・カイ)』**ッッ!!!!」
ボォォォォォォォォンッッ!!!!
白煙くんの全身が、まるで鍛造された鉄のように紅蓮の赤へと染まり上がる。背中の排熱ダクトと頭部からは、激走する蒸気機関車のように、高圧の赤い煙が「ポッポーッ!!」と重厚な放熱音を立てて噴射された。
「透ちゃん……待ってて!!」
心が、覚悟が、そして力が――完璧な『完全体』として復活を遂げた。新米レスキューヒーローの逆襲が、いま始まる!
赤煙・改
ワ●ピースのギア・セカ●ドをサポートアイテムで代用して再現
ネオ石炭が燃え続けて煙を出す、その煙を吸収してパワーアップし続ける
ネオ石炭が燃え続ける限り、パワーアップの時間制限は無い